• 検索結果がありません。

機械的な競争モデルの構成とその応用に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "機械的な競争モデルの構成とその応用に関する研究"

Copied!
222
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

機械的な競争モデルの構成と

その応用に関する研究

2012

2

宇都宮大学大学院

工学研究科

システム創成工学専攻

日下田 淳

指導教員

吉田 勝俊 准教授

(2)

目 次

1

緒 言

1

1.1 研究の背景 . . . . 1 1.2 研究の目的 . . . . 2 1.3 本論文の構成 . . . . 3

2

エージェントの協調・競争問題

4

2.1 はじめに . . . . 4 2.2 エージェント単体に関する問題 . . . . 5 2.3 複数のエージェントに関する問題 . . . . 6 2.4 現実の四節リンク機構 . . . . 7 2.5 本研究での課題 . . . . 8 2.6 まとめ . . . 10

3

協調と競争を表す機械モデル

11

3.1 はじめに . . . 11 3.2 倒立振子モデル . . . 12 3.2.1 力学モデル . . . . 12 3.2.2 運動方程式の導出 . . . 14 3.2.3 双安定性 . . . 15 3.3 結合倒立振子モデルの提案 . . . 16 3.3.1 協調と競争を表す機械モデル . . . . 16 3.3.2 結合倒立振子モデル . . . . 17 3.3.3 四重安定性 . . . . 19 3.3.4 ペナルティ法 . . . 20 3.4 結合倒立振子モデルの初期値依存性 . . . 25 3.4.1 運動方程式の一階化 . . . . 25 3.4.2 数値シミュレーション条件 . . . 26

(3)

4.2 小自由度モデルの導出 . . . 31 4.2.1 倒立振子の簡約化〔単体モデル〕 . . . 31 4.2.2 結合倒立振子モデルの簡約化〔結合モデル〕 . . . 34 4.3 擬似神経制御モデルへの拡張 . . . . 36 4.3.1 ヒトの反応遅れ時間を考慮した制御入力 . . . 36 4.3.2 数値シミュレーション条件 . . . 37 単体モデル . . . . 37 結合モデル . . . . 38 4.3.3 数値シミュレーション結果 . . . 39 安定性について . . . 39 追従性について . . . 42 4.4 簡約化モデルによる実験システム . . . 45 4.4.1 単体モデルの実験システム . . . 46 実験システムの構成 . . . . 46 表示画面の設計 . . . 47 運動方程式およびシステムパラメータ . . . . 48 4.4.2 結合モデルの実験システム . . . 49 実験システムの構成 . . . . 49 表示画面の設計 . . . 50 運動方程式およびシステムパラメータ . . . . 51 4.5 ヒトによる協調的なバランス実験 . . . 52 4.5.1 実験条件および実験手順 . . . 52 実験条件 . . . 52 実験手順 . . . 53 4.5.2 実験結果 . . . 54 安定性の向上について . . . 54 追従性の向上について . . . 61 結合によるバランス誤差と反応遅れ時間 . . . 64 4.6 まとめ . . . 65

5

ヒトのバランス運動と感性

66

5.1 はじめに . . . 66 5.2 ヒトの運動と感性 . . . 67

(4)

ヒトによる目標位置の入力 . . . 67 結合倒立振子モデルの操作性の向上 . . . 68 実験システムの構成 . . . . 71 表示画面の設計 . . . 72 システムパラメータ . . . . 73 5.2.2 ヒトの操作の評価 . . . 74 安定性について . . . 74 追従性について . . . 75 5.2.3 ヒトの感性の評価 . . . 76 5.3 ヒトによる協力的なバランス運動の測定実験 . . . 78 5.3.1 実験条件および実験手順 . . . 78 実験条件 . . . 78 実験手順 . . . 79 5.3.2 相関分析による関係性の解明 . . . . 80 自分に関する物理量と官能量の相関 . . . 80 相手に関する物理量と官能量の相関 . . . 82 相関分析のまとめ . . . 84 5.3.3 因子分析による関係性の解明 . . . . 85 因子分析結果 . . . 86 因子の解釈 . . . . 87 因子分析のまとめ . . . 91 5.4 まとめ . . . 92

