図40
3個の玉の軌道検査結果 一74一管の軌道検査では,落下前,落下後の描画は正しく描けており,管の 軌道も正しく描ける。動作的再生も,正確な回転でもって再生すること
ができる。
身振りの模倣検査では,両手の模倣から鏡像で反応していく。すぐに 気がついて非鏡像で模倣しなおすものもあるが,鏡像のままで反応して
しまう場合もある。反対の検査では片腕,両腕の模倣とも同時に非鏡像 で模倣することができる。
⑥神経心理学検査の結果
10歳9ヶ月時のWISC一:R知能検査では,全IQが88,言語性 IQが83,動作性IQが97であり,言語性と動作性の差は14であ
る。言語性,動作性検査の中での項目間のバラツキは見られない。11 歳時のITPA検査では,数の記憶が5歳レベルであり,ことばの表現,
文の構成が6歳レベルである。復唱検査(10歳9ヶ月:以下特記して
いない検査は10歳9ヶ月に実施したものである)は,発達年齢6歳6
ヶ月であり,ITPA検査結果と合わせると聴覚記憶力と表現能力の問 題が示唆される。絵画語彙発達検査は,発達年齢12歳であり年齢以上 の発達を示している。ベンダーゲシュタルト検査は,筆圧も弱く固執が 2つ,統合の失敗が1つあり,発達年齢が8歳6ヶ月である。微細運動 検査結果は,ディアドコキネジアでは腕の動きがスムーズでなく,右,左手回転時に緊張伝播が見られた。それ以外に問題は認められなかった。
人物画では,肩と体の区別がなく,掌はなく5本の指も分かれていない。
鼻と耳が描かれておらず,顔が大きく全体のバランスがよくない。発達 年齢は7歳である。ピアジェ・ヘッドの左右の検査では,自己の左右は 正しく反応するが相手の左右は最初反対にして,闇違いに気づき正しく 言い直す。3つの事物の左右はすぐに答えられず,しばらく考えてから 一75一
正しく答えていた。口命,図版検査は全て正しく反応するが,模倣挨査 では15問中9問問違いほとんど手を反対にしてしまう。読み書き検査 では,聴写の誤りが多く助詞や漢字の置換,カタカナの表記,文字の置 換が見られた。算数検査では,引き算を足し算でしたり,四則混合計算 が難しい。5年生までの計算の方法は理解できている。文章題は難しく,
文の理解ができない。
⑥小括
幼児期は一人遊びが多く,会話が成り立たなかった。学齢期は,興味 のあることしかせず,文章理解と作文が苦手であり,漢字がなかなか覚 えられない。2つの側面の差が見られない。マトリックス的操作の困難 が見られ,視点変換や心像において遅れが見られた。
記憶と表現力の問題があり,左一右の検査より左右の認知の不確かさ や人物画の未熟さから身体図式と空間認識の問題も示唆された。
一76一
〈5)症例10 0。T.
