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̲ー城陽郵便局再任拒否違法確認等請求事件

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(1)

は じ め に

̲ー城陽郵便局再任拒否違法確認等請求事件

︵京都地方裁判所平成九年︿行ウ﹀第二二号︶

2 5

%削減と独立行政法人化が十分な科学的な評価も

期限付任用・短時間勤務国家公務員の任用反復更新後の 再任用拒否に対する法的救済試論

四九

を契機として

19  2 ‑165 (香法'99)

(2)

いて確認し要約しておくこととする︒

本事例における勤務︵労働︶関係の実情と再任用拒否の理由

改革・民主化を前提にしつつ︑

(2 ) 

その公務員人事・労働政策として検討され立法化される必要がある︒筆者は︑これま

(3 ) 

でにも限られた範囲ではあるが︑この問題につき一定の検討を加えてきた︒しかし根本的な解決が日程に上がってこ

ない中で︑依然として無権利状態の問題が継続していることから絶えず改善を訴える必要があると考えていた︒

たまたま︑副題に示したように︑城陽郵便局再任拒否違法確認等請求事件︵京都地方裁判所平成九年︿行ウ﹀第二

二号︶において再任用を拒否された労働者側訴訟代理人の弁護士から﹁意見書﹂を求められる機会があった︒そこで︑

これを契機に解釈論の範囲において現状改善を︑裁判所に採用してもらいやすい形で追求してみようと試みたのが本

稿である︒以下にみるように︑本事例の事実関係から判断すると︑当該職員は﹁長期にわたり継続任用されてきた﹂

﹁恒常的・基幹業務に従事する﹂﹁非正規の﹂﹁期限付き﹂﹁非常勤︵正規職員に比して勤務時間の短い︶﹂国家公務員

︵職員︶と位置づけられるべきものと考えている︒この位置づけを前提として︑ややもすると立法論的解釈とも評さ

れることのある﹁民事的労働関係﹂説の採用を留保しつつ︑かかる﹁非正規﹂職員の勤務関係を正規一般職国家公務

討し

員と同じく﹁公法的勤務関係﹂の下にあると位置づけている判例動向を踏まえて︑再任用拒否の適法性︵適否︶を検

かつ任用継続を可能とする法的救済のあり方を論じてみることとした︒

ここでは訴訟資料から︑当該職員の勤務︵労働︶関係の実情および再任用拒否︵雇い止め︶の経過とその理由につ

五〇

19‑2‑166 (香法'99)

(3)

本事例の原告奥田氏︵以下当該職員と引用する︶

六年半継続して任命権者ら国・城陽郵便局に勤務していた︒職務内容は郵便内務︵窓口︑特殊業務以外の差し立て︑

配達区分電話の応対等︶であり︑勤務時間は三時間から七時間の間で一

0

回変動しながら継続して勤務していた︒

事実関係に照らせば︑当該職員は︑①国家公務員法の定める正規の競争・選考試験を経ないで採用された﹁非正規﹂

職員であり︑②約六年半という相当長期にわたり︵労働基準法一四条所定の有期雇用契約限度の一年を超えている︶︑

③恒常的かつ基幹的な業務に︵当該業務が補助的あるいは代替可能なものであれ郵便業務において不可欠かつ継続的

という意味である︶︑④一勤務日については三時間から七時間という正規職員よりも短時間の勤務に︵いわゆるパート

タイム勤務である︶︑従事してきた︒これらの事実から判断すると公務︵郵便事業︶において﹁恒常的に設ける必要

のある業務﹂に従事する﹁非常勤︵短時間勤務︶﹂

は︑平成二年︱一月から再任用を拒否された平成九年五月まで約

の職員︵労働者︶であることは疑問の余地のない事実である︒な

お⑤任命権者らは予定任用期間を一ヶ月ないし三ヶ月とする﹁日々雇用﹂形態の期限付き任用の職員︵ゆうメイト︶

として扱っている︒︵ただし︑最初の任用︵採用︶にあたって当該勤務関係が期限付きのものとして当事者間で設定さ

れたものであったのか否かは当該職員と任命権者らに見解・認識の相違がある︒任命権者らによる期限の明示の点に 関しては︑本件各書証を見る限り﹁正規﹂以外は期限付きであるという公務員制度原則を知らない﹁一般﹂市民に対 する説明としては誤解を招くきわめて不適切なやり方であったように推測される︒また任命権者ら答弁書・反論

書等によっても本事例任命権者等・国および城陽郵便局長︵以下任命権者らと引用する︶

任用更新手続きを毎回きちんと採っていたとはいえないと推測される︒︶

( 1

)  

本事例における当該職員の勤務︵労働︶の状況

は疑問の余地のない明確な

19‑2‑167 (香法'99)

(4)

不当労働行為は成立しないと反論している︒ あるとしても︑

その雇い止めは信義則上許されない︒

張し

てい

る︒

任命権者らは︑平成九年四月二八日当該職員ほか三名に文書により﹁雇用期間が満了する同年五月三一日限りで︑

再採用しない﹂旨通知した︒任命権者らは期間満了による任用関係の終了であること︑また再任用拒否の理由につい

ては正規職員の増員配置および作業変更の措置によって当該職員ら﹁非常勤﹂職員配置の必要がなくなったことを主

これに対し︑当該職員は︑以下のように主張している︒①当該職員ら﹁ゆうメイト﹂の労働実態からして︑当該職

員と任命権者ら国との間は私法上の雇用関係とみるべきである︒従って︑当該職員の雇い止めに対しては解雇法理が

適用されるべきである︒②仮に当該職員が一般職の国家公務員であるとしても︑任期の定めがない非常勤職員とみる

べきである︒従って︑当該職員の雇い止めは免職処分によるべきである︒③仮に当該職員が任期一日の非常勤職員で

あるとしても︑

( 2

)  

その雇い止めは不当労働行為に該当し無効である︒④また︑仮に当該職員が任期一日の非常勤職員で

また任命権者らは︑前述のように︑再任用の必要がなくなったので期間満了により任用を終了させたに過ぎない︑ 再任用拒否︵雇い止め︶の経過とその理由

19‑2 ‑168 (香法'99)

(5)

