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日本金属学会誌第 70 巻第 3 号 (2006) Cu/Ni 積層材料の抵抗特性 仲村圭史 1,2, 菊池潮美 2 1 KOA 株式会社 KPS センター 2 滋賀県立大学工学部材料科学科 J. Japan Inst. Metals, Vol. 70, No. 3 (2006), p

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(1)

滋賀県立大学大学院生(Graduate Student, The University of Shiga Prefecture)

Cu/Ni 積層材料の抵抗特性

仲 村 圭 史

1,2,

菊 池 潮 美

2 1KOA 株式会社 KPS センター 2滋賀県立大学工学部材料科学科

J. Japan Inst. Metals, Vol. 70, No. 3 (2006), pp. 250254  2006 The Japan Institute of Metals

Resistivity of Cu/Ni Multilayer Materials Keishi Nakamura1,2,and Shiomi Kikuchi2

1KPS Center, KOA Corporation, Nagano 3994697

2Department of Materials Science, The University of Shiga Prefecture, Hikone 5228533

Resistive materials with thermoelectromotive force of 6 to 46 mV/K and temperature coefficient of resistance (TCR) of -26 to +4107×10-6K-1were successfully fabricated by using the foil metallurgy pressing method and the stacking and rolling of

metallic foils of Cu and Ni. The Cu/Ni multilayer materials showed changes of electrical characteristics with the conditions of heat treatment. The TCR values of the specimens decreased with increase of alloying area at the interface of Cu and Ni layers by heat treatment. On the contrary, the values of thermoelectromotive force for copper increased with the increase of temperature of heat treatment.

This process allows the electrical characteristics to be controlled as required, and the resistance material of a precise resistor for current detection to be made.

(Received October 31, 2005; Accepted February 1, 2006)

Keywords: copper/nickel multilayer, temperature coefficient of resistance, resistivity, foil metallurgy pressing, thermoelectromotive force, resistors, current detection

1. 緒 言 電流の検出用抵抗として,バルク金属を抵抗体に使用した 抵抗器の需要が大きくなってきている.例えば,自動車部品 のモータにおいては,電流制御で駆動を制御することが盛ん に行われており,今後の電気自動車やハイブリット自動車用 のモジュールでの,電流検出用抵抗器の必要性が注目されて いる1) 一般の抵抗器に比べ電流検出用の抵抗器は,電力ロスを少 しでも抑える目的で,低い抵抗値の抵抗器が使用される.例 えば 1~10 mQ という抵抗値である.また,抵抗値が極めて 低いため,抵抗器としての高精度化が要求され,特に抵抗温 度係数(Temperature Coefficient ResistanceTCR)が 0 に 近いことが重要視される. この TCR が低い抵抗用合金として,銅ニッケル合金が良 く使用されている. 銅ニッケル系合金の特徴としては,Ni および Cu の配合 比が約 50近辺で,比抵抗の極大点を持ち,同時に TCR が極小値を有することが知られている2)3) 一方で,銅ニッケル合金は安定な合金であるために,熱処 理等を施しても,比抵抗や TCR は変化することが無く,組 成比の調整でしか,比抵抗や TCR を制御することができな いため,何らかの方法で容易に抵抗特性を制御することが求 められる. そこで,Cu と Ni の金属箔を積層し,熱処理を施すこと により,抵抗特性を制御することに注目した. 金属箔の積層と繰り返し圧延を利用して,積層材料を作製 する方法(ホイルメタラジープレス法)で,Cu と Ni の積層 材料を作製する方法は,材料の高強度化の方法として知られ ている4) この方法を用い,Cu/Ni 積層材料を作製し,熱処理を施 すことにより,Cu/Ni 界面の合金化を行い,熱処理条件を 制御することにより,Cu/Ni 界面の合金化率の制御を行 い,抵抗特性を制御することを検討した. 2. 実 験 2.1 サンプル作製 厚みの異なる Cu 箔および Ni 箔を 20 mm×30 mm の大き さに切断し,交互に重ね合わせ,1073 K, 1×10-4Pa の真空 下,10 MPa で 2 時間加圧を行い,積層材料を作製する.積 層後各々の材料は 0.1~0.2 mm まで圧延加工を行った. 作製したサンプルの積層枚数と出発の箔の厚さを Table 1 に示す. 作製したサンプルを X 線マイクロアナライザー(XMA)に

(2)

Table 1 Constitution of sample.

