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Academic year: 2021

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(1)

    ハ ス ム   ハ パ ハ ケ 博 士 ( 医 学 ) 哈 斯 木 哈 怕 哈 克

     学位論文題名

マウス癌細胞の悪性化進展の免疫賦活剤による抑制機序 と の  Manganese Superoxide Dismutase cD$i

学位論文内容の要旨

    緒  言

  癌 細 胞 の悪 性 化 進展(tumor progression)は、 癌 化 した 細 胞 が その 増 殖 過程 に お いて 周 囲 の 微 小 環 境 の 影 響 に よ っ てさ ら な る遺 伝 子 の変 異 を 起こ し 、 強い 増 殖 能、 浸 潤 ・ 転移 能 な ど 悪 性 形 質 を 獲 得 す る こ とで あ る 。従 っ て 、癌 の 克 服の た め には 、 悪 性化 進 展 を 抑制 す る 手 段 を 開 発 す る こ と が 発 癌の 予 防 と共 に 重 要で あ る と考 え ら れる 。 し かし 、 癌 細 胞の 悪 性 化 進 展 の 要 因 あ る い は 抑 制の 研 究 は少 な い 。そ れ は 、癌 細 胞 の悪 性 化 進展 を 検 討 する 実 験 系 の 開 発 が 遅 れ て い る た め と 思 わ れ る 。 岡 田 ら の 樹 立 し たC5 7BL/6マ ウ ス の 退 縮 型(QR‑

32)癌 細 胞 は 同 系 マ ウ ス に 単 独 皮 下 移 植 す る と 自 然 退 縮 す るが 、 プ ラス テ イ ッ ク・ プ レ ー ト や ゼ ラ チ ン ス ポ ン ジ な どの 異 物 共存 下 で は同 系 マ ウス で 腫 瘍を 形 成 する 。 増 殖 して き た 腫 瘍 か ら 再 樹 立 し た 細 胞 株 は も と のQR‑32癌 細 胞 に は 見 られ な い 強い 皮 下 増 殖性 お よ ぴ肺 転 移 能 を 獲 得 し 、 悪 性 化 進 展 を 起 こ し た と 判 定 さ れ る 。 ま た 、QR‑32癌 細 胞 の悪 性 化 進展 に は 異 物 反 応 炎 症 細 胞 の 産生 す る 活性 酸 素 が関 与 す るこ と が 推察 さ れ てい る 。 本 研究 で は QR‑32癌 細 胞 の ゼ ラ チ ン ス ポ ン ジ 共 存 下 に 増 殖 し て き た 腫瘍 か ら 樹立 し た 癌 細胞 株 の 悪性 化 進展 お よ びこ れ に 付随 す るets familyに 属 す る転 写 因 子El AF発 現 お よび マ ト リッ ク スメ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ(MMP)産 生 を 検 索 し 、 ま た 腫 瘍 組 織 中 の抗 酸 化 酵素 産 生 量 の観 点 か ら、

悪 性化 進 展 の免 疫 賦 活剤PSKによ る 抑 制機 序 を 解析 し た 。     材料 と方法

1)QR‑32癌 細 胞(ixios個 ) を 同 系 マ ウ ス に ゼ ラ チ ン ス ポ ン ジ と 共 に 皮 下 移 植 し 、 そ の 増 殖 を 観 察 し た 。 腫 瘍 移 植5日 前 よ り 毎 日 、 腫 瘍 移 植 後 は 一 日 お ぎ に 腫 瘍 摘 出 ま でPSK 300 mg/kg/dayを 連 続 腹 腔 内 投 与 し た 。2) 移 植 後21日 目 に 増 殖 し て い る 腫 瘍 か ら そ れ ぞ れ 個 別 に 培 養 株 を 樹 立 し た 。3) 樹 立 培 養 癌 細 胞 の 悪 性 化 進 展は , 新 たな 正 常 同系 マ ウ ス に単 独 皮 下(2X 10s個) あ る い は尾 静 脈 内移 植(lXl06個 ) し 、皮 下 増殖性 または肺 転移能 のどち ら か 一 方 で も 親 株QR‑ 32癌 細 胞 のそ れ ら に比 ベ 有 意に 増 強 して い る こと を 指 標 にし て 判 定 し た 。4)EIAFお よ び 膜 結 合 型MMP(MTl‑MMP)の 発 現 は ノ ー ザ ン ブ ロ ッ テ イ ン グ 法 に より 、Tissue inhibitors of metalloproteinase (TIMP)の 発現およ び炎症 性サイトカインの発 現 はRT‑PCR法 に よ っ て を 検 討 し た 。5)MMPの 活 性 お よ び 産 生 量 は 癌 細 胞 の 培 養 上 清 conditioned medium(CM)を サ ン プ ル と し て ザ イ モ グ ラ フ イ ー によ り 検 討し た 。6) 新 鮮 腫 瘍 組 織 あ る い は 癌 細 胞 のMn‑SOD蛋 白 産 生 量 は 細 胞 抽 出 液 を 蛋 白 サ ン プ ル と し て 、 ウ エ ス タン ブロッ テイング 法によっ てを測 定した。

