企業の社会的責任における社会性と経済性に関する 研究 −ステイクホルダー論と戦略論からのアプロ ーチ−
著者 世良 和美
学位授与大学 東洋大学
取得学位 博士
学位の分野 経営学
報告番号 32663甲第468号 学位授与年月日 2020‑03‑25
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00011984/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
2019 年度
東洋大学審査学位論文
企業の社会的責任における 社会性と経済性に関する研究
-ステイクホルダー論と戦略論からのアプローチ-
経営学研究科 ビジネス・会計ファイナンス専攻 博士後期課程
4320170002 世 良 和 美
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目次
第1章 序論 ... 1
1.1 背景と問題意識 ... 1
1.1.1 社会的な背景 ... 1
1.1.2 学術的な背景 ... 5
1.1.3 社会性と経済性を巡る問題 ... 8
1.1.4 本研究の問題意識 ... 11
1.2 研究の概要 ... 11
1.2.1 研究の目的 ... 11
1.2.2 研究の対象 ... 12
1.2.3 用語の定義 ... 13
1.3 研究の方法と論文の構成 ... 15
1.3.1 研究の方法 ... 15
1.3.2 論文の構成 ... 16
第2章 先行研究レビュー ... 21
2.1 CSR論における社会性と経済性 ... 22
2.1.1 「企業と社会」論における戦略... 22
(1)Carrollにおける戦略性 ... 24
(2)Freemanにおける戦略性 ... 25
2.1.2 戦略的CSR論およびCSV ... 27
(1)戦略的CSR論における戦略性 ... 27
(2)CSVにおける戦略性 ... 29
2.1.3 貢献と限界 ... 31
2.2 ステイクホルダー論における社会性と経済性 ... 32
2.2.1 規範的側面 ... 34
2.2.2 技術的側面 ... 35
2.2.3 記述的側面 ... 40
2.2.4 貢献と限界 ... 46
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2.3 戦略論における社会性と経済性 ... 49
2.3.1 オープン・システム企業観 ... 49
2.3.2 テクノロジー ... 50
2.3.3 企業ドメインとドメイン・コンセンサス ... 51
2.3.4 貢献と限界 ... 55
第3章 研究方法 ... 57
3.1 リサーチクエスチョンの設定 ... 57
3.2 本研究の手法 ... 59
3.3 分析枠組みの設定 ... 60
3.3.1 ステイクホルダー論にもとづく分析枠組み ... 60
3.3.2 戦略論にもとづく分析枠組み ... 62
3.4 事例研究の方法 ... 64
3.4.1 事例研究とする理由 ... 65
3.4.2 事例研究の手順 ... 68
3.4.3 単一企業の事例とする理由 ... 69
第4章 事例研究Ⅰ ... 73
4.1 事例研究Ⅰ 対象企業の抽出 ... 73
4.1.1 事例対象企業の抽出の手順 ... 73
4.1.2 事例対象企業の抽出の結果 ... 74
4.2 事例研究Ⅰの分析 ... 76
4.2.1 事例 ①東芝 ... 78
4.2.2 事例 ②トヨタ自動車 ... 82
4.2.3 事例 ③帝人 ... 86
4.2.4 事例 ④日産自動車 ... 90
4.2.5 事例 ⑤コニカミノルタ ... 95
4.2.6 事例 ⑥日立製作所 ... 99
4.2.7 事例 ⑦日本郵船 ... 104
4.2.8 事例 ⑧ダイキン工業 ... 108
4.2.9 事例 ⑨アイシン精機 ... 112
4.3 事例研究Ⅱ対象企業の選定 ... 116
iii
第5章 事例研究Ⅱ ... 121
5.1 事例企業の概要 ... 121
5.1.1 企業概要 ... 121
5.1.2 経済性の視点から見たトヨタ、社会性の視点から見たトヨタ ... 123
5.1.3 トヨタにおいて着目すべき社会課題と時期 ... 123
5.2 分析のステップ ... 125
5.3 社会課題(1) 1960年代の安全問題への対応 ... 126
5.3.1 安全問題への対応の経緯 ... 127
5.3.2 記述的ステイクホルダー論による分析 ... 132
5.3.3 オープン・システムとテクノロジーの分析 ... 138
5.3.4 企業ドメインとドメイン・コンセンサスの考察 ... 141
5.4 社会課題(2) 1990年代の地球温暖化問題への対応 ... 144
5.4.1 地球温暖化問題への対応の経緯... 144
5.4.2 記述的ステイクホルダー論による分析 ... 150
5.4.3 オープン・システムとテクノロジーの分析 ... 155
5.4.4 企業ドメインとドメイン・コンセンサスの考察 ... 160
5.5 社会課題(3) 2010年代の気候変動問題への対応 ... 161
5.5.1 2010年代の気候変動問題への対応の経緯 ... 161
5.5.2 記述的ステイクホルダー論による分析 ... 163
5.5.3 オープン・システムとテクノロジーの分析 ... 169
5.5.4 企業ドメインとドメイン・コンセンサスの考察 ... 169
5.6 発見事実 ... 170
5.6.1 ステイクホルダーへの対応 ... 171
5.6.2 企業ドメインの変化 ... 173
第6章 インタビュー調査 ... 177
6.1 事例研究からの発見事実 ... 177
6.2 インタビュー項目の設定 ... 179
6.3 インタビュー調査と実施結果 ... 181
6.4 インタビュー実施結果を踏まえた事例研究の補完 ... 183
6.4.1 ステイクホルダーへの対応に関する発見事実の補完 ... 183
iv
6.4.2 企業ドメインの変化に関する発見事実の補完 ... 188
6.4.3 トヨタへのインタビュー調査結果を踏まえた発見事実の補完 ... 194
第7章 考察 ... 199
7.1 社会性と経済性の因果関係に関する考察 ... 199
7.2 社会性と経済性の因果関係に関する本研究の3つの社会課題の考察 ... 200
7.3 社会性と経済性の因果関係に関する先行研究にもとづく考察 ... 209
第8章 結論 ... 215
8.1 研究のまとめ ... 215
8.2 分析視座に対する研究成果 ... 216
8.3 本研究の結論の一般化へ向けた予備的検討 ... 220
8.3.1 本研究の社会課題に対する他社の事例 ... 220
社会課題(1)1960年代の安全問題への対応(日産自動車の例) ... 222
社会課題(2)1990年代の地球温暖化問題への対応(日産自動車の例) ... 223
社会課題(3)2010年代の気候変動問題への対応(日産自動車の例)... 224
8.3.2 本研究の一般化へ向けて ... 224
8.4 CSR論および戦略論に関する研究にとっての評価・貢献 ... 227
8.4.1 学術的側面での貢献 ... 227
8.4.2 実践的側面での貢献 ... 230
8.5 今後の研究の発展可能性 ... 230
参考文献 ... 235
1.日本語文献 ... 235
(1)和図書 ... 235
(2)和雑誌(論文) ... 235
(3)その他 ... 238
2.外国語文献 ... 240
(1)洋図書 ... 240
(2)洋雑誌(論文) ... 242
(3)その他 ... 249
1
第 1 章 序 論
1.1 背 景 と 問 題 意 識
企 業 の 社 会 的 責 任 (Corporate Social Responsibility、 以 下 、CSR) が 注 目 を 集 め る よ う に な り 、 日 本 で 「CSR 元 年 」 と 呼 ば れ た 2003 年 か ら 、 十 数 年 が 経 過 し た 。現 在 、CSR は 、学 界 に お い て も 、経 済 界 に お い て も 、 既 に そ の 必 要 性 に つ い て は 一 定 の 理 解 を 得 、様 々 な 企 業 に お い て 取 り 組 み が 進 め ら れ て い る 。 学 界 で は 実 践 を 意 識 し た 議 論 も 活 発 化 し て き て お り 、 企 業 に お い て も 多 様 な 実 践 事 例 が 見 ら れ る よ う に な っ て き た 。
CSR の 実 践 が 進 む に つ れ て 、学 界 に お い て も 経 済 界 に お い て も 近 年 関 心 が 高 ま っ て き て い る の は 、企 業 に と っ て 、持 続 的 成 長 が 追 求 で き る よ う な CSR の 在 り 方 、 企 業 存 続 や そ の た め の 競 争 力 向 上 、 企 業 価 値 の 向 上 と い っ た 、 企 業 の 根 本 目 標 に 向 か っ て 動 機 づ け ら れ 、利 益 向 上 を も た ら す よ う な CSR の 在 り 方 で あ る 。す な わ ち 、CSR に 取 り 組 む に あ た っ て は 、社 会 性 と 経 済 性 を と も に 追 求 す る こ と が 志 向 さ れ る よ う に な っ て き て い る の で あ る 。
1.1.1 社 会 的 な 背 景
企 業 が 社 会 の 中 で 経 済 活 動 を 行 う に あ た っ て 、 経 営 者 も し く は 企 業 が 社 会 的 な 責 任 を 負 う べ き で あ る と す る 議 論 は 、 古 く か ら な さ れ て き た 。 そ し て 、 各 時 代 に お け る 社 会 の 状 況 や 課 題 を 反 映 し な が ら 、 企 業 が 社 会 に 対 し て い か な る 責 任 を 果 た す べ き か が 問 わ れ て き た 。
現 代 のCSRの 起 源 は 、欧 米 に そ の 源 流 を 見 る こ と が で き る 。亀 川・高 岡(2007)
で は 、18 世 紀 中 頃 の 英 国 に 端 を 発 す る 産 業 革 命 に 、CSR の 萌 芽 を 見 い だ し て い る(pp.3-7)。す な わ ち 、急 速 な 経 済 発 展 に 伴 い 都 市 労 働 者 が 急 増 し 、彼 ら が 強 い ら れ た 劣 悪 な 環 境 下 で の 労 働 や 生 活 へ の 対 策 と し て 、 一 部 の 企 業 家 や 工 場 主 等 が 労 働 環 境 改 善 運 動 を 進 め た こ と を 、CSR の 萌 芽 と し て 指 摘 し て い る の で あ る 。
現 代 の 日 本 に お い て は 、戦 後 復 興 期 の 後 に 訪 れ た 高 度 経 済 成 長 期 で あ る 1960
