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発達障害児童への支援を中心にした学級経営の在り方‐すべての児童が安心できる学級づくり‐

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(1)発達障害児童への 支援を中心にした 学級経営の在り方 _すべての児童が安心できる学級づくり_. M07314K上田篤.

(2) 研究報告書の構成. 序章研究の目的と研究の方法... ..... 第1章 学校における発達障害児童への支援の必要性..........、....... 3. 10. 1LD児童の特性......、..、、、.、.....、、、、.、..............、、....、....11. 2ADHD児童の特性.............、、..........、................. 12. 3アスペルカー症候群・高機能自閉症児童の特性...、、............ 13. 4 学級経営において必要な支援.............1...、、.,.1......... 15. (1)LD児童の特性を考慮した支援...............、.、.........、..................... .20. (2)ADHD児童の特性を考慮した支援................................................. (3)高機能自閉症・アスペルカー症候群児童の特性を考慮した支援.、.. ...21. ..22. 26. 第2章 ユニバーサルデザインの視点からの支援の必要性.1... 1 学級を発達障害児童の居場所とするために.....、........ 27. 2 学級のユニバーサルデザイン.................、.,.. 32. 3 授業のユニバーサルデザイン.......、.........、..... 、.... . 35. (1)茨城県教育研修センターによる取り組み.......、.,....... .35. (2)ユニバーサルデザインを意識した授業の立案............、. .41. (3)ユニバーサルデザインを意識した授業の立案の成果.... .49. 第3章 発達障害児童への支援を中心にした学級経営の集団力学的展望....、...51 1 学級経営における集団力学理論の援用...、..................、..、.....52. 2 学級経営と発達障害児童への支援とおける教師のリーダーシップの重要性.54 3 発達障害児童への支援が学級にもたらす集団力学的可能性.....,.......、56. 終章 本研究における成果と課題... ..... ..... 60.

(3)

(4) 1. 発達障害とは 発達障害とは広義には「知的(発達)障害(精神遅滞)と同様の支援が必要、中途障害とは、. 質の異なる、より多くの支援が必要、そして一生涯の支援が必要な状態像」1〕と定義され、. 具体的には「知的発達障害、脳性麻痺などの生得的な運動発達障害、注意欠陥多動性障害 (多動性障害)およびその関連障害、学習障害、発達性協調運動障害、発達性言語障害、. てんかんなどを主体とし、視覚障害、聴覚障害および種々の健康障害(慢性疾患)の発達 期に生じる諸問題を含む」2〕が発達障害とされる。この定義はアメリカの福祉政策の中か. ら生まれた概念によるものであり、医学的、脳科学的見地から発達障害をとらえたもので ある。. 一方、文部科学省は、発達障害を「自閉症、アスペルカー症候群その他の広汎性発達障 害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が 通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」3)とする発達障害者支援法に. よる定義を採用している。特殊教育から特別支援教育へと転換する際に新たな対象として 広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害が加わったことから、発達障害と知的障 害との境界をはっきりさせた狭義の概念が採用されている。これは学校教育において発達 障害児童・生徒に対しては、これまでの特殊教育の対象となっていた障害児童・生徒とは 異なる支援が必要であることに起因する。. 弱い. 行動の偏り 図1発達障害とは4)(出典:菅野他略別支援教育における教育実践の方法」より引用). 4. 強い.

(5) 本研究では、学校教育を対象としていることを踏まえ、発達障害者支援法の定義に貝1」っ. てr発達障害」を定義することをはじめに述べておく。. 2.問題の所在と研究の目的. 平成12年3月、学級経営研究会(国立教育研究所内外の研究者や学校現場の関係者等で 構成)による文部省委託研究『学級経営の充実に関する調査研究』5〕において、全国各地の. 小学校で調査を行った結果、学級がうまく機能しない状態にある150学級中、その要因と して「特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例」が、37学級を占めている ことが明らかになった。. また、平成14年に文部科学省によって行われた『通常の学級に在籍する特別な教育的 支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』6)では、通常学級に在籍する児童・生 徒のうち、LD(LearningDisabi1ities:学習障害)、ADHD(Attention・De丘。itHyperactivity. Disorder:注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症の影響により、学習や生活の面で特別な教 育的支援を必要とする児童・生徒の書1」合が6.3%(図2・3)7)という非常に多い割合である ことが示された。. 学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童1生徒の割合6.3%. 学双面で しい困難(4.5%) 行動面で申しい木仲(2.9%). 学習面及び行動面の双方で著しい困難(1.2%). 図2 知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示すと担任教師が回答した児童生. 待の割合 (出典:小・中学校におけるLD(学習障害)、畑HD、(注意欠陥ノ多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒. への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)より引用). 5.

(6) 「聞く」「言古す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」に著しい困難を示す4.5%. B「不注意」または「多動性一衝動性」の問題を著しく示す2.5%. 3.3%. O.9%. 1.2%. O.2%. O.2% O.1%. O.3%. C「対人関係やこだわり等」の問題を著しく示すO.8%. 図3知的発達に遅れはないものの学習面や行動面の各領域で著しい困難を示すと捜当教師が回答し た児童生徒の割合 (出典:小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD、(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒 への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)より引用). すなわち、これらの調査結果は発達障害の児童が、ほぼすべての学級に在籍し、ほぼす べての学級が「特別な教育的配慮や支援を必要とする」児童を抱えた、いわゆる「学級崩 壊」の危険性をもった学級であることを意味する。 これらの調査の結果によって、発達障害児童・生徒に対し適切な支援が行われなければ、. 発達障害の障害特性による行動を引き金として、教師と児童・生徒との関係に鯉薗吾をきた し、学級の集団的機能が低下し、いわゆる「学級崩壊」に陥ることが示唆された。したが. って、学級のすべての児童生徒の教育の機会均等を保障するためにも発達障害児童・生徒 の二一ズを見極め、特別な教育的支援を行うことは教師としての重要な使命である。. これらの調査結果に鑑み、発達障害児童・生徒をめぐる制度が大きく改正された。最も 大きな改正として、特殊教育から特別支援教育への転換が挙げられる。. 平成15年3月には特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議(文部科学省によ って設置された有識者機関)によって『今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)』. 8)が取りまとめられた。この報告書では、「LD,ADHD等通常の学級等において指導が行 われている児童生徒への対応も課題になるなど、障害のある児童生徒の教育について対象. 児童生徒数の量的な拡大傾向、対象となる障害種の多様化による質的な複雑化も進行」し ていることが、現状の課題の一つとして挙げられた。このような現状の課題を解決するた.

