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博士(工学)川村 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)川村 学位論文題名

Interaction Between Road Roughness and Vehicle Dynamics

(路面の凹凸と車の運動の相互作用について)

学位 論文内容の要旨

  路 面の凹 凸と車 の運動 の相 互作用 に関し ては, 従来よ り, 交通工 学・自 動車工 学・人間工学な ど道 路の 利用者 側から の見地 から, 車の 振動乗 心地, 操縦性 ・安 定性面 及び車 体・フレームなど の強 度・ 耐久性 面の研 究があ り,道 路工 学・橋 梁工学 など道 路の 提供者 側の見 地からは,舗装の 構造 設計 ・維持 管理及 び橋梁 部の耐 震設 計面な どの研 究があ るよ うに各 分野で 広範囲に研究が行 なわ れて きた。 しかし ながら その評 価基 準に関 しては ,評価 法が 確立さ れてい ないことも一因し て, 当事 者側の 見地に より異 なる傾 向が あり, その相 関関係 にっ いては 不明確 な点が数多く存在 する 。

  一 方,今 日の道 路交通 シス テムは ,r人」, 「車」 ,「道 路(環 境) 」3サ ブシ ステムから構成 され ると 言われ るよう に道路 交通そ のも のの特 性を考 慮する なら ば,道 路交通 に関する現象自体 は単 独で あって も複数 の要因 が影響 して いるこ とから ,系統 だっ たいわ ゆるシ ステム的考察によ り, その 問題に 対処す ること が必要 不可 欠とされる。本論文は,この様ナょ道路交通の特性を踏ま え, 冬期 路面を 含む種 々の路 面の凹 凸の 実態調 査・測 定,路 面の 凹凸に 影響を 受ける車の運動の 理論 的考 察を行 ない, 車の運 動特性 に影 響を与 える路 面の定 量的 評価法 にっい て検討を行なうと 共に 今後 需要が 高まる であろ う交通 のマ ネジメ ントシ ステム の実 施に関 係の深 い路面のサービス 性能 評価 指標と 車の振 動乗心 地との 関連 性にっ いても 考察し ,そ の関係 を明確 にしたうえで,従 来試 みら れるこ との少 ナょか った「 人一 車―道路系」を意識した総合的な路面の凹凸と車の相互作 用の 評価 方法の 必要性 を重視 する見 地か ら,そ の評価 方法の 構築 に必要 な幾っ かの知見を示した もの であ る。

  本 研究に 於て対 象とな る路 面の凹 凸は,車の振動乗心地に関係のある路面の縦断プロファイルが 主と して 扱われ るが, その測 定に関 して は,従 来より 種々の 方法が考案されており,1)直接水準 測 量 に よる 方法 ,2) 一定 長の定 規によ り直接 読み取 る方 法,3)プ 口フィ ルメ ー夕( 路面接 触型

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・ 非 接 触型 ) によ る方法 ,4)車の 周波数 応答特 性に より推 定する 方法等 に分 類され る。本 研究 にお いて は,車 の運動 との相 関関係 も同 時に解 析でき ,冬期 路面 測定に 必要な 迅速で 交通流を乱 さ ず に 測定 可 能な 上記4)の 手法を 用いて いる。 また ,路面 の凹凸 を定量 化し ,評価 するた めの 手法 とし て,路 面の波 状特性 を理解 し, 車の振 動面へ の影響 を把 握する ことを 目的と してスペク トル 分析 を用い ,ISO(国 際標準 化機構 )で提 案されている評価規準ナょどにより検討を行なった。

  ま た路 面 の 凹 凸 によ る 車 の 運 動の 理 論 解 析 には ,ASTM( 米 国 材 料 試験 学 会 ) で規格 化が進 め ら れ てい る ク ウ ォ 一夕 ー カ ー モ デ ル(Quarter car model)を合 む質点 ―バネ ―ダッ シュ ポッ トで 構成 される 種々の 自由度 の車の 数学 的運動 モデル によル コン ピュー タシミ ュレー ションを行 ない ,モ デルの 適合性 にっい て,実 車に よる走 行試験 結果と の対 比によ り考察 を行な っている。

  本 論文 は 全9章 で構成 されて いる。 第一 章は序 論であ り,本 研究の 位置 づけ及 びその 背景に つ いて 示す と共に 本論文 全体の 構成に っい て述べ ている 。