~1970年 代 に 、企 業 の 活 発 な 事 業 活 動 に 伴 う 環 境 汚 染 や 公 害 問 題 が 拡 大 し 、企
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業 の 対 策 が 問 わ れ た あ た り に 、 現 在 の 日 本 の CSR の 端 緒 を 見 る こ と が で き る 。 1980年 代 に は 、日 本 企 業 の 海 外 進 出 が 進 み 、進 出 先 の 各 国 の 社 会 動 向 や 文 化 へ 配 慮 し た 企 業 活 動 や 、 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ の 一 員 と し て の 責 任 の 遂 行 、 貢 献 な ど が 求 め ら れ る よ う に な っ た 。 そ の た め 、 日 本 企 業 は 国 内 外 で 、 フ ィ ラ ン ソ ロ ピ ー 、メ セ ナ 、社 会 貢 献 と い っ た CSR 活 動 に 取 り 組 ん だ 。日 本 企 業 が 本 格 的 な グ ロ ー バ ル 化 時 代 に 差 し 掛 か っ た 1990 年 代 前 半 に は 、 戦 後 日 本 で 長 期 に 渡 っ て 継 続 し て き た 安 定 成 長 が 終 焉 を 迎 え 、 い わ ゆ る バ ブ ル 経 済 が 崩 壊 し た 。 日 本 企 業 は 、 長 引 く 不 況 に 生 産 性 の 向 上 や 雇 用 の 調 整 で 対 応 し つ つ 、 一 方 で 、1990 年 代 頃 か ら 注 目 さ れ 始 め た 地 球 規 模 で の 環 境 問 題 と い っ た 新 た な CSR へ の 対 応 も 求 め ら れ る こ と と な っ た 。
2000年 代 に 入 る と 、米 国 で エ ン ロ ン 、ワ ー ル ド コ ム と い っ た 巨 大 企 業 が 、不 正 経 理 や 不 正 取 引 に よ る 巨 額 の 粉 飾 会 計 に よ っ て 経 営 破 綻 し た 。 こ れ ら の 米 国 に お け る 企 業 不 祥 事 は 、 法 令 遵 守 (Compliance) や 企 業 統 治 (Corporate governance)の 必 要 性 と と も に 日 本 で も 紹 介 さ れ 、CSR の 重 要 性 が 日 本 で も 喚 起 さ れ る 契 機 と な っ た 。
以 上 の こ と か ら す る と 、CSR と は 、企 業 や 産 業 が 経 済 的 発 展 を 遂 げ る た び に 、 発 展 に 伴 い 拡 大 す る 負 の 部 分 へ の 対 応 と し て 、 そ の 都 度 浮 上 し て き た テ ー マ で あ っ た 。 こ の よ う に 、CSR は 、 経 済 界 で も 長 く 扱 わ れ て き た テ ー マ で あ る が 、 日 本 に お け る CSR 元 年 と 呼 ば れ た 2003 年 か ら 十 数 年 が 経 過 し た 現 在 で は 、一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ ら せ る の で は な く 、 定 着 さ せ 、 実 践 し よ う と す る 取 り 組 み が 進 ん で い る 。
例 え ば 、 近 年 の 以 下 の よ う な 点 に 、 実 践 志 向 が 見 て 取 れ る 。 第 一 に 、 企 業 に よ る 情 報 開 示 お よ び 外 部 他 者 に よ る 評 価 が 、 進 展 、 定 着 し て き た こ と で あ る 。 近 年 で は 、 企 業 が CSR 報 告 書 、 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ レ ポ ー ト 等 を 発 行 し 、CSR 等 へ の 取 り 組 み を 企 業 の ウ ェ ブ サ イ ト 等 で 公 開 す る こ と が 、 広 く 行 わ れ る よ う に な っ た 。 ま た 、 企 業 が 開 示 し た 情 報 に 対 し て 、 メ デ ィ ア や シ ン ク タ ン ク 、 非 営 利 組 織 等 が 、各 企 業 の CSR に 対 す る 評 価 や ラ ン キ ン グ 等 を 実 施 す る 取 り 組 み も 進 展 ・ 定 着 し つ つ あ る 。 こ れ ら は 、 企 業 に よ る 情 報 開 示 と 外 部 他 者 か ら の 評 価 や 監 視 を 継 続 的 に 行 え る 状 況 を 整 え る こ と に よ っ て 、CSR を 一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ ら せ る こ と な く 、 確 実 に 定 着 さ せ て い こ う と す る 、 実 践 志 向 の 動 き と 見
3 る こ と が で き る 。
第 二 に 、CSR を 市 場 経 済 の シ ス テ ム に 組 み 込 ん で い く 動 き で あ る 。た と え ば 、 社 会 的 責 任 投 資 (Socially Responsible Investment、 以 下 、SRI) 等 の 手 法 が 登 場 し 、運 用 さ れ て い る 。SRI と は 、従 来 型 の 財 務 分 析 に よ る 投 資 基 準 に 加 え 、 法 令 遵 守 や 雇 用 問 題 、人 権 問 題 、消 費 者 対 応 、社 会 や 地 域 へ の 貢 献 な ど の 社 会 ・ 倫 理 面 お よ び 環 境 面 か ら 、 企 業 を 評 価 ・ 選 別 し 、 安 定 的 な 収 益 を 目 指 す 投 資 手 法 で あ る 。 ま た 近 年 、 投 資 家 ・ 金 融 機 関 の 間 で 環 境 ・ 社 会 ・ ガ バ ナ ン ス
(Environment、Social、Governance)を 投 資 プ ロ セ ス に 組 み 入 れ る こ と に よ り 、企 業 の 社 会 に 対 す る 積 極 的 な 貢 献 を 評 価 す る「 責 任 投 資 原 則 」(Principles for Responsible Investment、 以 下 、PRI) 等 も 運 用 さ れ る よ う に な っ て き た 。 こ の よ う に 、 企 業 を 財 務 成 果 の 側 面 だ け で な く 社 会 的 成 果 の 側 面 を 踏 ま え て 評 価 し 、 投 資 先 を 選 択 す る 手 法 も 見 ら れ る よ う に な っ て い る 。 社 会 的 評 価 の 低 い 企 業 は 、 投 資 を 受 け る こ と が 難 し く な る た め 、 社 会 的 評 価 向 上 に 努 め ざ る を 得 な く な る 。 こ う し て 市 場 経 済 の シ ス テ ム に 組 み 込 む こ と に よ っ て 、 企 業 の 社 会 性 が 自 然 に 促 さ れ る 仕 組 み も ま た 、実 践 志 向 の 一 つ の 表 れ と 見 る こ と が で き る 。
第 三 に 、ソ フ ト ロ ー と ハ ー ド ロ ー の 双 方 に よ る CSR の 推 進 で あ る 。ハ ー ド ロ ー と は 、「 拘 束 力 を 持 つ 準 則(rule)で 、最 終 的 に は そ れ ぞ れ の 社 会 で 正 当 性 を 持 っ て い る 政 治 体 が 強 制 に よ っ て 実 現 す る こ と が 予 定 さ れ て い る も の の 総 体 」 で あ る ( 田 中 ,1974,p.8)。 一 方 、 ソ フ ト ロ ー と は 、「 国 の 法 律 で は な く 、 最 終 的 に 裁 判 所 に よ る 強 制 的 実 行 が 保 証 さ れ て い な い に も か か わ ら ず 、 現 実 の 経 済 社 会 に お い て 国 や 企 業 が 何 ら か の 拘 束 感 を 持 ち な が ら 従 っ て い る 諸 規 範 」( 中 山 ,2005,p.2) で あ る 。 現 在 の CSR に お い て は 、 ハ ー ド ロ ー に よ り 法 令 遵 守 を 促 す だ け で な く 、 企 業 に よ る CSR の 実 践 事 例 を 参 考 に 、OECD 多 国 籍 企 業 ガ イ ド ラ イ ン1、 国 連 グ ロ ー バ ル ・ コ ン パ ク ト2、ISO260003、GRI ガ イ ド ラ イ ン4等 の ソ フ ト ロ ー に よ る ガ イ ド ラ イ ン 化 も 進 行 し て い る 。こ れ は 、法 的 拘 束 力 と と も に 、 あ る べ き 規 範 や 指 針 を 示 し な が ら 企 業 が 実 態 に 合 わ せ て 運 用 で き る よ う 、 現 実 的 な CSR の 実 践 を 志 向 し た も の と 見 る こ と が で き る 。CSR を 単 に 履 行 へ の 称 讃 や 不 履 行 へ の 批 判 と い っ た 感 情 的 な 側 面 に よ っ て 遂 行 さ せ よ う と す る の で は な く 、 企 業 や 市 場 に お い て 様 々 な 制 度 や ガ イ ド ラ イ ン を 設 け る こ と に よ っ て 、CSR が 自 発 的 に 促 さ れ る よ う な 現 実 的 解 を 探 っ て い る も の と 見 る こ
4 と も で き る 。
前 述 の よ う な 状 況 の 中 で 、 日 本 に お い て 社 会 的 責 任 の 実 践 を リ ー ド し て き た 経 済 団 体 が 、 新 た な 提 言 の 提 出 や 、 改 定 を 行 っ た 。 経 済 同 友 会 は 、2012 年 6 月 に 、「 社 会 益 共 創 企 業 へ の 進 化 ~ 持 続 可 能 な 社 会 と 企 業 の 相 乗 発 展 を 目 指 し て ~ 」 と す る 提 言 を ま と め た 。 提 言 の 中 で は 、 社 会 貢 献 と 事 業 成 長 を 持 続 的 に 両 立 す る こ と 、CSR を 経 営 の 一 部 と 見 な す の で は な く 、「 経 営 」 そ の も の と す る こ と や 、 本 業 を 通 じ て 社 会 と の 持 続 可 能 な 相 乗 発 展 を 目 指 す と し 、 そ の た め の 要 素 と し て 、経 営 戦 略 や 事 業 継 続 性 の 強 化 に 言 及 し て い る( 経 済 同 友 会 ,2012, pp.3-12)。
ま た 、 日 本 経 済 団 体 連 合 会 は 、2017年 11 月 に 、 企 業 の 責 任 あ る 行 動 原 則 を 定 め た 「 企 業 行 動 憲 章 」 の 第 5回 目 の 改 定 を 行 っ た 。 前 文 に お い て 、 旧 版 で は
