博士(工学)中辻 学位論文題名
隆
都市内街路における交通制御システムの高度化に関する基礎的研究
学位論文 内容の要旨
本 研究は ,部市 内街路 におけ る交 通制御 システ ムの高 度化 をはか るため に,ニューラルネット ワー クモデ ルの 優れた 特性を 交通制 御シ ステム に導入 するこ とを目 的と し,信号制御パラメ―夕 の最 適化問 題, あるい は交通 配分問 題等 の交通 制御シ ステム に関わ るい くっかの問題に対して,
該当 モデル の適 用性を 検討し たもの であ る。す なわち ,二ユ ーラル ネッ トワークの構造と学習能 力, 効率的 な学 習方法 ,ある いは局 所最 小値へ の収束 を避け るため の最 適化アルゴリズムに関し て2,3の提 案を行 ったも のであ る。
1章 は 序 論 で あり , 本 研 究の目 的と構 成にっ いて 述べて いる。2章 におい ては, 都市 内街路 に おけ る交通 制御 システ ムの高 度化の 必要 性と将 来の交 通制御 システ ムで ある「自己組織化交通制 御 シス テム 」にお けるニ ューラ ルネ ッ卜ワ ークモ デルの 役割に っい て説明 してい る。3章に おい ては ,ニュ ーラ ルネッ トワー クモデ ルの 基礎的 理論と 本論で 用いる 代表 的なアルゴリズムにっい て紹 介して いる 。
4章 にお いては ,二ユ ーラル ネット ワー クモデ ルの導 入に先 立ち ,車両 感知器 を通し て計測 さ れる 交通変 量に 関し, その誤 差特性 を分析するとともに,誤差特性を考慮した予損lJ手法の提案を 行ワ ている 。す なわち ,交通 制御シ ステ ムにお いては ,車両 感知器 を通 して得られるデータの精 度が システ ム全 体の信 頼性に 大きな 影響 を与え ること を考慮 し,そ の誤 差特性と交通状況の予測 手法 に関す る分 析を行 ってい る。ま ず, 目視に よる実 測値と の比較 を通 して,車両感知器データ には ,駐車 車両 や路側 の堆雪 の影響 によ って少 なから ぬ計測 誤差が 含ま れていることを定量的に 明ら かにし てい る。
次 に,交 通変量 の予測 手法と して,状態,観測の両方程式に定数項を有するカルマンフアルター の導 入を行 うと ともに ,交通 変動に 応じ て時間 帯別に パラメ ータの 同定 を行うことを提案してい る。 また, これ まで根 拠が不 明確で あっ た指数 平滑指 数に関 して, カル マンゲインとの関係を明 らか にする とと もにそ の値が 日交通 量や 昼夜率 などの 交差点 特性に 依存 せず,各時間帯別に一定 値近 くなる こと を明ら かにし ている 。さ らに, 計測誤 差の分 散値を パラ メータとした平滑指数値
を 求 め る こ と に よ っ て , 計 測 誤 差 の 影 響 を 定 量 化 し た 予 測 式 を 作 成 し て い る 。 5章においては,交通制御パラメ一夕の中のスプリットを最適化する階層型のニューラルネッ トワークモデルの提案を行っている。すなわち,スプリットを入力変量とし,行列長あるいは PI(遅れ時間と 停止回数の加重和:Performance Index)を出力変量とする階層型のニューラ ルネットワークを導入するとともに,シナプス荷重の調整を行う学習過程とスプリットの調整を 行う最適過程に分けてシステムを構築することを提案している。
まず単独交差点への適用を行い,その学習過程においては,逆伝搬演算が有効であること,学 習を終了したニューラルネットワークが,未学習パターンに対しても十分な精度で出力変量の推 定を行うことが出来ることを明らかにしている。また,最適過程においては,口ーカルミニマム ヘの収束を避けるために,確率論的なコーシーマシンと確定論的な最急勾配法を順次組み合わせ たステップヮイズ法の提案を行っている。次に,3交差点から成る実交差点に対しての適用を行 い,解析解と十分近似した解が得られることを確認している。
6章においてfま,まず単独交差点のスプリットの最適化を例として,中間層に含まれている ニュー口ンの個数や中間層の数がニュ―ラルネットワークの学習能カにどのように影響を与える かを分析している。その結果,中間層に含まれるニュ―口ン数や中間層の層数は,未学習デ一夕 に対する推定精度の向上にあまり寄与しないことを明らかにしている。しかしながら,学習に要 する演算時間に関しては,特定の層構造において演算効率が良いことを見い出している。また,