(7) めに、これからの基本的方向として「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教 育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的二一ズに応じて適切な教育的支援を行う『特. 別支援教育』への転換を図る」ことが示された。特別支援教育においては、その在り方、. 基本的な考え方を「従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD,ADHD、高機能自閉 症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的二一ズ を把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切 な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである」9〕とし、その対象に新たに発達障害. 児童・生徒が含まれることが明示された。また、具体的な取り組みとして、①「個別の教 育支援計画」(多様な二一ズに適切に対応する仕組み)②「特別支援教育コーディネーター」 (教育的支援を行う人・機関を連絡調整するキーパーソン)③「広域特別支援連携協議会」. (質の高い教育支援を支えるネットワーク)などが挙げられた。この報告書を受けて、平. 成17年12月8日には、中央教育審議会において『特別支援教育を推進するための制度の 在り方について(答申)』が取りまとめられた。この答申の中で、通級による指導の対象に. LD・ADHDを新たに加えることが提言された(学校教育法施行規則の一部改正により平 成18年4月施行)。これらの答申を踏まえ、平成19年4月、学校教育法に特別支援教育 が位置づけられた。. 食事8児童生管融. 特別支援教育の対象の概念幽. 1092万人. {○●果量集○に○る書ω‘i■1”. 齢別支援徴n .一一一一. 團. 新たな対念書一一一→. ‘一一一■■ 従来の筍殊藪n 一一一・). 策妹讐縦. 通構の菱軽 通帳権。. LD・ADHD・. 繍貫障書 ■I膿調書. 衛機能自閉症等. 咬体不自由 病弱 常語調書 簡績調書. 6.3%程度の注竈章嶋2). 團 機貫調書. 機資建書 真貫調選 知的真書 検体不自由. 縦体不I姜1書. 劇3. 準識. 業態書. 知的調書. 書調調書 錆帽調書. (約68万人) O.33㈹ {真3着6そ=^〕. O.83伽, ωo日1字人〕. 0蝸‘帥 (壊5万2手∼. 幅. 軽. n真ω韓富 調書の程度. 8. ■. ;::1鰐:』幾:こニニ:膿;’戦.実:続=::ニニ……実ボ舳盤州‘㎜‘㎜}M.(・・榊舳蝸則目頭帥. 図4 特別支援の対象の概念図1o〕(出典:特別支援教育を推進するための制度の在り方について〈答申〉 より引用). 7.

(8) また、平成16年12月10目には「発達障害者支援法」が公布され、平成17年4月1 日より施行されることとなった。この法律が制定され、発達障害が明確に定義されたこと. により、教育の場においても発達障害の早期発見と早期対応、発達障害者の自立及び社会 参加に資するよう、支援が図られることとなった。とくに、第8条では、「国及び地方公 共団体は発達障害児(中略)がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにする ため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置を講じる」11)ことが教育にお ける義務として明文化された。. 平成16年1月には文部科学省からr小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD、(注意 欠陥ノ多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライ ン(試案)」が策定された。ガイドラインでは、支援体制を構築していく際の具体的な方法、. 手続き、配慮事項などが示された。ガイドラインが策定されたことにより、教育行政担当 者,学校関係者,専門家,保護者がこれを参考にし、殺害I1分担し支援体制を整えていくた めの基盤が据えられた。. これらの動向を受けて学校現場では、発達障害児童・生徒に対する指導及び支援に関し て様々な工夫がなされてきている。しかし、学校現場での発達障害児童・生徒に対する理 解や支援は十分でない。学級経営の中に、特定の児童・生徒のための新たな支援方法を導 入することには大きな負担であることは事実である。また、発達障害児童・生徒への特別 な支援を意識するあまり、学級の集団としての経営が疎かになっているということが少な くない。したがって、発達障害児童・生徒への支援を特定の個人に対する支援としてでは なく、学級の全ての児童を対象とする包括的な支援として学級経営の中に位置づけること で、学級を集団として機能させていくような学級経営の在り方が必要である。. そこで、本研究では、発達障害児童への支援を学級経営の中心に据えることで、すべて の児童に対して包括的な支援を行い、学級をすべての児童が安心できる場所とするための 方略を提示し、その効果を検討することを目的とする。. 31研究の方法 研究の方法としては、実地研究(修士課程第2学年後期に行った実習)とインターンシッ プ(修士課程第3学年後期に行った実習)による研究と文献研究に依拠した。. 実地研究では、平成20年10月∼平成21年3月の期間、伊丹市立A小学校第1学年の 学級に、月曜日∼木曜目まで主に副担任のような形で参画した。また、インターンシップ. では、平成21年9月∼12月の期間、月に2回程度、計60時間、同小学校第2学年の学 級に、同様に副担任のような形で参画した。実地研究、インターンシップ共に、児童の学 校生活を記録し児童間の人間関係や行動の変容を調査した。. 文献研究においては発達障害や学級経営に関する文献を対象とし、その成果と課題を分.

(9) 析し、事例研究として位置づける。. 【引用文献・資料】 1). 日本発達障害学会『発達障害基本用語辞典』 金子書房2008年 i頁. 2). 同書,i頁. 3). 発達障害者支援法第1章第2条第1項. 4). 菅野敦・宇野宏幸・橋本創一・小島道生編『特別支援教育における教育実践の方法』. ナガニシヤ出版2006年8月,7頁 5). 学級経営研究会『学級経営の充実に関する調査研究』1999年. 6). 文部科学省『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する. 全国実態調査』2002年 7). 文部科学省『小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD、(注意欠陥/多動性障害)、高. 機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)』2004年. 1月,第1部3 8). 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議『今後の特別支援教育の在り方に ついて(最終報告)』2003年. 9). 文部科学省「特別支援教育」2007年3月 〈ht七:〃wwwmext.o..ノa menu/shotou/tokubetu/main.htm〉. 1O)文部科学省『特別支援教育を推進する制度の在り方について(答申)』2005年12月. 11)発達障害者支援法第2章第8条第1項 【参考文献・資料】. 1学級経営研究会『学級経営の充実に関する調査研究』1999年 2菅野敦・宇野宏幸・橋本創一・小島道生編『特別支援教育における教育実践の方法』. ナガニシヤ出版2006年8月 3 中央教育審議会『特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)』. 2005年 4特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議『今後の特別支援教育の在り方に ついて(最終報告)』2003年. 5文部科学省『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する. 全国実態調査』2002年 6文部科学省『特別支援教育の推進について(通知)』2007年.

(10) 第1章 学級における発達障害児童への支援 の必要性.

(11) 本章では、通常学級において発達障害児童を支援していくための手立てを考察する。そ のた均に、まず発達障害(LD,ADHD、高機能自閉症、アスペルガ]症候群)それぞれの障 害特性や行動特性について述べる。そして、それらの特性に対して適切な支援を行うため に学級経営上配慮すべき点について述べることとする。. 1,LDの障害特性 LD(LeamingDisabi1ities:学習障害)とは「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達. に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のもの の習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因と して、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的 障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」1)と文部 科学省によって定義されている障害である。これは文部科学省による教育的な定義であり、 精神医学的な定義とは異なる。精神医学的にはDSM・1V・TR(精神疾患の診断・統計マニュ. アル)において、LDは読字障害、書字表出障害、算数障害、特定不能学習障害に分類され る。精神医学的な診断基準では、「読む」「書く」「計算する」に限定される。一方、文部科 学省による定義においては「読む」「書く」「計算する」に加え「聞く」「話す」「推論する」. が含まれている。このことから、教育的定義では学習に必要な認知的能力が損なわれてい. る状態がLDとされ、教育現場においてこのような状態にあるすべての子どもに対し適切 な支援を行うことを目標としていることがうかがえる。 LDの障害特性は、先にも述べたように、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」帷. 論する」の能力のうち特定のものの習得と使用に困難を示すことである。それぞれを詳し く述べたものを以下(表1)で示す。. LD児童に対しては、以上の障害特性に配慮した支援を行っていく必要がある。まずは、 どの領域に困難を示し、学習上の二一ズがどのようなものかを把握しなければならない。 「LD判断のための調査票(LDI)」を用いれば、子どもがどの領域においてつまずきを示し. ているかを把握することができる。また、このような調査法を用いなくとも、子どもが学 習する様子を観察することで、ある程度子どもの学習二一ズを把握することができる。例 えば、「聞く」領域に関していえば、子どもが指示を理解し指示されたことを行動に移せて. いるかをチェックする。また、「書く」領域に関しては、バランスのよい字をマス目の中に. 書けているかをチェックする。このように、調査票や子どもの学習の様子の観察から把握 できたっまずきをリストアップし、個別の指導計画作成へと役立て、学習二一ズに応じた. 支援・指導をおこなっていくことが必要である。LDの障害特性上、国語や算数において のっまずきが目立つ。小学校低学年時の国語や算数でのつまずきが、LD児童の学習意欲・ 自信を喪失させ、自己肯定感の低下につながる。また、他の児童から勉強ができない子と 11.