(2)

    結  果

1)無処置 マウスに ゼラチン スポンジと 共に皮下 移植し増殖してきた腫瘍から樹立した細 胞株(QRsP)の6系 中6系が悪 性化進展 をおこして いたに対して、PSK投与マウスに増殖して きた腫瘍から樹立した細胞株(QRsP/PSK)では、6系中3系(50%)しか悪性化進展を起こしお らず、PSKに より悪性 化進展が 抑制された 。2)悪性 化進展に 伴い肺転 移能を獲 得した細 胞株でEIAF、MTl‑ MMPの発現と72kDaのタイプIVコラゲナー ゼ(NfMP‑2)活性 がまた増強 されてい た。ー方 、92kDaのタイ プIVコラゲナ ーゼ(MMP ‑9)活性は、QR‑32癌細胞でも高 くQRsPおよびQRsP/PSKネ田胞株|珂に若干の高低はあるものの転移能亢進との棚関性は観察 され な か った 。 また 、TIMP‑1とTIMP‑2の発 現にも変 化が認めら れなかっ た‥3)ゼ ラチ ンスボン ジと共に 皮下移植 し増殖して きた腫瘍 組織中のMn‑SOD蛋白量は 、無処遣群に比 ベPSK投与群 で有意に 増加した 。4)移植後14日目の腫 瘍組織中 の炎症サ イトカインの発 現 は 、PSK投 与 群 でIFN‑yが 増 強さ れ 、逆 にTGF.ロ が 抑制 さ れ てい た 。TNF‑aおよ び ILl‑ は、PSK投 与により 変化しな かった。同 様の検urを 移植7日目 と21日目に も行った が、PSK投与によるサイト、カイン発現の変動は14日目の成績とほぼ一致していた..,5)培 養QR‑32癌細胞 のMn‑ SOD産生量 はPSK(lOOmg/ml)直接処理によっては増強されず、PSK投 与により 腫瘍組織 中発現が増強されたIFN‑y(100 U/ml)で単独添加培養した場合には、未 処理QR‑ 32癌細 胞に比べ て50%しか増加されなかったが、IFN‑y (lOU/mlあるぃは50U/ml) とTNF‑a(50U/ml)を同時 添加培養 すると4〜5倍増加した 。一方、QR癌細胞のMn‑ SOD産生 量はPSK投与 群で発現 が抑制さ れたTGF‑ロの処 理(lng/mlあるい は10ng/ml)により、それ ぞれ未処理QR‑32癌細胞に比べて50%あるいは20%に抑制された。

    考  察

  本 研究の成 績は、ゼ ラチンスポンジなど異物共存下に増殖することによる癌細胞の悪性 化 進展が、 免疫賦活 剤PSK投与により抑制されることを示している。しかも、ets癌遺伝子 フ ん ミ リー に 属す る 転 写因 子EIAFの活性 化もPSK投与 によって 抑制され た。この 悪性化 進 展 にと も な って 活 性 化さ れ るEIAFは 、MMP.1、MMP‑3、MMP.9な どマ ト リッ ク ス メ タ ロプロテ アーゼ遺 伝子の発現 を増強することが知られている。本研究においては肺転移 能 亢 進が 見 ら れた 株 で 、EIAF発 現 とMMP‑2活性 が 平行 し て 増強 さ れて い る が、EIAFが MMP ‑2遺 伝 子 発 現 に 対 す る 直 接 作 用は ま だ 観察 さ れて い な い。 し かし 、MTl‑ MMPが MMP‑2を活 性 化す る こ とが 既 に知 ら れ てお り 、 今回 観 察さ れ たMTl‑ MMPとMMP‑2の平 行 し て 増強 さ れ る実 験 結 果か ら 、EIAFがMTl‑ MMPを 介し てMMP‑2を 活 性化 し 、癌 細 胞 の 転移能を促進するものと考えられる。

