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博 士 ( 理 学 ) 田 中 秀 逸

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 田 中 秀 逸

学 位 論 文 題 名

 Studies of regulatory mechanlsms of neuronal death induced by trophic factor deprivation : suppression of          neuronal death by second messengers.

    ( 神 経 成 長 因 子 欠 乏 に よ る 神 経 細 胞 死 の 制 御 機 構 の 研 究 : セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー に よ る 神 経 細 胞 死 の 抑 制 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  発 生 過 程 で 過 剰 に 生 産 さ れ た 神 経 細 胞 は 、 特 定 の 発 生 段 階 に 脱 落 し 、 成 体 で の 細 胞 数 ( 初 め の 細 胞 数 の40〜70%)に 調 節 さ れ る 。 こ の 脱 落 は 、 自 然 に 起 こ る 神 経 細 胞 死 と 呼 ぱ れ 、 神 経 栄 養 因 子 の 供 給 が 限 ら れ て い る 為 そ れ を 獲 得 で き を か っ た 細 胞 に 起 こ る と 考 え ら れ て い る 。 ラ ヅ ト の 上 頸 神経 節(Superior Cervical Ganglia, SCG)から 得ら れた 神経 細胞 は、 生存 に神 経 成長 因 子(Nerve Growth Factor,NGF)を 必 要 と し 、NGFを 除 去 す る と 細 胞 死 を 起 こ す 。 こ の 細 胞 死 に つ い て は 、mRNAや 蛋 白 質 の 合 成 を 阻 害 す る こ と で 抑 え ら れ る 積 極 的 な 細 胞 死 で あ る こ と 、 高K+培 地 や コ リ ン 作 働 性 ア ゴ ニ ス ト で あ る カ ル パ ミ ル コ リ ン 等 の 脱 分 極 刺 激 に よ り 阻 止 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る 。 血vivoで も シ ナ プ ス 活 動 を 介 し て 神 経 細 胞 の 生 存 が 制 御 さ れ て い る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。 節 前 細 胞 か ら の 神 経 伝 達 物 質 や 脱 分 極 刺 激 に よ る 細 胞 死 の 調 節 に は 、 セ カ ン ド メ ヅ セ ン ジ ャ ー が 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る 。 し か し 、 細 胞 内 セ カ ン ド メ ヅ セ ン ジ ャ ー レ ペ ル と の 対 応 や そ の 機 構 に つ い て の 研 究 は 少 な い 。

  本 研 究 で は 、 ラ ヅ トSCG神 経 細 胞 の 培 養 系 を 用 い て 、NGF除 去 後 の 神 経 細 胞 死 を 抑 制 す る 神 経 伝 達 物 質 や 脱 分 極 刺 激 の 作 用 、 及 ぴ そ の 作 用 と 細 胞 内 セ カ ン ド メ ヅ セ ン ジ ャ ー レ ベ ル と の 関 係 に つ い て 調 ぺ た 。

I. 培 養SCG神 経 細 胞 の 生 存 のNGF依 存 性 と 細 胞 内Ca2十 濃 度 ( [Ca2十 ]i) と の 相 関 .   小 池ら (1989) は、 [Ca2十 ]iが 神経 細胞 生存 の栄 養因 子 依存性の程度を決めるとする、Ca2十セ ヅ ト ポイ ント 仮説 を提 唱し た。 螢光 色素fura12を 用い て[Ca2十]iを測定した結果、(ユ)NGF除去 後 の 培 養SCG神 経 細 胞 を 種 々 のK十 濃 度 で 培 養 し た 時 の 生 存 率 と [Ca2十 ]iが 相 関 す る 、 即 ち

[Ca2十 ]iが184nMで は50ワ 。 の 細 胞 が 死 ぬ が 、240nMで は 細 胞 はNGFに 依 存せ ず生 存可 能と をる こ と 、(2)[Ca2十]iは、培養6〜8日のSCG神経細胞では相対 的に低い(93.O土10.5n恥 が、培養時 間 の 長 期 化 に 伴 を い 上 昇 し 、 約3週 間 で 一 定 の 高 い 値 (241土7n的 に を り 、 細 胞 はNGFな し で も 生 存 可 能 と な る こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ れ ら は 、 小 池 ら の 仮 説 を 強 く 支 持 し て い る 。

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II.cAMPレベルの上昇によるNGF除去後の培養SCG神経細胞の生存・