No. thicknessCu layer (mm) Ni layer thickness (mm) Number of multilayer (seats) Constitution Cu (mass) (mass)Ni  30 10 124 64 36  10 30 124 22 78  10 20 166 58 42 Fig. 1 Measurement of TCR. て定量分析した結果を組成比として表中に記入した. サンプル~を厚み 0.2 mm まで圧延を行い,評価用サ ンプルとした. 2.2 熱処理 圧延後のサンプルへの熱処理は,20 L/min の N2気流下 (O2濃度100 ppm 以下),673 K, 773 K, 873 K の 3 種類の 温度で 3 時間保持し,373 K まで 2 時間かけて徐冷を行った 後に炉よりサンプルを取り出し,資料とした.

2.3 抵抗温度特性(Temperature Coefficient of

Resista-nceTCR)の評価 熱処理を施したサンプルを幅 3 mm×長さ 15 mm の小片 に切断し,中央部 10 mm を耐熱樹脂でレジスト加工した後 に,評価用に作製したプリント基板上にはんだ付け(実装) し,評価を行った.この模式図を Fig. 1 に示す. サンプルを実装した評価基板を,298 K, 323 K, 373 K の オイルバス中に投入し,各温度での抵抗値を 4 端子法で測 定し TCR を算出した.その際,サンプル温度はオイルバス 温度と平衡になるように,30 分間放置した後,抵抗値測定 を行った.抵抗値測定はサンプルと基板上の Cu 配線パター ン間に生じる,異種金属の接触による熱起電力をキャンセル するために,電流反転法を用いて,100 mA の電流を印加し た際の出力電圧をデジタルナノボルトメータで測定し,抵抗 値に変換した.測定電流はサンプルの自己発熱を抑えるため に 100 mA で行った. 2.4 組織観察 積層の状態を SEM で観察し,XRD を用いて結晶構造を 解析した. 3. 結 果 と 考 察 3.1 熱処理による積層構造の変化 各積層サンプルに熱処理を行い,サンプル断面を研磨した 後に,10 mass塩化第二鉄水溶液で約 30 秒間エッチング を行い,Cu を優先的にエッチングした後に,SEM で積層 構造を観察した結果を Fig. 2 に示す. 熱処理を行う前の各サンプルの層厚は,Cu 0.5~1.0 mm, Ni 0.7~2.5 mm, Cu 0.3~0.7 mm, Ni 1.8~2.9 mm, Cu 0.3~0.6 mm, Ni 0.5~1.0 mm であり,Cu と Ni の積 層構造を示している.特にサンプルは平均して 0.5 mm の 薄い層を構成している. それぞれのサンプルに熱処理を行うと,各層間での拡散が 進行し,層間隔が明確に確認できなくなり,873 K の処理で は大きく積層構造を崩す状態が観察された.また,熱処理温 度の上昇によって積層構造は崩れていくが,積層界面に沿っ て線状にボイドが存在し,873 K で 3 時間の熱処理条件では 完全な合金化にはならず,積層構造の形跡を残す状態が確認 される.このような状態は,Cu の割合が多い材料もしく は,積層材料作製時の Cu と Ni の金属箔の厚みが小さい方 の試料について,低い熱処理温度でも認められる. それぞれのサンプルについて,X 線回折を行った結果を Fig. 3(a), (b), (c)に示す. 熱処理温度が高くなるにつれて,Cu(111)および Ni(111) と Cu(200)および Ni(200)の 2 本のピークが 1 本に合成さ れ,また,高角側にピークがシフトする.これらの結果よ り,熱処理により Cu 層と Ni 層に拡散が生じ,CuNi への 合金化が進んでいることがわかる. 3.2 熱処理による抵抗特性変化 熱処理後のサンプルにおける抵抗値の温度依存性を調べ た.例えば,サンプルのなかで熱処理を行っていない,圧 延のままの試料をプリント基板に実装した後に,オイルバス を用いて周囲温度を変化させ,抵抗値を測定した結果を Fig. 4 に示す. Fig. 4 より周囲温度に依存して直線的に抵抗値が変化して いる.この抵抗値の変化量(傾き)が抵抗値温度特性(TCR) を示し,抵抗値は温度とともに直線的に増加していることを 示している.そこで抵抗値の温度特性を式( 1 )のように 1 K 当たりの抵抗値変化量の係数として表し,評価することにす る. T.C.R.=R1-R0 R0 × 1 T1-T0 ×106 単位【×10-6K-1】 ( 1 ) R0温度 T0【K】での抵抗値【Q】 R1温度 T1【K】での抵抗値【Q】 窒素雰囲気下で熱処理を行ったサンプルの TCR 測定を行 った結果を Fig. 5 に示す.298 K での抵抗値(R0)を基準と し て, 373 K での 抵抗 値(R1)の測 定を 行い ,式 ( 1 )よ り TCR 値を算出した.