  第2章 に お いて は,路 面の凹 凸の定 義を 明確に すると 共に, 路面の 凹凸 の発生 原因及 びそれ が 他 に 及 ぼ す 影 響 な ど を 紹 介 し な が ら そ の 測 定 手 法 に っ い て 論 じ て い る 。   第3章 に お いて は,夏 期と冬 期にお ける 札幌市 及びそ の近郊 におけ る路 面の凹 凸の実 態調査 を もと にス ペクト ル分析 を行な った結 果に っいて 述べて いる。 ここ では, 報告例 の少な い冬期路面 の実 情を 明らか にする と共に ,路面 性状 を把握 するた めの路 面特 性関数 の検討 を行な い,従来発 表 さ れ てい る も の に 比べ て 卓 越 周 波数を 有する 路面 の把握 に適す る新た な特 性関数 の提案 を行 なっ た。 さらに ,近年 詳細な 調査結 果が 報告さ れてい るドイ ツ連 邦共和 国にお ける分 析結果と本 調査 との 比較検 討が行 なわれ ,本調 査に おいて ,特に 路面の 低波 長成分 に関し てドイ ツより悪路 であ る状 況の箇 所を示 した。

  第4章 に お い て は, 前 章 の 結 果に 対 し てISOの 規 準 に 基づ き 路 面 の 凹凸 区 分 を 行なう と共に 路面 の定 量適把 握を目 的とし て,バ ンド パスフ アルタ ー法及 び吸 収工ネ ルギー 法によ る乗り心地 面 の 検 討 な ら び にAASHO道 路 試 験 で 用 い ら れ たPSI(Present Serviceability Index)によ り路 面の サ―ビ ス性能 面での 評価結 果に っいて 論じて いる。

  第5章に おい てIま ,車 の運動 モデル 構築の 際に 問題と なる車 の運動 システ ムに おける入出力関 係に っい て論じ ており ,路面 の凹凸 によ って生 ずるば ね下の 振動 加速度 と車の 乗員が 感じるばね 上の 振動 加速度 との応 答特性 にっい て, 回帰分 析及び ダイナ ミッ クシス テム分 析によ り考察した 結果 ,ば ね下の 固有振 動数域 におい て入 出カの線形性が高いことなど興味ある結果が確認された。

  第6章 に お いて は,車 の運動 の理論 解析 に適す るモデ ルにっ いて論 じて おり, 対象と なる車 の 運動 とし て路面 の凹凸 による 振動及 びわ だち路 面によ る操縦 性安 定性を 例に取 り,ク ウォー夕一

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力一モデルを含む低自由 度のものから7自由度のフルカーモデル(Full car model)までのモ デルを用いて実測値とシミュレーション値との比較考察を行ない,モデルの妥当性にっいて検証 を行なっている。路面の凹凸による車の乗り心地評価に用いられる振動加速度の予測にあたって は,7自由度モデルにおいて0.1―10Hzの周波数域に関して実測結果と良く一致することが確認 された。

  第7章においては,路面の凹凸に影響を受ける車の運動の定量的評価方法にっいて,前章の車 の運動モデルを用いたシミュレーション結果に基づき論じており,車に及ぼされる振動加速度を ISOとドイツ連邦共和国で提案されている評価基準を用いて,乗り心地を示す指標値により検 討を行なった。また,わだち路面など悪路が車の操縦性安定性に与える影響の評価指標としてス タビリティファクターが有効であることを提案し,わだち路に於ける車線乗り移り試験結果に適 用 し , わ だ ち 路 面 の 危 険 度 を 解 明 す る う え で の 貴 重 な 資 料 を 得 て い る 。   第8章においては,路面の凹凸のシステム的評価方法にっいて述べており,車速・路面の凹凸 度・人間の振動に対する恕限度を考慮し,信頼性理論及び非線形計画法を用いた最適化手法によ る方法ならびに前章までに検討された幾っかの車の運動や路面の評価に関する指標を図式により 総合的に評価する方法を提案し,検討を行なっている。結果により,乗り心地評価基準と舗装の サービス性能評価指標との関係など興味深い結果を得ている。

  第9章は本研究の結論であり,各章で得られた成果を整理して要約し,将来の展望と問題点に っいて論じている。

学位論文審査の要旨

  本論文は,路面の凹凸と車の運動の相互作用にっいて,道路の提供者側の見地と道路の利用者 側から行なわれていたそれぞれの評価基準の相関関係を明確にしたうえで,「人―車―道路系」

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俊 夫

仁 正

   

   

