学習障害児の認識能力の分析 : ピアジェ型検査を使っての発達の質的検討
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(2) 目次. 1。はじめに II.方法. ・・・・・ @…. 1. ・・・・・… @. 6. 1.対象児 2。検査 ピアジェ型検査. 検査と検査課題達成水準. 神経心理学検査 III.結果. 1.ピァジェ型検査結果の概要. ・・・・・…. 23. 2.2つの側面に差の見られた症例について ・・・・・… 25 (1)症例1 (2>症例2 (3)症例3 (4)症例4 (5)症例5 (6)議論 3.2つの側面に差の見られなかった症例について ・・・・・… 59 (1)症例6 (2>症例7 (3)症例8 (4)症例9. (5)症例10 (6)議論. w.考察. ・・・・・…. @ 90. V。要約. ・・・・・…. @ 97. 謝辞 文献. 資料.
(3) 1.はじめに. 1。問題と目的 「学習障害」の定義はわが国では十分な合意が得られておらず,判定 基準や診断方法についても見解が分かれている状況である。この定義の 問題でわが国で論議を巻き起こしているのは,注意欠陥多動症候群と学 習障害の関係,潜在能力と学習達成水準との差異についてである。注意 欠陥多動症候群と学習障害とを分離する考えと,教育的観点から学習障 害の基本症状として含めて捉えるべきであるという考えがあり,まだ見 解は分かれたままである。また,潜在能力と学習達成水準の差異につい ても,知能検査の問題や学業成績や学習に関するスキルの測定の問題が あるとされている(大塚,1993)。. このような状況の中で,現在行われている学習障害の診断,指導方法 は,上野ら(1992)の心理教育的アプローチ,白瀧(1993),長畑(19 94)のいう神経心理学的アプローチなどがあげられる。この心理教育的 アプローチでは,学習障害児のもつ心理能力,特に認知過程の特性を把 握して,言語,学力,社会性などの聞題への治療的教育を行うのである。. 心理能力の特性を把握するためには,心理検査が利用され,問題に対し て個別化された指導プログラムが作成される。つまり,学習障害の鑑別 ・認定を目的とする段階と治療・指導の具体的手がかりを探るための能 力パターンの測定を目的とする段階があり,このことから学習障害の類. 一1一.
(4) 型化を行い,症状や行動特性とそれに対する指導が行われる。さらに,. 二次的な問題(対人関係の問題,登校拒否,非行など)の予防もこのア プローチの目的とされている。神経心理学的アプローチでは,学習障害 の診断において学習に関する高次精神機能と基礎的,心理過程の障害の 様相と,脳神経系の構造的,機能的障害の様相を検討するための検査が なされる。つまり,種々の心理テスト,神経学的検査,神経心理学的検 査,行動評価,精神医学的検査などをうまく組み合わせて用いているの である。そしてその中で,学習過程における感覚入力モデルの欠損を明. らかにしていく。この2つのアプローチとも,学習過程の理論的モデル や情報処理過程モデルをベースに考えられており,このモデルに従って 種々の機構の障害の有無を明らかにするのである。以上のように,これ らは知能検査などの心理検査と神経学的検査を組み合わせたテストバッ テリーで構成されている。これらの検査結果は量的評価が中心であり,. 子どもがどのような課題でどのようなやり方で失敗したかなど,内容の 分析はあまりなされていない。また,読み書きの基本的な技能について の分析,例えば読む,手本を写す,聞いたことを書き取る,文章の意味 理解などの牙析が十分とはいえない。そのほか,子どものもつ本来の能 力との関連で学習内容の達成が論じられていないのである。山口(1994). は,学習障害の読み書き障害の例をあげ,原因の追究よりも,困難な学 習の詳細な検討とそれらの発達による変化や経過の把握の必要性を述べ ている。. 山口(1985)は,ピァジェがいう認識機能における操作的側面と形象 的側面の区別の導入により,子どもの行為の発達を量的なものから質的 な問題として捉えようとし準。この硬究では,身振りの模倣検査(Ber− ges,」.et Lez蟄e,1.,1963,1977)を使い,形象的側面を表す特徴や操作 一2一.
(5) 的側面の非鏡像や動作の可逆性の出現を分析することにより,この検査 の有用性を論じている。また,幼児期は多動であり,学童期では極端な 不器用,描画・構成障害,身体図式などの学習障害のため,集団不適応 をきたすようになった症例の形象的側面の発達を分析している。この症 例では操作的側面に比べ,形象的側面の欠陥が認められている。このよ うなピアジェの認識の操作的,形象的側面に関する研究では,失語症 (Inhelder,B., & Siotis,E.,1963,Ajuriaguerra,J.de et al.,1963) ,. 運動統合障害児・視覚障害児(schmid−Kitsikis,E.,1973),精神障害児 (lnhelder,B.,1966,1971)に関するものがある。これらの研究では共通. して操作的側面に比べ形象的側面が劣り,操作的側面は形象的側面とは 比較的独立して発達していることが示されている。また,Ispanovic Radojkovicら(1982)の行為障害児の研究では,形象的側面の心像,空 間情報に関する検査の問題が大きかったことを指摘している。また,保 存の操作はほとんどの行為障害児が失敗しており,非連続量の保存より 連続量の保存の方が問題が大きかったという。. 学習障害の診断では量的評価が中心であり,子どもの間違い方や内容 の検討が不十分であるといえる。このピアジェ型検査を導入することに より,学習障害児の発達においてできることが増えるという量的な捉え 方から,質的な転換の問題として捉えられるのではないか。 また,神経. 心理学検査からだけでは学習障害児の問題把握が不十分な症例に,この ピァジェ型検査を実施することにより,症児の問題が質的に捉えられ, 問題が明確になるのではないかと考えた。. そこで,本研究では学習障害を疑われる子ども10例に対してピアジ ェ型検査を実施し,彼らの認識能力の操作的側面と形象的側面を分析す. る。この分析を通して,2つの側面の発達のずれや互いの発達において 一3一.
(6) 影響しない面など,両者の相互関係を明らかにする。また,神経心理学. 検査をも実施し,2つの側面の発達のずれとの関係を検討する。そのこ とにより,学習障害児の発達の質的展開の検討を行い,学習障害児の評 価のあり方と指導への示唆を得たい。. 2.認識の操作的側面と形象的側面について ピアジェは,認識を操作的側面(aspect operatif)と形象的側面( aspect figuratif)とに分けている。操作的側面はものの変換と関係し. た認識で,活動を内面化したり,現実を変換したり再構成したりするこ とによって対象に働きかけ,外界に適応するための知的活動である。形 象的側面は, ものの知覚的,物理的特徴の認識で,事物の形態そのもの に密着したままで,主体にとっては,現実の「写し」のように見える「認. 識形式であり,知覚,模倣,心像の3つが含まれる。ピアジェは,形象. 的側面は2歳から5歳までの「前操作的」思考のなかでは,変換を犠牲 にしてまでも優位な位置を占めるという。.具体的な例として,連続量保. 存の欠如をあげている。つまり4∼6歳児は,同じ量の液体がより.高く より底の狭い容器に移された場合,高さと底の広さという諸変換のシス テムによっては推理しないため,液体量が増えたと判駈するのである。. この形象的側面は実在の状況を変換するのではなく,生活体の方を修 正してその状況の形象的側面に従わせようとする。つまり,この形象的 側面は操作的側面の中に埋め込まれており,それと共にひとつの全体を 形成しているのである。また,操作的側面は形象的側面とは比較的独立 して発達していることが示されている。. 知活動の諸側面と諸段階を概形的図式で示したのが図1である。. 一4一.
(7) 知活勤の諸側面. 操作性の諸段階 操儒[誌そ’の’熊的’ ・・・・… @ 感覚一運動 @・・… 前操作酌 一一. /i. ’猟. 形象性 図奮. h[襟綴三. 知活動の賭側面と諸段階の図式的概形. 図の右衡に記入した4つの事項は,操作性知活動に特有の発達諸段階 に,対応するものである。それと違って,知活動の形象性側面には本来 固有な発達はなく,操作性の発達段階に深く依存し続けるのである(矢 印で表してある)。. 一5一.