「 付 加 価 値 を 創 出 し 、 雇 用 を 生 み 出 す な ど 経 済 社 会 の 発 展 を 担 う 」 も の と し て い た 企 業 の 存 在 に つ い て 、さ ら に 踏 み 込 ん だ 表 現 で 、「 社 会 に 有 用 な 付 加 価 値 お よ び 雇 用 の 創 出 と 自 律 的 で 責 任 あ る 行 動 を 通 じ て 、 持 続 可 能 な 社 会 の 実 現 を 牽 引 す る 役 割 を 担 う 」 存 在 へ と 規 定 し 直 し て い る 。 ま た 、 目 指 す べ き 方 向 性 と し て は 、「 経 済 成 長 と 健 康 ・ 医 療 、農 業 ・ 食 料 、環 境 ・ 気 候 変 動 、エ ネ ル ギ ー 、安 全 ・ 防 災 、 人 や ジ ェ ン ダ ー の 平 等 な ど の 社 会 的 課 題 の 解 決 と が 両 立 し 、 一 人 ひ と り が 快 適 で 活 力 に 満 ち た 生 活 が で き る 社 会 」 の 実 現 で あ る こ と を 明 記 し た 。 そ し て 、そ の 実 践 に あ た っ て は 、「 実 効 あ る ガ バ ナ ン ス を 構 築 し て 社 内 、グ ル ー プ 企 業 に 周 知 徹 底 を 図 る 。 あ わ せ て サ プ ラ イ チ ェ ー ン に も 本 憲 章 の 精 神 に も と づ く 行 動 を 促 す 」 と 、 経 営 活 動 全 体 で 取 り 組 む と さ れ て い る ( 日 本 経 済 団 体 連 合 会 ,2017)。
経 済 同 友 会 お よ び 日 本 経 済 団 体 連 合 会 の 提 言 に 共 通 し て い る の は 、 持 続 可 能 な 社 会 の た め に は 、 企 業 が 、 社 会 の 経 済 成 長 と 社 会 課 題 解 決 の 両 立 に 寄 与 す る こ と や 、 企 業 内 部 に お い て も 、 社 会 貢 献 と 事 業 成 長 を 持 続 的 に 両 立 さ せ る こ と が 必 要 だ と の 認 識 で あ る 。ま た 、そ の た め に は 、経 営 活 動 全 体 で の 取 り 組 み や 、 経 営 戦 略 等 が 必 要 で あ る と 謳 わ れ て い る の で あ る 。
さ ら に 、グ ロ ー バ ル で も 、同 様 の 動 き が 見 て 取 れ る 。2015 年 9月 の 国 連 サ ミ ッ ト に お い て 全 会 一 致 で 採 択 さ れ た 、「 持 続 可 能 な 開 発 目 標 (Sustainable Development Goals、以 下 、SDGs)」の 動 向 で あ る 。こ こ で は 、17 の 持 続 可 能
5
な 開 発 の た め の 目 標 と 169 の タ ー ゲ ッ ト が 示 さ れ て い る が 、こ れ ら の 目 標 お よ び タ ー ゲ ッ ト は 、 持 続 可 能 な 開 発 の 三 側 面 、 す な わ ち 経 済 、 社 会 お よ び 環 境 に お い て 、 統 合 さ れ 、 不 可 分 の も の で あ り 、 調 和 さ せ る も の で あ る と 謳 わ れ て い る ( 国 連 開 発 計 画 ,2015)。 こ の こ と は 、 持 続 可 能 な 開 発 に は 、 社 会 性 の み で も 、 経 済 性 の み で も な く 、 こ れ ら を 統 合 し と も に 達 成 し て い く 必 要 が あ る と い う 認 識 が 、 グ ロ ー バ ル レ ベ ル に お い て も 合 意 形 成 さ れ て い る も の と 見 る こ と が で き る 。
以 上 の 各 経 済 団 体 ・ 組 織 の 主 張 か ら は 、 企 業 が 、 ① 社 会 性 と 経 済 性 が 一 体 化 し た 価 値 の 創 造 を 、 ② 経 営 活 動 全 体 で 展 開 し て い く べ き で あ る 、 と い っ た 、 現 代 の 共 有 認 識 が 見 え て く る 。こ れ ら の 認 識 は 、後 述 す る 戦 略 的 CSR、共 通 価 値 の 創 造 (Creating Shared Value、 以 下 、CSV)、 社 会 戦 略 等 の 概 念 で 提 起 さ れ て い る 、 社 会 性 と 経 済 性 の 双 方 を 志 向 し て い る こ と 、 そ の た め の 戦 略 が 必 要 と い っ た 主 張 と も よ く 符 合 し て い る 。こ の よ う な 経 済 界 の 認 識 の 変 化 は 、企 業 が 、 CSR 報 告 書 や サ ス テ ナ ビ リ テ ィ レ ポ ー ト 等 の 発 行 に よ る 情 報 の 開 示 、ま た 、ソ フ ト ロ ー や ハ ー ド ロ ー と い っ た 様 々 な 枠 組 み へ 一 通 り 対 応 し た 上 で 、 さ ら な る 発 展 を 目 指 し て い る 状 況 に あ る と 捉 え る こ と も で き よ う 。
以 上 の よ う に 、現 在 、経 済 界 に お け る CSR は 、社 会 性 と 経 済 性 の 双 方 が 志 向 さ れ 、 そ れ を 、 本 業 を 通 じ て 経 営 活 動 全 体 で 展 開 し て い く た め の 実 践 的 な 方 策 が 模 索 さ れ て い る 状 況 に あ る と い え る 。
1.1.2 学 術 的 な 背 景
続 い て 、CSR を め ぐ る 学 術 的 な 背 景 を 概 観 す る 。CSR の 萌 芽 は 、前 項 で 述 べ た 通 り 、18 世 紀 中 頃 の 産 業 革 命 あ た り に 見 る こ と が で き る( 亀 川・高 岡 ,2007,
pp.3-7)。急 速 な 経 済 発 展 に 伴 い 都 市 労 働 者 が 急 増 し 、彼 ら が 強 い ら れ た 劣 悪 な 環 境 下 で の 労 働 や 生 活 へ の 対 策 が 必 要 と な っ た と き 、 一 部 の 企 業 家 や 工 場 主 等 に よ っ て 進 め ら れ た 労 働 環 境 改 善 運 動 等 が 、CSR の 萌 芽 と な っ た 。「 経 営 学 に お け る 社 会 的 責 任 論 の 嚆 矢 」( 森 本 ,1994,p.6)と さ れ る Sheldon も 、そ の よ う な 企 業 家 の 一 人 で あ っ た 。Sheldon(1924)が 論 じ た 経 営 者 の 社 会 的 責 任 は 、 主 と し て 、 労 使 関 係 を 中 心 と し た 経 営 管 理 の 問 題 で あ っ た 。 こ の よ う に 、CSR 論 は 、主 と し て 産 業 福 祉 に 関 す る 企 業 家 の 責 任 問 題 と し て 誕 生 し た 経 緯 が あ る 。
6
1940 年 代 に は 、 米 国 で も CSR 論 が 展 開 さ れ る よ う に な っ た 。 山 城 (1949) は 、 ハ ー バ ー ド 大 学 の David が 、 企 業 責 任 性 (Business Responsibilities) に つ い て 各 所 で 行 っ た 講 演 が 、 米 国 の 経 営 学 会 に 多 大 な 関 心 を 惹 き 起 こ し 、 ハ ー バ ー ド ビ ジ ネ ス レ ビ ュ ー 誌 が 1949 年 の 5 月 号 に 特 別 附 録 と し て そ の 論 旨 を 掲 載 し た5こ と を 伝 え て い る(pp.8-13)。こ の 講 演 は 、米 国 の 商 工 会 議 所 、ハ ー バ ー ド ·ビ ジ ネ ス ·ス ク ー ル ·ク ラ ブ 、経 済 ク ラ ブ と い っ た 、経 営 者 や 同 大 の 卒 業 生 を 対 象 に 行 わ れ た も の で あ っ た 。 以 後 、 経 営 者 養 成 機 関 で あ る ハ ー バ ー ド 大 学 は 、社 会 的 責 任 に 関 す る 研 究 を 数 多 く 行 っ て き た6。そ の 後 、企 業 の 大 規 模 化 の 進 展 、 専 門 経 営 者 の 誕 生 、 所 有 と 支 配 の 分 離 、 企 業 を 巡 る 利 害 関 係 者 の 拡 大 に 伴 い 、 単 な る 企 業 家 の 責 任 を 離 れ 、 企 業 の 経 営 管 理 上 の 問 題 と し て 広 く 議 論 さ れ る よ う に な っ て き た 。
日 本 に お い て 広 く CSR が 広 く 知 ら れ る よ う に な っ た の は 、CSR 元 年 と 呼 ば れ た 2003年 頃 か ら で あ る が 、日 本 に お け る CSR の 文 献 数 の 推 移 を 分 析 し て み る と 、 図 1-1 の よ う に な る 。
出 所:国 立 情 報 学 研 究 所 の 学 術 論 文 情 報 検 索 デ ー タ ベ ー ス「CiNii」 の 検 索 結 果 を も と に 筆 者 作 成
図 1-1 日 本 に お け る CSR 関 連 論 文 数 お よ び 戦 略 に 関 す る 論 文 数 の 推 移
0 10 20 30 40 50 60 70 800 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 1,100
1948 1950 1952 1954 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018
(件) (件)
年 うち,戦略
CSR OR 社会的責任 OR 社会貢献 OR 企業倫理
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図 1-1 で は 、1960 年 代 、1970 年 代 、1990年 代 に も 、企 業 の 社 会 的 責 任 に 関 す る 論 文 数 の 増 加 が 認 め ら れ る が 、当 時 の 論 考 は 、社 会 的 責 任 に つ い て 、な ぜ 、 何 を 果 た す べ き な の か と い う 点 に 関 す る 規 範 的 な も の や 、公 害 問 題 、労 働 問 題 、 社 会 貢 献 と い っ た 個 別 課 題 に 関 す る も の が 中 心 で あ っ た 。一 方 で 、2003 年 以 降 の CSR 論 で は 、学 界 に お い て も 、実 際 の 企 業 活 動 を 前 提 に 実 践 を 志 向 し た 議 論 が 興 隆 し て い る 点 に 、そ の 特 徴 を 見 る こ と が で き る 。2003年 当 時 目 立 っ た の は 、 か つ て 1960 年 代 、1970 年 代 、1990 年 代 に も 社 会 的 責 任 論 が 注 目 さ れ た も の の 、 や が て 下 火 に な っ た こ と を 思 い 起 こ し 、2003 年 以 降 の CSR が 、 ま た し て も 一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ る の で は な い か と の 懸 念 が 広 が っ た こ と で あ る7。こ の 懸 念 を 背 景 に 、 今 回 は 一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ ら せ る の で は な く 日 本 社 会 に も し っ か り と 根 付 か せ る べ き で は な い か 、 と の 論 調 が 高 ま っ た 。 そ の 結 果 、2003 年 以 降 の CSR 論 に お い て は 、実 践 的 で あ る こ と や 、定 着 可 能 で あ る こ と 等 に つ い て も 注 意 が 払 わ れ る よ う に な っ て き た 。
