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博 士 ( 理 学 ) 鈴 木 宏 治

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 鈴 木 宏 治

     学 位 論 文 題 名

STM spectroscopy on Bi2Sr2CaCu208 single crystal     (Bi2Sr2CaCu208 単 結 晶 試 料 に 対 す る STM 分 光 測 定 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  Bi2Sr2CaCu208は超伝 導転移温 度T,。=87Kの飾駟甜匕物高温超伝導物質である。この試 料 はCu‑0層、Sr‑0層 、Bi‑0層 な ど から な る 層 状構 造 を し てお り 、Cu‑0層 内に 金属的 な電 子が存 在する 擬二次元 伝導物 質であ る。釦 殿化物 高温超 伝導物質では超伝導状態で Cooper対が形 成され ること が知ら れている 。しか し、こ れらの 物質で はCu‑siteに おけ るon‑site Coulombカ が強く 、従来 型の超 伝導物 質におけ るのと 同じ電 子格子 相互作 用 に よ る引 カ で はC09per対 を 形成す ること が難しい と考え られて いる。 そのた め、そ の 電子 間引カ の起源 が何であ るのか という ことに ついて は以前 から活発な議論がなされて きた 。電子 間引力 相互作用 に関す る重要 な情報 を与え る電子 対波動関数およぴ超伝導ギ ヤッ プの対 称陸は 、超伝導 状態に おける 電子状 態密度 に反映 される。そして、電子状態 密度 は高い エネル ギー分解 能を持 ったト ンネル 分光測 定によ って直接的に観測すること が で き る 。 と り わ け 、 走 査 型 ト ン ネ ル 顕 微 鏡 (STM) によ るSTM分 光測 定 は 試 料と 探針 が非接 触であ るという 理想的 な条件 のもと で、試 料表面 の局所的な電子状態密度を 知 ること ができ るとい う優れ た実験 手段で ある。本 研究で は、Bi2Sr2CaCu208単結 晶試 料 の 超伝 導 状 態 に対 し て 劈 開に よ っ て 得ら れ る 劈 開面及 びこれ に垂直 な側面 でのSTM 分光 測定を 行い、 得られた トンネ ル微分 コンダ クタン ス曲線 から超伝導状態における電 子対波動関数の対称性を調べた。

  4.2Kに お け るBi2Sr2CaCu208単 結 晶試 料 の 側 面で のSTM分 光測定 では、a・b面内 の 様々 なトン ネル方 向に関す る測定 を行う ために 、単結 品試料 をその方向に垂直な面が出 る 様 に切 断 し た 。そ し て 、Cu・O結合方 向、Cu・Cu方向、 及ぴa一b面内でCu.0結 合方 向から9゜,19°,27°,35゜,38°の各方向のトンネルに対する卜ンネル微分曲線を得た。

これ らのス ペクト ルは明確 なトン ネル方 向依存 性を示 してい る。このことは超伝導ギャ ッ プ がa・b面 内で 異 方 的 であ る こ と を示 し て い る。 そし て、同時 にSTM分 光測定 では トン ネ′レ 遷移確 率の波数依存性を考慮しなければならないことも示している。単結晶試 料側面で得られたこれらのスペクトルのうち、Cu.O結合方向から

9゜,19゜,27°,35゜,38°の各方向で得られたスペクトルは、その関数形が連続的に変 化 し てい る 。 す なわ ち 、Cu,O結 合方向 に近い9゜,19゜ などの 方向で 得られ たスペ ク トル ではト ンネル 微分コン ダクタ ンスが ゼロバ イアス 付近で 平坦な振る舞いを示してい

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る のに 対し て 、35゜,38゜ などCu‑Cu方 向 に近 づく にっれて、ゼロバイア ス付近でエネ ル ギー に線 形 な振 る舞 いに なっ て いく 。こ のこ とは 単 純に 考え れは 超 伝導 ギャップが フ ェル ミ面 上 のCu‑Cu方 向 でノ ード を持 つdエ2−y2波対称陸を持つことを 示している。

そ し て 、 こ れ ら の スペ クト ル はWKB近 似に よる トン ネル 遷 移確 率の 波数 依存 性 を取 り 入 れる こと に より 、dエ2―y2波 の 対称 陸を 持っ た超 伝導ギャップモデル 、△=△ os2e

( 〇 はCu‑0結 合 方 向 か ら の 角 度 ) で 統 一 的 に 説 明 で き る こ と が わ か っ た 。   Cu‑0結合 方 向で の測 定で 得ら れ たト ンネ ル微 分曲 線 では 、超 伝導 ギ ャッ プ構造は観 測 され ない 。 かわ りに 、ゼ ロバイアス付近で コンダクタンスがピーク構造 を示したり、

大 きな 有限 の 値が 残っ てい る。 こ れはd波 対称 性を 持つ超伝導ギャップの ノードのとこ ろ でト ンネ ル が起 こる とき に予 想 され る振 る舞 いで ある。一方、Cu‑Cu方 向では明確な 超 伝 導 ギ ャ ッ ブ 構 造が 観測 さ れた 。Cu‑0結 合方 向 、お よびCu‑Cu方 向で 得ら れ たこ れ ら の結 果は 一 見、 超伝 導ギ ャップがdエ,波の 対称陸を持っていることを 示しており、d x 2‑yユ波 対称陸を示す9゜,19°,27°,35゜,38゜方向で得られたスペクトルとは矛盾し て いる よう に 思わ れる 。し かし、表面酸素原 子の周期配列によるブロッホ 電子の波動関 数 を 考 慮 す る こ と によ り、Cu‑0結 合方 向及 びCu‑Cu方向 で 得ら れた これ らの ス ペク ト ル もdヨ2ーvユ波対 称陸を持つ超伝導ギャップ で説明できることが明らかに なった。した が って、本研究に おいて単結晶試料側面で得ら れたスペクトルはすべてdエ2―yユ波の超 伝導ギャッ プの対称性で説明できる。