(8) II.研究の方法. 1.対象児 対象児は認知能力の偏りが原因で学力の習得困難が見られ,対人的な. 社会的能力の低い10例である。年齢は8歳から13歳までであり,全 員男児である。症例については結果で詳しく述べる。. 2。検査 ピァジェ型検査について (1)操作的側面検査. 操作的側面検査は,以下の5つである。. 10本の棒の系列,交叉分類,クラス包括,天秤の釣り合い,ことばの 推移率 (2)i操作的側面検査の方法. ①10本の棒の系列 a.検査用具. ・棒A群10本(8mmずつの差がある) ・棒B群 9本(8mmずつの差がある) b.検査方法 ・まず,A群を机の上に出し,バラバラに立てて「いろいろな長さ の棒があります。長い順に並べて下さい」と指示する。. ・その後は子どもに任せ,子どもの並べるのを観察する。. ・10本で系列化させることができた子どもには,B群の9本を渡 し「ここにもあるのを忘れていました。全部で1列に並べて下さ い」と指示する。課題の意味が把握できないときは,理解できる ように十分に説明した。. 一6一.
(9) ②交叉分類. a.検査用具 ・乗り物の描かれた8枚の絵カード。 乳母車,ワゴン,ショッピングバッグ,自転車,スクーター,乗 用車, トラヅク,バイク. b.検査方法. ・「よくあうもの,似ているものを一緒にして下さい」といって自由 分類させる。. ・4つに分類させる。 ・2つに分類させる。 ・別の方法で再度4’分類 させる。. ③クラス包括. a..検査用具:・茶色のビーズ 18個・白色のビーズ 2個. ・1辺10cmの正方形の箱4個 b.検査方法. 予備検査 ビーズの箱のそばに空箱を2つおいて「茶色のビーズをこ の箱の中にいれると,箱の中にビーズは残りますか」と聞く。. 検査a 「茶色のビーズで作るネックレスと木のビーズで作るネヅクレ スとでは,どちらが長いですか」と聞く。. b そのわけを聞く。 ④天秤の釣り合い ・・…・・=三==コ. a.検査用具 図2のような天秤を用いる。横棒には支点. 口日口 ]. 日巨1日. からの距離を示す1∼10の目盛りが打つ てある。同じ重さのさのおもりを6個。. 一7一. 図2 天秤.
(10) b.検査方法. ・6個のおもりで釣り合うようにする。 ・3個のおもりで釣り合うようにする。. ・一方の10におもりを吊るしておき,. 2個のおもりを渡し釣り合う. ようにする。. ⑤ことばの推移率 a.検査用具. 以下のような問題の書いてある用紙。 .1,花子さんは,もも子さんよりも働・高い。. もも子さんは,よし子さんよりも背が高い。. 3人のうち誰が一番背が高いですか。 2,太郎くんは花子さんより大きい。花子さんは次郎くんより大き い。誰が一番大きいですか。. 3,赤い自動車は青い自動車より速い。青い自動車は黄色い自動車 より早い。どれが一番早いですか。. 4,赤い家は黄色い家より大きい。青い家は赤い家よりも大きい どれが一番大きいですか。. 図3 ことばの推移率問題用紙 b.検査方法. 図3の用紙を渡し,問題文を読んで答えを出すように言う。 (3)形象的側面検査. 形象的側面検査は以下の5つである。. 3つの山の検査,山に木と家の図検査,水の水平面の検査3個の玉の 軌道検査,管の軌道検査,身振りの模倣検査 (4)形象的側面検査の方法. ①3つの山の検査 一8一.
(11) a。検査用具. ・一辺52cmの正方形の緑色の板1枚。. ・円錐 大(底面の直径20cm,高さ11.5cm,赤色) 中(底面の直径14cm,高さ 7。5cm,青色) 小(底面の直径 9cm,高さ 5cm,黄色). ・人形:1個(高さ約3cm) ・山の写生図:9枚。検査では各問題で組あわせたものを5種用いる。. ・B6画用紙:7枚 b.検査方法. 予備検査1. 緑色の板の所定の場所に3つの山を置き,被験児をAの所に座らせ る。A地点に人形を置き,人形が写生したものとして,3つの山の 写生図をカードに描かせる。写生図が傭鰍図になっている時には, 被験児をしゃがませ,目を人形の高さにして,写生図を描かせる。. 予備検査2. 被験児をAの所に座らせたまま,写生図A(図版1),D図(図版 2)を提示し,人形がAから写生した図はどちらかを選ばせ,その 理由を問う。. 検査1 ・被丁丁をAに座らせ,人形は:F地点に置き,由の写生図を被験児の 右から,G, A, D, F, Hと並ぶように提示し(図版3),F地 点からの写生図を選ばせる。. ・被験児A,人形C:地点,図版4(E,C,:F, A, B)。. ・被験児E,人形B地点,図版5(B,1,E, D, A)。 検査2 −9一.
(12) 被験児をAに座らせ,白紙カードを与え,人形をC→F→B→E→ Dに置き,人形から見た写生図をそれぞれ描かせる。 (i A ロ. B. F≦9・. ξ 黹?iー一一. 、. 「. げ. ノ. \ !・; 『−} 巨. 図4. D. 3つの山の検査. ②山に木と家の図検査 a.検査用具. ・B4大の画用紙 ・鉛筆. ・. b.検査方法 、・画用紙に大きな山を描いてやる。. ・「ここに山があります。山の中腹に,木と家を描いて下さい」と指 示する。. ・頂上に描こうとする場合には,垂直を暗示させないようにして,中 腹を漠然と指して,描かせる。. ③水の水平面の検査 a.検査用具 }. ・広ロビン1個 ・画用紙と鉛筆 b.検査方法. ・ビンに水を入れ,垂直にして,写生させる。. ・ビンの水は皐全に捨て(残っているとヒントになる),ビンを斜め に保持し写生させ,水が入っているとどうなるかを描かせる。 ・ビンを横にして,同じく水を描かせる。. ③180度回転する棒に固定された3個の玉の軌道検査 一10一.
(13) a.検査用具. ・棒に赤(R),緑(G),白(W)の順に通した3個の玉 ・不透明な筒 b.検査方法. ・棒に通した3個の玉をそのまま模写させる。. ・3個の玉を不透明な筒に入れて,水平に180度回転させどうなつ たかを描かせる。. ・全問で動いた3個の玉の軌道を描かせる。. ・子どもに赤,緑,白の玉を1個ずつ渡し,身振りでその軌道を再生 させる。. ・3個の玉をもう一度水平に180度回転させ,玉の軌道を描かせる。 需,赤. 図5. 3つの玉の軌道検査. 図6. 管の軌道検査. ④空中に半回転落下する管の軌道検査 a.検査用具. ・長さ15cmのボール紙製の管。その管が箱からはみ出した部分を赤 i. 色に塗る。 ・管をのせる箱。 b.検査方法. 管を箱の上にのせ,子どもに「あとで見たことを絵に描いてもらうか. ら,よく見ているように」と注意してから,管を180度回転落下さ せる。落下後,管は取り去る。. 鋳 ・箱の上にあった時と,落下後と管の絵を描かせる。. 一11一.
(14) ・落下コースの各段階の描画を「少し落ちたところ」 「もう少し落ちたところ」といって描かせる。. ・管の先が箱から机に着くまでの軌道を描かせる。. ・管の落下運動を,子ども自身に身振りで再生させる ⑤身振りの模倣検査 検査方法. 検査者は,被験児と1メートル強の距離を開けて向かい合って立ち,. 被験児によく見えるように,ゆっくり手本を作り,約10秒間手本を 提示する。. 検査は以下の3種を行う。. 1 簡単な身振り(1∼20) 1’反対の検査. II 複雑な身振り(1∼16) 「反対の検査」は,腕の簡単な身振りをすべて鏡像で行った児童にのみ. 施行する。項目11番を示しながら,その「反対」をするように言う。 鏡像になれば教え,理解できれば続ける。. 一12一.
(15) 操作的側面,形象的側面課題の達成水準. ピアジェの論文より2つの側面課題の達成水準を以下のように考え,ピ ァジェ型検査結果表(表⊥)を作製した。 表1ビァジェ型検査結果. 形象的側面. 操作的側面 身,. 押. 10物棒. 飯頒. クラス臨. 4. 5. 天税触. こと瞭㈱. 1. 三. 3つ曲. I L. I. 1i. II. G. 粗lil. [lil I”. 3この玉. 孟Ul∴.. i.11.1!’. li,1一.[一IL. 欄き. It. II. 聾a. 7. rv. 8. ipllUI1. IU zas. ,1”ll]. v. 囮a. 9. 一一一・一一一一. P V =一”一. 恥 10. {1. 膵==一r. 譜. 12. ’『. 13. 。脂水* %勲あ無そい名王言…. v 14. !. 1,操作的側面課題. ①10本の搾の系列 水準1(5−6歳) 全く系列化できない。全体におかまいなしに小さい系 列を部分的につくる。 (棒の下部には気がつかないで,. 棒の全長を無視する) 水準II(6−7歳〉 試行錯誤に依って,正しい階段が作れるようにはなる. が,まだこの試行と錯誤とを支配する関係を発見する ことはできない。あとから余分の棒を誤りなく途中に 一13一.