で は 、ど う す れ ば 、CSR を 一 過 性 の ブ ー ム で は な く 、実 践 、定 着 で き る の だ ろ う か 。こ の よ う な 問 い へ の 一 つ の 解 と し て 、図 1-1 に 見 ら れ る よ う に 、2003 年 以 降 の CSR 論 に お い て 、戦 略 へ の 言 及 が 急 増 し た も の と 考 え ら れ る 。戦 略 へ の 言 及 が 必 要 と さ れ る に 至 っ た 学 術 的 背 景 に つ い て は 、 第 2 章 で 後 述 す る が 、 近 年 のCSR論 に お い て は 、戦 略 的CSR( 伊 吹 ,2005,2014;Porter and Kramer,
2006; 水 尾 ,2010)、CSV(Porter and Kramer,2011) と い っ た 概 念 が 提 起 さ れ る な ど 、CSR 論 に お け る 戦 略 的 側 面 が 大 い に 注 目 さ れ る よ う に な っ て き て い る 。こ れ ら 戦 略 に 言 及 し た CSR 論 は 、そ も そ も 背 反 す る 存 在 で あ る と 認 識 さ れ て き た 社 会 性 と 経 済 性 を 、 と も に 追 求 す る こ と を 志 向 し た も の で あ る が 、 社 会 的 背 景 、 す な わ ち 、 景 気 動 向 等 に よ っ て 企 業 環 境 が 激 変 し て も な お 継 続 で き る よ う な CSR の 在 り 方 が 問 わ れ る よ う に な っ て き た 状 況 と 相 俟 っ て 、学 術 的 に も 一 定 の 存 在 感 を 示 す よ う に な っ て き て い る 。現 在 、CSR は 、企 業 存 続 や 競 争 力 向 上 と い っ た 企 業 の 根 本 目 標 に 向 か っ て 動 機 づ け ら れ る 必 要 が あ る こ と 、 そ れ に は 、あ る 種 の 戦 略 性 が 必 要 で あ る こ と が 主 張 さ れ る よ う に な っ て き て い る 。
以 上 の よ う に 、 現 在 の 学 界 に お け る CSR 論 の 研 究 で は 、 過 去 の CSR 論 の 動 向 を 反 映 し 、 前 項 で 述 べ た 社 会 的 背 景 と 相 俟 っ て 、 実 際 の 企 業 活 動 を 前 提 と し た 実 践 志 向 が 強 調 さ れ て お り 、 こ れ を 学 術 的 に 解 明 し て い く 必 要 性 に 迫 ら れ て
8 い る 。
1.1.3 社 会 性 と 経 済 性 を 巡 る 問 題
前 項 で は 、CSR を め ぐ る 社 会 的 お よ び 学 術 的 背 景 を 概 観 し た 。い ず れ に お い て も 、現 在 の CSR は 、一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ る こ と の な い よ う に と 、実 践 、定 着 が 求 め ら れ て お り 、 実 現 の た め の 一 つ の 解 と し て 、 社 会 性 と 経 済 性 の 双 方 が 志 向 さ れ 、 そ れ を 、 本 業 を 通 じ て 経 営 活 動 で 展 開 し て い く た め の 戦 略 が 模 索 さ れ て い る 状 況 に あ る 。
と こ ろ で 、 社 会 性 と 経 済 性 と は 、 ど の よ う な 関 係 に あ る の だ ろ う か 。 そ も そ も 企 業 は 、 社 会 の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ の 対 価 と し て 利 益 を 獲 得 す る と い う 存 在 で あ る 。 つ ま り 、 企 業 は 、 社 会 の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス と い っ た 社 会 的 成 果 ( 本 研 究 で は こ れ を 社 会 性 と 呼 ぶ ) を 創 出 し 、 企 業 に と っ て の 財 務 的 成 果 ( 本 研 究 で は こ れ を 経 済 性 と 呼 ぶ ) を 得 る こ と に よ っ て 存 在 し て い る の で あ る 。 従 っ て 、 現 在 存 在 し て い る 企 業 は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し て い る か ら こ そ 存 在 し て い る の だ と 言 え よ う 。
い わ ば 、企 業 の 生 存 条 件 と も い う べ き 社 会 性 と 経 済 性 で あ る が 、CSR 論 に お い て は 伝 統 的 に 、 両 者 は 対 立 す る も の 、 ト レ ー ド オ フ 関 係 と し て 捉 え る も の と す る 認 識 が あ っ た 。 し か し 、 現 在 そ の 認 識 は 変 化 し つ つ あ る 。
例 え ば 、高 岡(2018)に よ る と 、Visser(2010)や Laasch and Flores(2010)
は 、 社 会 性 と 経 済 性 の 関 係 に つ い て の 認 識 の 変 化 を 、CSR1.0 か ら CSR2.0 へ の パ ラ ダ イ ム 転 換 と 捉 え て い る と い う 。 つ ま り 、CSR1.0 と は 、CSR と 企 業 の 経 済 的 利 益 と の 関 係 を ト レ ー ド オ フ で 捉 え 、 前 者 は 後 者 に 貢 献 し な い 、 と い う 前 提 で 、「CSR か 利 益 か 」と 二 者 択 一 的 な 発 想 と な る 。と こ ろ が 、CSR2.0 と は 、 CSR と 企 業 の 経 済 的 利 益 と の 関 連 づ け を 前 提 と し た 発 想 の 議 論 で あ り 、経 済 的 利 益 対 社 会 的 利 益 、 と い っ た 二 項 対 立 で は な く 、 包 含 的 思 考 で 捉 え 、 そ の 両 立 の パ ス の 開 拓 を 指 向 す る も の だ と 説 明 し て い る ( 高 岡 ,2018,p.46)。
ま た 、高 岡(2018)は 、企 業 と は 経 済 的 利 益 を 追 求 す る も の で あ り 、CSR は 企 業 の 行 動 原 則 を 制 御 す る も の で あ る 、と の 前 提 を 明 確 に し た 上 で 、CSR を 意 識 し た 意 思 決 定 ・ 経 営 判 断 と は 、 単 元 的 な 経 済 的 利 益 の 最 大 化 で は な く 、 多 元 的 目 標 ( 現 在 と 将 来 の 企 業 価 値 、 経 済 的 利 益 と 社 会 的 責 任 な ど ) の 組 み 合 わ せ
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の 最 適 化 を 指 向 し た 判 断 で あ る 、と の 見 方 を 提 起 し て い る(p.52)。こ の 見 方 に 立 て ば 、 社 会 性 は 経 済 性 を 制 御 す る も の と し て 、 理 論 上 も 対 立 す る こ と な く 、 企 業 の 中 で 両 立 ・ 共 存 で き る こ と に な る 。
社 会 性 と 経 済 性 の 関 係 に つ い て 、 上 林(2017)は 、そ も そ も 経 営 学 に お け る 合 理 性 の 2 軸 で あ っ た と 、 さ ら に 大 き く 捉 え て い る 。 す な わ ち 、 経 済 性 と は 、 一 定 の 成 果 を 最 小 の 費 用 で 達 成 し よ う と す る こ と で あ り 、 社 会 性 と は 、 人 間 と 人 間 の 間 の 関 係 で あ る 社 会 に 適 合 し よ う と す る 志 向 で あ り 、こ の 2軸 は ト レ ー ド オ フ の 関 係 で 捉 え ら れ 、 経 営 学 は こ れ ま で 分 析 の 基 礎 に 据 え て き た 。 経 営 者 は 、 少 な く と も 短 期 的 に は 社 会 合 理 性 よ り も 経 済 合 理 性 の 優 先 順 位 を 高 く 置 い て 行 動 す る も の と 理 解 さ れ て き た が 、 今 や 企 業 は 、 経 済 性 と 社 会 性 の は ざ ま で 揺 れ つ つ も 、 経 済 性 志 向 に 加 え 、 何 ら か の 形 で 社 会 性 を も 勘 案 し 、 取 り 込 ん だ 上 で 経 営 す る 方 向 へ と 徐 々 に 変 化 し つ つ あ る 、と 指 摘 し て い る(pp.69-76)。こ の よ う に 、 伝 統 的 に 、 社 会 性 と 経 済 性 は 対 立 す る も の 、 ト レ ー ド オ フ 関 係 と し て 捉 え る も の と す る 認 識 が あ っ た 。
な ぜ 、対 立 す る も の と 捉 え ら れ 続 け て き た の だ ろ う か 。そ の 一 因 と し て 、CSR と は も と も と 、 前 述 の よ う に 、 産 業 革 命 等 を 通 じ て 企 業 や 産 業 が 経 済 的 発 展 を 遂 げ る 一 方 で 拡 大 す る 経 済 的 発 展 の 負 の 部 分 へ の 対 応 と し て 誕 生 し た と い う 経 緯 を 挙 げ る こ と が で き る だ ろ う 。 経 済 的 発 展 を 遂 げ て い る 時 の 企 業 に と っ て 、 社 会 性 へ の 対 応 と は 、 負 の 部 分 へ 対 応 す る た め に 一 定 の 経 済 性 を 犠 牲 に し な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る 。 前 述 の 上 林 (2017)の 説 明 も 同 様 で あ る 。 ゆ え に 、CSR 論 に お い て は 伝 統 的 に 、社 会 性 と 経 済 性 は 背 反 す る 存 在 で あ り 、と も に 追 求 す る こ と は 容 易 で は な い と 認 識 さ れ て き た 。 経 済 性 を 犠 牲 に し な け れ ば な ら な い の で あ れ ば 、 企 業 に と っ て 社 会 性 の み の 追 求 は 、 さ ほ ど 誘 因 と は な り 得 な い 。 よ っ て 、CSR は し ば し ば 一 過 性 の ブ ー ム に 終 わ っ て き た の で あ る 。
