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博士(医学)呂 多賽 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)呂   多賽 学位論文題名

Creep Behavior of the Canine Lumbar Intervertebral Discs after Chemonucleolysis with       Chondroitinase‑ABC and Chymopapain

‑ A Biomechanical, radiographic and histological study ‑

(コ ンドロイチナーゼABCおよび キモパパイン注入椎間板の粘弾性特性に関する研究)

学位論文内容の要旨

    はじめに

  キ モバ バイン(Chymopapain、以 下CP)はバ パイア 果実か ら抽出 された 蛋白分 解酵素で あり、 椎間板 内 に注入 される とプロ テオグ リカン(Proteoglycan、以 下PG)を 分解しそ の水結 合能を消失させ、椎間板内 圧を減 少させ る。こ れを利 用して へルニ アを介 して伝達 される 神経根 への圧 迫を解除させ、症状をとろ うとす るのが 化学的 髄核融 解術(Chemonucleolysis)の原 理であ る。CP注 入療法 ははじめられて30年以上 が経過 し、治 療例も30万人に 達した が、ま だに評 価は定 まって いない。CPによ ルアナフイラキシ一反応 と 組織 毒 性 が 存在 す る の であ る。コ シド口 イチナ ーゼABC(Chondroitinase‑ABC、 以下CABC)は、CPと 同様にPGを分解 する作 用があ り、し かも血 管神経 組織に 対する 毒性と椎 間板細 胞への障害はCPより少な いと報 告され 、安全 かつ有 効な髄 核溶解 酵素と して期待 されて いるが 、CABCが 椎間板の生体力学特性に 与 える 影 響 は まだ 不 明 で ある 。そこ で、本 研究で は、椎 間板粘 弾性に対 するCABCの影響 をCPと比 較検 討した。

    材料と方法

  ビー グル成犬10頭( 雄、1歳 、平均体 重12.4kg)を 使用し 、,i160個 の腰椎椎 間板内にCABC (2.5単位:

20椎間 ;5.0単位 :20椎間 )、CP(120pK at単位:10椎間)、生理食塩水対照(20 pl:10椎間)をそれぞ れ注入 し、注 入1週間 後、実 験動物 を屠殺 し、注 入椎間 のカ学的 、組織 的、X線 学的変化について検討し た:(I)力学試 験:後方 要素を 切除した脊柱機能単位(Functional Spinal Unit)を使用し、椎間板粘弾性 の変化 を調べるため、軸圧縮荷重下のクリープ試験を施行した。10Nのpreloadを加えた後、40N/secの荷重 速度で 最大210Nまで負 荷した。 最大荷 重での クリー プ時間 は1000秒と した。 その後、同様の速度で荷重 をIONま で低減し、除負荷後の回復をさらに1000秒観察した。椎間板の粘性特性は最大荷重下のCreep rate

(△strain/△creep time)を、弾性特性は40N/secの速度で荷重を加え続けた時の圧縮剛性(Aloacy△strain) を評価した。それ以外、初期荷重時の歪み(Initial strain)と回復終了時点での残余歪み(Residual strain) も検討 した。 (II)組 織観察 :光顕 と電顕 を使用 し、椎 間板組 織内のPGの変化 を観察した。(m)画f象 計 測: 注 入 前 と注 入1週 間 後 に腰 椎 側 面 の単 純X線 撮 影 を 行い 、 椎 間 板腔 狭 小 化の程度 を検討 した。

‑ 327 ‑

(2)

    結果

  (I)力学 試験:各酵素群とも対照群に 比べ最大荷重下のcreep rateは増加したが、CP群のみ対照群との 有意差を認め た(pく0. 05)。40N/secの 荷重速度で軸圧縮荷重を加 えた場合、各酵素群の椎間板圧縮剛性 は 対照 群と り低 下 した が、 有意 な変 化 はな かっ た。 ま だ、初期荷重時 の椎間板変位量は各群間の 有意差 は な かっ た 。除 荷重 後の 残 余歪 みは 、CP群とCABC両 群と も対 照群 よ り有 意に 増加 し た(pく0.05)。以 上 す べ て の パ ラ メ ー タ ー 値 は 、CP群 で の 変 化 はCABC群 よ り 著 明 で あ っ た 。(n)組 織観 察: (光 顕)

