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博 士 ( 理 学 ) 太 田 有 理

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 太 田 有 理

Taxonomy and Molecular Phylogeny of the Phytophagous       Ladybird Beetles, the Epilach7za alternans Species       Complex (Coleoptera: Coccinellidae: Epilachninae),       radiated in Southeast Asia

(東南アジアで放散した食植性テントウムシEpilachna alternans 種群      ( コウ チ ュウ 目 テ ントウム シ科マダラ テントウ亜 科)の分類      および分子系統解析)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  食 植 性 昆 虫 は 、 現 在 ま で に 記 載 さ れ て い る 全 生 物 の 四 分 の ー を 占 め る と 言 わ れ る ほ ど 種 数 の 多 い グ ル ー プ で あ り 、 ま た 多 く の 種 が 狭 食 性 で あ る こ と か ら 、 そ の 多 様 性 の 高 さ と 寄 主 特 異性の関係は古くより進化生物学者にとっての興味の対象であった。Epilachna aぬ閘弸s

Mulsantはインドネシアに棲息するウリ科植物を利用するマダラテントウの一種であるが、

過去20年にわたるインドネシアを中心とした調査により、複数の近縁な未記載種とともに

複 雑 な 種 群 を 形 成 し て い る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。 こ の グ ル ー プ は 、 ア ジ ア の 熱 帯 域 に お い て キ ク 科 、 イ ワ タ バ コ 科 、 シ ソ 科 な ど 多 様 な 分 類 群 の 植 物 へ 放 散 し て お り 、 寄 主 植 物 と 昆虫の多様性の関係という視点において、非常に興味深い。本学位論文では、Eロぬ閉弸

と そ の 近 縁 種 を 分 類 学 的 に 整 理 し 、 多 様 な 植 物 ヘ 放 散 し た こ の 種 群 の 状 況 を 詳 細 に 記 述 す る と と も に 、 分 子 系 統 学 的 解 析 に よ っ て 種 間 の 関 係 と 放 散 の 歴 史 を 明 ら か に し 、 今 後 の 進 化 研 究のための強固な基盤を作ることを目的とした。

  論文は5章から構成されている。第1章の導入に続き、第2章において、EロぬM弸種 群の分類学的整理を行った。本種群に属すると考えられる既知種はEロぬM弸(原記載:

ジ ャ ワ ) , EワqガMulsant( 原 記 載 : イ ン ド . ベ ン ガ ル ) ,Egあ 出 加 甜 ロPangetMao( 原 記 載 : 中 国 雲 南 省 ) ,EcD門c甜0轡 カsおHoang( 原 記 載 : 北 ベ ト ナ ム ) ,E轟 印P加 ロMiyatake( 原 記 載 : ネパール)の5種である。Eめcカ加甜ロ以外の既知種とジャワ・スマトラで採集された複数

の未記載種について、雄交尾器のsipho先端部の形態を主な分類形質として用い、食草や地

理 的 分 布 に 関 す る 情 報 を 統 合 し て 検 討 し た 結 果 、Eロ ぬ ′ ″ 弸sの 西 ジ ャ ワ ・ 東 ジ ャ ワ の フ オ ー ム をEロIaぬM弸 ざ とEロ . 丿 刪 ロ 珈2wsubsp.nov. の2亜 種 に 分 け 、Eカ 叩 ピ ぬ 搾aをEgMガ の 新 参 異 名 と し た 。 ま た 、 ス マ ト ラ の キ ク 科 蔓 性 植 物 、 ウ リ 科 ア マ チ ャ ヅ ル 、 イ ワ タ バ コ 科 ミ ズ ビ ワ ソ ウ 属 草 本 、 キ ク 科 キ オ ン 族 蔓 性 植 物 、 ウ リ 科 ス ズ メ ウ リ , カ ラ ス ウ リ 類 を 利 用 す る 種をそれぞれErロSロ閉8門SおSp.nov.,E炒阿〇ぷ絶m所ロピSp.n()v.,Eワゲfロ門め観¢Sp.nov.,ESビ門ピCめnぬ sp.noV. ,E6ぴ む 弸P珊 むsp.nov, と し て 、 西 ジ ャ ワ の キ ク 科 シ ョ ウ ジ ョ ウ ハ グ マ 属 木 本 、 シ ソ 科 ヤ マ ハ ッ カ 属 草 本 を 利 用 す る 種 を そ れ ぞ れEcg朋 所PP腦 むSp.nov. EむDdめ 触Sp.nov. と し て 、 記載した。その他、まだ情報が不十分であるが、本種群に属する未記載種と考えられる5種