  癌 細胞の悪 性化進展 を抑制する 機構に関 連して、PSK投与により腫瘍組織で増強される 抗 酸化酵素Mn‑SOD産生が注 目される。 岡田らは 、invivo、in vitroの実験においてQR‑32 癌 細胞の異 物と同時 皮下移植す ることによる悪性化進展には異物反応細胞が放出する活性 酸 素が関与 すること を報告して いる。ま た、QR‑ 32癌細 胞にMn‑ SODを遺伝子導入し過剰 発 現させる と、ある いは腫瘍組 織中に抗酸化酵素を誘導すると、異物による悪性化進展が 抑 制され ることも 報告してい る。本研 究で明か になったPSK投与が腫 瘍組織で のMn‑ SOD 産 生量を増 加させ、 活性酸素が 要因となる悪性化進展を抑制していることは既報の実験成 績 と一致す る。一方 、PSKは免疫賦 活剤とし て種々の サイトカイン産生を促進することが 報 告され ている。 今回の実験 成績もPSK投 与マウス に増殖し てきた腫 瘍組織で はIFN‑yの 増 強 とTGF‑ロ の 減 弱が 観 察 され た。また 、培養QR‑32癌 細胞のMn‑ SOD産 生量はIFN‑yと TNF‑ と の共 同 作 用で 増 加 し、TGF‑口により 減弱した が、PSKによ る直接処 理では変 化 し なかっ た。これ らの成績は 、PSKが本来 の免疫賦 活作用を 介して、 癌細胞のMn‑ SOD産 生量を増強させ活性酸素が関与する悪性化進展を抑制していることを示唆している。以上、

本 研究はす でに免疫 賦活剤とし て臨床的 にも癌治 療に広く 用いられているPSKの臨床効果

(3)

     rl pQtHepjGG RGSdnqGGa     j(DZ ‑dlAIJAIDcIWWI LWVI9 RqKGZe       

pGe

(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

マウス癌細胞の悪性化進展の免疫賦活剤による抑制機序 としての l¥/Ianganese Superoxide Dismutase の誘導

  癌細胞が強い増殖能や浸潤・転移能を獲得する悪性化進展を抑制する手段を開発するこ とは発癌の予防と共に重要である。本研究は癌細胞の悪性化進展の免疫賦活剤PSKによる 抑制機序を、C57BL/6マウスの退縮型(QR‑ 32)癌細胞を実験モデルとして解析したも のである。実験計画はQR‑32癌細胞の悪性化進展が異物反応細胞から産生される活性酸 素により促進されるという既報の成績に基づぃて組み立てられた。異物ゼラチンスポンジ 共存下で同系マウスに増殖する癌細胞の悪性化進展とそれに付随する転写因子EIAF発現 お よぴmatrix metalloproteinase(MMP)産生を検索することにより確認し、悪性化 進展過程にある腫瘍組織中の抗酸化酵素産生量の観点から、悪性化進展の免疫賦活剤PSK による抑制機序を解析した。

  実験の結果、1)QR‑32癌細胞を無処置マウスにゼラチンスポンジと共に皮下移植し 増殖してきた腫瘍から樹立した細胞株(QRsP)の6系中6系(100%)が悪性化進展をおこし て いたのに対 して、PSK投与マウスに増殖してきた腫瘍から樹立した細胞株(QRsP/ PSK)では、6系中3系(50%)しか悪性化進展を起こしておらず、PSKにより悪性化進展 の抑制が確認された。2)悪性化進展に伴い肺転移能を獲得した細胞株、5株のQRsPお よ ぴ2株 のQRsP/PSKで はEIAF、MTl‑ MMPの 発現 の 増強 がNorthern blottingに よ り、また、72kDaのtype IV collagenase(MMP‑2)活性の増強がザイモグラムによ り 確 認さ れ た 。一 方 、92kDaのtype IV collagenase(MMP‑9)活性は 、QR‑32癌細 胞 でも高くQRsPおよぴQRsP/PSK細胞株間に若干の高低はあるものの転移能亢進との 相関性は観察されなかった。また、Tis suein hibitorofmat rixmet allop rot ein ‑ ase(TIMP)の発 現をRT‑ PCR法 により検索 したが、TIMP‑1およぴTIMP‑2とも変化が 認められなかった。3)ゼラチンスポンジと共に皮下移植し増殖してきた腫瘍組織中の Mn‑SOD蛋 白 量を 抗Mn‑SOD抗 体 用い たWestern blotting法 によ り 検索 し た が、 無 処 置群に比ベPSK投与群で有意に増加した。4)PSK投与により腫瘍組織中に発現・産