(12) いうレッテルを貼られ、いじめというような深刻な問題にも派生する危険性がある。この ような事態を防ぐためにも、個別の指導言十画を立てLD児童の学習二一ズに応じた適切な 支援・指導を行うことは極めて重要である。. 表1LDの判断に関わる領域 ・他人の話を正しく聞き取って理解すること.. ’・伝えたいことを相手に伝わるように話すこと. ・文章を正確に読み理解すること ・文字を正権に書くこと、一筋道を土セて文章を書 くこと. ’・暗算や筆算をすること、数の概念を理解すること. ・事実から結果を予預ヴ声÷キ、樟早か亭坪因を推 測すること・. 21ADHDの障害特性 ADHD(Attention・De丘。itHyperactivityDisorder:注意欠陥多動性障害)は「年齢ある. いは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、. 社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態 が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」2〕と文部科学 省によって定義されている。不注意や多動、衝動的といった側面は学齢期のどの子どもに もみられる。しかし、その不注意や多動、衝動的な状態が継続し社会生活を営むことや学. 習が困難であることがADHDの特徴である。 ADHDの行動特性は不注意性と衝動性、多動性に区別される。それぞれの行動特性につ いて以下(表2)で示す。. 12.

(13) 表2ADHDの特性. ・注意をコン.トロール. できない ・転導性が高い. r他者の言動を遮る ・順番を待てない ・質問の途中で答えて. ・過集中. ・順序立てて活動がで・. ゚度に手足を動かし. たり話したりする ・じっとしていられな レ、. しまう 一・. 1・. ∑ヤを待てない一. きない ・片付けができない ・忘れ物が多レ.、. ・ケア.!スミスが多い. ADHDは、これらの行動特性のうち、どの症状を示すかによって、「不注意優勢型」と 「衝動性一多動性優勢型」、「混合型」の3つに分類される。. ADHD児童の行動には、このような特性があるため、行動上に問題がある児童として人 の目に留まりやすい。そのため、ADHD児童は注意される機会が多くなり、自尊感情を低 下させるケースが少なくない。そのような問題のある行動がなぜ起こっているのかが考慮. されず、行為ばかりを否定されるため、ADHD児童は一層自尊感情をもてなくなる。ADHD は自尊感情の低下によって、様々な二次障害へとつながってしまう。「何をやっても上手く. できない自分」に対する思いは、自己に対して否定的な感情を募らせ、ひきこもりや不登 校などの非社会的な行動を引き起こしたり、うっ傾向になったりする原因となる。また、 自尊感情の低下は、万引きや過度の暴力などの反社会的な行動にもつながる。したがって、. このような二次障害を予防するために、ADHDを理解し、問題行動の起こる背景を考慮し ながら適切な支援を行う必要がある。. また、ADHDはLDを伴っているケースが多い。LDのもつ特性に、ADHDの行動特性 が加わるため、学習面での困難さはより高くなる。したがって、ADHD児童に対しても、 LD児童と同様に、学習上との領域に困難を示しているかを把握し、支援にあたっていく 必要がある。. 3.高機能自閉症・アスペルカー症候群の障害特性 高機能自閉症・アスペルカー症候群は共に広汎性発達障害の代表的なものである。高機 I3.

(14) 能自閉症、アスペルカー症候群は両症共に、自閉症の中でも知的障害を伴わないグループ で、通常学級において支援を行っていく必要がある。したがって、本論文においては広汎 性発達障害という自閉症の概念から、高機能自閉症とアスペルカー症候群に焦点を当てて 論を展開する。まず、両症について文部科学省の定義からみていきたい。. 高機能自閉症は「3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の 発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であ る自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要 因による機能不全があると推定される」3)と定義されている。また、アスペルカー症候群 とは、自閉症の中でも「知的発達の遅れを伴わず、かつ、自閉症の特徴のうち言葉の発達 の遅れを伴わないもの」である。. これらのグループの障害は、「社会的相互交渉の質的な障害」「コミュニケーションの質 的な障害」「行動、興味及ぴ活動の限定的、反復的、常同的様式の存在」4〕の3つに分類す ることができる(表3)。. 表3高機能自閉症・アスペルカー症候群の特性. ・相手との感情の共有 が困難 ・自分と他者とを切り 離して思考すること が困難 ・人を遠ざけているよ うに思われる ・非言語性言語の使用 が困難 ・発達の水準と相応の 仲間関係をつくるこ とが困難. ・周囲の状況の理解が 困難 ・相手の表情から感情 を読み取ることの困 難 ・会話の持続の困難 ・言葉の文字面だけの 理解 ・暗黙の了解の困難. ・特定のルールや習慣、. 儀式への固執 ・常同的で反復的な街 奇的運動の存在 ・限定された対象への 興味だけに熱中. r社会的相互交渉の質的な障害」の特徴には、相手との感情の共有の困難性がある。他 者が自分とは独立した感情にあることが理解できず、自分と他者とを切り離して思考する ことが困難である。自分の立場での思考が中心となるため、人を遠ざけ関わろうとしてい ないように見えたり、反対に、人との距離が近すぎるように見えたりする。自己中心的な 人間と受け取られることも少なくない。「コミュニケーションの質的な障害」の特徴には、. 相手の表情から感情を読み取ることや周囲の状況を理解することの困難性などがある。目 14.

(15) に見えないものを理解することが難しいため、言葉を文字面だけで理解してしまう。した がって、冗談や暗黙の了解が通じず、他者とのコミュニケーションが上手くいかないこと がある。「行動、興味及び活動の限定的、反復的、常同的様式の存在」の特徴には、ある特. 定の分野に関する博学的な知識をもっていることや同じ状態へのこだわり、ルールヘの固 執性などがある。想像力を欠くため、興味が限定されたり、同じ事を繰り返したりする。. そのため、変化に対応することが難しく、スケジュ]ルが変更されるとパニックを起こす ことがある。他にも、高機能自閉症・アスペルカー症候群には、刺激に対する過敏性や不 器用など、併せもちやすい症状がある。. 高機能自閉症・アスペルカー症候群の児童は、これらの行動特性が他の児童とのコミュ ニケーションの際にトラブルの原因となり、人間関係が拗れ、いじめの対象となることが 多い。. 上述したように、高機能自閉症・アスペルカー症候群には基本的な特徴がある。しかし、. 個人によって、それぞれ表面化する症状に違いがある。したがって、教師や他の児童が、. 高機能自閉症・アスペルカー症候群の児童の行動特性を理解し、環境を整え、っまずきを 支援していく必要がある。. 4.学級経営において必要な支援 これまで、発達障害児童に対する特別な支援の必要性について述べてきた。では、通常 学級において、発達障害児童に対してどのような支援を行っていけばよいのか、本節にお いて考察していくこととする。. まず、発達障害児童のいまの実態を把握することが重要である。発達障害児童の得意分 野や苦手分野などの情報をアセスメントによって把握し、指導計画を立てる。特に、苦手 分野に関する情報は早期把握、早期対応が必要である。発達障害児童にとって、苦手分野 でのつまずきが、自己肯定感の低下や人間関係の悪化などの二次的な障害へとつながる危 険性があるからである。通常学級においてアセスメントは次のような流れで展開されるこ とが期待される。(表4)5). 学校生活において対象の発達障害児童と関わる割合の高いのは担任教師である。したが って、アセスメントの際は担任教師からの情報が質的にも量的にも主要なものとなる。し かし、多様な場面での発達障害児童の姿を把握するためには、担任教師以外の視点から、. 多面的・多角的に解釈する必要がある。また、発達障害児童に対する全ての支援を担任教 師が一律して担い、行っていくには限界があり、より適切に支援を行っていくためにも、. 学校内での連携が重要になる。校内での情報の共有だけでなく、支援方法の組み立てを協 議し学校全体で支援に当たることも重要である。そして、アセスメントを実施し、支援計 画を立案していく際は、指導するという立場から考えるだけではなく、発達障害児童本人 15.