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を挙げた。更に、本種群に近縁な西ジャワの未記載種をE sundaensis sp. nov. として記載した。

従って、本種群は少ナょくとも 11 種1 亜種、おそらくそれ以上の種を有するグループである。

   第 3 章では、外部形態と雄交尾器形態を数量化し、多変量解析による形態差の評価を試み た。外部形態は、複数部位の測定値を元に、交尾器形態はsipho 先端部の輪郭形状をフーリ エ記述子を用いて表すことにより、それぞれ多変量解析を行った。外部形態の解析では、多 変量分散分析の結果、種間・雌雄間にそれぞれ有意差が検出された。主成分分析の結果では、

特にE ロ,´ロw 口鋤w ,Ece 陀 mee 珊お,Ec 弸c 艶 D 鴛翻ぷ趣E おD あぬ廊がそれぞれ特徴的な形態を 持 ち、他種 とは明 瞭に区別 された が、その 他の種 、 E .ロぬ用 伽&且′卵淵ピ恥お, E 母耽甜地 m 所ロ8 ,E のゲ紐門加ら Ese 門Pc め門旭E みdr む弸e 珊斌Eg 廻旭Esp .S ではある程度種毎の 傾向は見られるものの、地理変異を含む種内変異が種間変異を覆う形となり、明瞭な区別は されなかった。一方、雄交尾器形態の解析では、種間の差は基本的に明瞭であった。ただし、

E のげ畑 Pz 加¢と E6 ガ幽弸弸むの問では、同所的な個体群間では明瞭に区別されるものの、

異所的な個体群間ではこの形質による区別は出来なかった。

   第 4 章 で は、ミ トコンド リア DNA の ND2 , COI 16SrRNA の 各遺伝手 領域の 部分配列 、核 DNA のITS2 領域 の部分 配列を用 いて E ロぬ閘 弸s 種 群の分 子系統解 析を行 った。ミ トコン ド リアの系 統では 、種問の 分化は 完全であ り、大 きく3 クレード が認められた。大陸の E g ッぇEc 弸c 甜D .ぴ珊也北スマトラの Esp .S からなるクレードが最も古くに分岐しており、

そ の 後 ジャ ワ の E ロ ぬ 閉 …の 2 亜 種 、スマ トラの EM 弸 e 腦 趣E & 門甜地所 m ロ 8 から なるク レードとスマトラの EcJ 們魍 M めセらE ぷ開 gC め門奴E ろぴお弸g 珊お,ジャワの ECe 陀me8 珊弧E おD あ門触からなるクレードが分岐している。この結果はジャワヘの複数回の侵入を示唆して いる。種群の最も古い分岐は約 150 万年前と推定され、第四紀中に全ての放散イベントが起 こったことが示された。一方で、核畊乢A の解析結果はミトコンドリアとは異なり、種間で ハプロタイプの共有が頻繁に見られたが、それらは全て地理的分布の重なる種間であり、ミ ト コンドリ アで近 縁な系統関係にある種で共有の頻度が高いという傾向は全く認められな かった。これらの結果から、ミトコンドリアの系統が種間の分岐の歴史を表し、核は分化し た後の種/集団問で起こった遺伝子流動の影響を受けている、という仮説を提出した。マダ ラテントウ類では卵から成虫までの全生活史を食草上で完了することが知られており、正常 個体、雑種を問わず、雌は常に自身が育った植物上ヘ産卵するという仮定のもとでは、例え 交 雑 が 起 き て も 母 系 遺 伝 の ミ ト コ ン ド リ ア 遺 伝 子 i ま 種 / 集 団 間 で 移 動 し な い 。    最終章で倣、前章までの結果を元に、第四紀の地史と合わせて、種群の放散の歴史を再構 築した。第四紀は氷期・間氷期のサイクルを繰り返した時代であり、氷期には、海水準の下 降に伴って、東南アジアには、現在のインドシナ半島、マレー半島、スマトラ島、ジャワ島、