(3)

Fig. 2 SEM micrographs of Cu/Ni multilayers.

Fig. 3 (a) Xray diffraction patterns of sample . (b) Xray diffraction patterns of sample . (c) Xray diffraction patterns of sample .

(4)

Fig. 4 Resistance change with temperature.

Fig. 5 Changes of TCR by heat treatment.

Fig. 6 Values of TCR and resisitivity for diffusion ratio in sample .

Fig. 7 Ni contents vs. TCR change for heat treatment temper-ature. 組織観察からわかるように,673 K までの熱処理では層間 での拡散が進行していないため,TCR の変化は見られな い.処理温度を 773 K 以上にすると TCR 値は変化し,減少 が顕著に表れる.これは層間での拡散により CuNi 合金化 が進んでいることに起因するものと考える.サンプルを例 に拡散率と TCR 変化について検討を行った.拡散率は,各 サンプルの X 線マイクロアナライザにて測定した Cu と Ni の組成比(Table 1)に対応する,銅ニッケル合金の固有抵抗 値5)を基準に,次式( 2 )より算出した. Diffusion ratio=(Rm/Ra)×100【】 ( 2 ) Rm実測したサンプルの抵抗値 Ra銅ニッケル合金としての抵抗値(文献値) 拡散率とサンプルの TCR および抵抗値の関係を Fig. 6 に 示す.拡散率と抵抗値の間には直線的関係が得られ,拡散率 の増加とともに抵抗値は増加する.また,拡散率の増加にと もない,TCR 値は 0 に近づく.この結果,熱処理により Cu/Ni 層の界面における拡散が TCR 変化に大きく関与して いることがわかる. また,各サンプルの Ni 質量比に対して熱処理後の TCR 値をプロットしたものを Fig. 7 に示す. Ni 割合の多いサンプルについては,熱処理を行っても, CuNi 合 金 の TCR 値 に 近く な る割 合 が 低 く, Ni 単 体 の TCR値近い値となった.これは Ni 中の Cu 原子の拡散係数 が Cu 中の Ni 原子の拡散係数より小さく,Ni 中に Cu 原子 の拡散が進行しにくいという結果と考えられる6).SEM で の組織観察の結果および XMA による元素分析の結果はこ の傾向を示している.一方で Cu の割合が高いサンプルに ついては,熱処理を行うことにより,大きく TCR 値が減少 す る 結 果 が 得 ら れ , 無 処 理 で 3124 × 10-6K-1で あ っ た TCR 値が,873 K の熱処理を行うことにより+273×10-6 K-1まで下がる結果となった. また,積層枚数が多く,1 層あたりの膜厚が小さい(0.5 mm 程度)サンプルでは,熱処理を行うことにより,同じ 組成比率の合金の TCR 値よりやや低い値を示す結果が得ら れ,873 K の熱処理では,-26×10-6K-1となった. これらの結果より,層間隔の制御とホイルメタリジープレ ス条件の制御を行うことによって,TCR 特性を自由に制御 することが可能であると考えられる. 3.3 熱処理による熱起電力の変化 抵抗体合金を抵抗器として使用する場合,Cu を電極とし て用い,Cu のプリント基板パターンに製品を搭載すること が通常である.したがって Cu に対する熱起電力は抵抗体合 金にとって重要な項目となる. Cu パターンのプリント基板にサンプルを搭載した後に, サンプル両端に熱の偏りを形成させ,その際の起電力を測定 した結果を Fig. 8 に示す. 熱処理を行うことにより,TCR の変化と同様に合金に近 い熱起電力を示す傾向が確認された.この結果も拡散による 合金化に起因したものと考えられる. 拡散率とサンプルの TCR および熱起電力の関係を Fig. 9に示す.TCR の変化とは逆に,拡散率の増加とともに熱 起電力は増加する.拡散率を制御することにより,TCR 値 および熱起電力の項目を調整することが可能であり,抵抗材 料として積層材料の応用の可能性が得られた.