6

ヒトによる競争的なバランス運動

94

6.1 はじめに . . . 94 6.2 相手を倒そうとする状況の表現 . . . 95 6.2.1 バンバン入力 . . . 95 6.2.2 結合倒立振子モデルへの適用 . . . . 96 6.3 相手を倒すことのできる条件 . . . . 98 6.3.1 数値シミュレーション条件 . . . 98 6.3.2 可到達集合 . . . . 99 6.4 ヒトによるバンバン入力付加実験 . . . 102 6.4.1 実験システム . . . 103

(5)

6.5.3 操作の継続時間による分類 . . . 128 6.6 まとめ . . . 130

7

協調と競争を表す四節リンク機構

131

7.1 はじめに . . . 131 7.2 双安定振子機構 . . . 132 7.2.1 双安定振子機構の試作 . . . 133 7.2.2 提案機構の双安定性 . . . 135 7.2.3 提案機構の力学モデル . . . 136 7.2.4 双安定振子モデルの運動方程式 . . . 138 7.2.5 パラメータの算定および同定 . . . 139 物理パラメータの算定 . . . 139 復元力特性の同定 . . . 140 粘性減衰係数およびクーロン摩擦係数の同定 . . . 142 7.3 双安定振子機構の結合 . . . 144 7.3.1 結合双安定振子機構の提案 . . . 145 7.3.2 結合双安定振子機構の四重安定性 . . . 146 7.4 結合双安定振子機構の解析モデル . . . 148 7.4.1 結合双安定振子機構の力学モデル . . . 149 7.4.2 運動方程式の導出 . . . 151 7.4.3 パラメータの算定および同定 . . . 154 7.4.4 解析モデルの四重安定性 . . . 155 7.4.5 解析モデルの妥当性 . . . 157 共通点 . . . 157 相違点 . . . 159 7.5 まとめ . . . 160

8

結 言

161

参考文献

164

謝 辞

168

付 録

A

簡約化モデルを用いた実験の説明

170

(6)

付 録

C

競争的なバランス実験の説明

175

付 録

D

評定用紙

177

付 録

E

結合双安定振子機構の部品図

180

E.1 はじめに . . . 180 E.2 部品図 . . . 180

付 録

F

実験システムのアニメーション

193

F.1 協調バランス運動の実験システム . . . 193 F.1.1 プログラム例 . . . 193 F.1.2 実験システムのスクリーン . . . 203 F.2 競争的なバランス運動の実験システム . . . 204 F.2.1 プログラム例 . . . 204 F.2.2 実験システムのスクリーン . . . 216

(7)

緒 言

1.1

研究の背景

近年,ロボットは目まぐるしく進化しており,特に,ヒトに身近なロボットや ヒトの生活空間に関わるロボットの進化が目覚ましい.ヒトに身近なロボットの 例として,掃除ロボットやペットロボット,ビルや商業施設の掃除ロボットや警備 ロボット,イベントでの案内ロボットなどが挙げられる.ヒトに直接的に触れるロ ボットの例としては,研究段階ではあるが,介護ロボット [1],歩行補助ロボット [2],作業補助ロボット [3],コミュニケーションロボット [4] などが挙げられる. 現在でも,工場での作業補助ロボットやペットロボットのように,ヒトと一緒に 作業や運動をしたり,ヒトに直接触れたりするようなロボットは存在するが,今 後,このようなロボットがさらに増えてくるであろう.ヒトとロボットが直接的 に触れ合う場合,ロボットは,ヒトに接触して転倒させたり怪我をさせたりしな いように,ヒトの動きに合わせなければならない.先に挙げた研究においてもヒ トとロボットが直接的に触れ合うような状況が考慮され,ヒトの動きをセンサで 読み取り,ロボットがヒトの動きに合わせるということも行われている [3].こう したヒトとロボットが直接的に触れ合う際のヒトの動きを解明することができれ ば,ロボット自身が,ヒトの動きを予測し,それに合わせて動くことができるよ うになると考えられる. その一方で,ヒトの行動には,ヒトの性格やそのときの感情などが大きく影響 を及ぼしていると考えられる,つまり,ヒトの性格や感情などにより,ヒトの行 動が変わってくる.そこで,ヒトとロボットが触れ合う場合に,ヒトの動きだけ でなく,ヒトの性格や感情も考慮することができれば,ロボットがよりヒトの動 きを予測しやすくなり,ヒトに合わせた動きをすることが可能となると思われる. 現在,ヒトの感性や感情を音声 [5] や顔の表情 [6] から判断する研究は行われてい るが,それらを考慮して運動を行うロボットは筆者の知る限り存在しないようで ある. ヒトとロボットが直接的に触れ合う場合のヒトの動きと感情・感性・性格との 関係性を明らかにすることができれば,ヒトを思いやるロボットや相手の性格に