(16) 挿入することは失敗してしまう。 水準III(8−9歳). 各要素をそれに先行する要素より大きく,同時にそれ に続く要素より小さくなるような位置に並べられるよ うになる。 (系列化を正しく体系的に行う). ②クラス包括 水準1〈6歳まで). ある類を別の類の中へ包摂したり,全体類は部分類よ り大きいとかたくさんあるということが理解できない。 (クラスはいつもその部分である下位クラスよりもた くさんの要素を含んでいるということ1を理解していな い). 水準II(6−7歳). 正しい答を演繹的ではなく,直観的に発見する。すな わち直接的な合成ではなく,試行錯誤的に正しい構成 を行っていく。 (直観的に正しく答える。最初茶色が. 木よりも長いと答えた。茶・自のビーズは木でできて いると思いだし,それを使って考える。) 水準蓋涯(8歳). ただちに,自発的に正確な加法的合成や,包摂関係を 発見する。. ③天秤の釣り合い 水準1(3−5歳). おもりをどこにでもつけるので,釣り合わすことがで きない。. 水準II(6−8歳). 平衡:両側におもりがいること,両方のおもりは大体 同じ重さでなくてはならないことに気づく。おもりを 加えたり,取り去ったりするが,厳密に等しくするの ではなく,次第に正しくする。. 距離:子供は中心から同じ距離の所におもりをつける。. 一14一.
(17) 水準III(7−8歳) 重さと距離をうまく組み合わせることはできない。. 重さ:両方の重さを等しく,その加法性を把握する。 距離:対称性と距離の厳密な加法性を理解する。 a)重さを序列化し,重さの等しさを決定できる。 b)重さを加えたり過程の可逆性を把握する。 c)重さの組み合わせを比較する。. d)重さが等しいか等しくないかという関係の推移性が 利用できる。. 水準W(11歳) 平衡:重さが等しくないときは,量的に対応させて距 離をかえればよいという平衡を得る。 (重い=中心の 近く). 重さの定量化:子供はB=2A等を理解し,天秤の竿 の穴の数で距離がわかる。 水準V(13−14歳)おもりを両方に同時に避ける。 ;P/P=:L/1.とい. う比例関係の法鋼と距離と重さが補いあう仕組みを理 解する。 (Pは重りの重さ,:Lは視点からの艶離). ④交叉分類 水準1(5歳). 対の類似性や単にそれが好きだからということで,小. さな1列を作る 水準II (5−6歳〉. 類似性にのみ基づいて集合がつくられる。. 水準II互(6−7歳). 2つのクラスを正しく連続的に分類するが,多重交叉 の単一の体系に依って,分類したものを結合すること ができない。. 水準IV〈7−8歳). 2つのクラスに連続的に分類する過程で,2つの基準 が含まれることを発見し,交叉分類の統合的体系を形. 一15一.
(18) 作る。クラスをうまく作る。. 水準V(8−9歳) 対象の可能な分類基準を次々に見つける。もはやマト. リックスの形の一つの体系にそれらを結び付けるのは 不可能である。. ⑤ことばの推移率 水準1(10歳まで)課題に正当できない。. 水準II(11歳以降)課題に正答できる。 (2つの前提を協調させて結論を. 導くことができる。). 2,形象的側面課題 ①空間観念の発達 1.山に木と家の図検査・水の水平面の検査. 水準1(4−5歳) 平面の概念がない。水面を描くとビン内の水のかたま. りらしきものを描く。山の絵・・屋根を線で抽象でき ないので,山を背景にしてそこに人をかきいれる。尾 根上に人を立たせられない。 水準Ila(5歳). 水面が直線であることに気づく。しかし,水面はビン が傾くと一緒に動いてしまう。山の尾根に対して垂直 に描くという,ある一一一一一定の規則だった描き方が現れる。. IIb(6歳). 水面が常に底と平行であ弓と考えなくなり,何かの参 照点と水面との関係を見つけようとする。山腹に垂直 な木を描いてしまう。. II b一一 III a. (6−7歳). ビンの側面に自ら定規をあてて,水面が水平であるこ とがわかる。しかし,水平な水面が描けない。ビンが 横に置かれた場合に限って水面を水平に描く。. 1Ha(7歳). 水面を常に机と結びつけ,ビンの傾きとは無関係であ. 一16一.
(19) ることをついに発見する。垂直軸も同様である。 III b(7−8歳). 即座に水平や垂直がわかる。このようん実験事態を離 れても水平・垂直にものを置き位置ずけることができ る。. 2.3つの由の検査 zk準1 (6歳まで). 子供は問題を理解しない。. 水準Ila(6−8歳). 人形の位置がどこであろうと,自分自身が見えている ものと同じものを見ていると考える。. 水準IIb(7−8歳). 子供の構成は自分の視点に従っているが,視点の変化 を少しずつ表現しようとする。 (人形の位置からは,. 自分の位置からとは違った面が見えることに気づくの だが,知らずしらずのうちに自分の視点に影響される) 水準III a(8−9歳). 子供は人形の位置に応じて内在関係を変形する。’. q供. はまだ左右関係をいくつか誤る。 (関係が把握されは. じめてくるが,前にある2つの山の関係は捉えられる が,後方にある出は右に見えるかまん中に見えるかは かまわない). 水準lll b(9−10歳)他の観点から見たところを正しく予期することができ. る。3つの山の申での前後,左右関係をみとめ,さら に自分の視点と他人の視点を協調する。 ②心像. 3.180度回転する棒に固定された3個の玉の軌道検査 水準1(5歳) 1回の位置の回転の理解ができる。. 軌道:交叉したものが多い。直線状,半ば四角形,非 相称的な曲状である。. 一17一.
(20) 水準II(6歳). 軌道:方向,まん中の玉,曲線軌道について,明瞭な 進歩がある。. 主な誤りは,相称の欠如である。 水準III(7−8歳). 両端の玉の移動を,たとえ一部牙でも相称の水平軸に 対して説明させようとする。. 水準IV(8歳). 中問の玉はそのままの位置に留まることがわかる。 軌道:方向を闘違えずに描ける。. 水準V(9歳). 両端の玉の一つが水平軸の一方向に半円形を描いたと き,もう一つの玉はそれと反対方向に半円形に描く。 (両端の玉は互いに逆方向だが,相称的な軌道を動くと いうことがわかる). 4.空中に半回転落下する管の軌道検査 水準1〈4−5歳) 動作的再生:回転の欠如である。. 管の両端の軌道:回転しない。 水準II(6−7歳〉 動作的再生:回転を概略的に思い描くが,それを実現. するのに至らず,その解釈に満足している反応や,不 満足な試みで不満を表明する反応である。. 管の両端の軌道:2本の軌道とも不正確かもしくは1 本の軌道のみ正確に描ける。 水準III(8−9歳) 勢作的再生:正確な回転でもって再生することができ る。. 管の両端の軌道:2本の軌道とも正確に描ける。 ③模倣. 5.身振り模倣の検査. 水準1〈4歳) 身振りは断片的に作られる。形象的側面が優勢である。. 一18一.
(21) 子どもの注意は両手の関係のみに留まり,手と躯幹と の空間関係にまで広がらない。 水準II (5歳). 身振りは一挙に作られる。作られてしまった身振りの. 形態のみにとらわれず,身振りが作られていく1つひ とつの形を表象の上で喚起できるようになる。 水準斑(6歳). 鏡像反応が減少し,非鏡像反応が多くなる。可逆性を 獲得する。自分の左右を認知することができる。指の 認知がより一層発達する。. 一19一.
