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携帯用持続心機能モニターによる冠動脈バイパス術 の評価

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携帯用持続心機能モニターによる冠動脈バイパス術 の評価

著者 手取屋 岳夫, 川筋 道雄, 沢 重治, 榊原 直樹, 岩

喬, 滝 淳一

著者別表示 Tedoriya Takeo, Kawasuji Michio, Sawa

Shigeharu, Sakakibara Naoki, Iwa Takashi, Taki Jun‑ichi

雑誌名 胸部外科 = 日本心臓血管外科学会雑誌

巻 44

号 10

ページ 820‑824

発行年 1991‑09

URL http://doi.org/10.24517/00050783

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

(2)

臨床と研究 囎溌鑛蕊鍵謹識舗鋤&聴聴溌瀧鍵篭騨礁蛎諭撒繍鯉蕊蕊鑿謝

携帯用持続心機能モニターによる冠動脈バイパス術の評価

川 筋 道 雄 沢 重 治 榊 原 直 樹 滝 淳 一 *

手取屋岳夫 岩 喬

は じ め に

0 ⑲ 夢 圃

冠動脈バイパス術(CABG)の目的は狭心症の改善 のみならず心筋虚血,運動負荷対応能の改善である.

携帯用持続心機能モニター(VEST)は,超小型RI検 出器を左室上の胸壁に装着固定したまま運動負荷を加 えうるため,変化する心室壁運動の連続的観察が可能 である.心筋虚血により,心室の壁運動異常が心電図 変化に先行して出現することが知られており1.2),

VESTを用いてCABG前後で運動負荷に'.および負荷 回復期の心機能の変化を連続的に観察しCABGの効 果を検討した.

1.対象および方法

CABGを施行した50例(男性41例,女性9例)を 対象とし,VESTを用いて心機能検査を行った.年齢 は35歳から69歳,平均57歳であった.冠動脈病変は 1枝病変がl例,2枝病変は14例,3枝病変は27例で 左主幹部病変は8例に認めた.28例(56%)が心電図 変化か酵素学的異常によって証明された心筋梗塞既往 例であった.前壁梗塞が11例,下壁梗塞が12例,後 側壁梗塞が5例であった.CABGは高カリウム晶質心 筋保護液注入と局所冷却による心筋保護を用いて施行 した.45例には左前下行枝に左内胸動脈を使用し,回 旋枝系,右冠動脈には大伏在静脈グラフトを用いた.

5例には静脈グラフトのみを使用した.平均グラフト 数は2.7本であった.術前に投与されていた亜硝酸剤,

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シ零靜 津

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図1.携帯用心機能モニター(VEST)

カルシウム拮抗剤,β遮断剤を術後にも投与した.全例

に対して術後1ヵ月でdigitalsubtractionangiogra‑

phyまたは選択的冠動脈造影にてグラフトの開存性を

検査した.開存率は内胸動脈は100%,静脈グラフトは 93%であった.

核医学的左心機能評価をCABG術前および術後4 週に行った.全例とも検査時の全身状態は良好であっ た.20mCiの'〃ひ"0標識99nlTc赤血球を静注し,ま ず通常のマルチゲート心プールシンチグラフィーを 行ったのち,持続心機能モニター(AlokaRRG‑607, Tokyo)を装着した.このシステムはcadmiumtel‑

lurideを用いた二つのRI検出器とカセットレコー ダーとコンピューターよりなる.一つの検出器が左心 室をカバーするように位置決めを行い,別の検出器は 肺野のバックグラウンドをカウントできるようにネオ プレンゴム製ジャケットで固定,装着した(図l).レ コーダーには二つのRI検出器からのカウントがそれ キーワードニ持続心機能モニター,左室駆出率,冠動脈バイパ

"T.Tedoriya,M.Kawasuji(講師),S.Sawa,NSakakibar‑

a,T.Iwa(教授)<第一外科>,J.Taki<麻酔科>:金沢大

胸部外科Vol.44No.10(1991年9月)

820

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$ 劉 沢

100

100

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0 6 1 2 1 8 2 4 分

EF:左室駆出率(%),HR:心拍数(bests/分)

EDV:左室拡張末期容積(m/)ESV:左室収縮末期容積(m/) 図2.VESTによって測定された核医学的および心電図データを示すトレンドグラフ

荷によりLVEFが変化しない不変型(typeC),運動 負荷によりLVEF'が下降する低下型(typeD)の4型 であった.typeAが正常,typeC,Dは異常で,type Bは異常であるが,一部正常型も含むと考えられた').