(8)

1.2 研究の目的 合わせた動きができるロボットの実現が可能となる.これにより,ロボットのヒ トの生活空間への進出がより加速すると考えられる. このように,ヒトやロボットが共通の環境を共有するとき,そこには利害の一 致や不一致のダイナミクスが起こる.こうした競合・協調のダイナミクスの解明 に向けては,古くから数理生態学の分野において,系統的な非線形解析が展開さ れてきた [7].その特徴として,支配的なダイナミクスを小自由度モデルで記述す る都合上,個体が有する構造は統計操作等により無視される.一方,工学の分野 では,類似の問題意識が群ロボットの研究に見られるが,そこでは,まさにロボッ ト個体の実現方法を研究する関係上,得られた構造を忠実に集成した群の表現は 大自由度となり,その非線形応答を議論することは必ずしも容易ではない [8, 9]. ここで,両者の困難を解消するようなモデル表現,すなわち,個体単体の非線 形力学特性が協調と競争の直接要因となるようなモデルを新たに構成することが できれば,ヒトとヒトまたはヒトとロボットによる協調的・競争的な状況で起こ る現象を明らかにすることができると考えられる.

1.2

研究の目的

そこで,本研究では次の 5 点を目的として研究を行う.ただし,各項目の詳細 については第 2.5 節で述べる. 1. 個体単体の非線形力学特性が,協調と競争の直接要因となるような小自由度 モデルを提案する. 2. 提案モデルを一対のヒトが協調的にバランスを保った場合の基本的な性質を, 数値シミュレーションおよびヒトによる実験により明らかにする. 3. 感性工学的な手法を導入し,提案モデルを一対のヒトが協調的にバランスを 保った場合の操作と操作から受ける感性との関係性を明らかにする. 4. 自らの働きかけで相手を転倒させようとする状況下においてヒトが獲得する 運動戦略の特徴を明らかにし,その特徴に基づいて被験者の分類を行う. 5. 提案したモデルと同様の四重安定性を現実の四節リンク機構として試作し, その解析モデルを導出する.

(9)

1.3

本論文の構成

本論文の構成は次の通りである. · 第 2 章では,本研究の概要を述べる. · 第 3 章では,協調と競争を表す結合倒立振子モデルの提案を行い,提案した モデルの四重安定性について述べる. · 第 4 章では,数値シミュレーションとヒトによる実験を行い,一対のヒトが 協力的にバランス運動を行う際の基本的性質について述べる. · 第 5 章では,ヒトによる実験により,ヒトの運動と感性を測定し,相関分析 と因子分析を用いて両者の関係性について述べる. · 第 6 章では,競争的な状況下でヒトが創発する運動戦略の特徴について述べ る. · 第 7 章では,第 3 章で述べたモデルと同等の四重安定性を持つ四節リンク機 構およびその解析モデルについて述べる. · 第 8 章では本研究の結言を述べる.

(10)

2

エージェントの協調・競争問題

2.1

はじめに

本章では,第 3 章以降における具体的な議論の前提について述べる.ヒトやロ ボットなどの自律的な個体をエージェントとよぶが,これらのエージェント単体 で起こる問題および複数のエージェントが関係して起こる問題について,これま でに行われてきた研究を挙げ,本研究の必要性を明らかにする. 第 2.2 節では,エージェントの最も単純な例である倒立振子に注目し,エージェ ント単体における倒立安定化問題や振り上げ制御問題について述べる.また,現 実問題,ヒトやロボットなどのエージェントに関しては,転倒という問題が生じ るため,エージェントの転倒問題について述べる.第 2.3 節では,複数のエージェ ントが協力的に運動や荷物の搬送を行うような,エージェント間の協調問題につ いて述べる.第 2.4 節では,本研究で提案する機構と同種の四節リンク機構につい て述べる. 以上に基づき,第 2.5 節では,これまでの研究において扱われていない問題を明 らかにし,第 3 章以降における具体的な議論の必要性を明らかにする.