(22) 神経心理学検査について. 神経心理学検査として,WISC−R知能検査, ITPA言語学習能 力検査,絵画語彙発達検査,復唱検査,ベンダー・ゲシュタルト検査, 人物画, *ピアジェ・ヘッドの「左一右」の検査, *微細運動の検査,. *手指の触知覚検査,*リズムの検査,読み書き検査,算数検査を実施 した(*は資料添付)。ここではベンダー・ゲシュタルト検査,人物画, 「左一右」検査,読み書き検査を簡単に説明する。. ①ベンダー・ゲシュタルト検査. a.検査用具. 刺激図版9枚,A4の画用紙, HBの鉛筆。 b.検査方法 ・A4画用紙を子どもの前に,縦長に置く。 ・「これから9枚の図を見せますので,この用紙に手本と同じように 描いて下さい」といって,画用紙の上方に手本を置き,画用紙の中 央に鉛筆をのせて,検査を開始する。. c.採点. ②人物画検査. a.検査用具 A4の画用紙, B 4の鉛筆. b。検査方法 ・「人の絵を描いて下さい」と指示する。 これだけでは分からないこ. とが多いので「∼君の絵を描いて下さい」「全部描いて下さい」と つけ加える。. ・頭とか顔とか胴体とか,描く内容を暗示するような指示はしない。 一20一.
(23) c.採点. ③ピアジェ・ヘッドの」三一右」の検査 a。検査用具「. 記録用紙,マッチ,鍵,時計,人が手を目や耳に持っている図版8 枚。. b.検査方法 ・検査者と被験児とは机をはさんで向かい合って座る。. ピアジエ検査の項目の5∼10では,子どもに腕を組ませ,手,腕, 頭を動かしてはいけないことを注意しておく。できるだけ早く答え るようにいう。. ・ヘッドの検査では,検査者の模傲の第1,第2の項目を施行して, 鏡像反応を示す場合は,鏡像反応は誤りであることを理解させる。. 第3項目以降は鏡像になってもそのまま続ける。. ④読み書きの検査. a.検査用具 読み,視写の問題用紙各1枚,聴写の検査者用紙1枚,聴写,視写 の記入用紙各1枚, Bの鉛筆,ストップオッチ。. b.検査方法 ・視写の検査. 視写の記入用紙と鉛筆を子どもの前に置き,その上側に問題用紙を 置く。 「ここから(問題文の始めを指す)ここまで(文の最後を. 指す),同じように書いて下さい。消しゴムは使わないので,間違 つたときは,間違った所に線を引いてその下に正しい字を書いて下 一 21 一一.
(24) さい」. ・聴写の検査. 聴写の記入用紙と鉛筆を子どもの前に置き次のように指示する。. 「今から私が文を読みます。それをよく聞いて,同じ文を記入用紙 に書いて下さい。消しゴムは使わないので,間違ったときは,間違 つた所に線を引いてその下に正しい字を書いて下さい。知っている 漢字があれば漢字で書いていいですが,分からないときはひらがな で書きなさい。一度しか言いませんから,よく聞いて下さい」とい って問題文を読む。問題文の斜めが入っている所までゆっくり読ん だ後,子どもに書き取らせる。この要領で最後まで実施する。 ・読みの検査. 読みの検査用視を子どもの前に置き, 「ここに書いてある文を大き. な声で読んで下さい」と指示する。子どもが読み終わったら,その 通りに記録する。読み終わった後理解の様子を知るために,内容に ついて, 「誰といきましたか」 「どこへいきましたか」 「どんな動. 物を見ましたか」と質問し,答えを記録する。. 一22一.
(25) III.結果. 1。ピァジェ型検査結果の概要. 操作的側面課題の年齢相当達成率は,78%であった。具体的操作段 階課題においては,群性体1のクラス包括の達成率は80%,群性体III. の交叉分類の達成率は60%,群牲体Vの10本の棒の系列の達成率は 100%であった。形式的操作段階課題においては,天秤の釣り合いの. 達成率50%,ことばの推移率の達成率100%であった。形象的側面 課題の年齢相当達成率は,30%であった。空間概念の達成率は20%,. 心像は30%,模倣は50%であった。 以上より,2つの側面の年齢相当達成率から見てみると形象的側面が 劣っていることがわかる(X’=10.67,df=9.p<01)。操作的側面課題で. は,交叉分類と天秤の釣り合いの達成率が良くない。形象的側面課題で は,空間概念と心像の達成率が大きく落ちこむ。. 操作的側面と形象的側面の相互関係を検討するため,10例の操作的 側面課題において,年齢相当に課題が達成できた数で分類を行った。A. 群は5題とも達成できた症例4例(5/5),B群は4題達成した症例1例 (交叉分類が達成できない,4/5),C1群は3題達成した症例3例(交 叉牙類,天秤の釣り合いが達成できない,3/5),C2群は3題達成した 症例2例(クラス包括,天秤の釣り合いが達成できない,2/5)である。. 表2より操作的側面課題の達成率が低くなると,形象的側面課題の達成 率も低くなっていることがわかる。. 10例のピアジェ型検査結果より,操作的側面に比べ形象的側面が劣 ることが指摘された。その中で詳しく検討してみると,この2つの側面 において差の大きい群(1群)と差の小さい群(II群)に分けられた。. 差の大きかった群は,表3における症例1,2,3,4,5であり,差. 一23一.
(26) の小さい群は症例6,7,8,9,10である。 以上量的な差を検討してきたが,次にそれぞれ1群,II群の症例を詳 しく述べ質的に検討を加えていく。 麦 2 諜題ヒおびる年齢粗爵達虞宰 隔. A群 B群. 曹 C躍. モP群. 760. 100 1 80. 操作的側面. 一. 60. 40 1 20 1 26 1 20 1(o/.). 衷3 2つの側而の逮成状況. 「. 26. 2G. @:鴨m継威Xl鴨柵靴舩越な、1. 皇TT一一一 一. 2KS一一. 3. 4. Jr. tlS. H1’. IK. c}. 7. 8. 9. TK. TT. TS. 0T. 具体的操作 1嘘. 群性休VlO木の樺の系列. lz−8一 一 『. 13−Z. 脚. 口→o lト覧1 lレll. 9一一C. !g,:f!一91.!!tl:一IB... @. @. @. @. @. @. @. @. @. ×. @. @. @. @. ×. ×. @. @. @. ×. ×. 天秤の釣り合い. @. ×. ×. @. @. ×. ×. ことばの推移串. @. @. @. @. @. @. @. ×. ×lx. @. @. ×. @. ×. ×tx ×ix ×IX ×IX. ×. ×. ×. ×. @. ×. ×. ×. @. ×. @. @. @. @. @. ×. ⑥@⑥@◎. 1クラス色括 lll交叉分類 形式的操作. 形象的側面. 三間 空閻観念. ××××◎. 3つのtll 心像 3個の玉. ×. 管の軌道 模倣. ×. 身ぶり模倣. @ } 一. } ”. 一24一.
(27) 2.2つの側面に差の見られた症例について. (1)症例1 T。T.. 1984年2月生まれの男児,10歳2カ月。小学校の普通学級5年 在籍,両親と二人の弟と5人家族。 ①生育歴. 妊娠中は異常なく,41週で出産し,体重は2950gであった。分 娩時は異常なく,その後の運動・言語発達は順調であった。4歳’頃,数. 字やアルファベッドに関心が強くなりすぐ覚えた。ただし絵は描こうと しなかった。4歳で幼稚園に入るが,落ちつきがなくいつもうろうろし. ていて,マイペースな行動が目立った。5歳になると友達もでき活発に 遊ぶことができた。小学校の1年の遠足では,担任がいつも手をつない でいないと列を外れて気になる方へ行ってしまったり,しっかり歩けな い状態であった。. ②集団生活. 身の回りの肇理整頓ができない。勉強中にいろいろな指示を出しても, すぐにはできない。気になることがあると,弛のことが手につかない。. 例えば1時問目の作文が半分しかできていないと,2時間めの算数は手 につかず落ちつかなくなる。ゲームの時はルールがのみこめない。以上. のようなことが2年生の頃見られた。5年生の時は,いつもの日程や内 容が変更になると不安になってしまい,自分の納得いくまで説明を受け ようとする。柔軟性もなく自分の思いにこだわってしまう。グループで の話し合いでわからなかったり,ルールの理解ができないとその場を逃 げてしまうことがある。例えばグループ討議の時準備ができていなくて も話し合いに参加し意見をいうので,回りから注意されると気にいらず ぶつぶつ独り言をいうというようなこともあった。. 一25一.