学習パ夕一ン数に関して,学習パ夕一ン数がシナプス荷重数以上ある時には安定した学習精度が 得られること,逆にシナプス荷重数と比ベ少ない時にも十分な推定精度が得られること,あるい は学習パターン数がシナプス荷重数に比べてかなり多い時にも,推定精度は必ずしも低下しない ことなどを確認している。
さらに学習パターン数と演算時間に関して,パターン数が増えても演算時間は必ずしも増加し てもないこと,逆にパターン数が多い方が演算時間が短くなる場合も多いこと,あるいはある数 の学習パターンを用いて学習を行う場合には,それより多くのパターン数を用いた方が効率的で あることなどを明らかにしている。
次に,複数交差点に適用した場合におけるシナプス荷重数の増大対処するために各交差点に関
の例で は,単 一モデ ルに 比べ30‑ 40%も減少することを確認している。このように,多重スプリッ トモデ ルの導 入によ って 学習精 度に影 響を及 ぼすこ とな く,演 算時間 や計算機メモりの改善をは かるこ とがで きるこ とを 明らか にして いる。
7章 におい ては, これま での スプリ ットの 最適化 に加えてオフセットの最適化を行うとともに,
交通状 況の変 動に対 して も事前 に学習 できる ようモ デル の拡張 を行っ ている。すなわち,前章の 多重ス プリッ トモデ ルを 基本形 態とし ,それ にオフ セッ トと流 入交通 量に関する入力経路を付加 した「 マルチ 入力型 」の ニュー ラルネ ットワ ークシ ステ ムの提 案を行 っている。それぞれの入力 信号 の結合 方法に よって4っ のタイ プを想 定し ,未学 習デ一 夕に対 する 推定精 度,お よび演 算時 間の面 から学 習能カ の比 較検討 を行っ ている 。その 結果 ,各交 差点ご とにオフセットと流入交通 量のネ ットワ ークを もち ,それ らが中間層で合流するモデルが最も望ましいことを確認している。
さら に,そ の最良 なモ デルを4交 差点問 題に適 用し, 未学習 な交 通状況 に対し てもシ ナプ ス荷 重の再 学習な しに十 分な 精度で 目的変 量の推 定かで きる こと, あるい はスプリットとオフセット の 最 適 解 に 関 し 安 定 し た 収 束 解 を も っ こ と が で き る こ と な ど を 確 認 し て い る 。 8章 にお いては ,将来 におけ る経 路誘導 システ ムヘの 応用を 想定 して, 静的な 交通配 分問 題の 1っ である 最小 費用流 問題に 対して 相互結 合型 のニュ ーラル ネット ヮー クモデ ルの適 用をは かっ てい る 。 す な わち , 最 小 費 用流 問 題 は , 巡 回セ ールス マン 問題やHitchcock問題同 様に目 的関 数が 状態変 数の2次形 式で表 現され る組合 せ最 適化問 題であ るので 相互 結合型 のニュ ーラル ネッ トワー クモデ ルによ る定 式化が 可能で あるこ とを明 らか にして いる。 ここでは,交通容量比(交 通量 / 交 通 容 量) を ニ ュ ー 口ン の 状 態 量 と しGroup−and―Weight法 を用 いてそ の値を 表現す ること が有効 である こと を明ら かにし ている 。また ,実 際の交 通現象 をより正しく表現するため に,任 意のノ ードで 交通 の発生 ・消滅 が可能 となる よう にする ととも に,リンク走行時間がりン ク交通 量に依 存する よう モデル の改良 を行っ ている 。さ らに, ホップ フィールドモデル等いくつ かのニ ューラ ルネッ トワ ークモ デルを 用いて 数値解 析を 行い, ほぼ妥 当な近似解が得られること を確認 してい る。
9章 は本 研究の 結論で あり, 各章 で得ら れた成 果を整 理して 要約 してい る。ま た将来 の展 望と 課題に っいて も論じ てい る。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授
加 来 五 十 嵐 藤 田 新 保
照 俊 日 出 夫 睦 博 勝
本研究 は,都 市内 街路に おける 交通制 御シス テム の高度 化を図 るため に, 信号制 御パラメータ の最適 化問題 ,ある いは交 通配 分問題 等の問 題に対 して ,ニュ ーラル ネット ワーク モデルの適用 性を検 討した もので ある。 すな わち, ニュー ラルネ ット ワーク の構造 と学習 能力, 効率的な学習 方法, あるい は局所 最小値 への 収束を 避ける ための 最適 化アル ゴリズ ムに関 してい くっかの提案 を行っ たもの である 。