CABC注 入椎 間板 で は、PGの 破壊 を示 すsafranin‑0染 色 性の低下が髄核 の周辺部のみと線維輪内側 に観察 さ れ、 髄核 中央 部 では 染色 性が 保た れ てい た。 一方 、CP注入椎間板で は、染色性の完全な消失を 髄核の 全 体 と線 維 輪内 側に 認め 、PGの 破壊 がCP群で よ り大 きか った こと を 示し た。 (電 顕 )CP群、CABC群と も 、線 維輪内collagen線維間に存在するPGの破壊を認めた。(m)画像 計測:注入1週後、各酵素群 とも、

注 人前 より 椎間 板 高は 有意 に狭 小化した(pくO.05)。CP群での変化は より著明であった。本研究 での統 計解析は、One way ANOVAとFisher's PLSD検定を使用した。

    考察

  椎間 板に 及ぶ も っと も重 要な カ学 的 負荷 は圧 縮で あ る、このカ学的 負荷に対して椎間板は粘性 と弾性 の ニつ の物 性を 示 し、 粘弾 性体 と呼 ば れる 性質 を示 す 。粘性は外カに 対する反応は時間をかけて 現れる 現 象で ある。椎 間板に一定の荷重を加え続 けた場合、椎間板の変位は時 間とともに指数関数的に増 加し、

一 定の 値に 至る 。 この 現象 はク リー プ (creep)と呼 ば れ、代表的な粘 性の特徴を示している。粘 性は外 力 変化 が緩 徐に 進 行す る場 合、 すな わ ち日 常生 活に お ける姿勢の変化 などに対応した椎間板の物 性であ り 、外 カの 変化 を 吸収 する ーつ のメ カ ニズ ムで もあ る 。まだ、クーリ プの結果としては椎間板腔 の挟小 化 、椎 間板 内応 カ の集 中、 小関 節突 起 で荷 重の 増加 を 生じる。それら のカ学的変化は椎間板細胞 の代謝 を影響し、椎 問板変性にもっながる。

  椎問 板に 一定 の 速度 で荷 重を 加え 続 けた 場合 、椎 間 板の変位量と荷 重はほぽ直線関係を保ちつ つ、最 後 に破 断に 至る 。 これ は椎 間板 が金 属 のよ うな 弾性 体 としての物性を も有することを意味し、こ の直線 関 係か ら圧 縮剛 性 を計 算で きる 。椎 間 板に 加わ る荷 重 の速度が速いほ ど椎間板の剛体としての性 質が増 す 、 す な わ ち 墜 落 な ど に よ る 速 く 大 き な 荷 重 変 化 に 対 して は椎 間 板は その 剛性 を 増す こと にな る。

  本研 究の 結果 で は、 化学 的髄 核融 解 術に より 椎間 板 の粘性特性への 影響は弾性特性への影響よ り大き い こ と、 ま たCPによ り影 響 はCABCよ り大 きい こ とを 示し た。 従っ て 、酵 素注 入後 の 椎間 板は 墜落 など 速 く大 きな 荷重 変 化に 対す る抵 抗を 保 って いる が、 日 常生活中の荷重 変化への対応能カの低下と 椎間板 変 性 進 行 の 増 大 が 予 想 さ れ る 。 生 体 力 学 の 見 地 か ら 、CABCはCPよ り 優 れ る こ と を 考 え ら れ る 。   化学 的髄 核融 解 術後 生じ た椎 間板粘弾性 変化の機序は、まだ完全に 解明されていない。Urbanら は椎間 板のcreep変 化は椎間板の脱水に関連し、creep rateは椎問板内PGの含有量により左右すると述べた。Koeller ら は含 水量の他 、椎間板内collagen繊維とPGの構造的、生化学的変化な ども椎間板粘弾性の変化に 関与す る と推 測し た。 本 研究 では 、力 学試 験 で観 察さ れた 椎 間板粘弾性の変 化と、組織学的検討で観察 された 髄 核と 内層 線維 輪 内PGの破 壊お よび そ れに 伴う 繊維 輪 組織構造の破綻 に強い相関を認めた。従っ て、髄 核 と内 層繊 維輪 内PGの 含有 量の 変化 は 化学 的髄 核融 解 術後生じた椎間 板粘弾性変化の主な原因で あると 考えられる。

    結論

  CABC注 入 椎間 板お よびCP注入 群と もに 、対 照 群に 比べ 粘弾 性の 変 化を 認め た。 粘 性特 徴の 変化 は弾

328ー

(3)