﹁先例﹂として︑この種の﹁非正規﹂公務員の期限付き任用の更新拒否︵雇い止め︶事件の諸判決によって引用され

てきたのは東郷小学校事件最高裁第三小法廷判決︵昭和︱︱一八年四月二日

︿職員の任用を無期限のものとするのが法の建前であり︑期限付き任用が許されるかどうかについて法律︵地方公務

員法

務専念の保障︶

される﹀としていた︒いわばこの二つを要件として﹁明文の根拠のない﹂期限付き任用の法的適否を判断・検討した

ものである︒しかしこれはあくまで地方公務員法制に関する解釈であった︒

近時ようやく﹁非正規﹂国家公務員に関する最高裁レベルの判断が示された︒大阪大学図書館事件最高裁判決︵平 (

1 )

 

民集一七巻二号︶である︒同判決の骨子は︑

期限付任用の再任用︵再雇用︶拒否に関する従来の最高裁判例において提示された 法的論点からみた判例動向の問題点および当面なされるべき法解釈の基本方向について

ここでは︑先例的最高裁判決の内容から論点を導き出すとともに︑判例動向の問題点を指摘することを試みる︒

た問題点をより明確に浮かびあがらせるために民間労働関係における短期労働契約の雇い止めに関する判例動向を紹

介し︑対比させる手法を取った︒その上で当面において可能かつ妥当な法解釈を試みたものである︒

二つの先例的最高裁判決と提示された法的論点について

には別段の規定はないが⁝⁝①それを必要とする特段の事情が存し︑且つ︑②それが右︵職員の身分保障・職

の趣旨に反しない場合においては︑特に法律にこれを認める旨の明文がなくても︑期限付き任用は許

19‑2 ‑169 (香法'99)

(6)

① 

と判断が不可欠であろうと考える︒ があり国家公務員法本則各条に明文規定のない﹁非常勤職員︵日々麗用職員︶﹂という形態の期限付き任用制度を設けること自体が適法であるか否かについてはそれとしては特に検討することなしに︑①事務量が正規任用の常勤職員のみでは処理できずまた正規職員定員の増加が実際上困難であること︑②特別の習熟︑知識︑技能または経験を必要としない代替的事務であって﹁非正規﹂職員によっても適正に処理できる場合であること︑③当該職員に任期付きであることを明示していること︑ 判例タイムズ八七一号︶

との各要件を満たしていれば︑ である︒同最高裁判決は︑人事院規則にのみ規定

四年六ヶ月継続勤務したような場合であっても職員の任

用を原則として無期限とした国家公務員法の趣旨に反しない︑と判示した︒東郷小学校事件最高裁判決と対比するな

らば︑この①をもって﹁それを必要とする特段の事情﹂に該当する︑②をもって﹁公務の民主的かつ能率的運営﹂を

害しない︑そして③をもって﹁職員の身分保障﹂の趣旨に反しない︑と判断したものではないかと推測することがで

きる︒したがって大阪大学図書館事件最高裁判決は基本的には前出東郷小学校事件最高裁第三小法廷判決と同様の判

断枠組みを提ホしたものと考えることできる︒

要するに︑これら二つの最高裁判決を考え合せて整理するならば︑次の三点︵以下①︑②および③︶が﹁期限付き

任用﹂が容認されるための法的要件とされていると判断できるのであって︑本事例の判断に当たってもこの点の検討

まず第一に︑国家公務員法本則条文︵及び地方公務員法本条︶には﹁臨時的任用﹂︵国家公務員法六

0

条・

地方

公務員法二二条︶以外には︑明文のあるいは明示的には﹁期限付き任用﹂を定める規定がないことである︒

治行政﹂の原則からすれば立法府はこの二つの期限付任用以外のものを想定していないと考えるのが相当である︒例 成六年七月一四日最高裁第一小法廷判決 五四

つま

り﹁

19‑2 ‑170 (香法'99)

(7)

ものとせざるをえないはずだからである︒ ないとされているからである︒だとすれば︑

五 五

外を置くのであればそれ相応の理由の存在と適切な運用手続きがなければならないのは当然の理である︒したがって

その妥当性を確保するために︑﹁それを必要とする特段の事情﹂が存在しなければならないこと︵なお︑

改正で現行法上︑定年退職者の﹁再任用﹂︵国家公務員法八一条の四・地方公務員法二八条の四︶制度が期限付き任用

として﹁明文で﹂加わった︒︶︑そして前記①に加えて﹁職員の身分保障・職務専念の保障﹂ 一九九九年法

の趣旨に反する任用であ

ってはならないこと︑を最高裁も重視しているのであろう︒そして後者の要件はより具体的には次の②と③の要件に

区分できる︒すなわち︑第二に︑②職員の雇用・勤務条件の十分な保障がなされること︑

託に応えて民主的かつ能率的運営が制度的に保障されること︑

であ

る︒

および第三に︑③国民の付

なお︑ここでの①﹁特段の事情﹂が存在しかつ﹁②職員の身分保障・③職務専念の保障﹂が確保されているという 要件は︑他の法律または人事院規則で任用の特例を設けることの許されるのは国家公務員法附則一三条に定めるとこ ろの﹁その職務と責任において特殊性が存在する﹂場合に限られるという要件と実質において同義的なものと解され るべきと考える︒というのは︑同附則一三条自体が定めるように特例を設けるにあたっても職員の福祉および利益の 保護を前提とした公務の民主的かつ能率的な運営を保障すべきとした国家公務員法一条の精神に反することは許され

一部の判例は同付則一三条が依存することを主たる根拠としているが︑

国家公務員の期限付き任用が容認される法形式上の根拠を国家公務員法附則一三条に求めるか否かで実質的な要件は 異ならないはずである︒したがって当然ながら︑国家公務員法附則一三条の規定に依拠することを明確にしてさえい ればどんな特例や例外でも可能ということにはならないのであり︑実体的にはこれら三要件の充足が求められている

19‑2 ‑171 (香法'99)

(8)

( 3

)  

本件当該職員の場合と同様に︵国家・地方︶公務員法の定める競争・選考試験を経て任用されていないという意味

で﹁非正規﹂である職員については︑採用当初設定された

用期間あるいは任用予定期間の満了のみを理由に︑多くは何ら再任用できない理由も示されないまま︑

た相当長期にわたり継続勤務していた場合であっても︑当該﹁非正規﹂職員の意思に反して再任用︵再雇用︶しない

という事件が国︑地方公共団体を問わず多々発生している︒そして当該﹁非正規﹂職員の側からの地位確認や損害賠

しかし︑前出の二つの最高裁判決を含めて︑これらの訴えの認否の面から見れば﹁非正規﹂公務員にとっては厳し

い内容の判決が続いている︒裁判問題になり始めた昭和三

0

年代以降これらの訴訟において期限付き任用の﹁非正規﹂

職員側の職員地位確認請求が最終的に認容され︑あるいは期待権侵害等による損害賠償が確定したケースは見当たら

ない︒取消前の下級審で︑期限のない任用への実質的﹁転化﹂︑解雇予告手当支払い容認や期待権侵害による損害賠償

容認の事例が見られるに止まっている︒

判例動向のかかえる二つの大きな問題点

判例の全体的動向︵これら下級審や前述の最高裁判決を含めて︶

の二

つで

ある

償を求める訴えが提起されたケースも相当数に上っている︒

( 2

)  