1章 は 序論 で あ り , 本研 究 の 目 的と構 成にっ いて述 べて いる。2章 におい ては, 都市内 街路 に おける 交通制 御シス テムの 高度 化の必 要性と 将来の 交通 制御シ ステム におけ るニュ ーラルネット ワー ク モ デル の役 割にっ いて説 明して いる 。3章 にお いては ,ニュ ーラル ネット ワー クモデ ルの 基 礎 的 理 論 と 本 論 で 用 い る 代 表 的 な ア ル ゴ リ ズ ム に っ い て 紹 介 し て い る 。 4章 に おい ては ,ニュ ーラル ネット ワーク モデ ルの導 入に先 立ち, 車両 感知器 データ の誤差 特 性を分 析する ととも に,誤 差特 性を考 慮した 予測手 法の 提案を 行って いる。 まず, 目視による実 測値と の比較 を通し て,計 画誤 差の程 度を定 量的に 明ら かにし ている 。次に ,交通 変量の予測手 法とし て,カ ルマン フアル ター の導入 を行う ととも に, 交通変 動に応 じて時 間帯別 にパラメータ の同定 を行う ことを 提案し てい る。ま た,これまで根拠が不明確であった指数平滑指数に関して,
カルマ ンゲイ ンとの 関係を 明ら かにし ている 。さら に, 計測誤 差の分 散値を パラメ ータとした平 滑 指 数 値 を 求 め る こ と に よ り , 計 測 誤 差 の 影 響 を 定 量 化 し た 予 測 式 を 作 成 し て い る 。 5章 に おい ては ,交通 制御パ ラメー タの中 のス プリッ トを最 適化す る階 層型の ニュー ラルネ ッ トワ ― ク モ デ ルの 提 案 を 行 って い る。す なわれ ,ス プリッ トを入 力変量 とし, 行列 長ある いは PI( 遅 れ 時間 と 停 止 回 数 の加 重 和 :Performance Index)を 出 力 変量 と す る 階層 型の ニュー ラ
6童においては,まず単独交差点のスプリットの最適化を例として,中間層に合まれている ニューロンの個数や中間眉の数などのネットワーク構造がその学習能カに与える影響を分析し,
学習精度,学習時間の面から優れたモデル構造を明らかにしている。次に,複数交差点への適用 に当たり,各交差点に関係したニュー口ンだけを結合するようモデルの改良を行い,従来モデル より効率的に学習を行うことが出来ることを明らかにしている。
7童においては,これまでのスプリットの最適化に加えてオフセットの最適化を行うとともに,
交通状況の変動に対しても事前に学習出来るようモデルの拡張を行っている。すなわち,従来の スプリットモデルを基本形態とし,それにオフセットと流入交通量に関する入力経路を付加した
「マルチ入力型」のニューラルネットワークシステムの提案を行っている。それぞれの入力信号 の結合方法によって4っのタイプを想定し,未学習データに対する推定精度,および演算時間の 面から学習能カの比較検討を行っている。さらに,最良とされたモデルを4交差点問題に適用し 未学習な交通状況に対してもシナプス荷重の再学習なしに十分な精度で目的変量の推定ができる こと,あるいはスプリットとオフセットの最適解に関し安定した収束解をもっことができること などを確認している。
8章においては,将来における経路誘導システムヘの応用を想定して,静的な交通配分問題の 1つである最小費用流問題に対して相互結合型のニューラルネットワークモデルの適用をはかっ ている。ここでtま,任意のノードで交通の発生・消滅が可能となるようにするとともに,リンク 走 行 時 間 が り ン ク 交 通 量 に 依 存 す る よ う モ デ ル の 改 良 を 行 っ て い る 。 9章は本研究の結論であり,各章で得られた成果を整理して要約している。また将来の展望と 課題にっいても論じている。
以上のように本論文は,ニューラルネットワークモデルの持つ優れた特性を交通制御システム に導入することが可能であることを明らかにしたものである。これを要するに,著者は,交通工 学 に お け る 交 通 制 御 シ ス テ ム の 高 度 化 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。