(16) の願いや保護者の願いを十分に考慮し、発達障害児童の将来の姿を見通した計画を立てる ことを何よりも大切にしなければならない。. 表4アセスメントの展開(出典=小島ら(2008)より筆者改変). 母. 発達障害児童の実態を把握する際、次のようなチェックリスト(表5)6)を用いることで、. ある程度の支援の見通しを立てることが出来る。. 表5学級担任のための気になる子どもチェックリスト(小島ら(2008)より引用). ’菱みん漆の醜で…鱈すこと登,で営為澄け搬けようとする司. 一口擦添費麟1き取り,室分で行鋤すること綱灘しい、 一〇巖後豪で翻し夢を規て㈱くことが難しい, 報^薩鍛レたことを,麟醐貧ることが多薄、由. 口繰園;こ徴る曲. 選吹営懇欝で離すご星がで書ないヰ 鰯養し剃こ不鐵然きがある品. 薦正1鮒工でも鱗を.規て鰯を鰯くことが鱗レい白. 鰯い五ま郎鮒燃鮒絨と勇萱銚k 菱繍した鐙に禰亭の人から綱凄鴬っているか分から恋いと 欝わ利る.、 撒滅き嫁きと議すご・占がで蜜念レ生白. 薦巌分⑳穆え室裟とめて諾聾すことができない由. ≡口鮒鰍燃が繍乙淡、郷靴)ぶ銚蹴す徹燃義,. ;コひ書カ苗滋蓬載えて憩詳くこと萄{で…ぎ麦よい。. 驚曹続壷スム…ズに湾欝膝事、苦. ○襟の榊竃文寧壷鞭めるこ&伽でき滋b土。. 業文醸凌織むと慧、鱗働を鍛がしたり、綴帯につけ裁欣た. 三コ〕芝奪モカ玉搭嚢薯以_と塗毛整く濠った蓼,轟幸くな二)たりする七. りしてし表う。. 業文寮遼灘えて響くご姦≡がピζ竜〕鐙勢であ飢. 働瀞織する一のにと工繍鰯かか瀞紙 fコ言づ歩彪…すでは摺搬望⑳簸聾長菊王各予カ五ちず, テストカ音できない、. 鍵. 騎伽窓独・r訓勧痘かし怒り,鍛繕を欄遼えたりしてし蜜 うことが勢い咄. 業勢欝した漢学の織みを忘れる。 1コ衡鰍註できるが.書かれている肉饗を捉える伽こ鰭粥が かか孤 噴文雄凄繊むとき、鰯旬や狩を椴かしたり,鞍手に二)㈹鉋. 〔;難字凄募醜締な欝馳毒で欝く、. 〔コ建分θ)磯炎噂畷鰭ち壱1欝くζ丞カ言とで喧溜蹄であ範、. ○撚微の勢竜野す酬こ磯醐がかか孤 〔コ簿董沸の毛嚢慧璽迂り動圭とでも欝勢でご重窪えて=響くことカ主て三慧泳. い由. 鰯. 撒綴織凄1双ム…刈ご㌘鐙熔い由. 業欝くこと善ごとで意・縛閥がかか馬。 業麹竈享箏処くい寧凄欝く。. ロノート壷鑑灘して;書くことができ溶い岳 。1文旗登奪事くこと与こ, とて=怒=鋳帯二藪幸襲カ{ある白. U塑酬曹な:漢学坤叉灘=養1欝く也. 16. えたりしてし一豪う山.

(17) 2 射貫・維説 字一」一 一’. p;:・キ}ソ. .=. E:・㌔. 11:」㌔一・一一. !一. ≡爆1 口徴守は言えるが、その億蛛が分からない。. 業病ψな図形の違いが理解できたい。 口文傘識を読んで,その閑脳場面を想僅できない.. 口兇俗物や情を縫っても附課できない。 ≡一一一・・。 、。.. H一一一=・1=:一. [1〕数字は籏めるが.その大小がよく分からない. 1㌢」書1. ■’・’. 口貫外物や指を使わないと計算できない。 コ九九の識憧ができない.. ■■・■■一. 菶H形の仲mわけができない. 口図形を正しく描くことができない. 口」文講靱を読んで.立式できない.. コー単位や砕冥の簡則なミスカ,多・い. 1’書1茎学.二. :噺真が苦手である. ○筆算が薔手である.. 口学習しr=きた平面図形の機念が理解できていない. 口図形をその特徴を捉えながら.旺しく揃くことができない.. 口文章胆を読んで.立式できない.. 一苦.. 3 表現する・身体を動かす ‘. 1.嚢=…一軌跡 州i・灘葦.、菱榊鰍醐磐・.蟻=. 口形が独特な雀を描く. 口はさみを使うことが苦手である. 口兜想が広がらず.止まってしまう. 口絵の典や被着剤をいつも舳し過ぎてしまう. 口数が始まると耳をふさいでしまう.. 一、繊=由繋1一一 ・. 燃饗圭一:1=。一綱一ケ・.. 口まっすぐ歩くことが替平である. 口走ったり.跳んだりする動きが,ギクシャクしている. 0銭ぴ衝やマット運動が不測億である. 0曲に合わせてダンスをすることが苦手である.. ロリズムに合わせることが8しい. 口形や色が独特な絵を描く. 口桑撤が広がらず.象しい難じの作品をつくることが多い. 口惜がうまく動かず.リコ}ダーを漬劣することが遷しい. 口歌を一権に歌おうとしない.. コポールを取った。.投げたりすることが告手である. 口標読びが苦手である.. 口跳ぴ識やマット連動が不測遺である. 0ダンスをすると動きがずれる. 0壷ったり.跳んだりする動をが.ギクシャクしている.. 4 自分とのかかわり 一1一. E{。{・籏婦紬. 1.・.。線. ,.・. 蟻繊・狐貴撫㍉. =’. 口学習で慎うフリントや必建な新をすくになくしてし;1…う.. 口幽分のロッカーや下動箱など、決まった場所に片づけが できない. 日食べながらポロポロとこぼし.こぽれていても平気である. 口手準びが多い.. 口角肋を●き忘れることが多い, 口机.かばんの中から副分mに配ったフリントが出てくる. 口務とし構が多く、指示を”さもらす. 口いくつも絹示すると、次に何をするのか忘れてしまう.. ..一遇㌔,. ・;.. =。・一. 口他のことに気をとられ.}調に附問がかかる・ 口掃除を進んでしない。 口列に並んでもすぐに動書.洲を乱してし爽う. 口苦手なことはしようとしない. 口外爆麗や給食着に着着えるのに時固がかかる. 口崎の準調.かぱんの片づけ.宿,の提出がさっとできな い.. 口着手なことがあると.他のことを着えている. 口自四時間に進んで誤聞に取り組むことが難しい. 口行動がマイペースで.’人になっても気づかない.. 5 人とのかかわり ロドッジボールや遊びのルールを守らず.自分勝手に行動 口気に入らないことがあると.すぐにかっとなり1換普を はく.. 口入の業がることをわざと普ったりしたりしてトラブルが .学. ○新しい}元に入ったり.やり方が班わったりすること1二 緩抗感を示す.. する.. 幾えない. 口ふざけて書中でただ<.測テる、Iξうきを便り回す. 口観業中.よ、いに竃しかけるなど他の子どもの邪真をする.. 口締予や机をガタガタさせたり.続や後ろを向いて獲る. 口おしやべりが多い.. O一度『分からない」と思うとやる気をな<してしまい. どんなアドバイスをしても「分からない」を繰り返す. 口自由に活動する場面になると.何をして良いか分からな くなる.. ロクラス金体で取り級んでいることに興味を示さず.脂合 いに書加しない. 口瞬桑・碇練・振1り返りカードなどを書くことを業がる. 0人の立韓に立って考えることができにくい。. 口気1二入らないとすく1こ泣いたり怒ったりし.喩椚舳二なる.. 口をちんとしていなけれぱならないと室に愈り1醐ったり. 騒いだり.その協にふさわしくない行動をする.. 次に、把握した発達障害児童の実態を、咽別の指導計画」の立案・作成にっなげ、一人 ひとりの教育的二一ズに応じた支援に活用する。噸別の指導計画」利リは、次のような手順 (図1)71で立案・作成されることが好ましい。. 17.

