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発達障害児童への支援を中心にした 学級経営の集団力学的展望

第3章 発達障害児童への支援を中心にした

 これまでは、学級をすべての児童の居場所とするための、環境づくり、授業づくりにつ いて論じてきた。しかし、これらの支援は学級が支え合う集団として機能していなけれぱ なし得ない。本章では集団力学理論を学級の集団づくりに援用し、学級の人間関係および 集団としての機能を高めるための方略について論じる。その際、発達障害児童への支援が 学級の集団づくりにどのような影響を及ぼすのかを考察する。

1.学級経営における集団力学理論の援用

 集団力学理論とは、集団のカ動的一性質や集団の変化を観察し、その理論化と実践を行う 方法として1939年レヴィンによって確立された概念で、集団・社会的人間関係の中の満 足感、情緒の安定感、価値志向性があれば、集団の雰囲気はよくなり生産性が高まるとい う理論である。集団・社会的人間関係の中の満足感、情緒の安定感、価値志向性を高める ためには、集団の成員が自由に相互作用し、成員同士が相互に依存すること、そして、成 員が成員として集団の中に留まろうとする凝集性の高い集団であることが必要である。集 団凝集性を高めるためには、集団内に個人の役割があり、その集団が社会的に影響力をも っていなければならない。

 そもそも、集団とは何であろうか。人々が集まっているだけでは、集団ということはで きない。人々の集まりが集団であるためにはr①人々の間に相互依存関係があり、相互作 用が可能であること」「②人々の間に共通の目標、あるいは規範が共有されていること」1)

の2つの条件が必要である。相互依存関係とは、r集団の中の1人の行動が、他の成員の 行動に直接影響したり、集団全体の成果を左右したりする場合のこと」2)である。規範と は「集団内で適切とされる(求められる)行動や態度の(明示されたまたは暗黙の)規準」「集 団成員(メンバー)が行う具体的行為が望ましいのか否かについて判断する際の『評価』の 規準」「集団成員間の相互作用を統制するもの」喋団がその目標を達成し、集団として自 らを維持することを助けるもの」3)である。これらの条件を踏まえると、集団とは、何ら かの目標や規範を共有し、「互いに影響しあい依存しあう人々、つまり協力したり互いの期 待に応えながら行動する人々の集まり」りである。

 では、学級は集団といえるだろうか。学級は自然発生的に構成された集団ではない。つ まり、児童はどの学級に所属するのかを選択することができない。したがって、教師の意 図的な営みによって、学級の中に「①人々の間に相互依存関係があり、相互作用が可能で あること」「②人々の間に共通の目標、あるいは規範が共有されていること」の2つの条 件を満たさなければ、学級は集団として成立し得ない。学級を集団として成立させるため の教師の営みを学級経営という。ゆえに、学級経営とは「学級を構成する、教師と子ども、

子ども同士という2つの人間関係を基盤にしながら、担任教師が子どもとともに、学級の なかで、目標ならびにそれを実現するための規範・ルールを構築し共有していく過程」5)

と定義することができる。つまり、学級が集団であるためには、学級経営によって児童同 士が相互作用しながら相互依存関係になるような共通の目標や規範が設定する必要がある。

 それでは、どのように集団目標や集団規範を設定すれば良いのかについて考える。

 まず、集団日標について論じる。集団目標とは「成員たちが努力を結集して実現しよう と意図する望ましい状態」6)である。集団目標を達成するためには、すべての成員の参加 と成員同士の協力が必要である。したがって、集団目標の設定にあたっては、成員の合意 を得て行うことが妥当である。また、目標は達成すれば満足できるくらいの難しいもので、

達成できないほど難しくない「挑戦的で少しばかり節度があり、しかも難度が高すぎ」7)

ないものを選定しなければならない。つまり、学級経営においては、学級の児童全員が相 互に作用し相互依存関係で取り組まなければならない「挑戦的で少しばかり節度があり、