CABG術前後におけるLVEFのタイプ分類の変化 を図4に示した.術前typeAが6例,typeBが8例,

typeCが11例,低下型が25例であった.術後は35例 がtypeAで,typeBは7例,異常型のtypeCは5 例,typeDは3例のみで,術後に運動負荷対応能の改

善が認められた.

運動負荷回復期のLVEFは負荷終了直後より上昇 し安静時EFより高いピーク値(over‑shoot)に達した のち,負荷前値に復するパターンをとった(図5).運

I

動負荷時のLVEFの負荷前値に対する平均変化率は,

術前‑9.9±2.7%であったのに対して,術後は+

13.02.0%であり有意(p<0.001)に改善した.また,

負荷回復期のピーク値の負荷前値に対する変化率は術 前十62.7士12.0%,術後十67.8±16.1%で術後有意に 高値を示した(p<0.05).負荷終了時から回復期の LVEFピーク値までの時間(回復時間,recoverytme)

の平均は術前195±15秒であったのが,術後は98±15 秒に有意('<0.001)に短縮していた.

Ⅲ 、 考 察

心プールシンチグラフィーは心機能評価を非侵襲的 に行える検査として広く利用され,運動負荷時の心機

能の評価に有用である2 6).しかし,撮像にはガンマカ ぞれ50msecごとに収録される.

4分間の安静時データを収集後,自転車エルゴメー ターを用いて仰臥位で25Wより負荷を開始し2分ご とに25Wずつ漸増し,胸痛,呼吸困難,疲労が現れる まで継続した.データ収集は負荷終了後10分まで行っ た.左室駆出率(以下LVEF)は拡張末期カウントの 70%をバックグラウンドとして減算したのち以下の 式に従って求めた.

EF=(EDC‑・ESC)/EDC(EDC:end‑diastolic count,ESC:end.systoliccount)

核医学的データと心電図データは20秒ごとに集積 し,これらのデータをトレンドグラフに描いた(図2).

LVEFの変化は5%以上を有意とした.また,結果 は平均値士標準誤差で表示し,有意差の検定にはノ検 定を用い,'<0.05を有意とした.

I I . 結 果

術前の最大運動負荷量は平均68.8±19.2Wで,

rate‑pressureproduct(RPP)は平均151.3×102i 35.3×102mmHg・beats/分であった.術後の最大運動 負荷量は73.5±20.3Wと増加したが術前値と有意差 はなかった.一方,術後のRPPは183.4×102±49.1X

102mmHg・beats/分に達し術前値に比し有意に増加 した(,<0.01).運動負荷中のLVEFの変化パターン は4種類に分類できた(図3).すなわち,運動負荷に よりLVEFが上昇するもの(typeA),いったん上昇 するが負荷が増すと下降する上昇低下型(typeB),負

(4)

TypeA 50

TypeB 50

TypeC 50

TypeD 50

耀鰯耀鍵Exercise

図3.VESTによる運動負荷中のLVEFの変化の パターン分類

メラが必要であるため連続的な変化を捉えることが不 可能である.このため超小型RI検出器を左室領域に 固定し被検者が運動できる状態で左心機能を連続的に 記録できる携帯装置が開発され,一見ベストのようで あるため"VET"と呼ばれている7).このVESTに よって,運動負荷中および負荷回復期の心機能の変化 を明らかにすることが可能となり,左心機能における CABGの効果についても新しい知見を得ることがで きるようになった.