その他下級審を含めた判例の全体的動向

からみた時︑最も問題とせざるをえない点は以下

1 0

年といっ ︵あるいは任用者側が設定されていたはずと主張する︶任

五六

19‑2‑172 (香法'99)

(9)

限付任用︵あるいは︑外部委託や派遣労働者︶ 面から言うならば︑このような評価・判定手法は

まず第一は︑多くの判決でも実質的には前述の三つの要件項目の有無とその程度を検討はしているものの︑

厳格な要件としては解釈適用されていないし不可欠なものというほどには重視されてきていないという点である︒

この点が︑まずは政府や当局の定員法運用や人員管理の不適切さの責任を問う﹁姿勢﹂が弱いか時には全くない点 に現れていると言わざるをえない︒事務量が常勤職員のみでは処理できずまた正規職員の増員が実際上困難であると

いうような事情さえあれば﹁容易に﹂特段の事情を認める傾向に顕著につながっている︑

五七

さほど

と評価できるのである︒

また相当数の裁判所が﹁特別の習熟︑知識︑技能または経験を必要としない業務﹂に限定しようと試みてきており︑

ひとつの傾向になっている︒しかしこの点に関しても︑安易な﹁非正規﹂職員の任用を限定する効果はない︒実際に

りあって担当している実情︑ 多くの公務職場で正規職員が担当している相当部分の事務・業務内容を﹁非正規﹂職員が大過なく︑正規職員と混じ

とりわけ長期に継続勤務している﹁非正規﹂職員は基幹的役割すら果たすにいたってい

ることからするならば︑﹁特別の習熟︑知識︑技能または経験を必要とする業務﹂はないといってもよく︑仮にあった

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその 区分は任命権者の判断︵裁鼠︶次第となりがちである︒これでは任用に特別の資格を必要とするごく少数の職務・業 務を除いてほとんど適切な限定にならないことは明らかである︒結果的には当該職員に任期付きであることを﹁明示 してさえいれば﹂職員の身分保障・職務専念の保障の趣旨に反しないと結論づけることと大差ないと言えよう︒別の

﹁能率的運営﹂という意味を公的な事務・業務が継続的に遂行可能

かという点にのみ矮小化する結果となるもので︑妥当なものではない︒

というのは︑労働能力の面から見れば同程度

の経験のある﹁非正規﹂職員が遂行できない職務はさほど多くはないのであるから︑

かかる判定基準ではせいぜい期

による代替者を﹁安定的に﹂確保できるか否か︑

ということしか問題

19~2~173 (香法'99)

(10)

裁判所は︑公法的︵勤務︶関係の下では 釈し︑評価すべきということにつながるはずである︒ むしろ公務員法の根幹的制度趣旨からすれば︑本来例外的なものであるべき期限付き任用が認められるための﹁特

段の事情﹂を判断するというのであるから︑任用を必要とする﹁事由﹂および﹁限度﹂の両面から厳格に検討される

べきもの︑少なくとも①業務そのものが一定期間で廃止あるいは終了する﹁非恒常的業務﹂であるか

にあっては一時的な量的拡大に対して緊急かつ臨時の対応が必要であるかのいずれかとするもの︑

いはずである︒これが政府・当局の任命権者としての民主的法治行政の担当者の責任であろう︒ でなければならな

そして同時に職員の身分保障・職務専念保障の趣旨からするならば︑短視野の人件費の削減を優先するのではなく

長期的視点での公務の民主的かつ能率的運営の確保を目的とするものでなければならないのであり︑

②恒常的業務

また職員の労働

権︵雇用︶保障ならびに労働基本権の重大かつ深刻な制約に対する補償的措置等を含めた職員の福祉および利益擁護

( 1 2 )  

の適切な保障措置としての身分保障と勤務︵労働︶条件保障を行うというのであるなら︑かかる観点からは厳格に解

第二の問題点は︑任用行為の法的性質の﹁行政法﹂解釈理論に関わる問題である︒﹁基幹的﹂﹁恒常的﹂業務に﹁長

期に﹂非正規職員を任用するなど仮に前記法的要件の充足に不十分さが存在するような場合であっても︑ほとんどの

︵再︶任用のような地位を設定する重要な行為は要式であるかまたは少なく

とも明示的になされなければならない﹁処分﹂であるとすることで︑期限付き任用の反復更新がなされても期限の定

めのない任用へと﹁転化﹂することもあるいは﹁期限の定めのないのと異ならない状態にある﹂ものと解することの

いずれをも否定している︒民間労働関係のように実質的には労使が雇用を継続する﹁黙示の合意﹂があったとして意 とはならないからである︒

五八

19‑2 ‑174 (香法'99)

(11)

するほうがより妥当であろう︶︒ 決方法を導かなくてはならないということである

五九

︵現に本事例の郵便局には実質一年以上継続勤務者 ︵問題が偶発的なものであれば︑不法行為に対する国家賠償で解決 不当を継続することになり適切ではないだろう︒ な

い︒

思解釈するという手法を採る余地を認めてこなかったので︑任用期間が満了して身分関係が当然に終了した後は︑任

命権者の再任用の﹁意思﹂すなわち﹁処分﹂が表明されていない以上再任用拒否を実質的に免職処分に準じる﹁処分﹂

としてその可否︵適法性︶

を争う余地はないとしてきた︒裁判所がこのような﹁形式﹂重視の行政法理論に固執して いることが﹁非正規任用﹂職員の再任用拒否問題の適切な解決の大きな障害となっていることを指摘しなければなら