(28) ③学習. 2年生の頃,作文は苦手であり2,3行書くのがやっとであった。特 に自分の気持ちは書けなかった。絵を描くときは,パレットがうまく使 えず絵の具の色が混ざったりした。絵の具が手につくと気になって手を 洗いにいくことの繰り返しであった。バランス運動が悪く,体操での手. と足を違う動きにするときはできなくなってしまった。5年生の頃,教 科の中での理解はよく,担任が少し授業中手助けするとわかっていく。. 家庭科では,初めて習うことに抵抗があり,床に転がっでできないとい うことがあった。また,家庭科での服のデザインを描くとき思った通り. のイメージで描けないと満足できずにいやがった。整理整頓が現在もで きない。作文は苦手である。. ④ピアジェ型検査(操作的側面,形象的側面課題)結果. a.操作的側面課題 操作的側面課題では,全部年齢相当の達成を示した。. b.形象的側面課題. 3個の玉の軌道検査では年齢相当の達成であったが,空間観念・3っ の山・管の軌道・身振り模倣検査では年齢相当に達成できなかった。そ こで,それぞれの検査結果を質的に検討していく。 71〈. 酌. ξL{一. め. 、. ,. 図7. 山に木と家の図検査. 図8. 水の水平面の検査. 山に木と家の図検査では,家は図7のように正しく垂直に描いていっ た。水平面の検査では,図8で示されたようにビンが傾くと一緒に水面 一26一.
(29) も動いてしまった。つまり,水平の理解は難しいが垂直の関係把握は可 能である。. 3つの山の検査では,図版選択において乳児が場所移動すると,元の 場所の見え方に左右されてしまう。描画では,前後の山の位置関係は把 握できるが,前の2つの由の左右の位置関係を間違えることがある。 管の軌道検査では,落下前落下後の管の描画は正しく,動作的再生も. 正確にできている。しかし,管の両端の軌道は2本の軌道とも1回転し ており,正しく描画できない。それに対して,3個の玉の軌道検査では,. 位置の心像の理解ができ軌道の描画においても相称,方向とも正しく表 すことができる。. 図 六. 版. F幽 C亀. 描. 三. A→三 B. ?△. 璽 夏 也. 曲. @. 図9. 落下靴落磯. △鼻 3つの山の検査結果. 各段階の馳. 三塁甦. 噸鵬. (、、. R. ,. 管の輔魎. k』. 葡[]_ 、ノ 圃. 箱から落ちた。. って落ちた。. 図10 管の軌道検査結果 身振り模倣検査では,簡単な身振りにおいてまず鏡像で模倣してから 非鏡像で模倣していく。複雑な身振りでは,手の甲と掌の区別が難しく. 一27一.
(30) 掌を検者に向けて模傲する。つまり,依然として身振りの模倣の操作的 側面が不安定であり,事象の外観にとらわれやすいという形象的側面が 強い。. ⑤神経心理学検査の結果. 10歳3ヶ月時のWISC−R知能検査では,全IQが129,言語 性IQが133,動作性IQが119である。理解と積木模様が低く検 査項目間のバラツキが見られた。絵画語彙発達検査(10歳3ヶ月:以 下特記していない検査は10歳3ヶ月に実施したものである)は発達年 齢12歳以上であり年齢以上の発達を示している。復唱検査は発達年齢. 7歳以上となり年齢相当と考えられる。このことは,WISC−R検査 結果と同様で言語面には問題がないと考えられる。微細運動検査は,立 位・歩行,腕伸展,ディアドコキネジア,開口,口笛,舌の運動,頬を ふくらませる,片目閉眼,指一鼻試験,栂一指検査を行った。ディアド コキネジァや揖一指検査において,左手回転時や左手を動かしていると きに,右手に連合運動が見られた。また,腕,指の動きにスムーズさに. 欠けた。それ以外に問題は認められなかった。人物画は,自分の髪の毛. や目,鼻,口など1つ1つ手で触ってから描き,手や足は見て触ってか ら描いていく。自分に関するイメージを現実の自分とをできるだけ近い. ものにしようとしているのである。発達年齢は9歳であり耳が描かれて いない。ピァジェ・ヘッドの「左一右」の検査は,自己・相手の左右,. は正しく答えられたが,相手の左右の場合は自牙の左右を確認してから. 答えていた。3つの事物の関係では始めは左右間違って答えてから,し ばらく考えて正しく答えていた。手一目一耳検査では模倣検査は全て正. 解しているが,口命検査では15問中9問の正解であった。手は正しい が目,耳の位置を間違う。図版検査では同側課題を1回鏡像で反応した. 一28一.
(31) 他は正解できている。読み書き,算数検査に問題は見られなかった。 ⑥小括. 学齢期では柔軟な思考や対処ができず,対人関係の問題を示した。学 習では,作文が苦手であり協応動作のまずさが見られた。. 神経心理学検査では結果が良好なものが多く,本児の問題としては左 右の理解,連合運動の存在,人粉画の描きにくさであり,大きな問題と はいえなかった。しかし,ピアジェ型検査では,操作的側面に比べ形象 的側面の遅れが大きく,空間関係の表象や予見的心像で遅れが見られた のである。神経心理学検査からは,本例の問題は把握しにくかったが, ピアジェ型検査より問題が明確になっていった。. 一29一.
(32) (2)症例2 K.S。. 男子,1981年5月生,12歳8カ月,小学校の普通学級6年生在 籍,両親と4年生の弟と2年生の妹との5人家族。 ①生育歴. 妊娠5カ月の時,切迫流産のため一週間入院した。牙娩中は微弱陣痛. にて切迫仮死。40週で出生し,体重は2830gであった。発達は定 頸3カ月,座位6カ月,ハイハイ8カ月,.始歩1歳,初語1歳6カ月,. 2語文3歳であった。2歳11カ月で童謡を口にし,3歳2カ月で絵本 を丸覚えした。普段から表情を変えることがなく,母親が呼んでもすぐ. に答えなかった。4歳で保育園に入園したが,自由遊びの時は一人で遊 ぶことが多かった。 「水道」と聞けば以前に見たことのある絵本の中で. 水道の出てきた文章を話した。このように絵本が本児とのコミュニケー ションをとる方法であった。. ②集団生活. 1年生の頃,友達の名前が覚えられなかった。話すときも人の顔を見 て話そうとしなかった。授業中は自分の意見が言いたくて,あててもら うまで手を上げ続けた。時間割が変更になったり,自分の思いと違った. 進み方をするとパニックに陥ることが多かった。2年生の時は,集団遊 びにおいてルールの理解が難しかった。相手の気持ちを察することが苦 手で,そのことが原因で友達とトラブルをおこしがちであった。未経験 の事態に対してどの様に対応すればいいのかわからず混乱してしまった。. そのほか整理整頓ができなかった。6年生になっても物がそろわなかっ たり忘れ物をしたりすると,どうしてよいかわからなくなってパニック に陥るが,その回数も減ってきた。また教師の声掛けで落ちつけるよう. になった。5年生までは,悪いことをしている人を見たら注意しないと. 一30一.
(33) 気がすまなかったのが,そんな人もいると納得するようになってきた。 ③学習. 漢字がなかなか覚えられない。学習したことをよく忘れる。例えば分 数のかけ算やわり算をやらせてみると,全くできない。そこで教科書を 出してきて見直し,個別指導をすると分かっていくが,またすぐに忘れ てしまう。. ④ピァジェ型検査(操作的側面,形象的側面課題). a.操作的側面 操作的側面課題では,全部年齢相当の達成を示した。. b.形象的側面 身振り模倣検査では年齢相当の達成であったが,空問観念・3つの山 ・3個の玉・管の軌道検査では年齢相当に達成できなかった。それぞれ の検査結果を質的に検討していく。. 71〈 平. 斜 ab. fi3. 種. .一.一〉. ⑪ 図11. 山に木と家の図検査. 図12. 財\. r諭. 水の水平面の検査. 山に木と家の図検査では,斜面に対して支えを描いてからその上に家 を描いていくが,木の場合は山の背後に浮くように描いている。水平面 の検査では,水面はビンの傾きと関係なく水平であることがわかる。す なわち,水平の関係把握はできるが,垂直の関係把握は不安定である。 3つの山の検査では図版選択は,全て正しく選択できる。描画では,. 前後の山の位置関係は把握できるが,前の2つの山の左右を反対にする 時がある。一度本児自身が分からない時がでてくると,それを解決しな. 一31一.