術前 術後

TypeA

TypeB

TypeC

TypeD

図4.CABG術前後におけるLVEFタイプの 変化

術後の心機能検査時期について,われわれが行った CABG術後の安静時心プールスキャンによる評価で は術後1および2週で収縮機能が高まり拡張機能は低 下したが術後4週ではおのおのが術前値に復してい

た8).今回の検査でも術後は4週に施行しており,手術

による影響からほぼ脱却したと考えられる.術後検査

時には術前検査時に服用していた亜硝酸剤,Ca拮抗剤 は同量服用しており,また術前β遮断剤を投与されて

いた症例は術後不整脈予防を目的にminidosepro・

pranolol(5mg×8時間毎)を継続したが,Taylorら3)

も述べたようにこの影響は軽微であろうと考えられ

今回の検討では,運動負荷中のLVEFの変化は四つ のパターンに分類できた.ty"Aは運動負荷に対する 正常な反応と考えられる.術前6例(12%)がtypeA であったが術後は35例(70%)がtypeAとなり改善

した.typeBは運動負荷によってLVEFがいったん 上昇するが負荷が増すと低下してくるタイプで異常反 応と考えられる.しかし,Tamakiら')は正常人のなか にも運動負荷が増すに連れて拡張末期容種が増加し,

これによってLVEFが低下する症例が存在すると報 告している.今回の検討では術前typeBであった7例 のうち6例が術後typeAに改善していた.この6例 では左前下行枝に左内胸動脈を,右冠動脈と回旋枝系 に静脈グラフトを使用した手術を施行しており,5例

は完全血行再建であった.術後にtypeBに留まった1

例は,61歳女性例で3枝病変に対して左内胸動脈と静

822 胸部外科Vol.44No.10(1991年9月)

(5)

LVEF

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電呼湾も『 A軍紳瀞

50

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6 1 2 1 8 2 4

↓は運動負荷回復期の最大LVEF(overshoot) 図5.運動負荷回復期のLVEF

30分

脈グラフトで4枝バイパス術を施行し,グラフトはす べて開存し完全血行再建を施行し得た症例であった.

typeC,typeDは運動負荷に対する異常反応と考え

られる.術前typeCは11例であったが,8例は術後

typeAに改善した.術後typeCに留まった3例のう

ち2例は,広範囲梗塞による低左心機能例であった.

術前typeDであった25例のうち16例はtypeAに 改善した.術前typeDから術後typeBに留まった6 例のうち,4例はグラフト閉塞か狭窄病変残存の不完 全血行再建術症例であり,2例は内胸動脈を用いた3 枝バイパス術症例で完全血行再建例であった.術前 typeDから術後typeCに留まった症例は2例で,1例 は低左心機能で静脈グラフトを使用し,完全血行再建 した3枝バイパス術症例であり,もう1例は右内胸動 脈を用いて完全血行再建を行った女性例であった9).

術後typeDは3例でグラフト閉塞例1例,狭窄病変残

存例がl例,内胸動脈使用完全血行再建1例であった.

内胸動脈使用症例で,完全血行再建にもかかわらず運 動負荷対応能が不十分な症例が5例みられ,内胸動脈 の血液供給能の不足が示唆された!。).

運動負荷回復期のLVEFは,負荷終了直後より上昇 し始め安静時より高値のピーク値(overshoot)に達し たのち,徐々に負荷前値に復するパターンをとった.

Pfistererら'1)はほとんどの冠動脈疾患患者でover‑

Jlootが認められたと報告しており,Plomickら'2)は 運動負荷後の交感神経緊張の残存が回復早期のover‐

Shoot発生に関与していると説明している.Schneider

ら'3)は高度冠動脈病変による運動負荷に伴う心室の壁 運動異常は,負荷回復期の回復時間の遷延をもたらし たと報告している.今回の検討では術後のrecovery timeは術前に比し有意に短縮し,負荷回復期において も心機能の改善を認めた.

VESTは非侵襲的,連続的に心機能を評価できるた め,新しい観点からCABGの効果の検討を可能とし た.今後,心室局所の駆出率検出が可能となれば CABGの各グラフトの有効性や問題点をさらに詳細 に検討できると考えられる.

文 献

1)TamakiNetal:Cardiacresponsetodailyactiv.

itiesandexerciseinnonnalsubiectsasSesZdbyan ambulatoryventricularfunctionmonitor.AmJ Cardiol59:1164,1987

2)TakiJetal:Temporalrelationshipbetweenleft ventriculardysfunctionandchestpaininpatients withcoronaryarterydiseaseduringactivitiesof dailyliving.AmJCardiolinpress

3)TaylorNCetal:Effectsofcoronarybypassgraft.

ingonleftventricularfunctionassessedbymultiple gatedventricularscintigraPhy.BrHeartJ50:149, 1983