    UUU cJ(DRpOO KpjUUGReUQtG簿 qGNGc(I'JE(4q(D

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Creep Behavior of the Canine Lumbar Intervertebral Discs after Chemonucleolysis with

      Chondroitinase‑ABC and Chymopapain

‑ A Biomechanical, radiographic and histological study ‑

(コンドロイ チナーゼABCおよびキモパパイン注入椎間板の粘弾性特性に関する研究)

  キル丶Iパイン(Chymop apain、以下CP)による化学的髄核融解術(Chemonucleolysis)は、腰椎椎間板ヘJ|ニァ の治療法として臨床応用されているが、CPによるァナフィラキシ´反応と血管、神経障害など重篤な合併症が存 在する。ルト゛ロイチナ咄゛ABC(Chondroitinase‑A BC、以下CABC)は、CPと同様にproteo glycan(以下PG)を 分解 する 作用 が あり 、し かも 組織 毒 性はCPよ り少な いと報告され、安全かつ有 効な髄核溶解酵素として 期待 され てい る 。し かし 、臨 床応 用 する ため には、 脊柱の生体力学特性に与え る影響も究明する必要が ある。本研究では、椎間板粘弾性に対するCABCの影響をCPと比較検討した。

材料と方法:ヒ゛ ´ゲn成犬10頭を使用し、計60個の腰椎椎問板内にCABC(2.5単位:20椎問:5.0単位:20 椎問 ) 、CP(120pKat単 位:10椎 問 )、 生理 食塩 水対照(20 pl:10椎問) をそれぞれ注入し、注入1週 間 後、実験動物を屠 殺し、注入椎問のカ学的、組 織学的、X線学的変化につい て検討した:(I)力学試験 : 軸圧縮荷重下脊柱motion segmentの圧縮剛性、Creep rateと除負荷後の残余歪み(Residual srrain)を検討し た。(n)組織 観 察:Safranin―OとHE染色 に よる 光顕検索を行った。(In)画像計測:注入前と注入1週 間 後に腰椎側面のX線 撮影を行い、椎間板腔狭小 化の程度を検討した。

結果 :(I)力学試験:各酵素群 とも対照群に比ベ最大荷重下の cre ep rateは増加したが、CP群のみ対照群 との 有意差を認めた(p〈O.05) 。各酵素群の椎間板圧縮岡 性は対照群より若干低下したが、有意差を認め な か っ た 。 除 荷 重 後 の 残 余 歪 み は 、CP群 とCABC両 群 と も 対 照 群よ り有 意 に増 加し た(p<0.05)。(n) 組 織 観 察 :CABC注 入椎 間板 では 、PGの 破壊 を示 すsafranbO染色 性の 低下 が 髄核 の周 辺部 のみ と 線維 輪 内 側に 観 察さ れ、髄核中央部では染 色性が保たれていた。一方、CP注入椎間板で|よ、染色 性の完全な消 失を 髄核の全体と線維輪内傾町こ 認め、CP群においてPGの破 壊程度は大きかった。HE染色による観察では、

    ―330一

志 厚

清 和

田 部

金 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

CABC注 入 椎 間 板 で 繊 維 輪 の 弛 緩 、CP注 入 椎 間 板 で 繊 維 輪 の 弛 緩 と 内 側 繊 維 輪 の 髄 核 方 向 へ の 膨 隆 を 認 め 、 椎 間 板 内 圧 の 低 下 が 示 唆 さ れ た 。(ni)画 像 計 測 : 注 入1週 後 、 各 酵 素 群 と も 、 注 入 前 よ り 椎 問 板 高 の 有 意 な 狭 小 化 を 認 め た (pO05) 。CP群 で の 変 化 は よ り 著 明 で あ っ た 。 本 研 究 で の 統 計 解 析 は 、One way ANOVAFishers PLSD検 定 を 使 用 し た 。

考 察 : 本 研 究 よ り 、 酵 素 注 入 後 の 椎 問 板 は 、 高 速 荷 重 に 対 す る 脊 柱 の 支 持 性 を 示 す 圧 縮 剛 性 が 維 持 さ れ る が 、 粘 性 の 低 下 に よ り 衝 撃 緩 衝 機 能 の 低 下 も 示 し た 。 さ ら に 、 椎 間 板 狭 小 化 と 椎 間 不 安 定 性 の 増 加 に 伴 う 椎 問 関 節 突 起 荷 重 の 増 加 、 椎 間 板 内 応 カ の 分 布 変 化 も 予 想 さ れ 、 こ れ ら の カ 学 的 変 化 は 椎 間 板 細 胞 の 代 謝 と 椎 間 板 変 性 に 関 連 す る こ と は 従 来 か ら 報 告 さ れ て い る 。CABCが 椎 間 板 の カ 学 特 性 に 与 え る 影 響 CPよ り 少 な ぃ た め 、 椎 間 板 の 再 生 に 有 利 と 考 え ら れ る 。