男子, 1983年11月生,10歳6カ月,小学校のの普通学級5年
在i籍,祖父母,両親と小学1年生の弟の6人家族。
①生育歴
妊娠中,貧血のため鉄剤を服用していた。出産までに時間がかかり陣
痛促進剤を使用。40週で出産,体重は3500g。その後の発達は,
定頸3カ月,ハイハイ9カ月,始歩1歳2カ月,初語9カ月,2語文は
2歳であった。3歳で保育所に入所。消防車が好きでその絵ばかり描い ていたので,保育所の先生より偏りが気になると指摘された。4歳で幼 稚園に入園。ブランコをこぐのがぎごちなく,なわとびが下手であり,その後も改善されていかなかった。はさみがうまく使えないので,手で 破ってしまうことが多かった。小学校に入学後も,落ちつきがなく,新 しい場所に慣れるのに時間がかかった。また給食袋を落とした蒔,拾っ てくれたおばさんに礼も言わず,自分が袋を落としてしまったことのみ に腹を立てて,通学途上にもかかわらず,帰宅してしまったことがあっ
た。
②集団生活
1年の1学期は,床に寝ころぶことが多く椅子に座っていられなかっ た。着替えをせずに下着姿で過ごしたり,給食の時間になっても給食の 配膳をしょうとしなかった。2学期になるとしばらくは座っていられる ようになり,その時閤の教科書が出せるようになった。3学期になると ノートを出したり,あとかたづけができた。2年になると体育の時間一 緒に参加するようになったが,できにくさが目だった。人とかかわるこ
とが少なかった。校外学習では,そばに担任がついていないと他の子と 同じ行動をとることができなかった。1対1でいうと何とか聞くことが 一77一
できるが,強引にさせようとするとパニックに陥った。3年の3学期頃 より,教室で落ちついて学習できるようになった。4年生になってから も,本児の関心が限られていて友達に合わせていくことが難しかった。
自分のできにくさがわかってきたため,できにくいことは始めから諦め てしまって取り組もうとしなかった。記憶がよく書物からの知識が豊富 なため,周囲から「天才だ」と言われる事がある。忘れ物は多い。
③学習
2年の時の学習で算数では,数理的なことはよくわかっていて計算は 早くできるが,長さをはかるときものさしがうまく使えなかった。絵は
1年の時は全く描かず,紙をグチャグチャにしたりすることが多かった。
2年になってからは,見て描くことはできるようになった。4・5年の 学習で,国語では文を書くのが苦手であった。出来事を羅列していくこ
とも難しい。走る時はドタドタした感じで走った。ボールを受けるとき は,ボールに合わして手を出していけないので受けられない。なわとび は,まえとびができるだけでリズミカルにはとべない。歴史が好きで,
名前やその時代のことをよく知っている。
④ピァジェ型検査(操作的側面,形象的偲面課題)
a。操作的側面課題
達成できなかった,クラス包括,天秤の釣り合いについて質的に検討 していく。クラス包括では予備検査においては正しく答えるのだが,本 検査では「茶色のビーズの方が長い,たくさんある瀞ら」と答えた。こ れは,本検査の時点で,質問を変えられると直感的に答えてしまうから だと考えられる。天秤の釣り合いでは,重さと距離をうまく組み合わせ ることができない。まず左右同じ所に吊るすという距離を考えての方法 が中心であり,それから試行錯誤的に釣り合わそうとする。
一78一
b.形象的側面
形象的側面では3つの山,管の軌道,身振りの模倣検査では年齢相当 に達成できなかったので,それぞれの検査結果を質的に検討していく。
山に木と家の図,水平面の検査より,水平垂直の関係把握に問題は認 められなかった。
3つの山の検査では図版選択は,自分の座っている位置からの見え方 に左右されてしまい3問とも間違う。描画においても,同じであり自分 の位置から見た図を描いてしまう。自分の位置が変わると見え方も変わ ることは理解できるが,表現するとなると日前の配置から逃れられなく なるのである。
図 版 極 画
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パでの見方
ハで醍汚
イ丘 Aマの財
舟の旦お
ハ福肪 〈て・の財 笛→葡図41 3つの山の検査結果
3個の玉の検査では,位置の心像も軌道の心像も正しく表すことがで きる。管の軌道検査では,落下後の管の描画は落下前と同じ方向の管を 描いている。各段階の描画は,そのままの向きで落ちていく。管の軌道 描画は管の黒の部分が回転し,赤の部分がまっすぐ斜めに落ちていくと いう矛盾した描画である。動作的再生では,指示された意味が理解でき ず管を箱の上に置いて人差し指で叩いて落とそうとする。もう一度説明 すると理解でき,管を持って1回転させる。口頭描写はうまく表現でき
ない。
身振り模倣検査では,腕の模倣は最初全部鏡像で反応してから,非鏡像 一79一
の模倣をしていく。複雑な身振りでは,掌を自分の方に向けるという外 観にとらわれた模倣を行う。
落下前と落磯
各鵬碗画 管の三三動作的敵
口頭描写∈ヂ R 顧