し か し 、現 在 の CSR 論 の 趨 勢 は 、両 者 を 対 立 す る も の と し て 捉 え る の で は な く 、 両 者 を と も に 達 成 す る と い う 方 向 性 を 追 求 し て い る 。 つ ま り 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る こ と に よ っ て 、 単 に 社 会 の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ の 対 価 と し て の 利 益 を 獲 得 す る の み な ら ず 、 両 者 を 志 向 す る こ と に よ っ て 、 さ ら な る 新 市 場 の 開 拓 や 、 企 業 の 競 争 優 位 の 獲 得 と い っ た 、 よ り 一 層 の 社 会 性 と 経 済 性 を 達 成 す る こ と が 主 張 さ れ る よ う に な っ て き た の で あ る 。
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し か し な が ら 、 そ の 方 法 論 は 、 明 確 に な っ て い る だ ろ う か 。
社 会 的 状 況 か ら 見 る と 、 既 に 多 く の 企 業 が 、 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ レ ポ ー ト 等 を 通 じ て 自 社 の CSR へ の 取 り 組 み を ア ピ ー ル す る よ う に な っ て い る 。取 り 組 み に は 、 社 員 に よ る ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 と い っ た 、 本 業 で の 利 益 に 直 結 し な い 旧 来 の 社 会 貢 献 活 動 か ら 、地 球 レ ベ ル で の CO2削 減 に 寄 与 し よ う と 大 規 模 な 投 資 を 伴 っ て 市 場 を 開 拓 し 新 た な 利 益 を 獲 得 す る も の ま で 、 様 々 な も の が 見 ら れ る 。 こ の 事 実 は 、CSR の 実 践 手 段 が 多 様 で あ り 、企 業 が そ の 在 り 方 を 模 索 し て い る 姿 と 見 る こ と が で き よ う 。ま た 、近 年 で は 、CSR へ の 取 り 組 み 状 況 を 評 価 し 企 業 を 順 位 付 け す る CSR ラ ン キ ン グ が 多 数 存 在 し て い る8。こ の 事 実 は 、CSR の 実 施 レ ベ ル に は 企 業 に よ っ て 差 が あ り 、 そ れ は 、 実 践 手 段 に も 恐 ら く 優 劣 が あ る の だ と い う こ と を 示 唆 し て い る も の と 考 え ら れ る 。
ま た 、 学 術 的 状 況 か ら 見 る と 、 高 岡 (2018) は 、 社 会 性 は 経 済 性 を 制 御 す る も の と い う 見 方 を 提 起 し た が 、 そ の 方 法 、 す な わ ち 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 利 害 を 充 足 し つ つ 、 企 業 の 経 済 的 価 値 を 増 幅 、 獲 得 す る プ ロ セ ス 、 価 値 創 造 プ ロ セ ス の メ カ ニ ズ ム や そ の マ ネ ジ メ ン ト に つ い て は 、 未 だ 学 術 的 に 明 示 さ れ て い る わ け で は な い と 指 摘 し て い る (p.51)。 上 林 (2017) も ま た 、 現 在 企 業 は 、 経 済 性 志 向 に 加 え 、 社 会 性 を も 勘 案 し 、 取 り 込 ん だ 上 で 経 営 す る 方 向 へ と 徐 々 に 変 化 し つ つ あ る と 指 摘 し た が 、 現 実 の 経 営 実 践 が 、 経 済 性 と 社 会 性 の 両 立 を 模 索 し 揺 れ つ つ も 徐 々 に 混 交 し て い く 姿 を 、 学 術 と し て の 経 営 学 は 、 現 状 で は 精 確 に 照 射 し き れ て い な い 、 と 指 摘 し て い る (pp.69-76)。
こ の よ う に 、現 在 、社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る こ と が 志 向 さ れ な が ら 、 そ の 実 現 の 方 策 に 関 し て は 研 究 に よ る 具 体 的 な 解 明 が 十 分 に な さ れ な い ま ま 、 企 業 に よ る 多 様 な 実 践 が 進 行 し て い る 状 態 に あ る 。 例 え ば 、 企 業 に と っ て 社 会 性 の 追 求 は 経 済 性 に 本 当 に 寄 与 す る の か 、 と い っ た 因 果 関 係 に つ い て は 、 未 だ 明 確 な 答 え が 出 て お ら ず 、 研 究 が 進 行 中 で あ る 。 そ の 根 本 に は 、 社 会 性 と 経 済 性 を 巡 る 問 題 、 す な わ ち 、 両 者 は な ぜ 、 ど の よ う に す れ ば 、 と も に 達 成 で き る の か 、 と い う 問 い が 横 た わ っ て い る 。
社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る よ う な CSR の 実 践 の 道 筋 は 、学 術 的 に 明 ら か に な っ て い る と は い い 難 く 、 未 だ 解 明 途 上 に あ る と 言 え よ う 。 も は や 社 会 性 と 経 済 性 が 背 反 す る と の 過 去 の ロ ジ ッ ク を 乗 り 越 え て 、 両 者 は な ぜ 、 ど の よ う
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に す れ ば 、 と も に 達 成 で き る の か を 議 論 す る 段 階 を 迎 え て い る の で あ る 。
1.1.4 本 研 究 の 問 題 意 識
前 述 の よ う に 、現 在 、CSR の 在 り 方 は 、模 索 状 況 に あ る 。そ れ で は 、企 業 存 続 や そ の た め の 競 争 力 向 上 と い っ た 企 業 の 根 本 目 標 に 向 か っ て 動 機 づ け ら れ 、 利 益 向 上 を も た ら す よ う な CSR の 在 り 方 、つ ま り 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る CSR と は 、 ど う す れ ば 実 現 す る の だ ろ う か 。
近 年 、社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 に つ い て は 、後 述 す る よ う に 、戦 略 的 CSR、CSV、
ま た 、 社 会 戦 略 と い っ た 概 念 で 論 じ ら れ る よ う に な っ て き た 。 こ れ ら の 論 考 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 の た め に は 、 あ る 種 の 戦 略 性 が 必 要 で あ る こ と が 、 各 々 主 張 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 論 考 の 多 く は 、 優 れ た 事 例 を 取 り 上 げ 、 ど の よ う な 事 業 を 行 っ て い る か 、 ど こ が 優 れ て い る か 、 と い っ た “ 結 果 ” を 列 挙 す る に と ど ま っ て い る 。 戦 略 的 と 呼 び な が ら も 、 そ の よ う な 戦 略 が ど う や っ て 形 成 さ れ て き た の か に 言 及 す る こ と な く 、本 業 を 通 じ て CSR に 取 り 組 む こ と や 、経 営 戦 略 へ 組 み 込 む こ と な ど が 説 か れ る 。伊 吹(2014)の よ う に 、 戦 略 形 成 の 過 程 に 言 及 し よ う と し た 論 考 も 一 部 に 見 ら れ る も の の 、 多 く の 論 考 は 、 事 例 の 詳 細 な 分 析 結 果 に も と づ い て 主 張 さ れ た も の で は な く 、 規 範 的 に 論 じ ら れ て い る の で あ る 。さ ら に 、形 成 さ れ た 戦 略 の 遂 行 の プ ロ セ ス に つ い て も 、 未 だ 議 論 が 進 ん で い な い 。
そ こ で 、本 研 究 で は 、社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る CSR と は 、ど う す れ ば 実 現 す る の だ ろ う か 、 と い う 問 題 意 識 の も と 、 こ れ を 学 術 的 に 解 明 す る と と も に 、 実 践 に 寄 与 す る 知 見 の 導 出 を 目 指 す 。
1.2 研 究 の 概 要
1.2.1 研 究 の 目 的本 研 究 の 目 的 は 、 上 述 し た 研 究 の 背 景 と 問 題 意 識 の も と で 、 企 業 の 社 会 性 と 経 済 性 が 、 な ぜ 、 ど の よ う に 達 成 さ れ て い く の か 、 そ の プ ロ セ ス に つ い て 、 事 例 の 詳 細 な 分 析 に も と づ き 、 学 術 的 に 解 明 し て い く こ と で あ る 。 特 に 、 以 下 の 点 に つ い て 論 じ て い く こ と に な る 。
第 一 に 、 企 業 が 社 会 性 と 経 済 性 を 、 な ぜ 、 ど の よ う に 達 成 し て い く の か を 解
