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政策評価制度の評価行動 Evaluative Behavior in Policy Evaluation System

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Academic year: 2022

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(1)博士(公共経営)学位請求論文. 概要書. 政策評価制度の評価行動 Evaluative Behavior in Policy Evaluation System. 早稲田大学大学院. 西出. 公共経営研究科. 順郎. Nishide, Junro.

(2) 【研究枠組】 本研究の目的は、我が国における政策評価制度(以下、 「評価制度」という)の評価行動 が評価結果を歪めているか否かを解明することにある。ここでいう「評価行動」とは、政 策評価を実施する行政機関内の評価作業にかかる一連の動きのことを、また「評価結果を 歪める」とは、制度趣旨に沿った厳格で客観的な評価ではなく、同趣旨とは乖離した目的 をもって、評価結果を意図的に産出することをいう。 評価制度は、中央省庁等再編・改革の一つとして、2001 年の「内閣府設置法」、改正「国 家行政組織法」 、更には 2002 年の「行政機関が行う政策の評価に関する法律」によって確 立された。しかし評価制度の実効性は、制度成立から 15 年以上の歳月が経過し、制度の見 直し作業が断続的におこなわれているにもかかわらず、未だ疑問視されている。その諸問 題はうまく解決したとはいい難く、逆に、組織の惰性に抗うべき評価機能がその惰性に取 り込まれているかのようである。解決し難い本質的な原因は何なのか、評価作業に意図的 な問題があるのではないのか、今日の評価制度は、その機能の理想と現実について厳しく 問われている。先行研究においては、評価制度の様々な問題は抽出されてはいるものの、 評価制度の諸問題がなぜ発現するのか、その原因追及が徹底されているとはいえない。ま た、そのための実証的な研究自体も少なく、中でも評価行動に着目した当該研究は管見の 限り見当たらない。 よって本研究では、 「評価制度の評価行動は評価結果を歪めているのではないか」という 研究設問をたて、評価制度の評価行動を実証的に、また同行動が発現する制度的な要因を 探索的に考察するため、質的及び量的分析を試みた。なお、対象とした具体の評価は、評 価制度の中核である各行政機関による内部評価、その中でも事後に実施する実績評価であ る。 【分析結果】 第一に、評価行動にかかる仮説をあらかじめ設定し、その実証的考察をおこなった。そ の結果、各行政機関の内部評価において、評価に従事する行政職員(以下、 「評価従事者」 ) の意図に従った評価結果が産出される一連の動き、すなわち意図ある評価行動の存在が明 らかにされた。具体的には、①本来の制度目的とは乖離した、評価従事者が持つ「行政資 源の獲得の支援」、「予定調和的に着実で円滑な制度運用」、「活動功績の標榜」といった三 つの評価目的によって、評価制度が規定されること、更には、②当該目的によって、 「高い 評価判定の提示」、「既存の政策情報への追従」、「中庸化された情報の提示」といった三つ の評価結果の特性が評価書内に意図的に記載されること、である。 第二に、制度設計と評価行動との因果的な関係を明確にするため、評価制度の成立及び 見直し過程について探索的考察をおこなった。その結果、可視化された評価行動が発現す る理由として、①現行制度の枠組は評価行動の統制する仕組みを持ち得ていないこと、② その仕組みの実装化を各行政機関へ白紙的に委任していることが明らかになった。更に、 白紙委任的な評価制度は、③成立過程において制度方針が転換されていたこと、④見直し. 1.

(3) 過程における対処策が不徹底であったことが要因となり、存在し続けていることが明らか にとなった。すなわち、意図ある評価行動の発現は、制度設計によって受容された結果で ある一方、実は、そのような設計は偶発的な産物の結果ではなかったことが浮き彫りにな ったのである。 【結. 論】. 本研究では、意図ある評価行動のメカニズム及びその発現を許す制度的な実態が明らか となり、「評価制度の評価行動は評価結果を歪めている」との結論を導出するに至った。ま た、行政職員やその集団と評価制度との因果的な関係に着目しつつ若干の検討を加え、評 価制度の実効性に関しても言及し、その脆弱性を示唆した。 このように本研究は、評価行動という従来にはない分析概念を提示し、そのありさまや 制度的要因を考察し、評価制度の問題を明らかにした。よって、まず学術的な意味におい ては、評価研究における分析アプローチの外延拡大に貢献することができたといえる。特 に実証的な分析結果を踏まえ、意図ある評価行動のメカニズムを可視化したことは、評価 研究における実証的な行動分析の適用をより普及させることになるであろう。更に社会的 には、今後の評価制度のありかたに一石を投じることができたといえる。本研究成果が実 践において受容されるのであれば、今後の評価制度の見直しにおいて、評価従事者の評価 行動を如何に適切に統制できるか、この点に焦点を当てた制度改革が期待できるであろう。. 2.

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参照

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