カリマンタン島を含むスンダ陸塊と呼ばれる巨大な半島が出現した。これにより、これらの 地域間の移住が可能になり、また気温が低下することによって垂直分布が下降し、山地森林 性 のE ロ ぬ閙弸 種群のテ ントウ は現在よ りも低い標高に棲息することが可能であったと考 え られる。 このよ うに、 E ロぬ m 弸s 種群は 気候変動と連動して分布域の拡大や分断を繰り 返し、その過程でいくっかの集団では寄主食草の転換を伴い、現在の多様な種を含む種群へ と分化してきたと考えられる。

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学 位 論 文 審 査の 要 旨

主 査   教 授    片 倉 晴 雄

副 査    教 授    戸 田 正 憲 ( 環 境 科 学 院 ) 副 査   教 授    堀 口 健 雄

副 査    准 教 授    増 田 隆 一

学 位 論 文 題 名

Taxonomy and R/Iolecular Phylogeny of the Phytophagous       Ladybird Beetles, the Epilach7za alternayzs Speaes        Complex (Coleoptera: Coccinellidae: Epilachninae),       radiated in Southeast Asia

( 東 南 ア ジ ア で 放 散 し た 食 植 性 テ ン ト ウ ム シ Epilachna alternans 種 群      ( コ ウ チ ュ ウ 目 テ ン ト ウ ム シ 科 マ ダ ラ テ ン ト ウ 亜 科 ) の 分 類      お よ び 分 子 系 統 解 析 )

博 士 学 位 論 文 審 査 等の 結果 に つい て (報 告 )

