博 士 ( 工 学 ) 相 澤 則 行
学位論文題名
シリコン単結晶(lll )表面原子層構造の形成と制御の研究 ― 超 高 真 空 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察 一
学位論文内容の要旨
近 年の半導 体デバ イスの研 究は原 子や分子 を直接 制御し,ナノメータスケールの構造 開 発を目指 してい る.シリ コンは 結晶の完 全性と酸 化膜の安定性から将来も最も有用な デ バイス基 板であ り続ける であろ う.将来 はデバイ スの諸特性に対する表面の影響がよ り 大きくな ること が予想さ れる. またナノ メータス ケールの構造の形成には表面の原子 ス テップや 再構成 構造の利 用が必 要となる であろう .しかし表面再構成の動的過程、再 構 成表面の 欠陥や ステップ との関 係の解明 は未だ不 十分で,再構成表面の薄膜育成等に 対 する影響 は不明 である. 本研究 はシリコ ン表面に おける薄膜育成やナノメータスケー ル 構造物形 成に対 する基礎 的知見 を得るこ とを目的 に,表面再構成の動的過程,再構成 初 期のドメ インと ステップ との関 係,再構 成表面上 の Ge の固相エピタキシーとサーファ ク タントの 関係, 表面構造 物の変 化等を超 高真空走 査型電子顕微鏡法によるその場観察 法で研究した.
本研究の背景と意義,目的について第1 章序論で述べた,
第 2 章 で 実 験装 置 に つい て 述 べた . 本 研 究に 用い た実験装 置は電 界放射電 子銃を 用 い た走査型 電子顕 微鏡を超 高真空 対応に改 良したも ので,Si 表面のモノレイヤーステッ プ や Si(111)7X7 ド メ イ ン, S1(001)2Xl ド メイ ン とlx2 ド メイン の試料温 度変化 に基づ く制御と,その場観察が可能である,
第 3 章 で , Si 単 結 晶表 面 構 造研 究 の 基 礎と な る結晶 学と関連 表面現 象を整理 した.
第 4 章 で , 相転 移 温 度( 830 ℃ ) か ら 数℃ 下 で 起き る 再 構成 表 面 の動 的 過程で ある Si (111)7 x7 ドメイン間位相境界の再配列について述べた.Si(lll )表面は,相転移温度よ り 上 で 1X1 構 造 , 下 で 7X7 構 造 を と る . 相 転 移 温 度 よ り 8 ℃ 低 い温 度 で 7X7 表 面 を観 察 するとド メイン 間位相境 界が観 察される .位相境 界は不安定で数分の間に形状を変え る .連続観 察の結 果,位相 境界の 安定化方 向が 7X7 ユニッ トのダイ マーの 方向を反映し てく110 >方向をとることを明らかにした・
第 5 章で ,Si(lll )表 面に形 成される 初期7X7 ドメイン形状が表面ステップの結晶方向 に 依存する ことを 明らかに した. まずステ ップ方向 を一義 的に決定 するた め, [T2i] と [211 ] の結晶 軸方向を 菊池パタ ーンに よって絶 対的に決定できることを示した.次に典 型 的方向の ステッ プ端に形 成され る初期ド メインの 形と成長後の観察を行い,ドメイン は 成長初期 にステ ップとく 112 >方向に垂直な直線相境界で囲まれ,ステップ方向の違い でドメインの成長が異なることを確認した.
第 6 章 で , 7X7 ド メイン 間位相 境界と表 面のス テップが 再構成 表面上の 結晶成長 に対
し,選択的な核形成場所となることを述べた.Si 表面上のGe 層の成長はStranski − Krastanov
モ ード iE で成長し,Ge 層の厚さが4 モノレイヤーを超すとGe の島が形成される.Si ( 111 )
表 面 にInm程 度 蒸 着 し たGeの 固 相 エ ピ タ キ シ ー をAFM観 察 し , 網 目 状 パ タ ー ン の 成 長 が 観 察 さ れ て い る が , こ れ がSi(lll) 表 面 の ス テ ッ プ や7X7ド メ イ ン 間 位 相 境 界 に 形 成 さ れ たGeの 島 に よ る こ と を 直 接 検 証 し た . ま た ド メ イ ン が ド メ イ ン 間 位 相 境 界 よ り50℃ だ け 結 晶 化 温 度 が 高 い こ と を 明 ら か に し た ・