しかも難度が高すぎ」ない集団員標を、児童同士が児童同士の相互作用の過程で自己決定 する場を教師が意図的に設けなければならない。そして、学級の児童が集団目標をすべて の活動の拠り所とするように意識化させ、児童に集団目標を定着させることで、集団が活 性化され、学級がより良い集団となる。

 そして、集団規範は、そのような集団目標を達成するため行動判断基準としての役割を 果たす。集団規範が学級内で共有されるためには、児童にとって意味のある理由づけがな

されなけれぱならない。集団規範を児童の納得できる理由で共有させていくためには、「規 範・ルールに従った行動をとった場合に生じるであろうプラスの側面(報酬)」と「規範・

ルールから逸脱した行動をとった場合に生じるであろうマイナスの側面(コスト)」8)を児童 が考えられるよう促さなければならない。その際、集団規範が集団目標とともに存在し、

集団目標達成のためには集団規範が必要であることを児童に実感させることが重要である。

「規範・ルールを守ること自体を目的とするのではなく、『その規範・ルールは何のために あるのか』『その規範・ルールはなぜ存在するのか』」9)を意識させることで、児童にとっ て意味のある理由づけが可能になる。

 このように、集団目標と集団規範が設定されることで、その実行過程において、児童同 士が相互に作用し相互依存関係を形成する。つまり、自分の意思とは無関係に集められた 数名の児童の集まりである学級は、集団目標と集団規範を共有することによって、人間関 係が形成され集団となるのである。集団目標・集団規範を実行する過程において、学級内 の児童の役割が分化され、一人ひとりの児童が役割を取得していく。集団目標を達成する ことで、自己の殺害11や学級の人間関係に対する満足感が高まり、学級が凝集性の高い集団 として機能することになる。したがって、集団目標の設定から実行までの過程で教師がい かにリーダーシップを発揮し、児童を導いていくかが重要となる。

2.学級経営と発達障害児童への支援における教師のリーダーシップの重要性

 集団には、集団としての成功を特に強く望む成員が存在する。そのような成員の行動は、

他の成員の行動を集団目標達成のために導く。このように、集団の中で他の成員の行動を 導く働きをもった成員が集団のリーダーである。リーダーは集団の成員の集団としての成 功願望を高め、成員を集団目標へと向かわせるために動機づけを行う役割を担う。成員を 動機づけるための、重要なリーダーの働きは集団目標の選定である。集団は、しばしば不 当に困難であったり、容易であったりする目標を選定することが珍しくない。不当に困難 であったり、容易であったりする目標では集団としての成功願望を高めることはできない。

「挑戦的で少しばかり節度があり、しかも難度が高すぎ」ない集団目標の達成が成員の報 酬刺激となり、集団の成功願望を強化する。したがって、リーダーは他の成員に対して、

前回の集団実績よりも高いr挑戦的で少しばかり節度があり、しかも難度が高すぎ」ない 集団目標を選定するよう働きかけなければならない。その際の教師の働きかけでは、「①目 標を達成すれば満足が得られること」と「②目標に取り組む機が熟していること」10〕を実 感させる必要がある。①と②を実感させる具体的な取り組みは次の通りである(表1)11〕。

表1集団成功願望を強化するリーダーのはたらきかけ

○集団の目標、手続き、作業計画、資源、を準備手配して集団が好成績をあげるように奨励することで、

 成員の集団成功願望を増大させること

○成員にとって理不尽に困難または容易な目標ではなく、現実的で挑発的な目標を選定すること

○成員に、その集団の成員であることが、自分たちにいかに有益であったかを指摘して、各人が集団を魅  力的な実体であると見なし、そこに留まりたいと望むようにすること

○集団のまとまり、チーム努力としての集団成果、集団全員が集団の要求に奉仕していること、を強調す  ること

○どうすれば改善できるか、どうすれば職務の退屈な部分をもっと面白くできるか、という討議を会合で  するよう奨励すること

○成員たちに集団の運命に責任を感じさせ、そのことから集団が自分の努力に依存していることをかんじ  とり、また、自分の貢献の質を高めるよう集団が望んでいることを感じとるための支援をすること

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