  食 植 性 昆 虫 の 多 様 性 の 高 さ と 寄 主 特 異 性 の 関 係 は 古 く よ り 進 化 生 物 学 者 に と っ て の 興味 の 対象 で あっ た 。 そ の ー 方 で 、 形 態 的 差 異 の 微 細 な 多 数 の 近 縁 種 の 存 在 は 、 食 植 性 昆 虫 の 記 載 分 類 を 遅 らせ 、 生物 多 様性 の 正 確 な 理 解 の 障 害 に も な っ て い た 。 本 研 究 は 、 こ の よ う な 進 化 学 的 に は 興 味 深 い が 、 分 類学 的 にほ や っか い な 問 題 を 抱 え る グ ル ー プ の 典 型 と も 言 う べ き ア ジ ァ 産 のEpilachna alternans Mulsantと そ の 近 縁 種 ( 以 下E ロlternans種 群 ) に 焦 点 を 当 て 、 形 態 、 生 態 、 分 布 の広 範 な情 報を 詳 細に 検 討し 、 更に ミト コ ンド リ ア及 び 核 の 遺 伝 子 の 解 析 を 行 い 、 そ の 分 類 学 的 整 理 と 系 統 関 係 の 解 明 、 本 種 群 の 進 化 史 の 概 要 の 推 定 を 行 っ た 。   著 者 は 雄 交 尾 器 のsipho先 端 部 の 形 態 を 主 な 分 類 形 質 と し て 用 い 、 食 草 や 地 理 的 分 布 に 関 す る 情 報 を 統 合 し て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 本 種 群 に 属 す と 考 え ら れ た5既 知 種 を4種 に 整 理 し な お し 、 新 た に7新 種1新 壷 種 を 記 載 し て 、 合 計11種 ( 内1種 は2亜 種 を 含 む ) へ と 整 理 し た 。 さ ら に 、 本 種 群 に 近 縁 な 西 ジ ャ ワ 産 の 1種 を 新 た に 記 載 し た 。Epilachna alternans種 群 の11種 の う ち ウ リ 科 カ ボ チ ャ 亜 科 の 植 物 を 食 草 と す る4種 は ア ジ ア 大 陸 南 部 ‐ 南 東 部 か ら ジ ャ ワ 島 、 ス マ ト ラ 島 に か け て 広 く 分 布 し 、 異 所 的 で ある 。 一方 、 カボ チ ャ 亜 科 以 外 の 植 物 を 食 草 と す る 種 類 は 、 中 国 南 部 に お いて イ ラク サ( イ ラク サ 科) 及 ぴク サギ ( クマ ッ ヅラ 科 ) を 加 害 す る1種 を 除 き 、 ス マ ト ラH種 、 そ れ ぞ れ キ ク 科 属 名 不 明 の 蔓 性 植 物 、 ウ リ 科Zanonioideae亜 科 ア マ チ ャ ヅ ル 、 イ ワ タ バ コ 科 ミ ズ ビ ワ ソ ウ 属 草 本 、 キ ク 科 キ オ ン 族 蔓 ´ 陸 植 物 を 加 害 ) かジ ャ ワ(2種 、そ れ ぞ れ キ ク 科 シ ョ ウ ジ ョ ウ ハ グ マ 属 木 本 、 シ ソ 科 ヤ マ ハ ッ カ 属 草 本 を 加 害 ) に 分 布 し て お り、 し ばし ぱ カポ チ ャ 亜 科 食 の 種 や 他 の 種 と 同 所 的 で あ る 。 特 に 、 ス マ ト ラ 中 央 部 で は 合 計5種 が 異 な っ た 植 物 を 利 用 し て 厳 密 に 同 所 的 に 分 布 し て い る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 分 子 系 統 解 析 で は 、 ミ ト コ ン ド リ アDNAのND2,COI, 16S rRNAの 各 遺 伝 子 領 域 の 部 分 配 列 、 核DNAのITS2領 域 の 部 分 配 列 を 用 い 、 信 頼 性 の 高 い 結 果 を 得 た 。 ミ ト コ ン ド リ ア の 部 分 配 列 に 基 づ く 系 統 で は 、 そ れ ぞ れ の 種 の 単 系 統 性 が 示 さ れ 、 種 問の 分 化は 完 全で あ っ た 。 種 群 の 最 も 古 い 分 岐 は 約150万 年 前 と 推 定 さ れ 、 第 四 紀 中 に 全 て の 放 散 イ ペ ン ト が 起 こ っ た こ と が 示 さ れ て い る 。 ー 方 、 核DNAの 解 析 結 果 は ミ ト コ ン ド リ ア と は 著 し く 異 を り 、 種 間 で ハ プ ロ タ イ プ の 共 有 が 頻 繁 に 見 ら れ た が 、 そ れ ら は 全 て 地 理 的 分 布 の 重 な る 種 問 で あ っ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、著 者 はミ ト コン ド リ ア の 系 統 が 種 間 の 分 岐 の 歴 史 を 表 し 、 核 は 分 化 し た 後 の 種 / 集 団 間 で 起 こ っ た 遺 伝 子 流動 の 影響 を 受け て い

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る 、 と い う 仮 説 を 提 出 し て い る 。 最 終 章 で は 、 第 四 紀 の 地 史 と 合 わ せ て 、 種 群 の放 散 の 歴 史 が 再 構 築さ れ て お り 、 第 四 紀 の 気 候 変 動 に 起 因 す る 分 布 域 の 分 断 と 融 合 、 植 生 の 変 化 が 、 山 地 森林 性 の 本 種 群 の 様 々な 植 物 へ の 放 散 を 生 じ た と 結 論 し て い る 。

  本 研 究 の 第 一 の成 果 は 、 こ れ ま で詳 細 が 不 明 で あ ったEpilachna alternans種 群 の 分 類 学 的 整理 と 系 統 関 係 の 解 明 を 行 っ た こ と で あ り 、 こ の 研 究 に よ っ て 、 初 め て 本 種 群 を 様 々 な 進 化 学 的 研究 に 使 用 す る 基 礎 が整 え ら れ た 。 ま た 、 本 研 究 で はE aぬ 闇a珊 種 群 の 放 散 過 程 に つ い て 考 察 す る 際 に 核 と ミ ト コ ン ド リア 遺 伝 子 に 基 づ く 結 果 の 不 一 致 に つ い て 興 味 深 い 仮 説 を 展 開 し て い る が 、 こ の 仮 説 の 適 否 は 今 後検 証 が 可 能 で あ る 。そ の 他 の い く っ か の 発 見 と 併 せ 、 将 来 の 発 展 が 期 待 さ れ る 研 究 の 種 子 を 豊 富 に 提 供 し て い る 点 も 評 価 で き る 。   よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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