(11)

2.2

エージェント単体に関する問題

エージェントの最も単純な一例として,倒立振子が挙げられる.この倒立振子 の振り上げ制御や安定化制御に関して,これまでに多くの研究がなされている. 倒立振子の安定化制御に関しては,森田ら [10] による選択的不感化ニューラル ネットを用いた強化学習による倒立振子の安定化制御,関口ら [11] による二つの 独立した平行な駆動輪を持った車輪型倒立振子の安定化制御のための制御系設計 などがある. 倒立振子の振り上げ制御に関しては,高橋ら [12] によるプレイバック制御やイ ンテリジェントコントローラを用いたトルクに制限がある場合の倒立振子の振り 上げ制御,吉田ら [13] による台車の振幅制限を考慮した振り上げ制御則と安定化 制御則の提案などがある. また,倒立振子を直列に接続した二重倒立振子においても,江村ら [14] による 振子の先端に取り付けられた反動車の反動力による倒立振子の安定化制御,成川 ら [15] による遺伝アルゴリズムを用いた二重倒立振子の振り上げ制御と安定化制 御による目標の平衡点への移行などの研究がある. 一方で,ヒトやロボットなどのエージェントの例を考えると,これらのエージェ ントは,何らかの要因でエージェントの立位制御が切れたしまった場合や自身の 傾きが制御可能な範囲を超えてしまった場合,エージェントは立位状態を保てな くなり,転倒を起こしてしまう.例えば,ヒトは蹴躓いたり押されたりしてバラ ンスが崩れると簡単に倒れてしまう.また,ヒト型や倒立振子型のロボットも立 位制御が切れたり,体の傾きが立位制御可能な範囲を超えてしまうと倒れてしま う.このように,立位状態が不安定平衡点であるようなエージェントに関しては, エージェントの転倒問題が常に関わってくる. このような転倒問題は重要な問題であり,ヒトの転倒問題に関しては,山本ら [16]は高齢歩行者の転倒のモデル化を行っており,Smeesters ら [17] は実験により ヒトの転倒条件と傷害の関係性を明らかにしている. また,ヒト型ロボットに関しては転倒を防止するという側面からの研究が多く なされており,柿本ら [18] による小型ヒト型ロボットの不安定な足場での姿勢の 安定化制御,丸山ら [19] による強化学習を用いたヒト型ロボットの転倒回避ステッ プ動作などがある.ヒト型のロボットの転倒状態から立位状態への回復に関して は,金広ら [20] によるヒトと同等サイズのヒト型ロボットを用いた研究がある.

(12)

2.3 複数のエージェントに関する問題

2.3

複数のエージェントに関する問題

第 2.2 節で述べたように,エージェント単体に関しては数多くの議論がなされて いるが,現実世界のエージェントを考えると,エージェント単体のみで存在する ことは少なく,複数のエージェントが同時に存在し,お互いに影響を及ぼし合う 状況にあると考えるのが自然である.複数のエージェントが共通の資源や環境を 共有するとき,そこには利害の一致や不一致のダイナミクスが起こる.このよう な協調と競争の相互作用に関しても,これまでに多くの研究例が存在する. 複数のエージェント間の協調・競争問題に関して,数理生態学の分野において は,各個体が個別に遂行する局所ルールを,多体極限によって捨像するようなア プローチがとられる.この場合,集団が表す群行動は,小自由度の非線形力学系 の相軌道として記述され,群行動の安定性や分岐構造などが明瞭に議論される [7]. しかしながら,数理生態学的なアプローチでは,支配的なダイナミクスを小自由 度モデルで記述する都合上,個体単体としての力学特性がモデルに表現されない という特徴がある. 自律分散型ロボットシステム (DARS) の分野においては,昆虫や鳥,魚のよう な生物の群れにおける群知能の発言を実現するために,個体間の自己組織化,協 調手法などが論じられる [8, 9].しかしながら,各個体の力学特性は考慮されるが, それらを忠実に集成した群の表現は,大自由度の力学系となり,その非線形応答 を議論することは必ずしも容易ではない. また,複数のエージェントが協調して物体を運ぶ協調搬送の分野においては,李 ら [21] による 2 台の移動ロボットを用いた分散制御による長尺物の運搬に関する 研究,Inoue ら [22] による学習を用いたヒト型ロボットによる協調搬送システム, Shaoら [23] による魚型ロボットによる水中での協調輸送などがある. 2つのエージェント間の協調問題に関しては,井口 [24] は,2 人以上の制御者を 含む手動制御系においてヒトによる実験により基礎的な性質を明らかにした.星 野ら [25] は,1 つの倒立振子の制御を協調して行う 2 つのエージェントに対して, 学習による安定化制御を適用した. 本研究では,特に,2 台の倒立振子の振子先端同士をリンクなどで接続した結合 倒立振子に着目するが,この結合倒立振子に関して,Song ら [26] は,振子の先端 同士をばねで接続した倒立振子を用い,接続したばねのばね定数が明らかでない 場合のファジィ制御に関する研究を行った.Fradkov ら [27] は,二重倒立振子同士 を弾性体のリンクで接続した際の安定化と同期に関する研究を行った.杉江ら [28]