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明 で き る 理 論 的 基 盤 を 整 備 す る こ と で あ る 。CSR 論 に お い て 理 論 的 基 盤 を 担 っ て き た ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 と 、 企 業 の 行 動 に 関 す る 理 論 的 基 盤 と し て の 経 営 戦 略 論 ( 以 下 、 戦 略 論 ) を も と に 、 本 研 究 の 理 論 的 基 盤 を 整 備 し 、 分 析 の 枠 組 み を 提 示 し て い く 。
第 二 に 、 企 業 が 、 社 会 性 と 経 済 性 を 達 成 し て い る と 見 な し 得 る 具 体 的 な 事 例 を 示 し 、 分 析 し 、 知 見 を 導 出 す る こ と で あ る 。 本 研 究 で は 、 本 業 を 通 じ て 社 会 課 題 へ の 対 応 に 取 り 組 み 、 そ の 結 果 が 財 務 上 の 利 益 に 繋 が っ て い っ た 、 単 に 社 会 の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ の 対 価 と し て の 利 益 を 獲 得 す る の み な ら ず 、 両 者 を 志 向 す る こ と に よ っ て 、 さ ら な る 新 市 場 の 開 拓 や 、 企 業 の 競 争 優 位 の 獲 得 と い っ た 、 よ り 一 層 の 社 会 性 と 経 済 性 を 達 成 し て い る 事 例 を 、 上 述 の 分 析 の 枠 組 み に よ っ て 分 析 ・ 考 察 し て い く 。
1.2.2 研 究 の 対 象
本 研 究 の 位 置 づ け は 、企 業 の 社 会 性 を 論 じ る 、い わ ゆ る CSR 論 で あ る が 、さ ら に 経 済 性 に も 言 及 す る こ と に よ っ て 、 企 業 の 戦 略 の 視 点 か ら 論 じ よ う と し て い る 。 従 っ て 本 研 究 の 位 置 づ け は 、 高 岡 (2018) の 言 葉 を 借 り る な ら ば 、CSR 論 と し て は「 戦 略 発 想 の CSR 論 」に 属 し 、戦 略 論 と し て は「 社 会 的 視 点 を 加 味 し た 」 戦 略 論 に 属 す る も の 、 と い う こ と に な る (pp.47-48)。
な お 、本 研 究 の 中 心 的 テ ー マ と な る 、社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 は 、い わ ゆ る CSV の 概 念 に 近 い 。 に も か か わ ら ず 、CSV で は な く 、 敢 え て 戦 略 発 想 の CSR 論 、 も し く は 社 会 的 視 点 を 加 味 し た 戦 略 論 と 謳 う 理 由 は 、 以 下 2点 で あ る 。
第 一 に 、 前 節 で 見 て き た よ う に 、 今 や 企 業 は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る 方 策 を 、 本 業 を 通 じ て 経 営 活 動 全 体 で 展 開 し て い く こ と を 模 索 し て い る 。 従 っ て 、 企 業 の 社 会 性 と 経 済 性 を 、 対 立 軸 で は な く 一 体 の も の と し て 捉 え る 視 点 、 そ し て 、 経 営 そ の も の と す る 視 点 を 提 供 す る 必 要 が あ る 。 よ っ て 、 企 業 の 責 任 の 側 面 の み を 捉 え る よ り も 、よ り 積 極 的 な 戦 略 の 側 面 を 強 調 す る と と も に 、 CSV と い う 新 た な 概 念 に よ っ て で は な く 従 来 の 戦 略 論 の 流 れ の 中 で 一 体 的 に 論 じ た い と 考 え て い る た め で あ る 。
第 二 に 、 本 研 究 の 対 象 の 中 心 と な る の は 企 業 の 事 業 活 動 で あ り 、 本 業 に 直 接 関 連 し た 、戦 略 論 が 伝 統 的 に 扱 っ て き た 部 分 だ か ら で あ る 。CSR 論 に お い て は 、
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企 業 が 社 会 の 中 で 経 済 活 動 を 行 う に あ た っ て 、 経 営 者 も し く は 企 業 が 社 会 的 な 責 任 を 負 う べ き で あ る と す る 議 論 が 、 古 く か ら な さ れ て き た 。 こ れ ま で の 研 究 の 蓄 積 を 通 じ て 、 企 業 が 負 っ て い る 社 会 的 責 任 の 内 容 は 一 様 で は な く 、 義 務 的 な も の か ら 自 発 的 な も の ま で 、CSR の 内 容 に 種 類 や 段 階 が あ る こ と に つ い て は 、 合 意 が 形 成 さ れ て い る と 言 え よ う9。 こ の 企 業 が 負 っ て い る 社 会 的 責 任 の う ち 、 本 研 究 で 主 と し て 対 象 と す る の は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し 得 る 領 域 で あ る 。 特 に 、 経 済 性 す な わ ち 財 務 上 の 利 益 の 獲 得 を 論 じ る た め に は 、 企 業 の 事 業 活 動 、 本 業 に 直 接 関 連 し た 部 分 が 中 心 と な る 。 一 般 的 に 、CSR の 概 念 に は 、 法 的 責 任 や 社 会 貢 献 等 も 含 ま れ る が 、 こ れ ら に つ い て は 、 法 的 責 任 や 社 会 貢 献 等 が 経 済 性 す な わ ち 財 務 上 の 利 益 獲 得 を 目 的 と す る も の で は な い た め 、 本 研 究 で は 、 直 接 の 対 象 と せ ず 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 を 論 じ る 上 で 必 要 な 場 合 に の み 言 及 し て い く こ と と す る 。
1.2.3 用 語 の 定 義
本 研 究 で 用 い る 主 な 用 語 の 定 義 を 、 以 下 に 示 す 。 本 研 究 は 、 社 会 に お け る 企 業 の 活 動 を 対 象 と し て い る 。「 社 会 」 と は 、 一 般 的 な 意 味 合 い に お い て は 、「 人 間 が 集 ま っ て 共 同 生 活 を 営 む 際 に 、 人 々 の 関 係 の 総 体 が 一 つ の 輪 郭 を も っ て 現 れ る 場 合 の 、 そ の 集 団 」 な ど と さ れ る ( 広 辞 苑 ,2008)。 非 常 に 抽 象 的 な 用 語 で は あ る が 、社 会 と は 、少 な く と も 人 び と の 集 団 と し て 捉 え ら れ る も の で あ る 。 本 研 究 で は 、 広 義 に は 企 業 に と っ て の 外 部 環 境 と 捉 え 、 狭 義 に は 、 外 部 環 境 の 中 に 存 在 す る 人 々 を 何 ら か の 属 性 で 束 ね た 集 団 、す な わ ち 、CSR 論 に お け る ス テ イ ク ホ ル ダ ー (Stakeholder) で 表 さ れ る も の と す る 。
本 研 究 に お い て 「 社 会 性 」 と は 、 企 業 が 、 社 会 ( 企 業 の 外 部 環 境 で あ り 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー で 表 さ れ る ) の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ れ に よ っ て 社 会 が 便 益 を 得 ら れ る 状 態 と す る 。 こ の 便 益 を 得 る の は 、 対 価 を 支 払 っ て 財 ・ サ ー ビ ス を 直 接 受 け た 者 の み な ら ず 、 そ の 便 益 を 間 接 的 に 享 受 す る 者 も 含 む こ と と す る10。 ま た 、 本 研 究 に お い て 「 経 済 性 」 と は 、 企 業 が 、 社 会 の ニ ー ズ に 応 え て 生 み 出 し た 財 ・ サ ー ビ ス の 対 価 と し て 、 財 務 上 の 利 益 を 得 て い る 状 態 と す る 。 そ の 際 、 財 務 上 の 利 益 と は 、 生 み 出 し た 財 ・ サ ー ビ ス の 対 価 と し て の 収 益 性 と 、 市 場 の 拡 大 や 新 た な 市 場 の 創 出 と い っ た 成 長 性 と を 含 む も の と
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す る 。そ し て 、「 と も に 達 成 す る こ と 」と は 、企 業 が 、社 会 が 便 益 を 得 る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ の 対 価 と し て 財 務 上 の 利 益 を 獲 得 し て い る 状 態 と す る 。
な お 、 こ れ ら の 定 義 に も と づ け ば 、 今 存 在 し て い る 企 業 は 全 て 、 既 に 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し て い る 状 況 に あ る で は な い か 、 と い う こ と に な る 。 確 か に い か な る 企 業 も 、 社 会 の ニ ー ズ に 応 え る 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し て 社 会 は 便 益 を 得 、 企 業 は そ の 対 価 と し て 財 務 上 の 利 益 を 得 て い る か ら こ そ 、 今 こ こ に 存 在 し て い る の で あ る 。 し か し 、 本 研 究 は 、 両 者 を と も に 、 よ り 大 き く 、 持 続 的 に 追 求 し て い く 方 策 の 解 明 に 取 り 組 む も の で あ る 。 本 研 究 で 論 じ て い く 社 会 性 の 達 成 と は 、 企 業 が 質 ・ 量 と も に よ り 大 き な 財 ・ サ ー ビ ス を 提 供 し 、 そ の 財 ・ サ ー ビ ス を 通 じ て 、 直 接 的 ・ 間 接 的 に 、 よ り 多 く の 人 々 が 、 よ り 大 き な 便 益 を 獲 得 で き る こ と を 含 意 し て い る 。 同 様 に 、 経 済 性 の 達 成 と は 、 企 業 に と っ て 、 よ り 多 く の 財 務 上 の 利 益 が も た ら さ れ る こ と を 含 意 し て い る 。 い わ ば 、 社 会 と 企 業 の 全 体 で 、 よ り 大 き な 付 加 価 値 を 生 む よ う な 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る 方 策 を 、 本 研 究 で は 論 じ て い く こ と に な る 。