(34) いと次に進めない。何度も人形の立っている地点へいって確かめようと する。. 図. 版一. 桶. 画. c亀. 蕪. Fぬム. B△4△ 匠△△ Pな△. 警 貧. 船岡救,四四. 加繍度,琴・清.. 点㍗班.. 聞納一}荊. ◎ L..’. 図13. 3つの山の検査結果. 3個の玉の軌道検査では,位置の心像は理解できているが,軌道の描. 画では相称は正しいが方向を間違う。360度回転後になると正しく描 画できている。軌道の心像も動作的再生も方向を間違ってしまう。それ は,課題の提示の際に注意がそれるためだと考えられる。. 鴎後. 才購。 施×. 囎. 360度臨後の蠣. 動三三. 軌道の描画. Φ ,⑱α). 畷描写. )⑤鞭)・. 〃ミし. `鰯. 普通に]臨しないまま1. V0度⑪所で頭からぶつかる Dく)@Cp. 図14. 訊. 3個の玉の軌道検査結果. 管の軌道検査では,落下前,落下後の管の描画は正しく描けている。. 各段階の描画は,非常に綿密に細分化した段階ごとの管の状態を描いて いる。管の軌道描画は,赤の端の軌道を遠くに描き黒の端の軌道を手前 に描いてしまう。動作的再生は正確な回転でもって再生でき,口頭描写 も正しくできている。. 一32一.
(35) 落下前と落下後. 管の髄描画. 各段階嚇画. 臥副 kR瞬. 図15. 踏. 動作的甦. 4剛. ?x. 管の軌道検査結果. 身振り模倣の検査では,腕の模倣においてまず鏡像で模倣して,すぐ 非鏡像で模倣する。このことは,依然として身振り模倣の操作的側面が 不安定であることを意味している。. ⑤神経心理学検査の結果. 12歳8ヶ月時のWISC−R知能検査では,全IQが103,言語 性IQが103,動作性IQが102であった。単語が高く,三唱と符 号が低いという検査項日問のバラツキが見られた。絵画語彙発達検査. (12歳8ヶ月:以下特記していない検査は12歳8ヶ月に実施したも のである)は,発達年齢12歳以上であり年齢相当の発達を示している。. 復唱検査は発達年齢7歳以上であったが,ITPA検査において,形の. 記憶・絵の記憶が8歳のレベルであり,WISC−R検査の復唱の低さ と相まって視覚,聴覚の記憶の問題が示唆された。微細運動検査結果は,. ディァドコキネジアにおいて,右手・左手回転時に左手・右手に連合運 動が見られ,腕の動きにもスムーズさに欠けていた。舌の運動では鼻の 下をなめられない。それ以外には問題は認められなかった。人物画(グ ヅドイナフ法)は,自分の髪の毛や目,口,肩,手,足などは手で触っ. て確認してから描いていった。発達年齢は11歳であり,耳が描かれて いない。ピアジェ・ヘッドの左右の検査は,自己の左右は反対であるが, 一33一.
(36) 相手の左右は正しく答えている。3つの事物の左右関係は6間中4問を 間違い,正確さに欠ける。模倣,図版検査は正しく反応しているのに対. して,口命検査は5問を鏡像で反応しそのうち2問は正しい反応に変え ている。算数検査では年齢相当に理解できているが,問題をとばしたり. 引き算を足し算で計算したり,式は合っているが答えを書き忘れたりケ アレスミスが目立つ。読み書き検査では,視写の問違いはないが聴写に おいて省略や置換の誤りが見られた。 ⑥小括. 幼児期には対入関係のとりにくさがあり,ことばの遅れがみられた。. 学齢期では,状況認知が悪く他者の視点に立って考えることに困難を示 し,物事をよく忘れた。知能検査では,能力間のアンバランスが大きく. 記憶の問題が示唆され,左右認知,身体図式の問題を呈している。ピア ジェ型検査では,操作的側面に比べ形象的側面の遅れが大きく,空間関 係の表象と予見的心像の遅れが見られた。視点変換の問題と,状況認知 との関係が示唆された。. 一34一.
(37) (3)症例3 H.S. 男子, 1980年12月生, 13歳2カ月,中学校普通学級在籍,両親, 姉(大学1年),弟(5年生)の5人家族。 ①生育歴. 妊娠中は異常無し,41週,3380gで出生。出産蒔に陣痛促進剤 を使用。その後の発達は定頸3カ月,ハイハイ10カ月,始歩12カ月,. 初語18カ月,2語文2歳であり,2語文が出てからはなかなか広がら ず,対話もできにくかった。質閥してもトンチンカンな答えや,オウム 返しになることが多かった。 「ただいま」を「おかえり」と言ったりし. て,ことばの言い間違いが見られた。小学校に入ってから低学年の問は,. 独り言が多く質問にはオウム返しで答え,ほとんど正しく答えられなか った。話題は連想でつながり,脈絡がなく,相手の話を聞かずに一方的. に話すことが多かった。4年生の時,授業中にドラエもんのせりふを急 に言い出したりしたので,病院の精神科に相談したところ脳波に軽い異. 常があり,軽いLDと診断された。 ②集団生活. 小学校中学年,高学年の時は周囲にあまり関心を示さず,一人で遊ぶ ことが多かった。日常生活では,いつも同じ順序で行動しないと気がす まなかった。同じことを何度も繰り返し話したり,絵を描くときも決ま. った物(マンガ)しか描かなかった。遊びやゲームのルールの理解が難 しく,みんなと協力することが苦手であった。相手の気持ちや意図をく. み取ることも苦手であり,自分の感情をそのまま出してしまったり,自 分の言い牙を通そうとしたりした。すぐに気が散ってしまい集中できな くなってしまった。. ③学習. 一35一.
(38) 小学校高学年の時は,読みの時文字をつけ加えたり取り違えたりした。. 助詞は話しているときだけではなく,書く時も同様によく間違った。走 りのフォームを見ると,手,足や体の動きがぎごちなくロボットのよう であった。 ドッチボールのルールも理解できず,集団でのスポーツは参 加できなかった。. ④ピァジェ型検査(操作的側面,形象的側面課題). a.操作的側面 操作的側面課題では,交叉分類以外は年齢相当の達成を示したので, 交叉分類について質的に検討していく。. 2分類では手動と自動に分け,2回目の2分類はタイヤの数で分類す る。しかし,4分類になると手動と自動の分類からその次にどうするか. わからなくなり,混乱してしまう。つまり,2つのクラスを正しく分類 することはできるが,多重交叉の単一の体系によって分類した物を結合 することができないのである。. b。形象的側面 身振り模倣検査では年齢相当の達成であったが,空間観念・3つの山 ・3個の玉・管の軌道検査では年齢相当に達成できなかった。それぞれ の検査結果を質的に検討していく。. 山に木と家の図検査では,木は正しく垂直に描けているが家は山の斜 面に対して垂直に描いてしまう。水平面の検査では図17のように描き, 水面はビンが傾くと一緒に動いてしまい,常に水平であることが理解で きていないのである。また,垂直の関係把握もできない段階である。. 3つの山の検査では,図版選択において本児が場所移動すると,左右 を反対にしてしまう。描画では,前後,左右の関係は把握できるが,1 つの山と2つの山の関係把握において,1つの山の位置を問違える。. 一36一.
(39) 斜め. 7ド 平. 横. .!=. 9/、堺. 慰ミ. ㌻. 図17. 図16 tli t木と家の図検査. 図 ダヘコ. 踏1. 版.. P幽 c蝕. 水の水平面の検査. 犠署. ハ→を ら. K △. 画. c鉱 F訟 β4. L△△ ρ△△. 顯 ダ 濠. ん・ 、・、一ノ. ◎. @. _. △. p加 図18. r冷へ 蝿黶Hも. ρ(. A(. 諶│、肺{1侵. g一・も. 隔煮→β. 三三∼β. 3つの山の検査結果. 3個の玉の軌道検査では,位置の心像も軌道の心像も正しく表せるが,. 動作的再生になると相称ができなくなり,360度回転後の描画も間違 ってしまう。これは,動作的再生においてまん中の玉の三三を間違った ことにより影響されたものと考えられる。. 髄の馳. 回転後. 動作的再生. 360土日三三 へ\ジRσ. 方向9日済D. 頓ゆ 図19 3個の玉の軌道検査結果 管の軌道検査では,落下前,落下後の管の描画は反対の状態は描くの. だが,管の色を反対にしてしまう。各段階の描画は,5段階の管の状態 を正しく描いているが,赤と黒の位置が反対であり途中の回転をとばし. 一37一.