(13)

2.4

現実の四節リンク機構

本論文で提案する結合倒立振子は,四節リンク機構の一種とみなすことができ るが,同種の機構についてもこれまでに多くの研究がみられる. 森田ら [29] による四節クランクレバー機構の節点力作用方向の急変化を改善す ることを目的とした動力学的な設計法,Vahit Mermertas[30] による四節平面マニ ピュレータの最適な運動学的設計法の提案,鳥居ら [31] による弾性四節リンク機 構において実験的にパラメータを同定する方法の提案,渡辺ら [32] による非グラ スホフ平面四節リンク機構の 1 周期運動を安定化するための新しい駆動法の提案, A. Trevisani[33]による四節フレキシブルリンク機構における位置制御などがある. しかしながら,これらの 4 節リンク機構は全てのリンクが固定長か,もしくは 微小変形する場合のみを扱っており,リンクの1つが自由に伸縮するような構造 は考慮されていない.現段階ではエージェント間の協調・競争問題を表現可能な モデルを,具体的な四節リンク機構として実装した例は存在しないようである.

(14)

2.5 本研究での課題

2.5

本研究での課題

第 2.2 節∼第 2.3 節で述べた先行研究で取り扱われている主な問題と本研究で扱 う問題を表 2.1 にまとめた. 表 2.1: 先行研究における各種問題の取り扱い 安定化   転倒    協調的 状況  競争的 状況  個体の力学 特性の考慮  小自由度 モデル  森田ら [10] など ○ × × × ○ ○ 高橋ら [12] など ○ × × × ○ ○ 柿本ら [18] など ○ × × × ○ × 山本ら [16] など × ○ × × ○ ○ 数理生態学 [7] ○ × ○ ○ × ○ DARS[8, 9] ○ × ○ × ○ × 李ら [21] など ○ × ○ × ○ × 杉江ら [28] など ○ × ○ × ○ ○ 本研究 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 表 2.1 に示した先行研究では,エージェント単体の問題に関して,エージェント の安定化を主としており,エージェントが転倒状態に移行するといった状況は考 慮されていない.山本ら [16] は高齢歩行者の転倒のモデル化を行っている.また, 複数のエージェントに関する問題に関しても,エージェント間の協調的な安定を 主としており,2 つ以上のエージェントが結合した結合系でのエージェント転倒を 考慮した議論はなされていない. そこで,本研究では,まず第 3 章で,数理生態学的 [7] なアプローチとロボット 工学的 [8, 9, 21] なアプローチの中間に位置するような立場で,個体単体の非線形 力学特性が協調と競争の直接要因となるような問題を考える.そのための新しい アプローチとして,個体が有する機械的な個別性を捨象することなく,生態系モ デルと同等な非線形ダイナミクスを発現可能な協調と競争の小自由度モデルを提 案する.モデルの具体例として,PD 制御によって倒立安定化された 2 台の倒立振 子の振子先端同士をリンク棒で結合した結合倒立振子モデルを提案する.