続 い て 、本 研 究 に お い て「CSR」と は 、European Commission( 欧 州 委 員 会 ) の CSR の 定 義 を 用 い 、「 社 会 に 与 え る 影 響 に 対 す る 企 業 の 責 任 で あ り 、 企 業 の 所 有 者 / 株 主 お よ び 彼 ら の そ の 他 の 利 害 関 係 者 や 広 く 社 会 の た め に 、 共 通 価 値 の 創 造 を 最 大 化 す る と と も に 、 考 え ら れ る 悪 影 響 を 特 定 し 、 予 防 し 、 低 減 す る こ と 」(European Commission,2011) と す る11。CSR の 定 義 は 非 常 に 多 様 で あ る と さ れ て い る が 、 本 研 究 で 用 い る CSR の 定 義 は 、2011 年 に European Commission に よ り 、 現 代 の 状 況 に 合 わ せ て 再 定 義12さ れ た も の で あ る 。 こ の 新 定 義 は 、 企 業 と 社 会 の 共 通 価 値 の 創 造 を 最 大 化 す る と い っ た 考 え 方 が 本 研 究 の 立 場 と 近 い こ と に 加 え て 、 法 令 遵 守 と 労 働 協 約 の 尊 重 に つ い て は 企 業 の 社 会 的 責 任 を 果 た す た め の 前 提 条 件 で あ る と す る に と ど め 、 む し ろ 、 企 業 の 事 業 活 動 の 中 核 戦 略 に 、 社 会 、 環 境 、 倫 理 、 人 権 、 消 費 者 の 懸 念 へ の 対 応 を 位 置 づ け る と と も に 、 そ の 戦 略 と ス テ イ ク ホ ル ダ ー と の 緊 密 な 連 携 関 係 と を 統 合 し て い く プ ロ セ ス の 構 築 を 重 視 す る な ど 、 本 研 究 で 扱 う CSR の 定 義 に 相 応 し い と 考 え た た め 採 用 し た 。
本 研 究 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る に は 、 あ る 種 の 戦 略 性 が 必 要 で あ る こ と を 主 張 し て い く こ と に な る 。「 戦 略 」と は 、戦 略 論 に お い て 、依 拠 す
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る 理 論 や 論 じ る 対 象 に 応 じ て 様 々 に 定 義 さ れ て い る 用 語 で あ る 。 井 上 (2008) に よ る と 、 戦 略 の 概 念 に つ い て は 、 こ れ ま で 様 々 な 議 論 が な さ れ て き て お り 、 多 様 で 、一 般 的 な 定 義 は な い も の の 、戦 略 論 の 創 始 者 で あ る Chandler や Ansoff 以 降 の 主 な 定 義 か ら キ ー ワ ー ド を 抽 出 し 整 理 し て み た と こ ろ 、「 環 境 」「 資 源 」
「 行 動 」「 競 争 」「 長 期 」「 目 的 」「 構 想 」「 意 思 決 定 」と い っ た 用 語 に 集 約 で き た と い う(p.45)。こ の よ う に 多 様 な 戦 略 の 定 義 で あ る が 、本 研 究 で は 、社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る と い う 目 的 達 成 の た め の プ ロ セ ス を 、 外 部 環 境 と の 関 係 に 焦 点 を 当 て な が ら 論 じ て い く た め 、 そ の よ う な 立 場 を 共 有 し 得 る 戦 略 の 定 義 が 望 ま し い 。本 研 究 で は 、「 組 織 が そ の 目 的 を 達 成 す る 方 法 を 示 す よ う な 、現 在 並 び に 予 定 し た 資 源 展 開 と 環 境 と の 相 互 作 用 の 基 本 パ タ ー ン 」と す る(Hofer and Schendel,1978, 邦 訳 、pp.30-32)。
ま た 、本 研 究 に お い て 、「 社 会 課 題 」と は 、前 述 の 社 会 の 項 に お い て 定 義 し た 狭 義 の 社 会 で あ る ス テ イ ク ホ ル ダ ー が 保 有 す る 懸 念 で あ り 、 か つ そ の 懸 念 が 一 定 の 広 が り を 持 っ て 共 有 さ れ 、 解 決 が 望 ま れ る 事 象 と す る 。
な お 、 本 稿 で 用 い る 用 語 は で き る だ け 統 一 す る よ う 努 め た が 、 引 用 部 分 に つ い て は 、 出 典 元 の 表 記 を 尊 重 し て い る 。
1.3 研 究 の 方 法 と 論 文 の 構 成
1.3.1 研 究 の 方 法本 研 究 で は 、現 在 の CSR 論 と 企 業 の 実 践 に 寄 与 す る 発 見 事 実 を 提 示 す る た め 、 第 3 章 で 述 べ る よ う に 、 な ぜ 社 会 性 と 経 済 性 は と も に 達 成 さ れ る の だ ろ う か 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 は ど の よ う な プ ロ セ ス を 経 て 実 現 す る の だ ろ う か 、 と の リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン を 解 明 し て い く 。 と こ ろ が 、 第 2章 の 先 行 研 究 レ ビ ュ ー で 詳 述 す る よ う に 、CSR 論 に は 、社 会 科 学 と し て 論 じ る に あ た っ て 大 き な 困 難 が 内 在 し て い る 。そ れ は 、CSR 論 に お い て 説 明 し よ う と す る 社 会 性 に 関 す る パ フ ォ ー マ ン ス が 、 数 値 な ど に よ っ て 定 量 的 に 把 握 す る こ と が 難 し い 、 と い う 本 質 的 な 困 難 性 で あ る 。
そ こ で 本 研 究 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し て い る と み な し 得 る 事 例 に 着 目 し 、 そ の 企 業 が 、 な ぜ 、 ど の よ う に 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し て い る の か を 分 析 し て い く 。 分 析 に あ た っ て は 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 の 状 況 を 、
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ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 と 戦 略 論 の 分 析 の 枠 組 み で 捉 え 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー へ の 対 応 や 企 業 に お け る 戦 略 の 各 局 面 を 、 事 例 研 究 の デ ー タ に も と づ い て 分 析 的 に 辿 る こ と に よ っ て 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 の プ ロ セ ス を 解 明 し て い く 。
本 研 究 の 方 法 は 、 理 論 枠 組 み を 構 築 し た 上 で 、 客 観 的 な デ ー タ を も と に 事 例 を 詳 細 に 記 述 し 分 析 す る こ と に よ っ て 、 戦 略 構 築 の 態 様 や 意 思 決 定 の 状 況 を 説 明 で き る よ う な プ ロ セ ス を 推 測 し て い く 手 法 を 採 る 。 分 析 手 法 と し て は 、 第 3 章 で 詳 述 す る よ う に 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 に も と づ い て 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー へ の 対 応 状 況 の 分 析 を 行 い 、 戦 略 論 に も と づ い て 、 オ ー プ ン ・ シ ス テ ム と テ ク ノ ロ ジ ー 、企 業 ド メ イ ン(Domain)と い っ た 企 業 の 戦 略 に 関 す る 分 析 を 試 み る 。 本 研 究 は 、社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る た め に は 、規 範 的 な CSR 論 を 超 え 、 企 業 の 戦 略 論 と し て 論 じ て い く 必 要 が あ る と し 、 そ の た め に 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る 手 法 を 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 と 戦 略 論 に も と づ き 、 論 じ よ う と す る も の で あ る 。
1.3.2 論 文 の 構 成
本 研 究 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る と は 、 ど う す れ ば 実 現 す る の だ ろ う か と い う 問 題 意 識 に も と づ き 、 第 3 章 で 述 べ る よ う に 、「 な ぜ 、 社 会 性 と 経 済 性 は と も に 達 成 さ れ る の だ ろ う か 」「 ど の よ う な プ ロ セ ス で 、社 会 性 と 経 済 性 は と も に 達 成 さ れ る の だ ろ う か 」 と の リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン を 設 定 し 、 こ れ に 答 え る た め 、 以 下 の 手 順 で 論 じ て い く ( 図 1-2)。
