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分散協調最適化による合意形成 関西大学 正会員 古田 均

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Academic year: 2022

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分散協調最適化による合意形成

関西大学 正会員 古田 均 関西大学大学院 学生会員 中津 功一朗 関西大学大学院 学生会員 ○服部 洋 関西大学 上野 享一

1. はじめに

現在,様々な分野において合意形成に関するいろいろな議論がなされており,その重要性が認識されてい る.個々の,意識や目的,考え方の違いから意見が対立する可能性があり,意見の一致を求めることが容易 ではないからである.さらに個々が最適化戦略をとることによって,よりよい解があるにもかかわらず,好 ましくないジレンマ解に到達することが往々にしてある.

合意を得るためには,解決案作成のプロセスができるだけ簡単で,参加者が容易に理解できる枠組みが必 要である.また,個々がその解決案作成に参加できることが重要である.

本研究では,分散協調最適化によって,個々の満足度を高めた上で,全体の最適化を進める枠組みを提供 する.個々で最適化を行うことにより,一定の満足度が保証され,さらに全体最適化にも寄与するため,合 意が得られる易いと考える.災害時におけるライフラインの復旧計画を例に,その有効性を検証する.

2. 合意形成

合意形成とは,それぞれが持っている座標軸を,コミュニケーションの中,互いの目的関数に修正を加え ながら,時には新しい価値観,意見を受け入れながら,お互いの意思疎通,意見の一致を求めようとするプ ロセス,枠組みである.

合意形成においては,合意参加者が納得する枠組みが必要である.そのため,枠組みが明確,理解できる,

簡単であることが求められる.また,合意参加者が解決案の作成に参加したという感覚を持たせる必要があ る.近年,非常に複雑なシステムを通して解を決定するものも多いが,そもそも難解さゆえにシステムの採 用自体が見送られかねない,あるいは妥当解であっても合意参加者が納得できない恐れがある.そこで,本 研究では簡単かつプロセス,枠組みが見えるシステムの開発を試みた.

3. 分散協調最適化による合意形成

本研究では,分散協調最適化システムによる解の決定によって,合意を得る方法を提案する.想定してい る問題は,理想的な解は,全体最適化によって導かれるものであるが,各参加者はできるだけ自分に優位な 解を選びたい.また,大幅な不公平がない限り解を受け入れられるものとする.このような問題は,仕事量 の分割など実問題に多い.

全体最適化によって導かれた解は,ここに格差を生む可能性がある.全体最適化された解であっても,個々 が納得せず,採択されない.逆に個々それぞれの最適の状態を目指した場合,それぞれの思惑が衝突し,ジ レンマの解に陥ることは多い.ゲーム理論は最適化戦略(損益最小化戦略)の結果を推定,分析する方法論で,

決して最良の選択方法ではない.

そこでシステムと最適化原理に決定をゆだね,個々の目的関数を満足化(ある一定の評価以上を得る)する 複数の解候補を列挙し,この中から,全体に寄与する解を選択,集計し全体の計画とするシステムを提案す る.個々の目的関数を満足化するため,大幅な不均衡は生じにくい.望ましい解候補の中から全体に寄与す る解を選ぶ一連のプロセスは,最適化原理だけであり,恣意的な考えは入らない.このようなシステムを用 いることで,合意を得る解を構築できる.個々の満足化された複数の解候補の探索に,今西進化論に基づく 遺伝的アルゴリズムを応用し,全体最適化には,単純GAを適用し,2段階GAを構成した.

キーワード 合意形成,最適化,分散協調,遺伝的アルゴリズム,復旧支援

連絡先 〒569-1095 大阪府高槻市霊仙寺町 2-1-1 関西大学総合情報学部 総合情報研究科 TEL072-690-3213 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-113- 4-057

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4. 復旧計画における業者間の調整

本研究では数値計算例として,災害時におけるライフラインの復旧計画を取り上げる.ライフラインには,

ガスや水道,道路などがあり,復旧はそれぞれの事業者が行う.しかし,同時に同じ場所の復旧はできない,

また,作業間に先行関係があるなどの制約があるため,互いの復旧作業に影響する.したがって,復旧スケ ジュールは個々に決めることはできず,事業者間で調整が必要となる.

数値計算では,256 ノード,480 リンクから構成される道路ネットワークを用いた.リンクの距離はすべ て1kmとし,道路上の遮断物撤去作業38ヶ所,道路補修作業50ヵ所,ガス管補修作業30ヶ所,水道管補 修作業30ヶ所としている.ここで,遮断物が倒壊した箇所は,必ず補修作業が伴うものとしている.また,

遮断物撤去作業と道路補修作業の先行関係のほかに,ガス管修復作業と水道管補修作業は,必ず遮断物撤去 作業と道路補修作業の間で行われなければならないといった,時間的階層性の関係が成立しているものとす る.ここで,各事業者は自身の担当するライフラインをできるだけ短い期間で復旧することを目的としてい るものとする.各事業者は,復旧班の担当する補修箇所とその順番を決定する.

分散協調最適化を用いた場合と全体最適化を行った場合と比較する.各復旧作業の目的関数値の比較を Table. 1に,探索時間の比較をTable. 2に示す.

Table. 1 作業毎の目的関数値の比較

全体最適化 分散協調最適化

作業種類 目的関数値 完了日数 目的関数値 完了日数 遮断物撤去作業 7.203704 18 6.981481 19 ガス管補修作業 14.196296 23 12.462963 22 水道管補修作業 14.370333 24 12.185185 23 道路補修作業 16.631579 30 16.693684 31

全体 16.631579 30 16.693684 31

Table. 2 探索時間

全体最適化 分散協調最適化

20H38M32S

25M4S(個々の最適化)+1H56M50S(全体の最適化)=

2H31M54S

Table. 1より全体の目的関数値は全体最適化に比べて提案手法の方がやや劣るが,個々の作業の目的関数 値は提案手法が良好な値を得ている.すなわち,全体の結果はほぼ同等であるが,個々の事業者にとって,

よりよい解が得られている.これにより,各事業者の合意が得られると考える.また,Table. 2より,提案 手法では,最適化を作業ごとに分割するために探索空間が小さくなり,かつ,並列計算が可能となるため,

計算時間を大幅に削減することが可能となる.

5. おわりに

本研究では,個々の最適化された複数の解を全体最適化の観点から調節する仕組みによって,合意形成を 促す解の策定を提案した.復旧計画策定を例に業者間の調整を図る解を提示した.また,分散協調により計 算時間が大幅に向上した.

参考文献

・ 深谷昌弘,田中茂範:カオスの時代の合意学(合意学の構図から),創文社,1994

・ 伊庭斉志:進化論的計算の方法,東京大学出版会,1999

土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-114- 4-057

参照

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