283

雄 博

和 正

藤 香

齋 浅

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

生の増強される炎症サイトカインはIFN‑ アであった。そして、培養QR‑32 癌細胞のMn‑

SOD 産生量は、未処理QR‑ 32 癌細胞に比ベIFN‑ ア単独添加培養では50 %の増強であっ たが、IFN‑ アと、もともと産生が確認されたTNF‑ ロを同時添加培養すると4 〜5 倍増加 した 。逆に 、PSK 投与により腫瘍組織中に発現・産生の減弱するTGF‑p 処理により、

QR‑32 癌 細胞 のMn‑SOD 産 生量 は50 %ない し 20 %に抑制された。一方、 QR‑ 32 癌細胞 の の Mn‑SOD 産 生 量 は PSK を 直 接 添 加 培 養 し て も 増 加 し な か っ た 。    以上、ゼラチンスポンジなどの異物共存下にマウスに増殖することによる癌細胞の悪性 化進展が、免疫賦活剤PSK 投与により抑制されることを確認した。しかも、EIAF の活性 化された細胞株の出現頻度もPSK 投与によって抑制された。悪性化進展にともなって活性 化 さ れ る EIAF は 、 転 写 因 子 と し て 、 MMP‑1 、 MMP‑3 、 MMP‑9 、 MT1 ー MMP な ど 癌 細胞の転移能に関与するmatrix metalloproteinase 遺伝子の発現を増強することが知 られている。本研究において肺転移能亢進が見られた細胞株で、EIAF 発現とMMP‑2 お よび MTl‑ MMP 活 性が 平行 して増 強さ れた が、PSK 投与により EIAF の活性化と共にこ れらMMP 発現が抑制され、悪性化進展が抑制されたと考えられる。QR‑32 癌細胞の悪性 化進展を抑制する機構に関連して、既に、癌細胞の抗酸化酵素Mn‑SOD 産生畳が関与す ると報告されているが、本研究で明かになったPSK 投与が腫瘍組織でのMn‑SOD 産生量 を増加させ、活性酸素が要因となるQR‑32 癌細胞の悪性化進展を抑制したことは既報の 実験成績と一致する。PSK は免疫賦活剤として種々のサイトカイン産生を修飾することが 報告されており、今回の実験でもPSK 投与マウスに増殖してきた腫瘍組織ではIFN ‑ アの 増 強 とTGF‑p の 減 弱 が 観 察さ れた。 しか も、 培養QR‑ 32 癌細 胞の Mn‑SOD 産生 畳は IFN‑ アとTNF‑a との共同作用で著明に増加し、TGF‑p により減弱した。これらの成績 は、PSK が本来の免疫賦活作用を介して癌細胞の Mn‑SOD 産生量を増加させ活性酸素の 関与する悪性化進展を抑制していることを示唆している。

   公開発表において、約 20 人の聴衆を集め、スライドを用いた約15 分の口頭発表が行 われ た。質 疑応 答で は、 副査の 守内 哲也 教授 より、 1 )TGF‑p の RT‑ PCR と Western blotting の 成績 の解 離、 2 ) 癌細 胞のMn‑SOD 産生量増加と抗癌剤感受性との関連で PSK の効果をどのように考えるか、副査の浅香正博教授より、1 )PSK を用いた理由、2 ) 投与経路による効果の違い、3 )悪性化進展の抑制におけるMn‑SOD の意義、4 )PSK 投与 によ りMn‑SOD が増えても悪性化進展が抑制できなかった株が50 %ある理由など、主 査の斎藤和雄教授より、1 ) Mn‑SOD 以外の抗酸化酵素の関与などについて質問がなされ、

申請 者は、 それぞれの質問に対し、文献的考察を交えほぼ妥当な回答をなしえた。

   本論文は、すでに免疫賦活剤として臨床的にも癌治療に広く用いられているPSK が、癌 細胞が転移能を獲得する悪性化進展に対する抑制手段としても有用であること、およびそ の機序を明かにしたものであり高く評価される。これらの成果は、今後、癌治療における 免 疫 賦 活 剤 の 新 し い 役 割 と 意 義 を 考 え る 上 で 利 用 さ れ る こ とが 期 待 さ れ る 。    審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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