第一の問題点について言えば︑﹁非正規﹂職員の任用制度の本来行うべきでない運用によって生じた職員の身分

保障・職務専念保障に欠ける任用は違法・不当なものになると言わざるをえない︒再任用を続けることは確かに違法・

しかし最大の問題は︑

こと

であ

り︑

かかる事態を引き起こした責任が誰にあり︑

その際に本事例限りで期限付任用職員の反復任用の問題が解消するのではないということを考慮して解 第二の問題点について言えば︑確かに民主的法治行政を維持するためには︑行政機関の意思表示は本来明確でなけ

ればならないのは当然である︒しかし本事例でもそうであるように︑期限付任用を反復継続して必要な労働力を確保 しようとするのが実際には任命権者の﹁内心の意思﹂であること

は数十人おり一

0

年以上になる者もいるという︶︑ その責任をどのように負い︑解消するかという

また﹁幸いなことに﹂現段階では本来の成績主義任用制度の根幹を

崩壊させるほど多くの﹁非正規﹂職員が任用されていないので例外として許容できない程ではないであろうことを考

19~2~175 (香法'99)

(12)

慮す

るな

らば

すでにかかる事情の下での職員への違法・不当な人権侵害︵身分保障・職務専念保障に欠ける任用︶

を排除する司法機関︵裁判所︶は︑実態を重視して妥当な解釈を行うべきであり︑また可能でもあると考える

結論﹂中﹁

( 3

)

補足﹂で示す私見も参照︶︒

非正規・期限付.非常勤の国家公務員に対応するのは︑﹁臨時﹂および﹁パートタイマー﹂労働者である︒これらの

︵解雇︶に関する判例動向は概ね次のようになっている︒

周知のように︑最高裁判所は民間企業の労働関係においてはニヶ月の短期労働契約の反復した当然更新の結果一年

を超える相当期間継続となっていた事例において︑①あたかも期間の定めのない契約と異ならない状態で存在してい

たと認め︑②雇い止めが実質的に解雇の意思表示にあたるとしていわゆる﹁解雇法理﹂の類推適用を認め単なる契約

期間満了による雇い止めは許されないこと︑③期間満了後においても従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関

︵東芝柳町工場事件最高裁第一小法廷判決昭和四九年七月二二日

旨日立メデイコ事件最高裁一小法廷判決昭和六一年︱二月四日

また︑﹁そもそも論﹂的に言えば︑民法上は﹁いつにても解約できる﹂︵原則として理由︑時期を問わない︶とされ

る期間の定めのない雇用︵労働︶契約︵いわゆる期間の定めのない正規従業員の労働契約︶

般原則的な解雇規制立法が存在しない下でも︑最高裁判所は﹁使用者の解約権の行使も︑

由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には︑権利の濫用として無効になる﹂︵日本食塩製造事件 係となること︑を認めている

労働

判例

四八

六号

︶︒

の解

除︵

解雇

につ

き一

それが客観的に合理的な理 民集二八巻二号︑同 労働者の雇い止め

(4

民間労働関係における短期労働契約の雇い止めと判例動向 点は後に﹁

︵ こ

六〇

19‑2 ‑176 (香法'99)

(13)

( 5

)  

小括

と ︱

︱ ︱

︱ 口

っ て

よ い

法令に明文のない社会通念上の相当理由を要件として求める判決を下していること︑ある意味では民法の明文を判例 によって修正し労働権保障という憲法上の原理を重視して労働関係解消の自由︵これも営業の自由という基本的人権

に社会的規制としての﹁限定﹂解釈を導入していることは十二分に留意しておく必要があ

一年間の有期労働契約の︑ 労働法律旬報八八五号︶

I ‑

/'¥ 

の扱いがあったとしても︑

と判示してこれが定着している︒このように 正規従業員より所定労働時間の短い﹁パートタイム労働者﹂についても経営悪

化を理由とする一雇い止めにつき十分な回避努力を求めた大阪地裁決定︵三洋電機事件平成二年二月二

0

これらを合せ考えるならば︑これまでの判例が公務の場合とは対照的に私法的労働関係の下では期限付き労働契約 の反復更新という実態を直視し︑労働契約関係を解釈することにより労働権原理を重視した法的解決を図ろうとして いる︒裁判所が積極的に使用者の雇い止め・解雇の自由と労働者の権利を調和させようとする姿勢が明瞭にみられる

1

期限付き任用の再任用拒否の扱いの不合理性と不合理﹁解消﹂

これまで述べてきたように︑これまでほとんどの判決が国家公務員法︵および地方公務員法︶

らみるなら任命権者の極めて安易かつ不当・不合理な期限付き任用の運用︵再任用拒否︶ 旬報︱二三六号︶等の存在が留意されるべきである︒ さらに る ︒ でもあるにもかかわらず︶ 最高裁第二小法廷判決昭和五

0

年四月二五日

の方向

の本来的なあり方か

労働法律

19‑2 ‑177 (香法'99)

(14)

これを適切にチェックすることなく法的に容認してきたと評価せざるをえない︒

︵言

い換

えれ

ば︑

きちんとした人員管理がなされているならば予想されな

11本来ありうべきでない︶現行の諸人事院規則の定める﹁日々雇用﹂あるいは﹁非常勤職員﹂等の﹁非正規﹂任用

制度が︑"民主的法治行政と適切な身分保障の観点から法的に許容される最低限の条件は︑法本則に定める﹁臨

時的任用﹂︵法六

0

条︶では十分に対応できない事由や事情がある場合︵例えば︑任用予定者名簿がないなどの下で業

務そのものが一定期間で廃止あるいは終了する﹁非恒常的業務﹂であるか︑恒常的業務にあっては一時的な量的拡大

に対して緊急かつ臨時の対応が必要である等︶に限られる︒同時に国家公務員法が﹁臨時的任用﹂をはじめ﹁日々雇

用﹂あるいは﹁非常勤職員﹂等に身分保障規定を適用せず︑また勤務条件においても格段に低い水準しか保障してい

ない現行制度︵諸手当・退職金・昇給︑

て著しい格差がある︶ さらには社会・労働保険の取り扱いなど︑とりわけ短時間勤務の職員におい

の下にあっても

不当な格差を生じしめないものでなければならない︒I I

言い換えれば︑現実に労使両当事者が合意で確定したごく短期間の勤務で終了するものであれば勤務条件保障・身

分保障との矛盾は﹁少ない﹂といえる︵﹁非正規﹂職員の処遇と労基法一四条の規定等を勘案するならば︑二

S

三ヶ月

以内が原則であって︑最長でも一年未満ということになろう︶ので﹁適法﹂とする余地があると考えられる︒この場

合でも現行の人事院規則等の適正手続きと勤務条件処遇は遵守されることが最低限の要件であるということになる︒

結論としては︑要するに①﹁臨時的任用﹂︵法六

0

条︶では十分に対応できない事由や事情がある場合であって︑

つ②﹁職員自身が同意﹂している︵不利を承知で任用を希望している︶だけでなく③必ず﹁短期間﹂に限定されるこ

とが最低条件となるはずである︒現行法制度の下ではこの要件を満たさない﹁非正規﹂任用は違法である︒したがっ しかし︑国家公務員法本則に定めのない

'

力>

19‑2 ‑178 (香法'99)

(15)

/, I. 