4)JonesRHetal:Accuracyofdiagnosisofcoronary arteIydi=asebyradionuclidemeasurementofleft ventricularfunctionduringrestandexercise.Cir℃u‐ lation64:586,1981

5)BorerJSetal:Sensitivity,pecificityandpedic・

tiveaccuracyofradionuclidecineangiographydur‑

ing.exerciseinpatientswithcoronaryarterydis‑

(6)

nowcapacityofinternalmammaryartery.JThor.

acCardiovascSurg99:696,1990

11)PfistererMEetal:Profilesofradionuclideleft ventricularejectionfractionchangesinducedby supinebicycleexerciseinnonnalandpatientswith coronaryheartdisease.CathetCardiovascDiag 5:305,1979

12)PlomickGDetal:Changesinleftventricularfunc.

tionduringIでcoveryfromuprightbicycleexerci"

innoImalpersonsandpatientswithcoronary arterydi¥a".AmJCazdiol58:247,1986 13)SchneiderRMetal:Rateofleftventricularfunc.

tionrecoverybyradionuclideangiographyafter exerciseincoronaryarterydisease.AmJCardiol 57:927,1986

ease.Circulation60:572,1979

6)BergerHJetal:Globalandregionalleft ventricularresponsetobicycleexerciseincoronary arterydisease.Assessmentbyquantitativeradionu・

clideangiocardiography.AmJMed66:13,1979 7)玉木長良,StraussHW:携帯用RI心機能モニター (VEST)による心機能評価.核医学24:289,1987 8)KawasujiMetal:Seriala"ssmentofleft

ventricularfunctionfollowingcoronarybypass surgerybyradionuclideangiography.JpnCircJ 52:1149,1988

9)HigginbothamMBetal:Sex.relateddifferencesin thenonnalcardiacresponsetoexercise.Circula・

tion70:357,1984

10)KawasujiMetal:Evaluationofpostoperative

唇U而而瓦肩荊

SUMMARY 坤椛 鯛餓 S# 騨釦 油睡 y沙 Cく ○﹃l nl ・皿施 ○〃 鵬獅 V抑 eα 祁恥 皿︒ ︒g a海 ︾LC9〃 F〃 ︑動 c・″ 狼nO 皿飢 M〃 r・a ︐打 g9

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ThesequentialchangeofleftventricularfUnctionduringexerciseandrecoveryafterexercise wasassessedin50patientswhohadundeIgonecoronarybypasssurgerybeforeandafterthe

o p e r a t i o n b y m e a n s o f c o n t i n u o u s v e n t r i c u l a r f u n c t i o n m o n i t o r i n g s y s t e m ( V E S T ) .

C a r d i a c r e s p o n s e w a s d i v i d e d i n t o 4 t y p e s w i t h r e s p e c t t o t h e p r o f i l e s o f t h e l e f t v e n t r i c u l a r e j e c t i o n f r a c t i o n d u r i n g e x e r c i s e . T y p e A c o n t i n u e d t o i n c r e a s e ; t y p e B i n i t i a l l y i n c r e a s e d b u t

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extendedinfarctionandpoorleftventricularfunctionShowedtypeCaftersurgery.

I n r e c o v e r y p e r i o d a f t e r e x e r c i s e , t h e e j e c t i o n f r a c t i o n s h o w e d a n o v e r s h o o t . T h e m e a n r a t i o o f p e a k e j e c t i o n f r a c t i o n d u r i n g r e c o v e r y t o e j e c t i o n f r a c t i o n a t r e s t i n c r e a s e d f r o m + 6 2 ± 1 2 %

beforeoperationto+68±16%afteroperation(P<0.05).Therecoverytimeafterexerci=was decreasedfroml95secbeforeoperationto98secafteroperation('<0.01).

V E S T r e v e a l e d r e s p o n s e o f l e f t v e n t r i c u l a r f u n c t i o n d u r i n g e x e r c i s e a n d r e c o v e r y a f t e r e x e r c i s e

asfarasdetailabnormalities.

K E Y W O R D : c o n t i n u o u s v e n t r i c u l a r f u n c t i o n m o n i t o r i n g / c o r o n a r y b y p a s s s u I g e r y / l e f t v e n t r i c u l a r e j e c t i o n f r a c t i o n

824 膳部外科Vol、44No.10(1991年9月)

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