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博士(理学)大木進野 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(理学)大木進野 学位論文題名

NMR Study on Structureー Function Relationship of     Calmodulin  .

  (NMRに よ る カ ル モ デ ュ リ ン の 構 造 と 機 能 と 機 能の 相 関 に つ い て の 研 究 )

学位論文内容の要旨

    カ ル モ デ ュ リ ン (CaM)は 真 核 生 物 の細 胞 に 広 く 分 布す る蛋 白質 であ る。CaMは 、4 個のカルシウムイオン(Ca2+)を結合してカルモデュリン標的酵素と呼ばれる酵素と相互 作 用 し 、 標 的 酵 素 の 活 性を 調節 する 。CaMの構 造は 、2つの球 状ド メイ ンがQヘ リッ クス で っな がれ た亜 鈴型 である。それぞれのドメインには2個ずつのCa2+結合部位がある。標 的 酵 素 の モ デ ル ペ プ チ ド とCaMと の 複 合 体 は 、CaMの 中 央の へり ック ス部 分が 折れ 曲が り 、2つ の 球状 ド メ イ ン が 接 近 し てQヘ リッ ク ス 状 の 標 的を 包み 込む 構造 をし てい る。

    CaMの 構造 に つ い て は 良く研 究さ れて いる が、 構造 変化 と機 能の 相関 につ いて は不 明 な点 が多 い。 従っ て、この問題の解決に向けて本研究の大半は次のような方針で行われ た 。 さ ま ざ ま なCa2+ も し くはベ プチ ド濃 度で のCaMのNMRス ベク トル を測 定し た。 それ ら の結 果に 基づ き、Ca2+もしくはベプチドの結合によるCaMの構造変化を考察し機能との 相関について検討した。

    第1章で は、CaMについ て現 在ま でに 明ら かに なっ てい るこ とと 、本 研究 の目的につ いて記述した。

    第2章 で は 、CaMの み とCaMと モ デ ル ベ プ チ ド ( マ ス ト パ ラ ン ;MP)の 複 合 体 に つ い て、 いく っか の残 基のア ミド プロ トン のH/D交 換の速度を調べた結果を述べた。それぞ れのCa2+結合部位の5番目に位置するGly残基は同じCa2+結合部位内の1番目に位置するAsp あるいはAsn残基と水素結合し、Ca2+結合部位の構造の安定化に寄与している。このGly残 基 のH/D交換 の速 度は 、CaM単体よりも(ニaM ‑MP複合体の方が遅かった。この結果から、

CaM単体 より もCaM―MP複合 体のCa2+結合 部位 の方 がよ り安 定な 構造 を取 って いることが 示 唆さ れた 。こ のこ とは、標的と共存する系でCaMのCa2+結合能が上がることに関係して いると考えられる。

    第3章 では 、Ca2+ 非 結 合 状 態 で あ るア ポCaM、Cド メ イ ン の み にCa2+ を 結 合 し た 2Ca2+‑CaM、Ca2+飽和型の4Ca2÷.く:aMのそれぞれに対してMPを滴定し、さまざまなMP濃 度 で1H‐NMRス ベ ク ト ル を 測 定 し た 結 果 を 示 し た 。 そ の結果 を解 析し 、ア ポCaMもMPと 弱 い相 互作 用が ある こと、4Ca2+‐CaMではCドメ インの方がNドメインよりもMP親和性が 高いことを見いだした。さらに、2Caつ‐+‐CaMにMPを滴定するとCaM分子間でCa2+の再分配 が 起こ り、 アポCaMと 活性型の4Ca2+.CaM‐MPが現れることを見いだした。このことは、

標的と共存する系でく:aMの見かけのCa2+結合能が上がることに対応しており、複合体形成

(2)

前 のCド メイ ンのCa2+結合 能よりも 複合体形 成後のNド メインのCa2+結合能の 方が高い こ と を 示 して いる。こ のようなCaMの性質は 、Ca2+濃度の 上昇に鋭 敏に応答し て機能を 発現 することに密接に関係していると考えられる。