ところで︑このように解すると現在は違法任用が広く蔓延しており︑任命権者は違法状態を推進あるいは放置して

いることになる︒問題の大きさと根深さからして根本的解決は公務員制度全体の見直しによる必要があるということ

になろうが︑それまでの間の当面の対応を行うこと︑つまり不利益や不都合を受忍し負担する責任は違法状態を推進・

放懺してきた任命権者や管理当局にこそあるということの確認を裁判所は前提とすべきである︒

次に

︑ そのうえで本件当該職員のようにすでに長期任用されている場合どのように法的﹁解決﹂をすべきか指摘す る︒纏々述べてきたように︑これまでの判例動向から判断すれば︑最高裁判所を筆頭に﹁違法状態﹂を追認しあるい は容認し︑公私両分野であまりにも不均衡な結果をもたらしてきた︒そのため︑裁判所の本来の意図がいかなるもの

であれ現実には期限付き任用の﹁非正規﹂職員の﹁福祉及び利益の保護するための適切な措置を含む﹂

点︵国家公務員法一条一項︶ べきという視

は後景に追いやられる結果となってしまっている︒長期継続任用された﹁非正規﹂職員

の雇用継続の期待と利益は一方的かつ完全に否定され︑他方国や地方公共団体の﹁安上がりな﹂業務遂行と﹁自在な﹂

雇用量調整︵短期的な人件費削減としては効率的な面もあろうが︶

を基本原則とすべきであり︑

を無制限に認めかねない結果となっている︒現代 の民主的市民社会においては国・地方公共団体等任命権者と職員たる被任用者の任用︵労働︶関係は対等であること

また日本国憲法二七条はすべて国民に等しく労働の権利と適切な労働条件の確保とを保

障しているのであるから︑少なくともこのような官民の格差を設ける合理性はないと言うべきである︒

継続された期限付任用﹁非正規﹂職員の再任用拒否︵雇い止め︶ てこのような任用は許されない︒

一年以上反復

に対して︑当面は民間労働関係の下で最高裁判所等

が﹁編み出した﹂意思解釈によりあるいは衡平の見地等の導入により︑実質的にいわゆる解雇制限法理を﹁類推﹂適

19‑2 ‑179 (香法'99)

(16)

は無

効で

ある

というものである︒ 用可能とすることで︑この不均衡を早急に﹁是正﹂することが不可欠であると考える︒

当該職員の第一次的請求の趣旨は︑①本件任用にもとづく当該職員と任命権者らとの間の勤務関係は正規職員の肩 代わりとして恒常的に正規職員と同じ業務に従事しながらいつでも雇い止めできる任用形態であって国家公務員法附 則一三条の要件を逸脱したものであるから︑本質的には私法的性格を有する﹁労働契約﹂関係であると解するほかな

い︑②長期間の雇用ということのみで採用当初に有期雇用契約の合意はなかった︒また任命権者らが四年近くたって

後に一方的に期限付き任用の採用通知書を交付したにすぎないから期間の定めのない雇用契約となっている︑という

もの

であ

る︒

また︑当該職員の第二次的請求の趣旨は︑①期限付き任用は必要とする特段の事情︵緊急・臨時の業務の増大の必

要︶

があ

り︑

員法・人事院規則︑ならびに郵政省任用規程においては︑当該職員のように﹁恒常的業務﹂に﹁長期に任用を予定す

る﹂﹁期限付き任用﹂職員は予定されていない違法なものである︒③したがって本件採用の任期を定める﹁附款﹂部分

( 1

)  

かつ身分保障の趣旨に合致するものでなければならず無限定に容認されているのではない︒②︶国家公務 当該職員の第一次的請求およぴ第二次的請求に関連して

六四

19‑2 ‑180 (香法'99)

(17)

( 2

)  

本件事例に対する解釈

重視して私の解釈を構成している︒ 原則に戻って自由に結んだ民事労働契約関係と評価し︑

これに対して﹁解雇権濫用法理﹂を

六五

﹁再

付き任用の﹁長期﹂反復更新のケースは︑ この立論はきわ

当該職員の請求の根拠は︑本件任用関係ではあまりにひどく﹁期限付き任用﹂制度が濫用されているために違法性

が強く現行法の枠内にとどめて解釈できない実態となっているので違法無効であるから︑現代市民社会の労務提供︵労

働力供給︶契約の原則に立ち返り民事労働契約関係として処理すべきということを骨子としている︒

めて原理原則的な主張である︒同趣旨の学説︵矢野達雄﹁国立大学における非常勤職員の法的地位﹂愛媛法学会雑誌 第一八巻三号ほか︶の存在が示すように十分に傾聴に値する主張ではないかと考える︒少なくとも本件のような期限

用拒

否﹂

いわば﹁適用違法︵違憲︶﹂であり任用根拠が存在しないので︑市民法の大

の適否の審査を行うこともできると解するものであろう︒

ないこととされていること︵以下﹁補足﹂の第一の留意点参照︶︑ ︵類推︶適用して

しかし本件の法解釈にあたっては︑現行法令の枠内では任用期限の定めのない﹁一般職﹂﹁非正規﹂職員は存在でき

また同一の法制度的根拠に基づいて私の想定する適 法要件基準からみても違法でない短期﹁非正規任用﹂も相当数行われているという事実も無視できない︒

これらを考

慮し︑現行法制度をできるだけ合理的に解釈するという観点から︑﹁はじめに﹂でも触れたように従来の判例の流れを

当該職員の第一次および第二次請求は︑前出東郷小学校事件最高裁判例の提示する要件を取り入れたうえで︑本件 期限付き任用が恒常的業務に長期にわたって任用することを予定したものであるにもかかわらず全く身分保障に欠け

19‑2 ‑181 (香法'99)

(18)