(40) て描いている。管の軌道描画は,1回転する軌道を描いている。動作的 再生は正確な回転でもって再生でき(管の赤と黒は反対である),口頭 描写も正しくできている。. 落下前と落下後. R. ハ,. 管の髄糖. 各段階の描画. 陳 団 ’−1杖. ゆ. 図20. ∈歯黒. ュ. 園1一. → F. R. 動作的再生. 畷粥. 只. 忠噤. ?Q. 色の向きが反対. ノなった. 管の軌道検査結果. 身振り模倣の検査では,腕の模倣は全部非鏡像で模倣する。身振りや 行為が空間的心像の中で交換可能である。事象の外観にとらわれること はない。. ⑤神経心理学検査の結果. 11歳9ヶ月時のWISC−R知能検査では,全IQが114,言語 性IQが113,動作性IQが112であり言語性と動作性の差は見ら れない。言語性検査では算数が高く知識,理解が低い,動作性検査では 絵画配列が高く,検査項目間のバラツキが大きい。絵画語彙発達検査. (13歳2ヶ月:以下特記していない検査は13歳2ヶ月に実施したも のである)は,発達年齢12歳以上であり年齢相当の発達を示している。. 復唱検査は発達年齢7歳であり,転位が多く文章が長くなると途中で諦 めてしまう。 ITPA検査では,ことばの表現が5歳のレベルであり, ある事柄について説明を求められるときその表現が表面的な部分に限ら れてしまい,説明の内容が乏しくなってしまう。微細運動検査結果では,. 腕伸展では開眼・閉眼とも左右に振回が見られ,ディアドキネジアでは 一38一.
(41) 右手回転時に左手に連合運動がみられ,腕の動きにもスムーズさに欠け ていた。片目開眼では左目で両目を閉じてしまう。それ以外には問題は 認められなかった。人物画(グッドイナフ)は,手を描くときは手を机. の上において見ながら描いていた。耳が描かれておれず,7歳の発達段 階である。ピアジェ・ヘッドの左右の検査では,自己,相手,3つの事 物の左右は正しく反応した。模倣検査では5問を手を反対にしたが,そ の内3問は正しくやり直している。口命検査はしばらく考え,口で唱え ながら行動に移していた。2問を目や耳の位置を間違う。図版検査でも,. 絵を見てしばらく考えてから反応し,2問を間違えている。算数検査で は,計算も文章題も正確に早くすることができた。読み書き検査では, 問題は見られなかった。 ⑥小括. ことばの発達に遅れが見られ,対話もできにくかった。学齢期では,. グループ活動に参加しにくく,ルールの理解も悪い。相手の気持ちや意 図をくみ取れないため,対人関係の問題を示した。. ピァジェ型検査では,操作的側面に比べ形象的偲面の遅れが大きく, 空間観念と予見的心像の遅れが見られた。うまく話ができないことと, 視点変換の問題が対人関係のまずさにつながっている症例である。. 一39一.
(42) 症例4 M.T.. 男子,1985年3月生,8歳10カ月,小学校の普通学級3年在籍, 両親と2歳年下の妹の4人家族。 ①生育歴. 妊娠中は異常なく40週で出産,体重は3760gであった。心室中 隔欠損症があり生後1∼3ヵ月の間入院をした。その後の発達は,定頸. 5ヵ月,ハイハイ8ヵ月,立位・始歩1歳1ヵ月,初語は1歳2ヵ月, 2語文は2歳6ヵ月である。2,3歳頃,近所の子どもと比べことばが 少なく,友達とかかわって遊ぼうとしなかった。4歳で幼稚園に入園,. みんなの中に入れない,歌を歌はない,じっとしていられないという状 態であった。家では動物や人などの絵を描かず,複雑な線の絵ばかり描. いていた。5歳の時病院でEEG,CTの検査を受け,脳の左右に異常 波があるということで1年半,薬を脹用した。その時MBDの疑いがあ るといわれた。小学校に入ってから家では,毎目30牙から1時間程度 信号や標識や道路などの絵を描いていた。お風呂にはいるとずっと模型 の話をするなど,母親に答えて貰うまでしつこくくいさがるなどパター ン的な会話が多かった。. ②集団生活. 1,2年生の頃になると,暑いので我慢できずに授業中でも床に寝こ ろんでしまったり,掃除用具のmヅカーの中に入り込んだ。体育では集 団で壷ぶことができず,参加しないで勝手に日陰で休んでいることが多 かった。3年生になってから女の子のスカートをめくったり,気になる 女の子に抱きついてチューをすることが見られた。またよく友達に向か ってアホ,アホ,バカ,死ねと繰り返し言っていた。その都度担任が,. 相手の子が悲しい顔をしていると説明をしていくと半年ほどで言わなく. 一40一.
(43) なった。. ③学習. 国語では,1年の時から拾い読みであり,文章の意味理解も難しいか った。3年になってからも,漢字では最初暗号のような解読不明の文字 を書くときがあった。また鏡文字になることが多く,書き順もでたらめ であった。作文が苦手であった。ボール運動では,投げることもっかむ ことも下手であった。算数では,新しい単元になるとき習い始めに抵抗 があり,なかなか次の段階に進めなかった。どの教科も技能的なことが 難しく興味,関心に偏りがあって好きなことにしか取り組まない。グル ープ活動の中では,自分が何をしてよいかわからないようである。 ④ピァジェ型検査(操作的側面,形象的側面課題). a.操作的側面 達成できなかった交叉分類,天秤の釣り合いについて質的に検討して いく。. 交叉分類では,2分類は1回目も2回目も乗り物と押す物の基準で分 ける。バギーのカードの入れ替えだけである。4分類は,乗り物と押し たり引いたりする基準にどの基準を加えてよいか分からなくなってしま. う。つまり,2つのクラスを分類することがやっとであり,その分類も 類似性に基づいている。天秤の釣り合いでは,申心から洞じ距離の所に おもりをつけると釣り合うことがわかるが,厳密にするのではなく,次 第に正しくしていくのである。. b.形象的側面 形象的側面課題では,全ての課題で年齢相当に達成できなかったので, それぞれの検査結果を質的に検討していく。. 山に木と家の図検査では,木も家も正しく垂直に描いていく。水平面. 一41一.
(44) の検査では,ビンを斜めにした時や横にした時は水面を波が打ったよう に描く。そして,ビンを斜めにした時は底に平行に描き,水がこぼれる 様子も描いている。つまり,まだ水面が直線であることを十分理解でき ていなく,水面はビンが傾くと一緒に動いてしまう。垂直の関係把握は できるが,水平の理解が難しいのである。 ア1く. 」雫・. Z 苛. 〆}. 穫き. し. 図21 山に木と家の図検査. 図22. 水の水平面の検査. 3つの山の検査では図版選択は,自分の座る位置が変わると左右反対 になる。描画では,全ての場面において間違ってしまう。1つの山の位 置を捉えると,残りの2つの山の位置が分からなくなってしまう。つま り,観察の位置の変化に伴い左右の関係変化には気づぐが,前後の関係 把握が難しい。. 3個の玉の軌道検査では,位置の心像は理解できているが,軌道の描 画では相称の欠如が見られる。1個ずつの玉がその場で回転しているよ. うに描くのである。動作的再生も360度回転後の描画も同様の間違い を起こしている。. 版. 回 へ. F幽 C飴. A→丘. 備 B. H △. ,v. A 応 s”1. 4△△. ぬ品政,欝・海. △小Aが,の恥. 画. c亀 卜幽 B△▲△ △△ △△. 《△蓄一・右. 「勧繍揃. 岦剩s. 図23. 3つの山の検査結果 一42一. E△△ ρ蝕△. 《△黄執徳夜. △△△各滋蔽.
(45) 回転後. 軌道の描画. 動作的再生. 360度回転後の轍. ①・徹x>②くx疹@,o徽). ⑳. つ ’一㌻ (3. つへぐ㌧. ュ㊧④⑰・. 図24 3個の玉の軌道検査結果 管の軌道検査では,落下前,落下後の管の描画は正しく描けている。. 各段階の描画は,4段階の管の状態を正しく描いている。管の軌道描画 は,3回転する軌道を描いている。段階ごとの描画と管の軌道描画とが 矛盾しており,軌道の再現が難しく混乱していると考えられる。動作的 再生は1回転する再生を行ったが,口頭描写では正しく表現できている。. 落下前と落下後. R. ネ,. 各段階の描画. 管の輔樋. −. A朔嘱. 動旧離. 礪描写. 劒[_. 回って落. ソた. 図25 管の軌道検査結果 身振り模倣検査では,腕の模倣では全部非鏡像で模倣するが,複雑な 身振りでは掌を検者に向けたりして事象の外観にとらわれやすい。 ⑤神経心理学検査の結果. 8歳5ヶ月時のWISC−R知能検査結果では,全IQが103,言 語性IQが97,動作性IQが109であり,検査項目間のバラツキが 大きい。絵画語彙発達検査(8歳10ヶ月:以下特記していない検査は. 8歳10ヶ月に実施したもである)は,発達年齢12歳であり年齢以上 一43一.