(18) 瞭 図1個別の支援計画の手順(出典:「小・中学校におけるLD(学習障害),虹旧D(注意欠陥/多動性障 害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」より筆者改変). 発達障害児童の実態把握は、「情報の収集」にあたる。「目標の設定」は具体的なものを、. 学年や学期、単元ごとなどで行っていく。「手立ての工夫」は目標に対する具体的な手立て. を、一人ひとりの教育的二一ズに応じた方法で実施するために設定する。これらの手順に 基づき、立案された咽別の指導計画」の例を、以下に示す(表6)8)。咽別の指導計画」. は、目標に照らし合わせ、児童に対しどのような効果があったのかを、担任教師や校内委 員会などの多面的・多角的な視点から評価し、改善・引き継ぎを行っていくことが必要で ある。. 表6個別の指導計画例(出典:長澤噸別の教育支援計画」より引用). 控 女鋤北;==鋤して、r篤鈍亨」校ぜ碗 機1謬鮒茎由. では、発達障害児童の支援に必要な手立ての工夫について以下で述べる。. 発達障害の特性から、二次的な障害として自己肯定感の低下、人間関係の拗れが挙げら れる。したがって、発達障害児童に対する支援には、自己肯定感を高める関わり、人間関 係を深める関わりが必要である。 まず、自己肯定感を高めるための手立でについて述べる。自己肯定感を高めるためには、. 成功体験を通して、自分に対する自信を育むことが必要である。そのために、発達障害児 18.

(19) 童の能力に応じた適切な目標を設定し、無理のない程度にできることからこっこつと取り. 組ませることがある。成功体験は自分に対する自信につながるだけでなく、学習や学校生 活に対する意欲にもつながる。また、学級において目標や課題、ルール、規律を設定する ことが発達障害児童の自己肯定感につながる。それらに対する取り組みの中で、児童に殺 害11を与え、ほめる機会を増やすことで、児童に「役に立っている自分」を実感させる。自. 己肯定感を高めるために大切なのは、教師が対象の児童と深く関わり、ほめる機会を多く. もつことである。これらの手立てを計画する上で一番重要なのは、どのようにすれば発達 障害児童を褒める機会を多くもてるかを考慮しながら行うことである。 次に、人間関係を深める取り組みでは、ソーシャルスキルトレーニングが有効である。 ソーシャルスキルトレーニングとは、「社会生活を送る上で人との関係を確立し、円滑な 人間関係を維持するスキル」9)を身に付けるための訓練のことである。ソーシャルスキル トレーニングは次のような手順(図2)10)で行われる。. 吟. 詩. 図2 ソーシャルスキルトレーニングの手順(出典:小島ら(2008)より筆者が改変). 「①教示」は、課題場面を設定し、その場面で必要な行動を挙げ、その行動の課題場面 における有効性を示すことである。次にr②モデリング」とは、実際にはどのように行え ばよいのかを、モデルの行動を観察することである。「③行動リハーサル」では、相手を変 えながら何度も行動することが重要である。r④評価」においては、良いところを見つけ、 ほめることで、行動を強化していく。これらの手順は繰り返し行い、行動を改善していく ことが必要である。また、ソ」シャルスキルトレーニングでの効果が汎化を促すためには、 「本人の頑張りが認められる環境」11)が必要である。学級全体が発達障害児童を支持する. 風土となるように環境づくりを行い、そして、訓練した行動を日常生活で実行した際も評 価し、児童の能力の向上とつなげることが大切である。ソーシャルスキルトレーニングに おいても、個別の指導計画の目標に基づいた指導を行い、児童に期待する姿に見通しをも ったかかわりをすることが重要である。. 学級の中に発達障害児童のサポータ]をつくることも有効な手立てである。発達障害児 童にとって、理解してくれる仲間が学級にいることが何よりも生活のしやすさにっながる。. それは、発達障害児童だけでなく、教師やサポーターとなる児童にとっても良いことであ る。発達障害児童に対して個別の配慮をし、支援していくことは通常学級で学級担任だけ で行っていくことは難しい。そこで、対象児童のことを理解し、支援の意味や方法を知っ. ている児童にサポートを依頼することで負担を減らすことができる。サポーターとなる児 童はサポートすることが褒められる機会となり、自己肯定感を高めることができる。 19.

(20) これまで、LDとADHD、高機能自閉症、アスペルカー症候群を包括する支援について 述べてきた。これらの支援は担任教師一人で行っていくのは難しい。したがって、教師間 や専門家、保護者と連携して支援を行う体制を整える必要がある。それぞれ対象児童に対 する理解を深め、それぞれの立場から意見を交流できる場を学校につくらなければならな い。. 以下からは、LDとADHD、高機能自閉症、アスペルカー症候群、それぞれの障害特性 に応じた支援方法について述べる。. (1)LD児童に対する支援 LD児童に対する支援において大切なのは、まず、認知特性を把握することである。「【注 意(選択的注意・注意の持続)】→【情報の入力(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)】→【情報 処理(記憶・学習・思考など)】→【出力(ことばや動作など)】」12)の認知過程のうち、どの. 段階に機能的な問題があるのか、それが学習にどのように影響し、どのような困難につな がっているのかを理解した上で支援にあたらなければならない。したがって、対象児童の 苦手領域を補う形で支援が行われる。例えば、「書くこと」の領域に困難のある児童の場合 を考える。同じ「書くこと」において困難があっても、それが、文字を認識するという「入. 力」の段階に支障があるのか、それとも、文字を表現する「出力」の段階、または文字を 記憶する「情報処理」に支障があるのかによって支援の仕方が大きく変わる。それぞれの 視点から支援方法を考える必要がある。文字の認識に困難がある児童には、似た文字を比 較したり、正しい文字と誤りのある文字を比較したりすることで文字の特徴をつかませる など、「入力」に焦点化した指導が必要になる。また、文字を表現することに困難のある児. 童には、文字の形態の言語化や文字の構成のパズル化、補助線のあるワークシートの使用 など「出力」の部分に焦点化した指導が必要である。そして、文字の記憶が困難な児童に 対しては、文字に意味を持たしたり、ご褒美やペナルティーで心理的緊張を与えたりする ことで児童の記憶を促進させるような工夫が必要である。. LD児童は同時にたくさんの情報を処理することが困難である。しがって、LD児童にと っては、たくさんの情報があり過ぎる環境では生活するのが困難である。すなわち、LD 児童の存在する教室では、必要な情報を厳選した掲示や指示の仕方を心掛ける必要がある。. 見てほしいもの、聞いてほしいものだけがわかるようなシンプル且つ明確な掲示や指示で なければならない。それは、授業の中でも配慮しなければならない。例えば、板書をしな がら教師の話を聞き、理解することは難しいので、板書をする時間を独立させて設ける。 板書では写す部分が明確になるよう線で囲んだり、色を変えたりする工夫も必要である。. また、スモールステップの指示や学習にすることで、LD児童の困難さは軽減される。. LD児童は一度にたくさんのことを難しいので、指示もいくつかの段階に分けることが理 解の促進につながる。例えば、「まず初めはO○をします」r次に△△をします」というよ. 20.