れる

るものであるから︑適法とされるに十分な要件を満たしていないという主張をしている︒本件が適法とされるべき要

件を満たさない違法な任用という点では︑これら当該職員の請求と見解を同じくするものであるが︑以下少しく見解

を示

す︒

現行の諸人事院規則の定める﹁日々雇用﹂あるいは﹁非常勤職員﹂等の﹁非正規﹂任用制度が︑﹁民主的法治行政﹂

と﹁適切な身分保障﹂の観点から法的に許容される最低限の条件は︑法本則に定める﹁臨時的任用﹂︵法六

0

条︶では

十分に対応できない事由や事情がある場合︵例えば︑任用予定者名簿がないなどの下で業務そのものが一定期間で廃

止あるいは終了する﹁非恒常的業務﹂であるか︑恒常的業務にあっては一時的な量的拡大に対して緊急かつ臨時の対

応が必要である等︶に限られるべきである︒このように限定して初めて国家公務員法が﹁臨時的任用﹂をはじめとし

て﹁日々雇用﹂あるいは﹁非常勤職員﹂等に身分保障規定を適用せず︑また勤務条件においても格段に低い水準しか

保障していない現行制度︵諸手当・退職金・昇給︑

職員において著しい格差がある︶

満ということになろう︶ さらには社会・労働保険の取り扱いなど︑

が不当な格差ではないといい得る余地があるだろう︒ とりわけ短時間勤務の

つまりごく短期間のもの

︵﹁非正規﹂職員の処遇と労基法一四条の規定等を勘案するならば︑二

S

三ヶ月以内が原則であって︑最長でも一年未

であれば勤務条件保障・身分保障との矛盾が少ないので﹁適法﹂とする余地があると考えら

したがって︑任用予定者名簿がないなどの下で業務そのものが一定期間で廃止あるいは終了する﹁非恒常的業務﹂

であるか︑恒常的業務にあっては一時的な量的拡大に対して緊急かつ臨時の対応が必要である等ではない場合や当初

は非恒常や一時的・臨時的の業務であったがその後事情が変わったなどの場合には︑国家公務員法上の身分保障規定

六六

19‑2‑182 (香法'99)

(19)

しなければならない︒ を

適用

せず

︑ また勤務条件においても格段に低い水準しか保障していない現行制度が容認されるべき前提条件が消滅

することになって︑制度の合理性も失われるのでこのような任用は違法となる︒

この点では︑本件当該職員の場合には︑当初の任用︵採用︶時点から﹁恒常的かつ基幹的な業務﹂

的あるいは代替可能なものであれ郵便業務において不可欠かつ継続的という意味である︶

と言われて勤務を開始しているので︑当初から予定任用期間を一ヶ月ないし三ヶ月とする﹁日々雇用﹂形態の期限付

き任用の職員︵ゆうメイト︶として任用したことの﹁合理性﹂に疑問がある︒

半にわたって任用を継続しているのであるから一年を超えた時点からは国家公務員法上の身分保障規定を適用せず︑

また勤務条件においても格段に低い水準しか保障しないことの合理性は失われたものと言える︒

この事態を生み出した責任が誰にあり︑

六七

﹁ない﹂方法で解決すべき︑

ということ

しばらくこの点を置くにしても︑六年 その責任をどのように負い︑解消するかということであり︑その際に本事

例限りで期限付任用職員の反復任用の問題が解消するのではないということを考慮して解決方法を導かなくてはなら

( 1 4 )  

ない︒仮に問題が偶発的なものであれば任用継続を認めず不法行為に対する国家賠償で解決することも妥当かもしれ

ないが︑本事例は構造的なものの結果であり︑

そこで︑解決にあたって︑

こと

また解決内容の妥当性からしても事実として任用継続を認めるものと まず第一にクリーンハンドの法原則に反する措置であること︑言い換えれば﹁自らが意

図的につくりだした違法状態﹂を専ら他方当事者の犠牲によって解決すべきと主張することは許されるべきではない

したがって第二に︑この違法状態は︑任命権者・雇用管理者︵任命権者ら︶

限の範囲内で問題解決をもっぱら当該職員の不利益によって調整するのでは

の適正な任用を行うべき義務と権 に︑﹁長く勤めてください﹂ ︵当該業務が補助

19‑2 ‑183 (香法'99)

(20)

になる︒したがって本件において︑任命権者ら・任命権者の任用更新拒否を容認し︑被任用者にのみ不利益と犠牲を

強いるのではない法的解決︵解釈︶

だとすれば︑①任命権者らが権限を濫用し違法な本件任用更新拒否

( 1 1

﹁雇い止め﹂︶をしなければ任用更新される

状態にあったことが認められるということであり︑②本件任用更新拒否

( 1 1

﹁雇い止め﹂︶は権限濫用として行い得ず︑

③当該職員の身分保障︵雇用継続の権利︶

関係状態の下で任命権者が別段の措置をしないのであるから﹁従前の任用が更新されたのと同様の法律関係にな

った﹂と判断すべきということになる︒しかし︑期限の定めのない任用に転化するのではないので︑これにより本件

任用更新拒否が適法とされるにはいわゆる﹁解雇法理﹂の類推適用の場合と同様に一定の合理的理由の存在が要請さ れ︑かかる理由が存在しない場合には﹁従前の任用が更新されたのと同様の法律関係になる﹂という一応の解決が図

られるものと考える︒

より事例に則して言えば︑①当該職員は六年半にわたり切れ目なく継続更新されていること︑②恒常的かつ基幹的

な業務に︵当該業務が補助的あるいは代替可能なものであれ郵便業務において不可欠かつ継続的という意味である︶

はなされていないこと︑ 従事していること︑③任用・再任用の諸手続き を確保できる内容でなければならないということになる︒ は︑民間労働関係との比較において身分保障の代償的﹁衡平﹂ないし﹁公平性﹂

の要請と任用制度の民主的運用の要請との調整の見地からは︑継続的勤務

︵通知書の発令・伝達︑本人確認・押印︶などは︑﹁その都度﹂厳格に

そして④当該職員と同様な﹁ゆうメイト﹂︵非正規職員︶は常時五十人以上と多数反復任用さ

れていること︑等から判断すれば︑この事例のような任用は︑任用更新が予定されているものと判断される︒とりわ

六八

19‑2 ‑184 (香法'99)

(21)

( 3

)  