  一方 、4.2Kで単 結晶 試糾 の劈開面で得られ たスペクトルは、ゼロバイア ス付近におけ る コン ダク タ ンス の振 る舞 いに場所および試 料依存性があるものの、いず れも明確な超 伝 導ギ ャッ プ 構造 を示 して いる。そして、こ れらのスペクトルではギャッ プ端の内側に 有 限の コン ダ クタ ンス が残 っており、a.b面 内で超伝導ギャップが異方的 であることを 示 して いる 。 これ らの スペ クト ル に対 して 、Cu‑0面 内 の酸 素原 子の 周 期配 列によるブ ロ ッホ 電子 の 波動 関数 を考 慮し て 、dエ2‑y2波 モデ ル、A=△ooos2〇 に よっ てフイッテ イ ング を行 っ た。 その 結果 、一電子準位の広 がりの効果を取り入れること によって、ゼ ロ バイ アス 付 近に おけ るコ ンダクタンスの振 る舞いの場所、試料依存性ま で含めて、得 ら れ た ス ペ ク ト ル を す べ てdエ 2ーyユ 波 で 説 明 で き る こ と が わ か っ た 。

  以上 のよ うに 、 本研 究で はBi2Sr2CaCu208単 結晶 試mこ 対 して 様々なトンネル方向で のSTM分 光 測定 を行 い、 得ら れ たト ンネ ′レ微分曲線から超 伝導ギャップの対称陸を調 べ た。 そし て、 本研究で得られ たトンネル微分曲線はすべてdエ2‑yユ波対称性を持つ超 伝導ギャップ で統一的に説明できる。この ことは、  Bi2Sr2CaCu208の超伝導状態におけ る 電 子 対 波 動 関 数 がdエ2‑yユ 波 の 対 称 陸 を 持 つ こ と を 強 く ラ 丙 竣 し て い る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    野村一成 副査    教 授    大川房義 副査   助教授   小田   研

     学位論文題名

STM Spectroscopy on Bi2Sr2CaCu208 Single Crystal     (Bi2Sr2CaCu208 単結晶試料に対するSTM 分光測定)

   銅酸化物高温超伝導体の超伝導発現の機構に関して、数多くの研究が積み重ねられてい るが、未だ完全には解明されていない。これに関して、超伝導ギャップの対称性を明らか にすることは、超伝導電子対をもたらす電子間引カの起源を決定するために極めて重要で ある。超伝導状態の電子状態を調べるためには、走査型トンネル顕微鏡( S TM) による STM 分光 測定は、STM 探針と試 料表面が非 接触である という理想 的な条件下で、試料 表面の局所的な電子状態密度を知ることができる極めて優れた実験手段である。著者は、

銅酸化物高温超伝導体であるBi ユSr :CaCu :O ヨ単結晶試料の超伝導状態において、STM 分 光測定を行い、得られたトンネル微分曲線の解析から超伝導ギャップ及び電子対波動関数 の対称性を明らかにした。

   この研究では、Bi2Sr2CaCu208 単結晶試料のへき開面及びそれに垂直な側面に対してトン ネル探針の方向を変化させて STM 分光測定を行い、超伝導ギャップの異方性を調べた。

単結晶試料の側面における測定では、銅と酸素の軌道からなる擬二次元的バンドの二次元 面内において、卜ンネル微分コンダクタンスがトンネル電流の方向に依存して変化するこ とを見いだした。微分コンダクタンスはCu‑0 結合方向に近い角度ではゼロバイアス付近 でエネルギーに関して平坦な構造を示すのに対してCu −Cu 結合方向近辺ではゼロバイア ス付近でエネルギーに比例する。また、この間の方向ではその関数形が連続的に変化する。

このことから、 S TM 分光測定においてトンネル確率の波数依存性を考慮する必要性があ ることを議論し、 WKB 近似に基づく波数依存性を用いて結果を解析した。これにより、

Cu −Cu 結合方向にノードを持っ d エ2 ―y2 で表されるd 波の対称性の超伝導ギャップモデルで 説明できることを示した。一方、Cu‑0 結合方向では、超伝導ギャップ構造は観測されず、

ゼロバイアス付近でコンダクタンスがピーク構造を示すのに対し、 Cu‑Cu 結合方向では比

較的平坦なギャップ構造が観測される。これらの結果を単純に解釈すれば、超伝導ギャツ

プが d エッ波の対称性を持っていることを示唆する。しかし、著者は試料表面の酸素原子

の軌道の周期配列によるブロッホ電子の波動関数を考慮することにより、へき開面での結

果も併せてCu‑0 結合方向及び Cu‑Cu 方向で得られたこれらのスペクトルもdx2 ーy2 の対称

性 を 持 っ 超 伝 導 ギ ャ ッ プ を 統 一 的 に 指 示 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。

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   以上のように、著者は、銅酸化物高温超伝導体をSTM 分光測定によって調べ、その超 伝導ギャップがd x2̲y2 の対称性を持っ確証を与えた。この結果は高温超伝導の起源となる 電子間引カを特定する上で重要な指針となるデータを提供したものであり、銅酸化物高温 超伝導物質 における超 伝導状態の 発現機構の 解明に大きな貢献をなすものである。

   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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