• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 工 学 ) 西 本    浩

     学 位 論 文 題 名

Studies on MIIVIO Spatial IVIultiplexing for   High‑Speed Wireless Communications

(高速無線伝送を実現するMIMO 空間多重に関する研究)

学位論文内容の要旨

  1990年代から爆発的に普及した携帯電話は、今や国内における加入契約数が1億を超え、社会

インフラとして我々の生活に必要不可欠な存在となっている。近年は、携帯電話によるデー夕通信 が増加しており、特に画像や映像、ゲームなどの大容量通信が急増している。また、無線LANは 複雑な配線を必要としない無線ブロードバンドとして普及が進んでおり、更にホットスポットやフ リースポットと呼ばれる公衆無線アクセスサービスの展開により一層需要が高まっている。現行の 無線LANの国際規格では理論値として最大54 Mbpsを実現しているが、現在策定中である次世代 の無線LAN規格では実効速度100 Mbps、将来的には600 Mbpsまでを視野に入れている。一方、

携帯電話では、昨年サービスが開始されたHSDPAと呼ばれる第3.5世代移動通信において下り最 大14.4 Mbpsを実現しており、2010年頃を目途に最大100 Mbps程度、第4世代移動通信では約

l Gbpsの高速伝送を目標とした商用サービスが検討されている。社会の未来像として、誰もが「い

つでも、どこでも」ITネットワークにっながることができるユビキタス社会の概念が提唱される 中、 こうした 高速化・ 大容量 化の需要 に応え ることは 無線通 信分野の重要課題といえる。

  使用する周波数帯域幅を増加させることなく、このような高速伝送を実現するブレイクスルー として期待されるのがMIMO (Multiple―Input MultipleーOutput)システムである。送信側と受信側 の双 方に複数のアンテナ素子を備えたMIMOシステムは、1990年代後半に登場して以来、国内 外を間わず研究が盛んであり、既にいくっかの無線規格では必須の技術として検討されている。

MIMOシステムにおいて高速化を実現する伝送方式として、アンテナ数に応じた複数のストリー ムを同時に送信することにより伝送速度の上昇を可能にする空間多重方式(Spatial Multiplexing)が ある。空間多重方式は空間分割多重(SDM; Space Division Multiplexing)と固有ビーム空間分割多 重(E‑SDM; Eigenbeam‑Space Division Multiplexing)の2っに大きく分類できる。SDMは、各送 信アンテナから独立に信号ストリームを送信することで容易に伝送効率を高めるものであり、送受 信間の伝送路情報(チャネル行列)が受信側でのみ得られる場合に有効な方式である。一方、送信 側においても伝送路情報が得られる場合、E―SDM方式が適用可能となる。これは、チャネル行列 から算出される固有ベクトルを送信ウェイトとして各ストリームに乗ずることにより、空間的に直 交 し た 固 有 ビ ー ム を 形 成 す る 手 法 で あ り 、 最 大 のMIMO通 信 容 量 が 実 現 で き る 。

  SDMでは空間的に多重化された複数の信号ストリームが受信点で互いに干渉となるため、それ

らを分離検出する必要がある。信号分離が容易となるのは、一般に送受信間が見通しとならない見

83

(2)

通し外(NLOS; non‑line−of・sight)環境で生起すると言われる、各送受信アンテナ間のチャネルが無 相 関散 乱に より独立に変化する場合 である。しかし、実環境にお いて通信を行う場合、送受 信間が 見通し(LOS; lineーof‑sight)となる環境 も存在し得る。このとき、 直接波の影響によルチャネルの 独 立性 が崩 れ、信号分離が困難とな る可能性がある。そこで、本 論文では、屋内で測定した 実伝搬 デ ー タ よ り 、LOS環 境 とNLOS環 境 の 双 方 に お け るSDMの 挙 動 を 多 角的 に解 析 して いる 。ま た、

実 環 境 に お け るE‑SDMの 特 性 評 価 も 併 せ て 行 っ て い る 。 結 果 か ら 、SDMがLOS環 境 に お い ても ロ バス トで あり 、 一般 に屋 内環 境で はSDMを 用 いて 高速 伝送 を実 現 する こと が可 能である ことを 明 ら か に す る 。 ま た 、E−SDMはLOS環 境 に お い て 優 れ た 特 性 を 示 す が 、SDM、E‑SDMと も にア ンテナ配列に より特性が大きく変動する 傾向にあることを示す。

  一 方 、MIMOシス テ ムを 広帯 域伝 送に 拡 張し た場 合、 マル チ パス 対策 とし てOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方 式の 適用 が有 効 であ る。MIMO‑OFDMに おけ る最適な 送信処 理 は、 各サ ブキ ャ リア にお いてE‑SDMを 行う こ とで ある 。し かし 、 各サ ブキ ャリ アで固有 値演算 を 行い 固有 ベクトルを算出するとき 、サブキャリア数に比例して 計算量が増大し、送信機で は大き な 計算 負荷 となる。また、サブキャ リア毎に得られる固有ベクト ルは周波数間での位相連続 性を持 た な い 。 固 有 ベク ト ルの 不連 続性 は、 受 信側 で観 測さ れる 実 効的 なMIMOチ ャ ネル の遅 延広 がり を 大き くし てし ま う。 この 場合 、サ ブ キャ リア 間の 周 波数相関 を利用したウィンドウ処理 による チ ャネ ル推 定精度の改善手法が適用 できないため、特性劣化が避 けられない。これらの問題 を解決 す るた め、 本論文では周波数領域で 連続性を持つ疑似固有ペクト ルを簡易に求める手法を提 案し、