  Chemonucleolysisの 臨 床 作 用 議 序 は 、 椎 問 板 内 圧 を 規 定 し て い る 髄 核 中 のPGが 分 解 さ れ 、 髄 核 の 抱 水 能 カ が 減 少 し 内 圧 が 低 下 す る た め と 考 え ら れ て い る 。 椎 間 板 腔 の 狭 小 化 は 神 経 根 除 圧 を も た ら す と 同 時 に 、 椎 問 不 安 定 性 増 加 の 原 因 に も な る 。 さ ら に 、PG抱 水 能 カ の 低 下 に よ り 組 織 内 の 水 分 が 容 易 に 滲 出 し 、 組 織 の 圧 縮 速 度 が 上 昇 す る 。 水 分 再 吸 収 能 カ の 低 下 に よ り 椎 間 板 高 の 回 復 能 カ が 低 下 す る 。 従 っ て 、 本 研 究 で 観 察 さ れ た カ 学 変 化 の 主 な 原 因 はPGの 破 壊 で あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、CABCの 椎 問 板 に 与 え る カ 学 的 影 響 がCPよ り 少 な か っ た と い う 結 果 は 、CABCPGに 与 え る 破 壊 がCPよ り 小 さ か っ た こ と の カ 学 的 側 面 へ の 反 映 と 考 え る 。

結 論 : 酵 素 注 入 後 の 椎 間 板 は 、 対 照 群 に 比 ベ 、 持 続 荷 重 下 の 粘 性 が 有 意 に 低 下 し 、 高 速 荷 重 時 の 圧 縮 剛 性 は 有 意 な 変 化 を 認 め な か っ た 。CP群 で の 変 化 はCABCよ り 著 明 で あ っ た 。CABCが 確 実 な 椎 間 板 腔 狭 小 化 作 用 が 認 め ら れ 、 椎 間 板 に 与 え る カ 学 的 影 響 はCPよ り 少 な く 、 椎 間 板 組 織 の 再 生 に 有 利 と 考 え 、 今 後 と も 研 究 を 進 め る 価 値 が あ る 。

  公開発表におい て、聶0査の宮坂教授よルコ ンドロイチナ´ビABC注入後 椎間板高変化の量 依存性(dose depardent) の有無、臨床的な 最適量の確立、神経根除圧に関与するfactor、コント゛町チナ‑{l" ABCとキモハ.パインの効果発見に 時 間 的 な 差 の 有 無 に つ い て 、 阿 部 教 授 よ り 髄 核 と 線 維 輪 の カ 学 的 役 割 の 相 違 、SafraninO染 色 法の 機序 、 Rethenium Red染 色 法 の テ ヶ ル ヶ に つい て 質問 があ っ た。 さら に 、阿 部教 授 から 電子 顕 微鏡 の組 織 採取 方法 に つ い て の コ 対 ト が あ っ た 。 ま た 、 整 形 外 科 の 鐙 先 生 よ り 組 織 破 壊 と 椎 問 不 安 定 性 の 関 係 に つ い て の 質 問 が あった。申請者は 概ね妥当な回答を 行った。

  以 上、 本 研究 は、髄核融解酵素 であるコンドロイ チナ´セ゛ABCが腰椎椎間板 に与える影響をカ学 的、組織学的、

X線 学 的 変 化 を 総合 的に 評 価し 、そ の 特性 を明 確 に示 した 。 また 、コ ン ド口 イチ ナ ABCの カ学 作 用に おけ る 最 初 の 報 告 と し て 、 将 来 の 臨 床 応 用 に 大 き く 寄 与 す る も の と 思 わ れ る 。 審 査 員 一 同tよ 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 ま た 研 究 者 と し て 誠 実 か つ 熱 心 で あ り 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請者が博士(医学 )の学位を受ける のに充分な資格を 有するものと半u定した。

− ・331 ‑

参照

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