能性があるように思われる︒ しているものか検討すべきということになろう︒

六九

したがって︑本事例のように更新が予定されている任用の更新が拒否された場合には再任用拒否﹁処分﹂として︑

この相当な﹁免職理由﹂は︑民間労働関係との比較において身分保障の代償的﹁衡平﹂ないし﹁公平性﹂を確保で きる内容のものでなければならず︑本事例の場合には任命権者らは再任用拒否の理由につき﹁正規職員の増員配置お

よび作業変更の措償によって当該職員ら記介常勤﹂職員配置の必要がなくなったこと﹂を主張しているのであるから︑

国家公務員法七八条四号の﹁廃職・過員﹂分限免職の場合を念頭に置きながらいわゆる﹁整理解雇の法理﹂の四要件

︵人員整理の必要性︑他のとりうる手段を尽くしたか︑人選の適切さ︑対象者等との話し合いを尽くしたか︶を充足

なお︑紛争の推移からすれば︑当該職員が労働組合に加入し勤務時間数の確保要求を続けたことが再任用拒否の﹁真

の﹂理由であることも伺われるのでこの点の検討も重要である︒上記四要件とも内容的に関連するが︑少なくとも同 程度の時間︑他の職場で雇用が可能であったと見受けられるので労働組合法七条一号の不利益取り扱いに該当する可 本稿においては︑立法論・政策論と判断されることを避けて以下の二つの点に留意し︑現行の国家公務員法および

人事院規則の枠組ならびに適法性や明確性を任用﹁処分﹂ 相当な﹁免職理由﹂が求められる︒ け︑①の要素が重視されなければならない︒

の前提とする行政法理論を﹁維持しながら﹂解釈を行った

19‑2 ‑185 (香法'99)

(22)

第二の留意点は︑裁判所の依拠する﹁通説的﹂行政法理論では︑①行政機関の意思表示には私人間の場合に比して

外形的により明確な形式︵書面の交付.掲示や読み上げ︶を求めていること︑

確であるような処分はできないとし仮にそのような﹁処分﹂が行われた場合には処分は﹁無効﹂や﹁取消﹂になって

効果を失い︑国家賠償による損害補償が可能となるのみであること︑とされている︒さらに任命権者は︑内心はとも はないはずである︒ まず第一の留意点は︑①現行法令︵国家公務員法や人事院規則︶下ではいずれの一般職﹁非正規﹂任用も制度的には短期の﹁期限付﹂のものとされていること︑般職﹂﹁非正規﹂職員は存在できないこと︑のとして任用したり︑

そして②国家公務員法二条六項が特別職以外をすべて﹁一般職﹂職員

としこの二種以外は設けてはならないとしていること︑以上二点からは現行法令の枠内では任用期限の定めのない﹁一

となるであろう︒したがって任用当初から﹁非正規任用﹂を期限のないも

五年

0

年という長期の任用予定はしてはならないということになる︒

しかしこれらの法令規定は事前に任用する側こそが守るべき原則を示すものである︒本来ありえないはずだから法 的に保護に値しないとして当該職員からの任用継続の訴えを切り捨てるべきであろうか︒そのような任用をした任命

権者らの法的責任は結局不問に付されることになり︑他方任用継続を望む﹁非正規﹂職員の利益のみが無視されると

いうようなことは﹁衡平﹂を欠き法的正義に反する︒任命する側の制度濫用の結果の長期継続一屈用であることを直視

しつつ妥当な収拾策を求めるならば︑﹁結果として﹂任用が継続するような法解釈は決して許容してはならないもので ことを補足しておきたい︒

また②行政機関は当初から違法性が明

七 〇

19‑2 ‑186 (香法'99)

(23)

v

形式的・外形的には﹁短期の﹂﹁期限付﹂任用を行っており︑

︵ 処

分 ︶

また任用更新の際には︑新たな﹁短期の﹂﹁期限

はないので期間満了において勤務関係は消滅するのみである︑とされ

い︒形式・外形は任命権者自らが相当に形骸化させているのであった︒有力な行政法学説中にも︑行政行為の期限に

は厳格に設定されている期限と更新を予定している期限があり︑職員が再任用につき一定程度の期待をもつことが無

理からぬ状況が客観的に認められ︑そのような期待が保護に値すると認められるような場合︑すなわち﹁更新回数の

ほかに︑当該職の性質︵常勤的・恒常的なものであれば肯定されやすいであろう︶︑任用規程等に自動更新条項があっ

たか︑再任用手続きは形式的なものであったか︑過去において職員側が希望するかぎり全員が再任用されてきたか︑

当該職員が再任用拒否された後に新人が任用されたか等﹂の諸般の事情から判断して︑当該期限が更新を予定してい

( 1 5 )  

ると認めることができるとしているものがある︒

また現行制度上も﹁全く﹂例外が許されていないわけではないことを考慮せざるを得ない︒例えば﹁日々雇用﹂

の 更新については︑人事院規則自体が﹁職員が引き続き勤務をしていることを任命権者が知りながら別段の措置をしな

いときは、従前の任用は、同一の条件をもつて更新されたものとする」(人事院規則八—,―二第七四条二項)と定めて

いるのである︒これは一日という期限到来により当該任用行為は当然効力を失うにもかかわらず︑更新を予定してい

存在することを認めている︒ るからである︒若干事情は異にするとはいえ︑人事院自身が﹁その都度﹂﹁明確な﹂意思表示を不可欠としない場合が

( 1 6 )  

むしろ裁判所が実態を重視して解釈する余地は十分に存在しているものと考える︒ しかし本件を含め多くのケースで任用の厳格な手続き

てい

る︒

付﹂任用をしない限り何らの意思表示

︵通知書の発令・伝達︑確認・押印など︶は遵守されていな

19‑2 ‑187 (香法'99)

(24)

晴山一穂﹁今日の﹁行政改革﹂の特徴と問題点﹂全労連・交流と資料二五・ニ六号一頁以下は︑現在の状況を概観し問題点を指摘

( 2 )

0年代以前から必要性が指摘されてきている︒例えば山本吉人﹁官公労働における臨時職員の法的地位﹂季刊労働法︱︱七

号九七

S

九八頁の指摘を参照︒また同論文九六\九七頁は地方公務員につき期間の定めのないものへの﹁転化﹂を認めるべきとして

( 3 )