そ れに より 実効チャネルの遅延広が りを抑制できることを示す。 また、疑似固有ベクトルを 用いた 疑 似 固 有 ビ ー ム空 間 分割 多重 方式(PE‑SDM; Pseudo E‑SDM)の 伝送 特性 を求 め 、ウ ィン ドウ 処理 を 適用 する こと に より 極め て低 演算 量 であ りな がら 通 常のE−SDMと同等、またはそれ以上 の良好 な特性が得ら れることを明らかにしてい る。

  本論文は、 以下の7章から構成されてい る。

  第1章 は 序 論 で あ り 、 研 究 背 景 、 本 論 文 の 目 的 、 及 び 、 概 要 に つ い て 述 べ る 。   第2章 で は 、MIMO空 間 多 重 に つ い て の 概 要 を 述 べ 、SDM、 及 び 、E‑SDMに っ い て の 定 式 化を 行 う。 併せ て、Jakesモ デ ルを 用い た無相関散乱MIMOチャネルの 模擬方法にっ,いても検討 する。

  第3章 で は、 行っ た屋 内 伝搬 実験 の概要について述べる。また 、得られた伝搬データから 、実験 環境の伝搬特 性についても解析する。

  第4章 で は、 まず 実験 に 用い たア ンテ ナ特 性 、及 び、 実験 環境 に おけ るM:IMOチャネル 特性を 解 析 す る 。 次 に、 総 送信 電力 一定 の条 件 の下 、実 験環 境に お けるSDM、及 び、E‑SDMの 特性 評価 を 行う 。こ のとき、理想的な通信特 性の指標としてチャネル容量 を、より現実的な通信特性 の指標 と し て ビ ッ ト 誤り 率 を用 い、 上述 のア ン テナ 、及 び、MIMOチ ャネ ル特 性と 併 せて 考察 する 。ま た 、 よ り 実 用 的 な シ ス テ ム と し て 、MIMO−OFDMにSDMを適 用 した 場合 の実 験 特性 も評 価す る。

  第5章 で は 、 ま ず 広 帯 域MIMOシ ス テ ム モデ ルに つい て述 ベ 、提 案す る疑 似 固有 ベク トル の基 本 概念 と算 出法について説明し、周 波数連続性、及び、演算量を 評価する。次に、疑似固有 ベクト ル の 特 性 を 利 用 し た 各 種 ウ ィ ン ド ウ 手法 を提 案 する 。MIMO‑OFDMにお ける ビ ット 誤り 率特 性、

及 び 、 広 帯 域 シン グ ルキ ャリ アMIMO伝 送 にお ける スル ープ ッ ト特 性に より 、 疑似 固有 ベク トル を用いたPE‑SDM方式とウィンドウ手法の 特性解析を行う。

  第6章 で は 、 伝 搬 実 験 デ ー タ を 用 い たMIMO‑OFDM伝 送 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 、 提 案 し た

‑ 84 ‑

(3)

PE‑SDM方式の実環境における有効性を示す。

  第7章は結諭であり、本論文の内容と成果をまとめる。加えて、今後の課題についても簡潔に述 べる。

85ー

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Studies on MIMO Spatial Multiplexing for   High‑Speed Wireless Communications

(高速無線伝送を実現するMIMO 空間多重に関する研究)

  近 年、 移動 体通 信の 普及 に伴 い、 無 線に 利用 でき る周 波数 資源の枯渇が懸念されてい る 。一 方で 、次 世代 移動 体通 信や 無線LAN等 では 更な る高 速化 ・大 容 量化 が求 めら れて いる 。周 波数帯域幅を増加させること なく、高速伝送を実現するブレイクスルーとして期 待される技術が、送信側と受信側の双方に複数 のアンテナを備えたMIMO (Multiple―Input Multiple−Output)シ ステ ムで ある 。MIMOシ ステ ムに おい て高 速化 を 実現 する 方式 とし て、 複数 の空 間ス トリ ーム を並 歹IJ伝 送す るこ とに より 通信 速度の上昇を可能にする空 間 多重 方式(Spatial Multiplexing)が あ る。 空間 多重 方式 は空 間分 割多 重(SDM; Space Division Multiplexing)と 固有 ビー ム空間分割多重(E‑SDM; EigenbeamーSpace Division Multiplexing)の2っ に大 きく 分類 でき る 。SDMは 、各 送信 アン テナ か ら独 立に 信号 スト リー ムを 送信することで容易に伝送効 率を高めるものであり、送受信間の伝送路情報が受 信側 での み得られる場合に有効な方式 である。一方、送信側においても伝送路情報が得ら れる 場合 、チャネル行列から算出され る固有ベクトルを送信ウェイトとすることにより空 間 的 に 直 交 し た 固 有 ピ ー ム を 形 成 す るE−SDMが 可 能 と な り 、 最 大 のMIMO通 信 容 量 が 実現できる。