    第4章 で は、 第3章 で 見い だ したCa2+の再分配 について 、より生 体内に近い 状態で検 討 した。Ca2+の 代わりにCd2+を用いてl13Cd̲NMRスベクトルを測定し、く:aMに結合してい るCd2+を 直接モ ニターし た。この 章で用い たM13は26残基 の標的モ デルベプチ ドで、ミ オ シ ン 軽 鎖キ ナ ーゼ のCaM結合 部 位で あ る 。113Cd‑NMRス ベ ク トル を 測 定すると2Cd2+̲CaM は シ ャ ープ な2本のシ グナルを 与える。2Cd 2+̲CaMにM13を加え るとll3 Cd‑N MRスベ クト ル は 大 きく 変化し、4本のシグ ナルが観 測された 。この結 果は、標的 が加えら れたこと に よ り2Cd2+̲C aMは ア ポCaMと4Cd2+̲CaM ‑M13複合体 になった ことを示 しており 、第3章の 結 果と一致 する。マ グネシウム イオン(Mg2+)存在下で 同様の実 験をして113Cd‐丶丶瓜ス ベ ク ト ルを 測定する と、Cd2+の再 分配は起 こらず4Cd2+̲CaM̲M13複 合体は現 れないこと を 見 い だ した 。生体内 で刺激に 応答したCa2+濃度の急 激な上昇 がCaM機能発現 の引き金 とな るためには、低Ca2+濃度で活性型の4Ca2+.CaM‐標的酵素の複合体が現れないことえミ必要で あ る 。 そ の た め の 役 割 を Mg2+ が 担 っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。     第5章 で は、 酵 母CaMのNド メ イン (YCM0.N) の構 造 とCa2+ 結 合に伴 う構造変化 を 述 べ た 。こ の 章の 実 験 には 、 一様 に15Nラベ ル され た 試 料に 対 し て3次 元NMR法を連 用し た。

    YCM0‐Nは 他 のCaMと 比 較し て1次 構造 の 相 同性 が60% 程 度し か ない 。また、一 般的 なCaMに 比べ て 酵母CaMの 標的 酵 素活 性 化能カ は半分程 度しかな い。従って 、本章で の結 果 を他のCaMの 結果と比 較検討する ことは、 ある蛋白 質がCaMとし て機能するの;二必要な 性質にっいての知見をもたらしてくれるものと考えられる。

    YCM0‐NのMg2+結 合 型 の2次構 造 は他 のCaMのそ れ と同 様 に2つ のヘリ ックス・ル ー プ ・ヘリッ クスから なっている ことが明 らかにな った。ま た、2つのCa2÷結合部位はルー プ 部分で逆 平行のロ シート構造 を形成し ているこ とが明ら かになっ た。さらに、いくっか のPhe,Ile残基の 側鎖が疎 水性領域を 形成して いること が明らか になった。これらの結果 は、既に明らかになっている他のCaMの構造の特徴と一致する。Ca2+結合型ほM£ニニ結合型 と ほば同様 の2次構造 を取ってい るが、第1番目のCa2÷ 結合部位 の後半の部分(Bヘリック ス 部 分 )が ヘリック ス構造を 形成して いないこ とが明ら かになった 。これは 、Bヘリッ ク ス のN末 端側 部分のア ミノ酸配 列がSerISerとな っていて 、一般的 なCaMとは異な ることが 原因であろうと考えた。既に明らかにされている4Ca2+‐CaM_M13複合体の構造で;ま、疎水 性 領 域 の他 にBヘ リッ ク ス 部分 の アミ ノ 酸残基もM13と相互作 用している ことが義 告され て いる。Bヘ リックス が形成され ていない ことは、 酵母CaMの標 的酵素活性化能カミミ低い こ と の 一因 で はな い か と考 え られ る 。 また、標 的の結合 部位である 疎水性領 域ほ、倥 の CaMと 同 様 にCa2+ 結 合 に 依 存 し て 分 子 表 面 に 露 出 す る こ と が 明 ら か に な っ た :     さ らに、一 様に15Nでラ ベルされたYCM0‐NのMg2+結 合型にCa2+ を滴定し、きまぎま なCa2+ 濃 度 で の 異 種核 (1H,15N)2次元NMRスベ ク ト ル(HSQC) を測 定 し た: そ の結 果、YCM0−Nの2つのCa2+結合部位へのCa:+結合は段階的に起こり、Ca2+結合に伴う構造変 化は分子全体で起こることが明らかになった。

    最 後 の章 で 、 ある 蛋 白 質がCaMとし て 働 くた め に備 え て いな け ればい けない性 質に っ いて検討 した。Ca2+ 結合部位は 水素結合で安定化されていること、標的と混在する系で は この水素 結合が強 くなってCa2+ 親和性を高めること、ドメイン内の2つのCa2‐結合部位 は ロシート で結ばれ てベアにな っている こと、それぞれのドメインにCa1‐ 結合に依存し

(3)

て分子の表面に露出する疎水性領域があることなどが、CaMとしての機能に必要な構造上 の条件であると結論した。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

NIVIR Study on Structure‑ Function Relationship of   Calmodulin

(NMRに よ る カ ル モ デ ュ リ ン の 構 造 と 機能 と 機能 の 相 関に つ いて の 研 究)

  カ ル モデ ュ リ ン(CaM)は 真 核 生物 の 細 胞に 広 く分 布 し 、4個のCa2゛を結 合し て酵 素 の 活性 を 調 節す る 蛋白 質 で ある 。CaMの 構 造 は2っの 球状ド メインがaヘ リッ ク ス でっ な が れた 亜 鈴型 を し てお り 、そ れ ぞ れの ド メイ ンには2個 ずつの Ca2゛結合部位がある。CaMの構造は良く研究されているが、Ca2゛結合に伴う構造変 化と 機 能 の相 関 に つい て は不 明な 点が多い 。申請者 はこの相関 を明らか にする ため にNMRを用 い た 研究 を 行っ た 。 本論 文 はそ の 結 果に つ いて述 べたもの であ り、6章からなる。