照 日

来 嵐

村 山

   

   

L l

加 五

芳 村

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を 意 識 し た 路 面 評 価 方 法 を 提 案 し て い る も の で ,9章 か ら な っ て い る 。   今日の道路交通システムは,「人」,「車」,「道路(環境)」の3サブシステムから構成され ると言われるように道路交通そのものの特性を考慮するならば,道路交通に関する現象自体は単 独であっても複数の要因が影響していることから,総合的考察により,その問題に対処すること が必要不可欠とされる。著者は,この様な道路交通の特性を踏まえ,冬期路面を含む種々の路面 の凹凸の実態調査・測定,路面の凹凸に影響を受ける車の運動の理論的考察を行ない,車の運動 特性に影響を与える路面の定量的評価方法にっいて検討を行なうと共に今後需要が高まるであろ う交通のマネジメントシステムの実施に関係の深い路面のサービス性能評価指標と車の振動乗心 地との関連性にっいても考察し,従来試みられることの少なかった「人一車―道路系」を意識し たシステム的思考により,路面の凹凸と車の相互作用の評価方法の構築に必要な幾っかの知見を 示している。

  第1章は序論であり,本論文の目的及びその背景にっいて示すと共に本論文全体の構成にっい て述べている。

  第2章においては,路面の凹凸の定義を明確にすると共に,路面の凹凸の発生原因及びそれが 他 に 及 ぼ す 影 響 な ど を 取 り 纏 め な が ら そ の 測 定 手 法 に っ い て 紹 介 し て い る 。   第3章においては,夏期と冬期における札幌市及びその近郊における路面の凹凸の実態調査を もとにしたスペクトル分析にっいて述べている。ここでは,報告例の少ない冬期路面の実情を明 確にすると共に,路面性状を把握するための路面特性関数の検討を行ない,卓越周波数を有する 路面の把握に適する新たな特性関数を開発している。さらに,近年詳細な調査結果が報告されて いるドイツ連邦共和国における分析結果と本調査との比較検討を行ない|本調査路面の低波長成 分に関してドイ`ソより悪路である状況の箇所を確認している。

  第4章では,前章の結果に対してISOの基準に基づき路面の凹凸区分を行なうと共に路面の 定量的把握を目的として,バンドパスフィルター法及び吸収工ネルギー法による乗り心地面の検 討なら ひにAASHO道路試験で用いら れたPSI指標により路面のサ ービス性能面での評価結果 にっいて考察している。

  第5章においては,車の運動モデル構築の際に問題となる車の運動システムにおける入出力関 係にっいて,回帰分析及びダイナミックシステム分析により考察しており,ばね下の固有振動数 域において入出カの線形性が高いことを明らかにしている。

  第6章においては,車の運動の理論解析に適するモデルの適用性にっいて論じており,対象と なる車の運動として路面の凹凸による振動及びわだち路面による操縦性安定性を例に取り,2自

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由度の低自由度のものから7自由度のモデルまでを用いて実測値とシミュレーションによる理論 値 と の 比 較 考 察 を 行 な い , モ デ ル の 妥 当 性 に っ い て 検 証 を 行 な っ て い る 。   第7章においては,路面の凹凸に影響を受ける車の運動の定量的評価方法にっいて,前章の車 の運動モデルを用いたシミュレーション結果に基づき論じており,車に及ぼされる振動加速度を ISOの乗り心地評価基準に基づく新たな定量的評価指標を開発することにより検討を行なった。

また,わだち路面など悪路が車の操縦性安定性に与える影響の評価指標としてスタビリティファ クターが有効であることを提案し,わだち路に於ける車線乗り移り試験結果に適用し,その有用 性にっいて論じている。

  第8章においては,路面の凹凸と車の運動の相互作用に関するシステム的評価方法にっいて述 べており,前章までに取り上げられた各種の評価指標に対して,信頼性理論及び非線形計画法な ら び 図 式 に よ り 総 合 的 に 評 価 す る 方 法 を 提 案 し , 検 討 を 行 な っ て い る 。   第9章は研究の成果と今後の展望にっいて述べている。

  これを要するに,著者は,従来行なわれていなかった,路面の凹凸と車の運動の相互作用問題 に対して多くの知見を得ると共に,交通工学・自動車工学・道路工学・人間工学など本問題と関 係のある種々の分野への総合的影響評価を可能ならしめたことは,今後の道路交通問題解決に貢 献するところ大なるものがある。

  よ っ て 著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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