(15)

調的なバランス運動の基本的な性質を解明する.また,数値シミュレーションの 制御器をヒトの視覚性運動に置き換える実験システムを開発し,実際のヒトの協 調的なバランス運動の特徴を実験的に解明する.ヒトが倒立振子モデルおよび結 合倒立振子モデルを操作した場合でもシミュレーションと同様な性質を示すのか, シミュレーション結果と比較・検証する. さらに,こうしたヒトの協調的なバランス運動においては,自他の感情や感性 の効果が無視できないと考えるのが自然である.そこで,第 5 章では,感性工学 的な手法を導入し,ヒトの協調的なバランス運動におけるヒトの操作と感性・感 情との関連を明らかにする.具体的には,実際にヒトが結合倒立振子モデルを操 作可能な実験システムを開発し,一対のヒトによる協力的なバランス運動の測定 実験を行い,実験後に被験者が自分および相手の操作から受けた感性を測定する. ヒトの操作と感性の測定結果を用いて相関分析および因子分析を行うことにより, ヒトの運動とヒトが自他の操作から受ける感性との関係性を明らかにする. エージェント間の協調問題をあつかう上で,エージェントの転倒は切り離すこ とのできない問題である.そこで,第 6 章では,第 3 章で提案した結合倒立振子 モデルの片方の制御入力にバンバン入力を付加することで,自らの働きかけによ り相手を転倒させる問題を扱う.特に,ヒトにこうした入力を獲得させることに より,ヒトが相手を倒そうとする状況下でヒトが獲得する運動戦略の特徴を明ら かにする.具体的には,結合倒立振子モデルの片方の制御入力にバンバン入力を 付加し,相手を倒すことのできる条件を数値計算で明らかにする.次に,ヒトが 実際に結合倒立振子モデルにバンバン入力を付加できる実験システムを開発する. 実験結果と計算結果を比較し,実験の試行回数の増大に伴ってヒトはどのような 運動戦略をとるのか,その傾向や特徴を明らかにする. 最後に,第 7 章では,第 3 章で提案したエージェント間の協調・競争問題を表現 可能な結合倒立振子モデルを,現実の四節リンク機構として試作する.また,試 作した四節リンク機構の解析モデルを導出し,両者の各振子の初期角度に対する 応答の吸引域を比較することにより,導出した解析モデルの妥当性を示す.

(16)

2.6 まとめ

2.6

まとめ

本章では,第 3 章以降における具体的な議論の前提について述べた. 第 2.2 節では,エージェントの最も単純な例である倒立振子に注目し,エージェ ント単体における倒立安定化問題,振り上げ制御問題について述べた.また,エー ジェントの転倒問題について述べた.第 2.3 節では,複数のエージェントが協力的 に運動や荷物の搬送を行うような,エージェント間の協調問題について述べた.第 2.4節では,本研究で提案する機構と同種の四節リンク機構について述べた. 以上に基づき,第 2.5 節では,これまでの研究において扱われていない問題を明 らかにし,第 3 章以降における具体的な議論の必要性を明らかにした.

(17)

協調と競争を表す機械モデル

3.1

はじめに

本章では,まず,これまでの研究で用いられている一般的な倒立振子モデルお よびその双安定性について述べる.次に,協調と競争のダイナミクスを有する機 械モデルの具体例として,結合倒立振子モデルを提案し,提案した結合倒立振子 モデルの四重安定性について述べる. 第 3.2 節では,一般的な倒立振子の力学モデルを示し,運動方程式の導出の概 要を示す.また,PD 制御器による倒立振子モデルの双安定性について述べる.第 3.3節では,協調と競争のダイナミクスを有する機械装置の具体的な例として,第 3.2節で述べた倒立振子モデルを 2 台の振子先端同士を剛体リンクで接続した結合 倒立振子モデルを提案し,PD 制御器による四重安定性について述べる.また,ペ ナルティ法を用いて結合倒立振子モデルの運動方程式を導出する.第 3.4 節では, 数値シミュレーションにより,第 3.3 節で提案した結合倒立振子モデルが四重安定 性を持つことを確かめる.

(18)

3.2 倒立振子モデル

3.2

倒立振子モデル

本節では,平衡維持制御の最単純モデルとして広く用いられている一般的な倒立 振子について述べる.第 3.2.1 節では倒立振子の力学モデルについて示し,第 3.2.2 節では Lagrange 形式の解析力学 [34] による運動方程式の導出について要約する. 第 3.2.3 節では,倒立振子モデルのポテンシャルを求め,PD 制御器により倒立振 子モデルが双安定性を持つことを明らかにする.