  第1章 で は、CaMに つい て のこ れまでの 研究を概 観し、こ の論文の目 的につい て述 べ て いる 。 つ いで 、 第2章で は 、CaMの み とCaMと モ デル ペプチド (マスト パ ラ ン :MP)の複 合 体 にっ い て 、ア ミ ドプ ロ ト ンのH/D交換 の 速 度を 調 べた 結 果に つ い て述 べ て いる 。CaMーMP複合 体 のH/D交 換 速度 はCaM単 体よりも遅 く、

CaMーMP複 合 体 の Ca2゛ 結 合 が よ り 安 定 で あ る こ と を 見 出 し た 。   第3章では 、アポCaM、CドメインのみにCa2゛を結合した2Ca2+―CaM、Ca2゛飽和 型の4Ca2+ ーCaMのそれ ぞれに対 してMPを滴 定し、さ まざまなMP濃度でスペ クト ルを 測 定 した 結 果 にっ い て述 べ て いる 。 アポCaMもMPと 弱 い相互作 用がある こ と、4Caひ ーCaMで はCドメ イ ンの 方がNドメ インより もMP親和性 が高いこと を見 いだした 。2C,a2↓‑CaMにMPを滴定するとCaM分子間でCa2゛の再分配が起こり、ア ポCaMと活 性型の4Ca2十 ーCaM−MPが現 れること を見いだ した。こ のようなCaMの 性質が、Ca2^濃度の 上昇に鋭敏に応答して機能する生理活性を発現していると述 べている。

  第4章では、Ca2゛の代わりにCd2゛を用いてl工3Cd−NMRスペクトルを測定した結果 について 述べてい る。2Cd2+−CaMはシャー プな2本のピークを与えるが、モデル ペプ チ ド であ るM13を加 え ると 、4本 の ピー ク が観 測 さ れた 。M13を加 えたこと

利 勲

邦 勝

   

田 中

新 田

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

により、2Cd2+ーCaMはアポCaMと4Cd2十―CaM―M13複合体になったと解釈している。

Mg2゛存在下で同様の実験をすると、4Cd2十―CaMーM13複合体は現れないことを見いだ し た。生体 内で、刺激 に応答し たCa2゛濃度 の急激な 上昇がCaM機能発現の引き金 となるためには、低Ca2゛濃度で活性型の4Ca2+―CaM―標的酵素の複合体が現れない こ と が 必 要 で 、 そ の た め の 役 割 をMg2゛ が 担 っ て い る と 述 べ て い る 。   第5章で は 、 酵母CaMのNドメ イ ン(YCMO−N)の構 造とCa2゛結 合に伴う 構造変 化 を 調べ た結果に ついて述 べている 。一様に15Nでラベル した蛋白質 を作成し 、 3次元NMRスペ ク ト ルを 測 定し た 。YCMOーNは他 のCaMと 比 較 して1次 構造の相同 性 が60%程度 で、他のC,aMに 比べて酵素活性化能カは半分程度しかない。YCMO−N のMg2゛結 合 型 の2次構 造 は他 のCaMと同様に2つのへり ックス・ ループ・ヘ リッ ク スからな り、2っのCa2゛ 結合部位 はループ 部分で逆 平行のロシート構造を形成 し て いる こ と を見 出 し た。 さ らに 、 疎水性の ドメイン があること も明らか にし た。これらの結果は、他のCaMの構造の特徴と一致する。一方、Ca2゛結合型はMgz+ 結 合 型と ほぼ同様 の2次構造 を取って いるが、 第1番目のCa2゛結合部位 の後半の 部 分 (Bヘ リックス 部分)が ヘリック ス構造を 形成して いないこと を見出し た。

Bヘリ ッ クス のN末 端 側部 分 のア ミ ノ酸 配列がSer―Serとなって おり、これ が酵 母CaMが低活性である理由の1っであろうと述べている。

  最 後の章 では、CaMと しての機 能を発現 するため に蛋白質 分子が持っ ているべ き性質について議論している。Ca2゛結合部位は水素結合で安定化されていること、

標 的と混在 する系では この水素結合が強くなってCa2゛親和性を高めること、ドメ イ ン 内の2つのCa2゛結 合部位はBシートで 結ばれて ペアにな っているこ と、それ ぞ れ のド メインにCa2゛結合に 依存して 分子の表 面に露出 する疎水性 領域があ る こと等が必要な構造上の条件であると結諭している。

  本 論文 で 述べ ら れ た実 験 結果 及 び考 察は、カ ルモデュ リンの構造 と機能の 相 関 に つい て 有 益な 知 見 を与 え るも の と高く評 価される 。審査員一 同は申請 者が 博士(理学)の学位を得る充分な資格があると認めた。

参照

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