第 1章 は 、 序 論 で あ る 。 第 1節 で 、 社 会 性 と 経 済 性 を 巡 る 社 会 的 お よ び 学 術 的 背 景 を 整 理 し て 問 題 意 識 を 明 確 化 し 、 本 研 究 の 必 要 性 を 明 ら か に す る 。 第 2 節 で 、 研 究 の 目 的 と 対 象 お よ び 用 語 の 定 義 を 、 第 3 節 で は 、 研 究 の 方 法 と 論 文 の 構 成 を 提 示 す る 。
第 2章 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 の 達 成 を 論 じ る た め の 理 論 的 基 盤 を 整 理 す る た め に 、 先 行 研 究 レ ビ ュ ー を 行 う 。 具 体 的 に は 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 お よ び 戦 略 論 に つ い て レ ビ ュ ー し て い く 。ま ず 第 1 節 で 、CSR 論 に つ い て レ ビ ュ ー を 行 う が 、CSR 論 全 体 は 非 常 に 広 範 で 多 岐 に 亘 る た め 、本 研 究 で は 、特 に 社 会 性 と 経 済 性 の 関 係 も し く は 戦 略 に 関 し て 論 じ た も の に 絞 り レ ビ ュ ー を 行 う 。 続 い て 第 2節 で 、CSR 論 の 中 で も 特 に 、 伝 統 的 に 理 論 的 基 盤 を 担 っ て き た ス テ イ ク ホ ル
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ダ ー 論 に つ い て レ ビ ュ ー を 行 う 。 特 に 、 研 究 手 法 の 整 理 、 社 会 性 と 経 済 性 と の 関 係 が ど の よ う に 扱 わ れ て き た の か 、 ど こ ま で 解 明 さ れ て い る の か 、 等 に つ い て 、 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー し て い く 。 そ の 上 で 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 の 貢 献 と 限 界 を 明 ら か に す る 。 さ ら に 、 そ の 限 界 を 克 服 す る た め に 、 第 3 節 で 、 本 研 究 の も う 一 つ の 理 論 的 基 盤 と な る 戦 略 論 に つ い て 、 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー す る 。 多 様 な 戦 略 論 の 中 か ら 、 本 研 究 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 と の 関 係 を 論 じ る た め の 企 業 観 や 概 念 を 持 っ た 戦 略 論 に 焦 点 を 当 て 、 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー し て い く 。 具 体 的 に は 、 オ ー プ ン ・ シ ス テ ム 企 業 観 に も と づ き 、 テ ク ノ ロ ジ ー 、 企 業 ド メ イ ン 、 ド メ イ ン ・ コ ン セ ン サ ス 等 に 関 す る 先 行 研 究 を レ ビ ュ ー す る 。
第 3章 で は 、 研 究 方 法 を 提 示 す る 。 第 1節 で 、 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン お よ び 分 析 視 座 を 設 定 す る 。 第 2 節 で 、 本 研 究 の 手 法 と し て 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 お よ び 戦 略 論 に も と づ く 事 例 研 究 の 手 法 と す る こ と を 提 起 す る 。 第 3 節 で は 、 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン に 答 え 発 見 事 実 を 導 出 す る た め に 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 お よ び 戦 略 論 に も と づ い た 分 析 の 枠 組 み を 設 定 す る 。 ま た 、 第 4 節 で 、 事 例 研 究 を 行 う た め の 方 法 を 述 べ る 。 本 研 究 で は 、 単 一 企 業 の 複 数 の 事 例 に よ る 事 例 研 究 を 行 う こ と と し 、 そ の 根 拠 を 述 べ る 。
第 4章 で は 、 多 数 の 企 業 を 対 象 と し た 事 例 研 究 を 行 う 。 ま ず 第 1 節 で 、 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 し て い る と み な し 得 る 事 例 を 抽 出 す る た め に ス ク リ ー ニ ン グ を 行 い 、要 件 を 満 た し た 企 業 9社 を 抽 出 す る 。さ ら に こ の 9社 に つ い て 、 第 2 節 で パ イ ロ ッ ト ス タ デ ィ を 行 う と と も に 、9 社 の 中 か ら 、 本 研 究 で 設 定 し た 分 析 枠 組 み に も と づ い て 事 例 研 究 を 行 う の に 最 も 適 切 な 企 業 を 選 定 す る 。
第 5章 で は 、第 4章 で 事 例 対 象 企 業 と し て 選 定 し た ト ヨ タ 自 動 車 株 式 会 社( 以 下 、 ト ヨ タ ) に つ い て 、 さ ら に 詳 細 な 事 例 研 究 を 行 う 。 第 1 節 で 企 業 概 要 や 、 社 会 性 と 経 済 性 の 点 か ら 見 た 同 社 の 位 置 づ け を 確 認 し 、 ト ヨ タ に お い て 着 目 す べ き 社 会 課 題 と 時 期 を 選 定 す る 。 第 2 節 で 分 析 の ス テ ッ プ を 確 認 し た 後 、3 つ の 社 会 課 題 に つ い て 事 例 研 究 を 行 う 。 本 研 究 で は 、 第 3 節 で 「 社 会 課 題 (1)
1960年 代 の 安 全 問 題 へ の 対 応 」を 、第 4 節 で「 社 会 課 題(2)1990 年 代 の 地 球 温 暖 化 問 題 へ の 対 応 」 を 、 第 5節 で 「 社 会 課 題 (3)2010 年 代 の 気 候 変 動 問 題 へ の 対 応 」を 取 り 上 げ る 。こ の 3 つ の 社 会 課 題 に つ い て 、公 開 情 報 に も と づ き 、 事 実 デ ー タ を 収 集 ・ 整 理 し 、 分 析 枠 組 み を 用 い た 分 析 を 行 う 。 ス テ イ ク ホ ル ダ
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ー へ の 対 応 、 オ ー プ ン ・ シ ス テ ム の 状 況 と 運 用 さ れ た テ ク ノ ロ ジ ー 、 企 業 ド メ イ ン 、 ド メ イ ン ・ コ ン セ ン サ ス に つ い て 各 々 考 察 を 行 い 、 第 6 節 で 、 ト ヨ タ の ス テ イ ク ホ ル ダ ー へ の 対 応 と 企 業 ド メ イ ン 等 に 関 す る 発 見 事 実 と し て ま と め て い く 。
第 6章 で は 、 第 5 章 の 事 例 研 究 の 分 析 結 果 を 確 認 、 補 完 す る た め に 、 ト ヨ タ の CSR 担 当 者 へ の イ ン タ ビ ュ ー を 行 う 。 ま ず 、 第 1 節 で 、 事 例 研 究 か ら の 発 見 事 実 を 整 理 し 、 第 5章 の 事 例 研 究 の 分 析 結 果 の う ち 、 外 部 か ら 客 観 的 に 把 握 す る こ と が 困 難 で あ っ た 、 企 業 の 意 思 の 部 分 に つ い て 、 第 2 節 で 、 ト ヨ タ に 対 す る イ ン タ ビ ュ ー 項 目 と し て 設 定 す る 。 第 3 節 で 、 同 社 に 対 す る イ ン タ ビ ュ ー を 実 施 し 、 事 実 関 係 を 確 認 す る 。 イ ン タ ビ ュ ー の 結 果 を 踏 ま え 、 第 4 節 で 、 第 5章 の 事 例 研 究 の 結 果 を 補 完 し て い く 。
第 7章 は 、 考 察 で あ る 。 イ ン タ ビ ュ ー を 含 む 事 例 研 究 の 結 果 を 踏 ま え 、 先 行 研 究 レ ビ ュ ー の 知 見 と 照 合 し 、 考 察 を 深 め て い く 。 第 1節 で は 、 社 会 性 と 経 済 性 の 因 果 関 係 の 視 点 を 踏 ま え て 本 研 究 を 整 理 す る こ と を 提 起 し 、 第 2 節 で 、 本 研 究 の 3つ の 社 会 課 題 を 因 果 関 係 の 視 点 を 踏 ま え て 考 察 す る 。 第 3節 で は 、先 行 研 究 を 参 照 し さ ら に 考 察 を 深 め て い く 。
第 8章 は 、 結 論 で あ る 。 第 1節 で 、 本 研 究 を ま と め 、 第 2 節 で 、 分 析 視 座 に 対 す る 研 究 成 果 を 述 べ 、 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン に 答 え る 。 こ こ で は 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 論 に も と づ く 分 析 枠 組 み に よ る ス テ イ ク ホ ル ダ ー へ の 対 応 に 関 す る 知 見 と 、 戦 略 論 に も と づ く 分 析 枠 組 み に よ る 企 業 の 戦 略 と し て の 知 見 と を 提 示 す る 。 ま た 、 第 3節 で 、 本 研 究 の 結 論 の 一 般 化 へ 向 け た 予 備 的 検 討 と し て 、 日 産 自 動 車 株 式 会 社 ( 以 下 、 日 産 ) の 事 例 に 簡 単 に 触 れ る 。 第 4 節 で は 、 学 術 的 側 面 か ら 、CSR 論 お よ び 戦 略 論 に お け る 本 研 究 の 評 価・貢 献 を ま と め る と と も に 、 実 践 的 側 面 か ら 、よ り 効 果 的 な CSR、す な わ ち 社 会 性 と 経 済 性 を と も に 達 成 す る た め の 知 見 を 提 示 す る 。 最 後 に 、 第 5 節 で 、 本 研 究 の 限 界 と 今 後 の 研 究 の 発 展 可 能 性 に つ い て 述 べ る 。