  SDMで は 空 間 的 に 多 重 化 さ れ た 複 数 の ス ト リ ー ム を 受 信機 で分 離 検出 する 必要 があ る。一般に、送受信間が見通し外(NLOS;non―line−of‑sight)となる環境において容易に信 号分離できるが、実際の通信では見通し(LOS; line−ofsight)となる環境も存在し得る。こ のと き、 直接 波の 影響 によ ルチ ャネ ル の独 立性 が崩 れ、 信号 分離が困難となる可能性が あ る 。 そ こ で 、 本 論 文 で は 、 屋 内 で 測 定 し た 実 伝 搬 デ ー タよ り、LOS環 境とNLOS環境 の 双 方 に お け るSDMの 挙 動 を 詳 細 に 検 討 し て い る 。 ま た 、E‑SDMの 特 性 評 価 も 併 せ て 行 って いる 。こ れら の結 果か ら、 一般 に 屋内 環境 ではSDMを用 いて 高 速伝 送を 実現 する     ‑ 86―

孝 一

雄 則

(5)

ことが可能であることを明らかにしている。また、E‑SDM はLOS 環境において優れた特 性を示すが、SDM 、E‑SDM ともにアンテナ配列により特性が大きく変動する傾向にある ことを示している。

   一方、広帯域MIMO システムでは、マルチパス対策としてOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 方式の適用が有効である。MIMO −OFDM における最適な送信処理 は、各サブキャリアにおいてE ―SDM を行うことである。しかし、全てのサプキャリアに ついて固有値演算を行うことは、送信機に多大な演算負荷を要することになる。また、サ ブキャリア毎に得られる固有ベクトルは一般に周波数不連続性となり、受信側で観測され る実効的なチャネルの遅延広がりを大きくしてしまう。この場合、ウィンドウ処理によっ て雑音を抑圧し、伝送路推定精度を改善する手法が適用できないため、特性劣化が避け られない。これらの問題を解決するため、本論文では周波数連続性を持つ疑似固有ベク トルを簡易に求める手法を提案し、それにより遅延広がりを抑制できることを示してい る。また、疑似固有ベクトルを用いた疑似固有ビーム空間分割多重方式(PE‑SDM; Pseudo E‑SDM) の伝送特性を求め、極めて低演算量でありながらE‑SDM と同等、またはそれ以 上の良好な特性が得られることを明らかにしている。

   本論文は、以下の7 章から構成されている。

   第1 章は序論であり、研究背景、本論文の目的、及び、概要について述べている。

   第2 章で は、 MIMO 空 間多 重に つい ての 概要を述べ、 SDM 、及び、E‑SDM についての 定式化を行っている。

   第3 章では、行った屋内伝搬実験の概要を述べており、また、実験環境の伝搬特性を解 析している。

   第4 章では、まず実験に用いたアンテナ特性、及び、実験環境におけるMIMO チャネ ル特性を解析している。次に、実験環境における SDM 、及び、E −SDM の特性評価を行っ ている。

   第5 章では、提案する疑似固有ベクトルの基本概念と算出法について説明し、周波数連 続性、及び、演算量を評価している。次に、疑似固有ベクトルの特性を利用した各種ウィ ン ドウ 手法 を提案している。広帯域 MIMO 伝送における特性解析により、PE‑SDM 方式 とウィンドウ手法の評価を行っている。

   第6 章で は、伝搬実験データを用いた MIMO‑OFDM 伝送シミュレーションにより、提 案した PE‑SDM 方式の実環境における有効性を示している。

   第7 章は結論であり、本論文の内容と成果を要約している。

   これを要するに、著者は、周波数利用効率を改善できる MIMO システムについて屋内

伝搬実験結果を用いてその特性評価を行うとともに、演算負荷を軽減した広帯域MIMO

伝送方式を提案したものであり、無線通信工学に貢献するところ大なるものがある。よっ

て 、著 者は 北海 道大 学博 士( 工学 )の 学位 を授与 され る資 格あ るも のと認める。

参照

関連したドキュメント

 基本波を用いる近似はピクセル単位の時間放射能曲線に対しては用いることができる

図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実

ライセンス管理画面とは、ご契約いただいている内容の確認や変更などの手続きがオンラインでできるシステムです。利用者の

・ 教育、文化、コミュニケーション、など、具体的に形のない、容易に形骸化する対 策ではなく、⑤のように、システム的に機械的に防止できる設備が必要。.. 質問 質問内容

それに対して現行民法では︑要素の錯誤が発生した場合には錯誤による無効を承認している︒ここでいう要素の錯

①配慮義務の内容として︑どの程度の措置をとる必要があるかについては︑粘り強い議論が行なわれた︒メンガー

改善策を検討・実施する。また、改善策を社内マニュアルに反映する 実施済

 学年進行による差異については「全てに出席」および「出席重視派」は数ポイント以内の変動で