  (1) カ フ ェ イ ン の 細 胞 死 抑 制 効 果 : カ フ ェ イ ン は 濃 度 依 存 的 (EC50ニニ6mM) にNGF除去 後の SCG神 経 細 胞 の 死 を 抑 制 し 、 同 類 の フ オ ス フ ォ ジ エ ス テ レ ー ス 阻 害 剤 テ オ フ ィ リ ン

(E(ニ50―−3mM)やイソプチルメチルキサン チン(IBMX,EC50ニO.41n恥の細胞死抑制効果を促進し た 。 別 類 の フ オ ス フ ォ ジ エ ス テ レ ー ス 阻 害 剤R020.1724は 、 カ フ ェ イ ン の 細 胞 死 抑 制 効 果 を 促 進 し た 。 し か し を が ら 、 一 時 的 に [Ca2十 ]iを高 める カフ ェイ ンや 高K十 培地 (40m恥の パル ス的 処 理 は 、 細 胞 死 を 抑 制 で き を か っ た 。 細 胞 のCAMPレ ベ ル を 調 ぺ た 結 果 、20mMカ フ ェ イ ン は 10分 でNGF除 去 に よ る 減 少 を 回 復 さ せ (O.34pmol/well) 、lO時 間 で 一 定 の 高 いcAMPレ ベ ル

(O.69pmol/well) に さ せ て い た 。 一 時 的 にcAMPレベ ルを 高め るノ ルア ドレ ナリ ン やイ ソプ ロテ レ ノ ー ル は 、NGF除 去 後 の 細 胞 死 を 抑 制 で き を か っ た 。 こ れ ら は 、 にa2+ ]iやcAMPレ ベ ル が 一 定 の 高 い レ ベ ル に 保 た れ る こ と が 、SCG神 経 細 胞 のNGF非 依 存 的 生 存 を 促 す こ と を 示 し て い る 。 更 に 、 細 胞 死 抑 制 効 果 の コ ミ ヅ ト メ ン ト タ イ ム の 解 析 か ら [Caケ ]iやcAMPは翻 訳後 修飾 によって細胞死を抑制することが判った。

  (2)vas(xヨ亅c6veIntIeSti耐Peptide(VIP)の細胞死抑制効果:NGF除去による神経細胞死は、培地 にWP(3pM) を 加 え る こ と で 約6時 間 遅 れ た 。 このMPの 効果 は濃 度依 存的 (Eqめ− ―2.5い恥 であ り 、 そ れ 自 身 で は 効果 のな い低 濃度 のIBMX(0.2mM) と 共存 させ ると 増強 (E(:50ニ8心Oさ れ、

細 胞 死 は 完 全 に 阻 止 さ れ た 。 こ れ ら は 、SCG神 経 細 胞 の 生 存 が 、 神 経 伝 達 物 質 に よ っ て も 調 節 さ れ る こ と を 示 し 、 珈vf・mで もVIPに よ りcAN¢ レ ベ ル の 変 動 を 介 し て 嗣J御 さ れ て い る 可 能 性を示唆する。

III.NGFに よ る I理 !Ca2十 チ ャ ン ネ ル 発 現 量 増 大 と 高K十 の 細 胞 死 抑 制 効 果 と の 相 関 .   新 生 児 ラ ッ ト よ り 単 離 直 後 のSCG神 経 細 胞 は 、 高K十 (40m恥 で は 生 存 を 維 持 で き な い が 、 ベ ラ ト リジ ン(3いM)に よる 脱分 極で は培 地中 のCa2十に 依存 して 生存 可能 とを った 。Fura一2を用い た にa2十 ]i測 定 の 結 果 、 高K十 処 理 後 の [Ca2十 ] 舛 若 い 細 胞 で は91nMと 低 く 、NGF存 在下 で5〜 7日 培 養 さ れ た 細 胞 で は238n砌 と を り 、 高K斗 に よ り 生 存 可 能 と な る こ と が 判 っ た 。Rr‐PCR法 を 用 い たI」 型Ca2十 チ ャ ン ネ ルmRNAの 定 量 か ら は 、 こ の 転 写 量 倣 培 養1日 の 細 胞 と 比 較 し て 、 培 養3日 で 急 増 し 培 養5日 で 一 定 の レ ベ ル ( 細 胞 体 あ た り 約9倍 ) に 達 す る こ と が 判 っ た 。 こ れ ら は 、 未 発 達 のSCG神 経 細 胞 もCa2十 に 依 存 し た 生 存 の 機 構 を 持 つ こ と 、L型Ca2十 チ ャ ン ネ ル の 遺 伝 子 発 現 はNGFに よ る 正 の 制 御 を 受 け る こ と 、 こ の 増 加 レ ベ ル が 高K十 に よ る ス テ ー ジ 依 存 的 詮 神 経 細 胞 生 存 と 相 関 し て い る こ と を 示 し て い る 。 脱 分 極 刺 激 がNGFの 効 果 を 促 す 作 用 を 持 つ こ と か ら 、SCG神 経 細 胞 で は 、 節 前 節 後 の 両 シ ナ プ ス か ら の 刺 激 即 ち 脱 分 極 刺 激 と NGFが、 相互 に増 強し て細 胞の 生 存を 制御 して いる と思 われ る。