(5)

Fig. 8 Changes of thermoelectromotive force for Cu by heat treatment.

Fig. 9 Values of TCR and thermoelectromotive force for diffusion ratio in sample .

4. ま と め Cu/Ni 系積層材料の抵抗特性評価を行うことにより以下 の結果を得ることができた.  ホイルメタラジープレス法によって作製された,Cu/ Ni 積層材料の TCR 値は,同一組成(質量比)の合金の TCR 値に比べ大きい値を示し,Cu の質量比が高いものは Cu 単 体 TCR に近い値を示し,Ni の質量比が高いものは Ni 単体 TCR 値に近い値を示す.  Cu/Ni 積層材料は 773 K/3 h 以上の熱処理を施すこ とより,積層構造を維持した状態で CuNi 合金層を形成す る.この合金化の割合は,固有抵抗値を測定することにより 算出が可能であり,合金化が進むにつれて,TCR 値は減少 し,合金の TCR 値に近い値を示す.  Cu/Ni 積層材料は,同一組成の合金より低い Cu に対 する熱起電力を示す.また,熱処理を行うことにより,層間 の拡散が進行し,対 Cu 熱起電力は上昇し,合金の対 Cu 熱 起電力値に近い値を示す.  Cu/Ni 積層材料は 673~873 K で 3 時間の熱処理を行 うことによって,TCR 値は-26~+4107×10-6K-1, Cu に 対す る熱起電力は 6~46 mV/K まで変化 させることが で き,熱処理条件を選択することによって目的とする抵抗器を 作製できる. 文 献

1) M. Amano and T. Nogi: J. Soc. Automotiv Eng. Japan59(2005) 49.

2) R. W. Hounghton, M. P. Sarachik and J. S. Kouvel: Phys. Rev. Lett.25(1970) 238.

3) R. W. Hounghton, M. P. Sarachik and J. S Kouvel: Solid st. comm.8(1970) 943.

4) S. Kikuchi: J. the JSTP40(1999) 10161021.

5) David R. Lide: HANDBOOK of CHEMISTRY and PHYSICS (1999) 1249.

6) The Japan Institute of Metals: DATABOOK of METALS (1993) 21.

7) National Astronomical Observatory: Chronological Scientific Tables (2000) 467.

Table 1 Constitution of sample. No. Cu layer thickness (mm) Ni layer thickness(mm) Number ofmultilayer(seats) ConstitutionCu (mass) Ni (mass)  30 10 124 64 36  10 30 124 22 78  10 20 166 58 42 Fig
Fig. 2 SEM micrographs of Cu/Ni multilayers.
Fig. 6 Values of TCR and resisitivity for diffusion ratio in sample .
Fig. 8 Changes of thermoelectromotive force for Cu by heat treatment.

参照

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