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中国の環境影響評価における公衆参加に関する研究

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Academic year: 2022

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(1)中国の環境影響評価における公衆参加に関する研究 ―日本との比較の視点から― 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 郭 雲亮 本論文は、中国の環境影響評価制度における公衆参加について、日本との比較あるいは 米国の NEPA を参照して考察し評価しようとしたものである。 まず、日本と中国両国の環境政策、特に環境影響評価制度に関して、これまでの経験、 類似性、差異を考察した。 その結果、以下のようなことが指摘できた。 第 1 に、制度制定に至る経緯に関してである。日本では 1972 年の閣議了解で環境影響評 価を行政指導により制度化してから 1997 年に環境影響評価制度の法制化に至るまでに 25 年を要したのに対し、中国では 1979 年環境基本法によって誕生した中国環境影響評価制度 は、その後およそ四半世紀の長い年月を経て 2002 年 10 月にようやく環境影響評価に関す る個別法として変身した。このように両国ともおよそ四半世紀を要して環境アセスメント の個別法の制定に至っている。この背景には米国で誕生した環境アセスメントの概念が両 国の文化制度や国民意識の中で十分に受け入れることが困難であったことが背景として考 えられる。さらに、日本では公害反対という認識に基づく住民やメディア側と経済界産業 界側との間での合意が得られなかったことが主要な要因として指摘されているが、中国で は環境影響評価法制度を始めとする各種環境政策は終始行政の手によって、上から下の方 向に意思決定が行われてきたこと、また「環境利益より経済利益の追求」という社会的仕 組みが働いていたことが要因として考えられる。 第 2 に、制度の目的理念に関するものである。中国の制度は、事業の許認可に関してそ の前提条件として環境影響評価を義務付けているものであり、いわば、 「目標クリア型」と いうことができる。一方、日本の現行環境影響評価法制度では、従来の目標(絶対基準) クリア型ではなく、事業等の実施に伴う環境への負荷を最小化することを目指した「ベス ト追求型」が採用されている。 第 3 に、公衆参加の制度に関してである。日本では、配慮書、方法書、準備書のそれぞ れの段階で住民から意見を求めることとされているが、中国では環境影響報告書草案に対 してのみ意見を求めることとされており、公衆関与の機会が少ない。また、日本では公告・ 縦覧の上で意見聴取を行う手続きを重視しているのに対して、中国の環境影響評価法では、.

(2) 環境影響報告書草案の公表の方法や期間が明確でなく、ただ「関係組織、専門家及び公衆 から意見を求めなければならない」とされているだけである。そのため具体的な情報公開 の程度や内容が明確ではなく地域や事業によってまちまちである。さらに、意見を言うこ とのできる者については、日本では、環境保全の見地から誰でも意見提出できる仕組みを とっているのに対して、中国では地域住民に限定している。制度に関しては、環境影響評 価の実施主体についての違いも指摘できる。中国では建設プロジェクトを環境影響評価書 (評価表)の作成について、第三者の評価グループに代行させ、それによって影響評価文 書の公正性を確保しようとしている。これに対して日本は、事業者の自覚的な行動に委ね ていて、第三者による代行手続きは設けていない。 次に、環境影響評価制度の淵源である米国の NEPA の制度を参照しながら、中国の環境 影響評価制度における公衆参加の実態や課題とその原因及び背景について考察した。 本論文は、日本と中国両国の環境影響評価制度に関して、これまでの経験、類似性、差 異を考察し、さらに環境影響評価制度の淵源である米国の国家環境政策法(NEPA)の制度 を参照して考察し評価しようとしたものである。 環境影響評価制度の一つの重要な特徴として公衆参加の仕組みが存在していることであ る。特に米国 NEPA 制度においては公衆参加の仕組みが多重に組み込まれている。米国の NEPA における環境影響評価制度の狙いと公衆参加の仕組みの役割について考察したうえ で、日本と中国の環境影響評価制度を比較考察しに、NEPA の環境影響評価制度は、政府 の意思決定の過程において、それまで無視されていた環境の価値を、経済的な価値などに 統合することを狙いとしたものであり、その意思決定のプロセスをできるだけ透明にし、 主権者である公衆を意思決定に関与させることを目指したものなのである。従って、政府 の意思決定のアカウンタビリティの構築のための制度であると認識することができる。 そのような理念に対して、中国の環境影響評価は目標クリア型の制度として構築されて いる。従って、政策決定の過程における公衆参加の意義が薄く、程度が低く、制度として は環境影響報告書草案に対する意見が求められてはいるものの、実態としては住民の意見 を反映する手段としては十分に機能していないということができる。中国では政府の「一 切主導」という閉鎖的なパターンで政策が制定されることが一般的であり、それは社会全 体(公衆)の利益の反映とは言い難い。実際に中国の環境影響評価制度の実例(北京市と 厦門市の実例)を考察したところ、アカウンタビリティ(情報の公開、市民参加、行政評 価、異なる見解とのコミュニケーション)の不完全さが環境影響評価制度の実効性を著し く阻害していることが明らかになった。今後は中国の環境影響評価制度をより意義あるも のにしていくための努力が必要であると考えられ、それは環境価値と経済価値の統合を実 現していくことを目指していくことであり、そのために、行政のアカウンタビリティの向 上が重要な課題であると指摘することができた。行政のアカウンタビリティ、それは情報 の公開であり、市民の参加であり、行政評価であり、一人一人の市民からの意見に真摯に 答える姿勢に他ならない。.

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