第7章 で ,7X7表 面 を 用 い 次 の4種 類 の 方 法 で 固 相 成 長 さ せ たGe膜 の 表 面 モ ホ ロ ジ ー と 内 部 の 結 晶 性 と の 比 較 に つ い て 述 べ た . (1) シ リ コ ン 基 板 上 にGeと 同 時 に 砒 素 を共 蒸 着 さ せ る 方 法 ,(2)シ リ コ ン 基 板 上 の み に 砒 素 を 蒸 着 す る 方 法 ,(3)多 層 構 造 で , 各3nm のGe層 の 間 に 砒 素 を 蒸 着 す る 方 法 ,(4) Geフ イ ル ム の 表 面 の み に 砒 素 を 蒸 着 す る 方 法 で あ る . 上 記4種 類 の 方 法 で 成 長 さ せ たGe膜 の 表 面 モ ホ ロ ジ ー に 大 き な 差 は 認 め ら れ な か っ た , 断 面 TEM, 平 面TEMに よ る 観 察 か ら 固 相 エ ピ タ キ シ ー に よ るGe膜 の 結 晶 性 は MBEに よ る 膜 の 結 晶 性 に 比 べ て い く 分 低 い こ と を 確 認 し た . ま た 方 法(4)で 表 面 に 島 形 成 が 起 き な い こ と か ら , 固 相 エ ピ タ キ シ ー に お け る 成 長 モ ー ド の 変 化 は サ ー フ ァ ク タ ン ト と し て 用 い た 砒 素 層 に よ り 表 面 のGe原 子 の 拡 散 が 妨 げ ら れ る 結 果 で あ る こ と を 明 ら か に し た . ま た7x7再 構 成 表 面 と 準 ixi 領 域 の 混 在 す る 表 面 は 、 準 1X1 表 面 が Geの 固 相 エ ピ タ キ シ ー に 対 し 選 択 的 な 結 晶 成 長 場 所 で あ る こ と を 明 ら か に し た.7X7ド メ イ ン と 1X1 ド メ イ ン 上 のGeは 各 々 約50℃ の 結 晶 化 温 度 の 差 を 持 ち な が ら 砒 素 層 が 無 い 場 合 と 比 べ て100℃ 高 い 結 晶 化 温 度 を 示 し た . こ の50℃ の 差 は7X7ド メ イ ン の 安 定 性 に 起 因 し ,100℃ の 結 晶 化 温 度 の 上 昇 は 砒 素 層 の 効 果 に よ る こ と を 明 ら か に し た . 第8章 で , 微 傾 斜Si(111) 面 に り ソ グ ラ フ イ ー 技 術 や 二 次 イ オ ン 質 量 分 析 器 を 利 用し て 形 成 し た 長 方 形 ク レ ー タ ー (10‑‑100LimX200 Lr,m、 深 さlLtm)の 加 熱 に よ る 自 己 組 織 化 に つ い て 述 べ た 。1200℃ 近 傍 の 加 熱 で 長 方 形 の ク レ ー タ ー は 底 に 巨 大 な (111) 無 ス テ ッ プ 面 を 形 成 す る . こ の (111) 無 ス テ ッ プ 平 坦 面 は ア ド ア ト ム 拡 散 に よ る ス テ ップ フ 口 ー メ カ ニ ズ ム で 形 成 さ れ る こ と を 明 ら か に し た . こ の 方 法 が 厳 密 にSi(lll) 表 面 に 一 致 し た 表 面 形 成 の 技 術 で あ る こ と を 明 ら か に し た .
第9章 で , 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を ま と め た . 第1にSi(111)7 X7位 相 境 界 がTc( 相 転 移 温 度 ) よ り8℃ 低 い 温 度 の ア ニ ー ル で7X7ユ ニ ッ ト の ダ イ マ ー を 反 映 し く110> の 方 向 で 安 定 化 す る . 第2に 菊 池/ヾ 夕 ー ン の 構 造 か ら[12T]と[211] 方 向 を 絶 対 的 に 決 定 で き , 第3に ス テ ッ プ に 発 生 す る7X7ド メ イ ン の 相 境 界 が ス テ ッ プ と く112> 方 向 に 垂 直 な 直 線 相 境 界 と で 囲 ま れ る 形 を と る . 第4に7X7ド メ イ ン 間 位 相 境 界 及 び そ の 二 次 元 的 広 が り で あ る 準 ixi 領 域 がGeの 固 相 エ ピ タ キ シ ー に お け る 選 択 的 核 形 成 サ イ ト と な り ,7X7領 域 と50℃ の 結 晶 化 温 度 の 差 が あ る 事 を 明 ら か に し た . 第5にGe固 相 エ ピ タ キ シ で 表 面 層 の 砒 素 が 成 長 モ ー ド を 変 え ,Geの 結 晶 化 温 度 を100℃ 上 昇 さ せ る . 第6 に 加 熱 に よ り , 表 面 構 造 物 か ら 無 ス テ ッ プ 平 坦 面 が で き , こ れ ら は 自 己 組 織 化 を 利 用 し た 厳 密 なSi(ll1) 表 面 形 成 技 術 と な り う る こ と 等 で あ る .
7ト Stranski‑Iくrastanovモード:エピタキシーの際,下地に到達した原子が始めの数層は層状成長を し,ある臨界厚を過ぎるとその表面に島状に成長する様式.