(21) うに、一文一動詞の簡潔な指示にし、さらにこれを板書しておくことで行動に見通しが立 ち活動しやすくなる。スモールステップにすることで、守るべきルールや、するべき課題 が明確になる。そればかりか、褒める機会が増えるため、学習や学校生活に対する意欲が 増す。. LD児童に限らず、発達障害児童の支援は、すべて児童理解から始まる。対象児童とよ り良い関係を築き、児童と互いの思いを交換しあえるような環境をつくることが重要であ る。そのような児童理解に基づき、対象児童の成長を見通し、対象児童が苦手を克服し、 長所は伸ばしていけるような関わりをもつことが大事である。. (2)ADHD児童に対する支援 ADHD児童への支援では、動機づけを行うことが重要である。ADHD児童は注意を持 続させることが困難である。そのため、課題をスモールステップにして、課題を達成すれ ば即時にご褒美を与え、外発的に行動を動機づけるようにしていかなけれぱならない。. ADHD児童は課題達成に対する報酬の遅延を嫌う。また、後からもらえる大きな報酬より も、すぐにもらえる小さな報酬を好む。これらのことから、ADHD児童の行動に対しては、. 即時一性のある対応が必要である。ADHD児童への動機づけには、トークンエコノミー法が 有効である。トークンエコノミー法とは、「子どもが適切な望ましい行動をした時に、強化 価値を有するトークンを与えることで、その行動を強化・増大させるための方法」13)であ. る。トークンとは、代用貨幣を意味し、しばしばコインやシールが用いられる。コインや シール自体に行動を強化する刺激としての機能はない。したがって、コインやシールをト. ークンとして用いる場合、バックアップ強化子として、遊び活動や本人の好きなものを用 意し、トークン何枚かと交換できるようにする必要がある。. トークンエコノミー法はただ単に、課題達成に対する報酬を与えるだけではなく、望ま しい行動を強化することにもねらいがある。したがって、トークンを与える対象行動は、. 個別の教育支援計画に基づいて設定することが望ましい。また、ADHD児童は視覚認識に 頼る部分が大きいので、トークンの獲得状況を表や箱などで視覚的に分かるような工夫を すると良い。そして、どのような行動や条件に対し、どのような強化子が与えられるのか、. 強化の随伴性がわかる契約書などを用いる。システムを契約化することで、曖昧さを避け た一貫性のある指導を行うことが出来る。. ADHD児童への基本的な関わり方として、「××してはいけません」や「××してはダ メ」というような禁止の声がけはせず、rOOしましょう」というような声がけをすること を心掛けなくてはならない。これは、望ましい行動を強化して、問題のある行動は消去す るという基本的な考え方に基づく。問題行動に対して注意を向けさせるのではなく、守ら なければならないルールや望ましい行動に注意を向けさせなければならない。そのため、. ADHD児童が問題のある行動をとったときは、徹底してルールを繰り返して言ったり、望 21.

(22) ましい行動をするようにうながしたりする。長く説明しても、ADHD児童は注意を持続で きないので、指導は短く簡潔に行わなければならない。その際、守るべきルールや望まし い姿を掲示しておき、常時、視覚で確認できるようにしておくと良い。さらに、問題行動 への対応として、遊びの禁止や別室指導などの教育的なペナルティーを用意することも必 要である。ペナルティーに関しても、トークンの場合と同様に事前に契約をし、システム を一貫しておかなければならない。. ADHDの不注意性・衝動性・多動性への対応として、見通しをもたせた指導を行う必要 がある。学習場面では、r何分間がんばろう」r何間がんばろう」という具体的な声がけで、. 活動に見通しをもたせ、達成した際は賞賛やトークンを与える。また、1時間の学習や1 目の学校生活のスケジュール表を用いることで、活動全体の見通しを持たせることができ る。スケジュール表で、スケジュール内の課題に対する結果を確認できるようにすること で、児童自身が自分の活動を振り返り、評価・改善することに活用できる。. 発達障害児童には教員・保護者が連携することが重要であるが、関わる大人の全員が一. 貫した対応の仕方をすることが、特にADHD児童への支援においては必要である。ADHD 児童は、いつもとは違う評価の仕方をされることによって、それまで積み上げてきたルー ルや慣習を崩してしまう危険性がある。したがって、支援方法に関しての情報を関わる大 人が共有しておかなければならない。. (3)高機能自閉症・アスペルカー症候群に対する支援 高機能自閉症・アスペルカー症候群児童は限定的、反復的、常同的な行動様式をとる。. そのため、学習や生活の様式がパタ]ン化されていると生活しやすい。例えば、朝学校に 来た際の準備(鞄の中身を引き出しに入れる→鞄をロッカーに入れる)や、プリント学習を. 行うとき(何間目までやる→先生に見せて○をつけてもらう→全間正解する→次の何間を 解く)の手順は固定化した方が取り組みやすい。さらに、高機能自閉症・アスペルカー症候. 群児童は目に見えないものを理解することが困難であるので、視覚的に確認できるような 工夫をしてやると良い。しかしながら、社会性を身に付けさせるためには、限定的、反復 的、常同的な行動様式や物事に対する固執性は少しずつ打開してやらなければならない。. 常に同じパターンをこなさせるだけでなく、時に変化をつけて対応する力を身に付けさせ なければならない。. また、興味が限定されているために、興味のあるもの意外には取り組まないことがある。. 授業でも興味のない教科には取り組まない可能性がある。そこで、授業の導入場面に対象 児童の興味のあるものを用いたり、教材に対象児童の好きなものを取り入れたりといった 工夫が必要である。外発的に動機づけることで、興味や関心の幅を少しずつ広げ、対象児 童の可能性を妬いてやらなければならない。 コミュニケーション能力に困難のある高機能自閉症・アスペルカー症候群児童にとって、. 22.