IV.Na+ の 細 胞 内 流 入 に よ る 神 経 突 起 変 成 と NGF除 去 後 の 神 経 細 胞 死 の 抑 制 .   低 濃 度 (O.75斗M) の べ ラ ト リ ジ ン は 、NGF除 去 後 の 培 養SCG神 経 細 胞 の 死 を 遅 ら す 一 方 で 、 神 経 突 起 の 変 成 も 弓 | き 起 こ し た 。 こ れ ら の 効 果 は テ ト ロ ド ト キ シ ン (TTX,1いM、 ベン ザミ ル

(25いM及 ぴ フ ル ナ リ ジ ン (1p恥 で 阻 止 さ れ 、 細 胞 外Na+ に 依 存 し て い た。 ベラ トリ ジン によ る 突 起 変 成 は 、NGFやcAMP存 在 下 で も 起 こ り 、 細 胞 体 の 変 成 死 と は 別 の 事 象 で あ る こ と が 判 っ た。 細胞 内Na+濃 度( [Na十]i)の 変化 を螢 光色 素SBRを用 いて 調べ た結 果、 低濃 度の べラトリジ ン で も 叫a+ ]iの上 昇 (4.2mMから12.9n1齣が 見 られ 、こ の上 昇はnX、 フル ナリ ジン で抑 えら れ た 。 低 濃 度 の べ ラ ト リ ジ ン 敬 、 単 離 直 後 のSCG神 経 細 胞 に は 効 果 が 無 か っ た 。Na十 イ オ ノ フ

(3)

vNuI§nAiv3lpX RHQQqup§pquD ‑     pjlXR §D+eNQZbNuSpj§ +eNCu§9lqNHr4cDricN      SuQOUuQOZQk

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学位論 文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

 Studies of Regulatory lVIechanlsms of Neuronal Death Induced by Trophic Factor Deprivation : Suppression of       Neuronal Death by Second Messengers.

    ( 神 経 成 長 因 子 欠 乏 に よ る 神 経 細 胞 死 の 制 御 機 構 の 研 究 : セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ― に よ る 神 経 細 胞 死 の 抑 制 )

  発 生 過 程 で 過 剰 に 生 産 さ れ た 神 経 細 胞 は 、 特 定 の 発 生 段 階 に 脱 落 し 、 成 体 で の 細 胞 数 に 調 節 さ れ る 。 近 年 、 こ の 発 生 過 程 で 起 こ る 神 経 細 胞 死 は そ の 生 物 学 的 重 要 性 か ら 、 ま た 、 細 胞 が 自 殺 を す る と ぃ う メ カ ニ ズ ム解 明の 重要 性力 `ら 極め て盛 んに 研 究さ れて ぃる 。特 に、

自 殺 メ カ ニ ズ ム に 関 与 す る 遺 伝 子 の 同 定 に は 激 し ぃ 世 界 的 な 競 争 が 展 開 さ れ て い る ヵ し か し な が ら 、 神 経 細 胞 死 を 制 御 す る 因 子 は 多 様 で あ り 、 且 つ そ の 機 構 解 明 は ま だ な さ れ て い な ぃ 。

  本 論 文 は 、 神 経 栄 養 因 子 欠 乏 に よ る 神 経 細 胞 死 の 制 御 機 構 の う ち 特 に 、 細 胞 内 カ ル シ ウ ム 及 びcAMPに よ る 抑 制 機 構 の 解 明 に 重 点 を お き 、 培 養 神 経 細 胞 を 用 い て 解 析 し た も の で 、 以 下 の よ う な 重 要 な 結 論 を 得 て い る 。