地方公務員に関してではあるが︑松尾邦之﹁臨時非常勤地方公務員の任用および勤務条件の現状と法制度上の問題点ーー'立法的解

決への覚書﹂東京都立労働研究所報一五号二三頁以下参照︒なおこの論文では︑制度論として短期期限付任用が厳格に守られている

ことを前提に﹁偶発的・例外的に﹂反復継続されたケースの救済は国家賠償に法定することを提案している︒

( 4 )

一般に行政法学では︑国︵地方公共団体︶に勤務し行政サービスに従事する者はすべて国家︵地方︶公務員であるとして公務員法

を広く適用することで猟官制を排して民主的法治行政の下に置くことを重視している︒下井康史﹁期限付任用公務員の再任用拒否﹂

北大法学論集四一巻三号一四二\一四四頁の指摘を参照︒

( 5 )

すでに︑松尾邦之﹁任期満了によるパートタイム非常勤国家公務員の任用更新拒否の法的性質﹂労働法律旬報︱一五五号五四頁以

下では山形大学病院事件・山形地裁判決︵昭和六一年二月一七日︶につき解決方向を検討した︒本稿はこれをより具体的に展開させ

たものである︒

( 6 )

本事例でも訴状等によれば﹁長期で﹂あるいは﹁できるだけ長く﹂﹁何年も勤めている人がいる﹂など実際の採用担当者は述べて

いる︒特殊な人事院規則を知る人は法律家や正規公務員でもごく少数である︒期限付の任用制度しか存在しないことを一般市民が

﹁不知﹂であるとしてその不利益とするような形で責任をとらせるべきではなかろう︒かえって経験的には公務パートが何年も

何十年も継続勤務している事実しか知りえないのが実態であろう︒

( 7 )

加えて定年制法定以前の勧奨退職教員の期限付︵再︶任用の更新拒否という特殊な前提の事例であった︒私は長らく同種の最高裁

判所の判決が出されなかったためもあり不当に一般化され先例として引用されたものと評価している︒

( 8

)

吉田美喜夫﹁一般職国家公務員の期限付任用の拒否と再任用拒否の法的救済﹂法律時報六七巻六号︱二五頁が指摘するように︑こ

の最高裁判決は任用継続の期待侵害に対する国家賠償の可能性につきふれるものの直属の上司が当該職の任用期限が大阪大学の他の「非正規」職員と違い厳格に行われることを説明していなかったにもかかわらず国家賠~を否{疋し、任命権者が任用継続の「確約」

( 1 )  

19‑2 ‑188 (香法'99)

(25)

﹁保障﹂をした場合等に極めて狭く限定した点は批判されるべきである︒

いわゆる﹁転化﹂を認めたのは地公法の特別職嘱託の助産婦についての北九州市病院事件福岡地裁小倉支部判決︵昭和四六年一〇

0

号二三頁︶のみであり︑解雇予告手当に関し当初から期間の定めがなかったとする加古川市臨時職 員事件神戸地裁姫路支部判決︵昭和四九年九月二日労働法律旬報八六七号五五頁︶および一年間の任用を期待した臨時教員の六ケ 月での雇い止めに対し期待権侵害による損害賠償を認めた名古屋市立菊井中学校事件名古屋地裁判決︵昭和六三年︱二月ニ︱日 労働判例五三一号︶などである︒全体状況につき青木宗也ほか編﹃労働判例大系一七巻公務員の勤務条件﹂労働旬報社一九九一年

( 1 0 )

前示大阪大学事件最高裁判決は︑大学での運用実態や任命権者の努力の有無にすら言及せず﹁直ちに常勤職員の定員を増加するこ

とは実際上困難であり」と極めて安易に認定し当該非正規任用は違法でないと(継続勤務を求める職員の要求•利益を否定し三年で

の﹁使い捨て﹂を︶容認している︒同事件高裁判決では﹁直ちに常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり﹂とする認定も 判断もなされていない︒事実認定なしにどうしてこのように判示できるのであろうか︒法

の建前からは非正常な状態と言わざるえ{ n

ない︒またその期間は五年や一

0

年の期間ではない︑少なくとも当該職場での﹁非正常な実態﹂を検討しその責任がどこの誰にあり︑

誰の負担で事態を解消すべきか検討すべきであろう︒

( 1 1 )

代表例は︑室闇工大事件札幌地裁判決︵昭和五三年七月ニ一日労働判例︱︱

1 0

三号︶である︒

( 1 2 )

そもそも現行身分保障・勤務条件保障制度自体が労働基本権制限の代償措置として十分ではなく︑また労働条件決定プロセスヘの 参加やストによる意見表明を含めた労働基本権の代償措閥が如何にして可能かについては検討を要することを指摘しておきたい︒

中山和久﹁国際労働基準︑代償措置論﹂法律時報六一巻︱一号を参照︒

( 1 3 )

同趣旨の説としてすでに今野順夫﹁常勤的非﹁常勤﹂職員の更新拒絶問題﹂労働法律旬報九〇六号ニニ頁以下がある︒また地方公

務員に関しては清水敏﹁地方公共団体における臨職・非常勤職員の法的地位﹂青木宗也先生還暦記念論文集四七七頁︑吉田美喜夫﹁自

治体﹃臨職﹂に対する任用更新の拒否の救済法理﹂立命館法学一九八八年五・六号七ニニ頁などがある︒

( 1 4 )

前注

( 3

) の拙稿では︑パートを含む正規任用制度の変革と正規職員移行措置を経て制度論として短期期限付任用が厳格に守られ ていることを前提に﹁偶発的・例外的に﹂任用が反復継続されたケースの救済は国家賠償に法定することを提案している︒逆にいえ ば﹁前提︐が守られない現在のような実態の下では現実に不利益を受ける者の要求にそった具体的﹁衡平な﹂救済に里点を置き解決

( 9 )  

19  2 ‑189 (香法'99)

(26)

すべきである︒

( 1 5 )

下井康史前掲論文一四四

S

( 1 6 )

山本吉人前掲論文九七頁は︑昭和二

0

年代から五

0

年代までの歴史的変遷を踏まえて﹁裁判例のいう任用の厳格性も過去において

行政︑政治の動向で簡単に左右されているのである﹄として﹁期間の定めのないものに﹃転化﹄することを肯定しても不当とはいえ

ない﹂と指摘している︒

七 四

19‑2‑190 (香法'99)

参照

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と言っても、事例ごとに意味がかなり異なるのは、子どもの性格が異なることと同じである。その

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以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

○安井会長 ありがとうございました。.

下山にはいり、ABさんの名案でロープでつ ながれた子供たちには笑ってしまいました。つ