(23) 相手の感情を理解するトレーニングは社会性を身に付ける上で必要不可欠である。相手の 感情を理解するトレーニングでは、ソーシャルスキルトレーニングが有効である。ソーシ ャルスキルトレーニングについては既述したが、ここでは、高機能自閉症・アスペルカー 症候群児童の特性に応じたソーシャルスキルトレーニングの在り方を述べる。高機能自閉 症・アスペルカー症候群児童が他者とコミュニケーションをとる上で特に困難の原因とな っているのが、目に見えないものを理解することが困難、他者の気持ちに共感できないと いう二つの特性である。したがって、これら二つの特性に対応したソーシャルスキルトレ ーニングを行う必要がある。目に見えないものを理解するのが困難なため、言って聞かせ ることができない。コミュニケーションの工程を文字や絵で表してやることで、理解を促 進させることができる。例えば、相手の気持ちを表情から読み取る訓練には、異なる表情 のイラストを用い、表情に合った感情を考えさせる。また、他者との気持ちの相違を理解 させる訓練では、自分が良かれと思ってとった行為が相手にどのような心理的影響を与え、. どのような結果をもたらしているかを図式化する。悪い結果にならないためにはどのよう. な振る舞いをすればよいのかを図を対応させながら考えさせる。これらの訓練は想像力を 鍛えることにもつながる。他者の気持ちのような目に見えないものを理解させるには、ロ ールプレイが有効である。ロールプレイによって、他者と同じ体験を実際に経験させるこ とで、他者心理を理解させ、他者に共感させることができる。ロールプレイは他の支援に も応用できる。校外学習や遠足は、高機能自閉症・アスペルカー症候群児童にとって見通 しの立たない不安な活動である。そこで、ロールプレイで実際に予行演習し、成功体験を 積むことで、不安を解消することが出来る。他者とのコミュニケーションもこれと同じで ある。ソーシャルストーリーを用い、様々な現実場面を経験させることが重要である。様々. な場面を擬似的に経験させることで、見えなかったものが見えるようになり、コミュニケ ーションや行動に見通しを立てられるようになる。. これらの支援を行うための第一歩は対象児童と信頼関係を築くことである。高機能自閉 症・アスペルカー症候群児童は物事に対するこだわりが強いのと同様に、人に対するこだ わりも強く、好き嫌いがはっきりしている。つまり、対象児童が教師のことを嫌いになっ てしまったら、支援を行っていくことが困難になる。しかし、対象児童と信頼関係を築き、. 教師が、児童からみて興味深く尊敬できる存在に柾ることで、支援の効果を高めることが できる。そのためには、まず、対象児童のことをすべて受け入れなければならない。対象 児童のことは否定せず、話は最後までしっかりと聞く。対象児童の価値観は大切にしなが ら支援を進め、決して価値の押しつけにはならないようにしなければならない。こうした 配慮をもって関わり合うことで、対象児童に安心感を与えることができる。高機能自閉症・. アスペルカー症候群児童への支援に限らず、すべての支援の一歩目は教師と児童の信頼関 係である。決して、その一歩日の踏み出し方を間違えてはならない。. 23.

(24) 【後注】 柱1). 「個別の指導計画」とは、特定の個人のために設定された、長期目標・短期目標. の達成のために、「指導目標と指導内容・方法などが個別化され、具体化された日々 の指導に直接関係する計画」)である。目標の設定にあたっては、文部科学省「今後 の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(平成15年1月)に「障害のある児童. 生徒の一人一人の二一ズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくとい う考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な 教育的支援を行うこと」を目的として示された、咽別の教育支援計画」をガイドラ インとする。. 【引用文献・資料】. 1)文部科学省「主な発達障害の定義について」2007年3月 〈h枇:〃wwwmext.o.’ノa menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm〉 2). 同. 3). 同. 4). 目本発達障害学会『発達障害基本用語辞典』金子書房,2008年,27・28頁. 5). 小島道生・宇野宏幸・井沢信三編『発達障害の子がいるクラスの学級経営の工夫』明. 治図書,2008年3月,15頁 6). 同書,16−17頁. 7). 文部科学省「小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害), 高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」2004. 年1月,第3部教員用2 8). 長澤正樹「個別の教育支援計画」(新潟大学 長澤研究室 発達障害・特別支援教育関 係の資料)〈htt:〃wwwed.nii ata・u.ac.’ノーna asawa/IESR曲. 9)長澤正樹「発達障害を対象としたソーシャルスキルトレーニングと親支援プログラム」 (新潟大学 長澤研究室 発達障害・特別支援教育関係の資料) くhtt:〃wwwed.nii ata−u.ac.I/∼na&sawa/2008SSTPT−d分. 10)小島ら,前掲書,65頁 11)植村里香・岩坂英巳・宮崎瑠璃子「友達とのかかわりが苦手な子どもに対するソーシ ャルスキルトレーニング(SST)の試み一奈良教育大学特別支援教育研究センターで の実践より一」『奈良教育大学研究実践総合センター紀要』第18巻,2009年3月,. 215頁 ユ2)小島ら,前掲書,117頁. 24.

(25) 13)菅野敦・宇野宏幸・橋本創一・小島道生編『特別支援教育における教育実践の方法』. ナガニシヤ出版,2006年8月,123頁 【参考文献・資料】 1. 小島道生・宇野宏幸・井澤信三編『発達障害の子がいるクラスの学級経営の工夫』明. 治図書,2008年3月 菅野敦・宇野宏幸・橋本創一・小島道生編『特別支援教育における教育実践の方法』. ナガニシヤ出版,2006年8月 長澤正樹「特別な支援を要する子どもの理解と支援」(新潟大学長澤研究室 発達障害一. 特別支援教育関係の資料)〈htt〃wwwed m1ata・u acノーna asawa/SEN2008曲 4. 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議『今後の特別支援教育の在り方に ついて(最終報告)』2003年. 5. 文部科学省『特別支援教育を推進する制度の在り方について(答申)』2005年12月. 6. 文部科学省『特別支援教育の推進について(通知)』2007年. 25.

(26) 第2章 ユニバーサルデザインの視点からの 支援の必要性.

(27) 第1章では、発達障害の特性に応じた支援を学級経営において行っていく必要性に述べ た。しかし、発達障害児童に対して特別な支援を行っていくことで、他の児童が不満を溜 めル場合が少なくない。そこで、本章では、発達障害児童も含め、すべての児童が学級に 対し満足し、学級を居場所と感じられるような学級経営の在り方について考察する。. 11学級をすべての児童が安心できる場所と一するために 平成4年、文部省学校不適応対策調査研究協力者会議報告『登校拒否(不登校)問題につ. いて一一児童生徒の「心の居場所」づくりを日指して一』において、学校が児童生徒の 「心の居場所」としての役割を担うことの必要性が述べられた。そこで、本項では、教育. の機会均等を保障するために、学級をすべての児童にとっての居場所として機能させるた めの方略について考察していくこととする。 居場所には、「いるところ、いどころ」1)という空間的な意味を指して用いられる場合と、. 「心の居場所」と表現されるように精神的な意味を指して用いられる場合の2つの側面が ある。「心の居場所」とは、「自己の存在を実感できる精神的に安心していることのできる. 場所」2)である。児童に「精神的な安心」を与えられる学級にするためには、学級が物理 的に安心できる空間であることが前提となる。つまり、学級を児童の居場所とするために、. 居場所を空間的な側面と精神的な側面の両面からとらえ、居場所づくりを行っていく必要 がある。. まず、教室の空間的な側面から居場所づくりを考えたい。教室は児童にとって、学習を 行う「学びの空間」であり、休み時間や放課後の時間を過ごす「遊びの空間」でもあり、. また、休み時間や給食の時間を「休息の空間」として過ごす場所でもある。このような機 能を兼ね備えた教室において、児童は学校での生活のほとんどを過ごす。その教室が児童 にとって空間的に居心地の良い場所でなければ、教室が児童にとって「精神的な安心」を 得られる場所にはなり得ない。教室の空間を構成する要素は、掲示物や机の配置などの物 質的要素と、学級の仲間や担任教師などの人的要素に分けることができる。したがって、. 児童に、教室における物質的関わりと人的な関わりの中で居心地の良さを実感させられる 空間づくりを行う必要がある。 橋本ら(2007)は「教室の空間計画と心理評価に関する考察」3)において小学校・中学校・. 高等学校の児童生徒を対象にして、教室空間の心理的評価について、教室の物質的な影響 からなる「広さ感」「音・視環境」「寒暑感」の3因子を質問項目とし調査を行った。この 教室空間の3因子の中で、「広さ感」「寒暑感」は、学校の教室空間計画や立地条件による. 制約があり、通常学級において担任教師が工夫し空間づくりを行うことが難しいと考えら れる。したがって、通常学級において担任教師が空間づくりを行う際は、教室の「音・視 環境」に配慮して空間づくりを行う必要がある。では、担任教師が教室で配慮すべき「音・. 27.