(1) 培 養 上 頸 神 経 節 細 胞 の 細 胞 死 抑 制 と 細 胞 内Ca2゛ 濃 度 ( [Ca2゛ ]I) と の 相 関   膜 脱 分 極 は 神 経 細 胞 死 を 抑 制 す る が 、 そ の 効 果 はL― 型Ca2+チ ャ ン ネ ル か ら の 細 胞 外 Ca2+の 流 入 に よ る 。 螢 光 色 素fura‑2を 用 い た イ メ ― ジ ン グ 法 に よ る 細 胞 内Ca2+濃 度 の 測 定 か ら 、 流 入 し た カ ル シ ウ ム 濃 度 と 神 経 細 胞 死 の 抑 制 と の 間 に 相 関 関 係 を 見 い だ し 、 Ca2十 セ ッ ト ポ イ ン ト 仮 説 と し て 証 明 し た 。 こ の セ ッ ト ポ イ ン ト 仮 説 か ら 予 想 さ れ た [Ca2十 ]iは 種 々 の 培 養 条 件 下 で の 神 経 細 胞 の 生 存 と 良 く 相 関 し た 。 例 え ば 、 生 後1日 目 の ラ ッ ト の 上 頸 神 経 節 神 経 細 胞 を 培 養 す る と[Ca2十]Iは 相対 的に 低く(93.0+10.5nM)、神 経成

郎 央 一 行 達 明 雅 孝 池 野 畑 橋 小 浦

・ 高

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

長因子 (NGF) 除去により細胞死が起こる。 NGF 存在下で培養すると[Ca2 十】i は上昇し、約 3 週間で―定の高い値 (241+7nM) になり、この条件では神経成長因子除去による細胞死は 起 こ り に く ぃ 。 こ れ は m vivo で 起 こ る 現 象 と 対 応 し て ぃ る と 考 え ら れ た ー

( 2 ) cAMP ヒ 釡 些 Q : ヒ 昇 に よ る 培 養 上 頸 神 経 節 細 胞 の 細 胞 死 の 抑 制    本論文では、一過性でなく持続的に細胞内cAMP レベルを上昇させると、[Ca2 十]i の上 昇とは別の機構で、神経細胞死を阻止することを見いだした。更に、検討した種々のぺプ チドのなかでVIP が濃度依存的(EC50 2 .5uM )に細胞死を遅延させた。それ自身では効果 のなぃ低濃度のIBMX (0.2mM) と共存させると増強 (EC50 8nM) され、細胞死は完全に阻 止された‐これらは、上頸神経節神経細胞の生存が、神経伝達物質によっても調節される ことを示し、 in vivo でも ViP により cAMP レベルの変動を介して制御されてぃる可能性を 示唆する。更に、細胞死抑制効果のコミットメントタイムの解析から [Ga2 十]i やcAMP は 翻訳後修飾によって細胞死を抑制することが判った‥

(3) 神 経 成 長 因 子 に よ るL型 Ca2+チ ャ ン ネ ル 発 現 量 増 大 と 膜 脱 分 極 に よ る 細 胞 死 抑 制     ― ― て F― ― ― ― ― ― ― ― ー

効 果 と の 相 関

   本論文では(1 )で述べた Ga2+ に依存した生存促進の機構が発達することを見いだし たーイメージング法による細胞内 Ca2+ 濃度の測定から、脱分極により流入するカルシウ ム量が発達により増大することがわかったーこの理由は、L 型Ca2+ チャンネルの遺伝子 発現が NGF による正の制御を受けることであり、この増加レベルが高K+ によるステージ 依存的な神経細胞生存と相関していたー脱分極刺激が NGF の効果を促す作用を持つこと から、上頚神経節細胞では、節前節後の両シナプスからの刺激即ち脱分極刺激とNGF が、

相互に増強して細胞の生存を制御レていると考えられたー

   以上 の結果は、神経細胞死制御機構に関する細胞内カルシウム、cAMP による抑制機

構の解明に寄与するもので、この分野における先駆的な貢献をなした業績と考えられるっ

そ の成果は米国科学アカデミ―紀要、DEVEL 〇PMENTAL Bl 〇L ○GY などの国際雑誌に公

表され、高い評価を得ている,、よって、著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与さ

れる資格あるものと認める。

参照

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