(46) の発達を示している。復唱検査は発達年齢7歳以上となり年齢相当と考. えられる。ITPA検査では,文を構成するのが苦手である。微細運動 検査結果では,腕伸展では開眼,閉眼とも振戦が見られ手指に力が入っ た。ディアドコキネジア(上肢の交互交換運動)や掲一指検査において,. 左・右手回転時や左手,右手を動かしているとき,反対の手に連合運動 が見られた。また,腕,指の動きにスムーズさに欠けた。頬を膨らませ るのも,片側ずつできない。それ以外に問題は認められなかった。人物 画(グッドイナフ)は,鼻,耳,衣服が描かれておらず,腕と脚は左右. 対称ではない。手では掌はなく,5本の指に分かれているが揖の区別が なされていない。7歳の発達段階である。ピアジェ・ヘッドの左右の検 査では,自己,相手の左右は正しく反応したが,3つの事物の左右はじ っくり考えてから答えているが正確さに欠ける。模倣,図版検査ではほ とんど鏡像で反応しているが,口命では正しい反応ができていた。手指. の触知覚検査では,右手も左手も5歳のレベルである。読み書き検査で は,聴写の誤りが多くあり,表記や助詞の置き換えが見られた。算数検 査では,繰り下がりの計算の間違い見られ,かけ算やわり算を暗算です るのが苦手である。牙数の加減も理解できていない。文章題では,文の 理解をするのが難しい。 ⑥小活. パターン的な会話や行動が見られ,セルフコントロールの困難さもあ り集団活動もできにくかった。神経心理学検査からは身体図式や,自己. 身体との関係の空間認識の問題が見られ,ピァジェ型検査の空間把握と 視点変換の困難性との関連が示唆された。言語概念化能力の問題と併せ て空間関係の問題をももっている症例である。. 一44一.
(47) (5)症例5 1.K.. 男子, 1982年6月生,12歳10カ月,小学校の普通学級6年生 在籍,祖父母,両親,6歳と3歳年上の兄との7人家族。 ①生育歴. 妊娠中は異常なく,40週で出産,体重は3640gであった。難産 でありしばらく仮死状態であった。その後の発達は,定頸3カ月,ハイ. ハイ9カ月,始歩1歳1カ月,初語が2歳,2語文が4歳であった。1 歳6カ月児検診でことばが3語程度しか出ていなかった。2歳6カ月で は,ことばは出るが要求語がでなく,多動傾向があった。3歳頃からひ らがなが読めるようになった。4歳でも多動傾向があり対人関係がぎご ちなかった。4歳ぞ幼稚園に入園した。本が好きでよく絵本室で本を読 んでいた。ゲームの時は,ユ番にならないとごねた。5歳になると落ち つきがでてきて,視線も合い指示に従える事が多くなった。自由遊びで は他の子どもとの交流はなかった。. ②集団生活. 低学年の時は,授業中立ち歩くことが多く担任の指示に従えなかった。. そのうえ突然思い出したように手を叩いたり,飛び跳ねたりした。中学 年になり,人の話も聞けるようになり教室から出ることも少なくなった。 しかし状視に合う行動がうまくとれず,自分勝手な行動が多かった。ま た,周囲の者とよくトラブルをおこした。それは,自分の感情をうまく. 表現できなかったり,相手の気持ちを理解する事が苦手であることによ る場合が多かった。6年生では,安心して授業が見られるぐらい落ちつ いてきた。中学校の障害児学級を見学に行ったとき,中学校の担任に教 室の子どもを指さして「あの人達の障害は何ですか」と聞き,自分はこ の教室には入らないことを伝えたという。. 一45一.
(48) ③学習. 中学年での算数は,計算はできるが文章題が困難で,難しいと言って 教室を出ていく事があった。工作などは最後まで作り上げる事ができな かった。なわとびは連続して跳ぶことが難しかった。音楽は得意であり,. 笛はリズムよく吹くことができた。国語では文の読みとりは6年になっ てからも國難である。. ④ピァジェ型検査(操作的側面,形象的側面課題). a.操作的側面 達成できなかったクラス包括,天秤の釣り合いについて質的に検討し ていく。. クラス包括では予備検査においては正しく答えるのだが,本検査では 「茶色のビーズの方が長い。そのわけは,茶色が多くあり,木は白の2 個であるから茶色の方が長い。」と答えた。このことは,部分で作った ネックレスと,全体で作ったネックレスを同時に思考実験で作れないの である。天秤の釣り合いでは,重さと距離をうまく組み合わせることが できない。左右同じ所におもりを1個ずつ吊るすと釣り合うというやり 方を,まず一度はやってみないと次に進めないのである。. b.形象的側面 形象的側面課題では,全ての課題で年齢相当に達成できなかったので, それぞれの検査結果を質的に検討していく。. 山に木と家の図検査では,山も木も斜面を無視して山の背後に描いて しまう。水平面の検査では,水面はビンの傾きと関係なく水平であるこ とがわかる。つまり,水平の関係把握はできるが,垂直の関係把i握は不 安定である。. 一46一.
(49) 7k平. 図26 山に木と家の図検査. 図27. 涌. Gキ‘h. 水の水平面の検査. 3つの山の検査では図版選択は,自分の座る位置が変わると左右が反 対になる。描画では,前後の関係を捉えるのが難しく左右を反対にして しまうことがあり,1つの山の位置がずれてしまう。 M 版 lk 画 B必 △ F△△ P幽△ c砺、 一F c 僻B. F通. 鞠幽訟 二. 臭⑨⑨狸△ ). 砂嬬飴倉. 鼻△璋→右. 繍皮. ィ右. 一;ち一. 図28. 会△. △△. 幽茗→左. ツ…一一左. 3つの山の検査結果. 3個の玉の軌道検査では,位置の心像は理解できているが,軌道の心 像においては相称はできるが方向を反対にしてしまう。動作的再生では, 相称も方向も間違う。. 鴎後. オ日許ρ. ⑳. 動作的触. 軌道の描画. 尭向x(. w》. ①. W. A漁. 360度回転勧軌跡. (㈱殴ノ. B 偲). 図29 3個の玉の軌道検査結果 管の軌道検査では,落下前,落下後の管の描画は箱の上の状態と同じ. ものを描く。各段階の描画は,1回転する管の段階図を描き,管の軌道 一47一.
(50) 描画は,回転しない管の軌道を描いている。段階ごとの描画と軌道の描. 画が異なり矛盾したものを描いている。動作的再生は1回転して再生し ており,管の軌道描画と同じ間違いである。. 身振りの模倣検査では,腕の模倣において全部鏡像で模倣する。反対 の検査では,まず鏡像で模倣しすぐに違うことに気がつき非鏡像で模倣 する。複雑な身振りでは,時々掌を検者に向けて模倣する。他者から自 己,自己から他者への移行可能な身体表象へ自己の運動を統合していく のが難しい。そして,事象の外観にとらわれやすいのである。. 落揃と落下後. R. R〆. 各段駒樋. 管の軌道鞭. 口頭描写. 幽・360” 1㌦. 馨. 一・k Q,_.. ?. 図30. 動作的再生. 繭[]R \. R. 癩瞑〔=r. 転て甜うに 閧ョ.. 管の軌道検査結果. ⑤神経心理学検査の結果. 12歳1ヶ一時のWISC−R知能検査では,全IQが110,言語 性IQが98,動作性IQが122であり,言語性IQと動作性IQと の差が24ある。比較すると言語性の発達がやや未熟であると推測でき. る。12歳2ケ月時のITPA検査では,ことばの表現が5歳レベルで あり表現力の問題が示唆された。絵画語彙発達検査(12歳10ヶ月:. 以下特記してない検査は12歳10ヶ月に実施したものである)は,発 達年齢は12歳以上であり年齢相当の発達を示している。復唱検査は発 達年齢7歳以上となり年齢相当と考えられる。微細運動検査結果は,デ ィアドコキネジアにおいて,右手,左手回転時に反対の手に連合運動が. 一48一.
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