(28) 視環境」について考えていきたい。教室における「音・視環境」は、「見えやすさ・見やす さ」「聞こえやすさ・聞きやすさ」「教室の明るさ」などを挙げることができる。これらを、. 児童にとってより良くしていくための担任教師の具体的な取り組みを挙げる。「見やすさ・. 見えやすさ」を向上させるためには座席の配置や掲示物、板書の工夫が必要である。座席 は、教師・児童対面型やコの字型などのように教師や黒板に対する児童の座席位置によっ て机の角度を調整したり、グループ毎にシマをつくるように授業や活動内容によって座席 の配置の仕方を変えたりする必要がある。掲示物や板書は、字の大きさや色の使い方を工 夫することで、児童にとって視覚認識が容易なものにする。とくに板書は、色チョークの 使い方をパターン化することで、児童が教師の意図を把握し安心して学習に取り組むこと ができる。r聞こえやすさ・聞きやすさ」もr見やすさ・見えやすさ」と同様に座席の配置 の工夫で児童にとってより良い空間にすることができる。これらの工夫を行うときは、特 に視覚や聴覚に困難のあるもの、また発達障害などにより学習上の困難があるものに対す る十分な配慮が必要である。. 豊田ら(2000)は、『小学校高学年児童の「学校における居場所」の研究皿一自分の教. 室の居心地と学校適応感一』において、小学校高学年児童を対象に、教室の居心地と学 校適応感の相関を調査した。学校適応感に関する質問における結果をもとに、教室の居心 地が良いと感じている群と良くないと感じている群に分け、それぞれに「明るく楽しい友 達がいる」「ほっとする友達がいる」などの8項目の質問をし、教室の居心地が良いと感 じている群と良くないと感じている群の間に有意な差がみられるかを調べた。その結果、. 教室の居心地が良いと感じている群の回答は、良くないと感じている群の回答に比べ教室 の人間関係を肯定的に捉えているものが多く、「自分の教室の居心地は、そこで展開してい る人間関係や活動が大きく影響している」4)ことが明らかとなった。つまり、学級を児童. の居場所とするためには、教室空間の人間関係をより良くするための取り組みが必要であ る。学級において、児童同士のよりよい人間関係をつくっていくためには「①自分自身に 対する誇りと他者に関する寛容を育てる」「②自分を価値ある存在として肯定的に認め、自 分に自信をもつ」「③他人との関わりの中で、自分自身の人権を犯され(ママ)たくないように、. 他人の人権も犯さない(ママ)」5)ことの3点を意識化させることが必要である。①、②は「自. 己肯定感」また、③は「侵害感」と言い換えることもできよう。そして、それらは、学級 における「児童・生徒同士の人間関係づくりを促す教師の働きかけ」、「日常の学習活動」 6)の中で意識化されていくものである。「日常の学習」に、構成的グループエンカウンター を取り入れることで、「①自分自身に対する誇りと他者に関する寛容を育てる」「②自分を 価値ある存在として肯定的に認め、自分に自信をもつ」「③他人との関わりの中で、自分自 身の人権を犯され(ママ)たくないように、他人の人権も犯さない(ママ)」ことの3点を意識化さ. せることができる。嶋田(2008)は、「児童の白已肯定感を高める教育相談の在り方一構成 的グループエンカウンターの実践を通して. 28. 」7)において、小学校3年生・5年生の児童.

(29) を対象に構成的グループエンカウンターを実施し、構成的グループエンカウンターによる 「自己肯定感」の高まりを検討した。その結果、構成的グループエンカウンターを実施し た実施群は統制群よりも、「自己肯定感」が有意に上昇した。また、佐々木・菅原(2009) は、「小学校における学校心理学的援助の方法と構成的グループエンカウンタ](SGE)の有 効性」8)において、構成的グループエンカウンターが児童の「親和傾向」や「友達関係」、. 「被侵害感」などにもたらす効果について検証するため、構成的グループエンカウンター を実施する事前と事後の質問紙調査の結果を比較した。その結果、「親和傾向」、「友達関係」. 項目の得点は事前よりも事後の方が有意に上昇し、「被侵害感」は事前よりも事後の方が得 点に減少がみられた。これらの結果により、「日常の学習活動」において構成的グループエ. ンカウンターを実施することによって、児童の「①自分自身に対する誇りと他者に関する 寛容を育てる」「②自分を価値ある存在として肯定的に認め、自分に自信をもつ」『③他人 との関わりの中で、自分自身の人権を犯され(ママ)たくないように、他人の人権も犯さない(マ. マ)」ことの3点の意識化をうながし、学級に児童同士のより良い人間関係をつくることが できる。. 表1構成的グループエンカウンターが自己肯定感にもたらす効果(出典:鳴田(2008)より). 4. 4・. き、. 魯. 変婁 他. 変2 偉1 量。. 産1・ o.. ぺ. 刈. 実施湊1. 鯛鋒. 4. 葛年塗. 5寧嚢. 表2援構成的グループエンカウンターの効果(出典:佐々木・菅原(2009)より). 串。. 29. エく01 刊咄韓pく:OO呈.

(30) 表2b 各項目の平均点推移. 学級が「『集団』であるためには、成員数の多少にかかわらず」、学級の児童同士に「相 互依存的な関係が求められ、目標もしくは課題が共有されていなければならない」9)。つ まり、「児童・生徒同士の人間関係づくりを促す教師の働きかけ」によって、児童同士が相. 互依存する必要性のある目標や課題、ルール、規範を設定する必要がある。目標・課題達 成のために、児童間の相互依存関係が強化され、学級がインフォーマルな集団ではなく、. 相互依存集団として機能する。児童同士の相互依存関係の中で、より良い人間関係が形成 され、学級がより良い人間関係のある居心地の良い空間となる。 次に、居場所の精神的側面から、学級における児童の居場所づくりを述べる。則定(2007) は心理的居場所感尺度(表3)を「本来感」「殺害■」感」「被受容感」「安心感」10)の4因子で構. 成している。つまり、学級を「本来感」「殺害■1感」「被受容感」「安心感」の感じられる場所. にすることで、学級が児童の「心の居場所」となり得る。教室で得られる心理的居場所感 とは、教室の中での物や人との関わりの結果や過程からもたらされるものである。つまり、. 学級経営において、教室の空間を構成する物質的要素と人的要素をデザインする過程や結 果、児童が感じ取るものである。すなわち、学級経営において、心理的居場所を構成する. 4因子を向上させるための具体的な取り組みは、教室の空間づくりと重ねることで解決で 30.

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