3.2.1

力学モデル

一般的な倒立振子の力学モデルを図 3.1 に示す. 図 3.1: 倒立振子の力学モデル 台車 A は水平方向に直進運動を行い,振子 B は A 点を中心に回転運動を行う. 台車および振子は同一の垂直平面上で運動するものとする.台車 A の重心の水平

(19)

図 3.1 の倒立振子モデルの各システムパラメータを表 3.1 に示す. 表 3.1: 一般的な倒立振子モデルのシステムパラメータ m [kg] 台車 A および振子 B の質量 r [m] 振子 B の長さ g [m/s2] 重力加速度 x [m] 台車 A の位置 θ [rad] 振子 B の鉛直方向からの角度 u(t) [N] x方向に作用する外力 E(t) [N· m] θ方向に作用する外力

(20)

3.2 倒立振子モデル

3.2.2

運動方程式の導出

図 3.1 に示した倒立振子モデルの運動方程式の導出過程の概要を示す. 一般化座標を x,θ とすると,台車の重心 (X1, Y1)と振子の重心 (X2, Y2)の座標 はそれぞれ (X1, Y1) = (x, 0), (X2, Y2) = (x + r sin θ, r cos θ) (3.1) で表される.倒立振子系の運動エネルギー T と位置エネルギー U は T = m ˙x2+ 1 2mr 2θ˙2+ mr ˙x ˙θ cos θ U = mgr cos θ (3.2) となる.また,簡単のため振子系におけるエネルギーの散逸は導出時には無視し て,散逸関数 D を D = 0 (3.3) とする.振子系に作用する外力は水平方向と回転方向の制御入力を考えるので,一 般化力 Q0iは x 方向,θ 方向それぞれ Q01 = u(t), Q02 = E(t) (3.4) となる. これらを Lagrange の運動方程式 d dt ( ∂T ∂ ˙qi ) ∂T ∂qi + ∂U ∂qi +∂D ∂ ˙qi = Q0i (i = 1,· · · , n) (3.5) に代入することで運動方程式が得られる.なお,n は物体の自由度である.倒立振 子のモデルでは n = 2 であり,q1 = x,q2 = θである.以上より,倒立振子モデル の運動方程式は,式 (3.6) のように 2 階非線型微分方程式として求まる.   

2m¨x + mr ¨θ cos θ− mr ˙θ2sin θ = u(t),

(21)

3.2.3

双安定性

倒立振子モデルの台車 A および振子 B に加える制御入力を

u(t) = r(K sin θ + L ˙θ cos θ), E(t) = 0 (3.7) とおくことで,台車 A と振子 B の水平方向の相対変位に関する PD 制御を行う.こ の PD 制御器は,振子の上死点側と下死点側に対象な制御力を発生し,倒立振子 に双安定性を持たせる. この PD 制御器を持った倒立振子モデルのポテンシャルを図 3.2 に示す.

-5

0

5

10

15

20

25

-

π

0

π

U

pd

θ

[rad]

U

pd 図 3.2: 倒立振子モデルのポテンシャル 図 3.2 の横軸は振子の角度 θ,縦軸はポテンシャル Updの値である.図 3.2 より, 倒立振子モデルのポテンシャルは,θ = 0,±π の 3 点で極小となる.したがって, 倒立振子モデルの振子 B は,振子の上死点 (θ = 0) と下死点 (θ =±π) のときに安 定平衡点となる. 以上より,図 3.1 の倒立振子モデルは,式 (3.7) の PD 制御器により,双安定性 を有する.

(22)

3.3 結合倒立振子モデルの提案

3.3

結合倒立振子モデルの提案

本節では,協調と競争のダイナミクスを有し,全てのシステムパラメータを機 械工学的に同定可能な機械装置について述べる. 第 3.3.1 節では,協調と競争を表す機械装置の概念について述べる.第 3.3.2 節 では,第 3.2 節で述べた倒立振子モデルを 2 台用意し,それらの振子先端同士を剛 体リンクで接続した結合倒立振子モデルについて述べ,第 3.3.3 節では,結合倒立 振子モデルの四重安定性について述べる.第 3.3.4 節では,ペナルティ法により結 合倒立振子モデルの運動方程式を導出する.

3.3.1

協調と競争を表す機械モデル

数理生態学 [7] の競争モデルと類似の協調・競争ダイナミクスを発現し,なおか つ全てのシステムパラメータを機械工学的に同定可能なモデルを見出すために,図 3.3に示すような自律的な機械装置 (エージェント) が機械的連鎖を介して相互作用 するような仕組みを考える. 図 3.3: 協調と競争を表す機械装置の概念図

(23)

3.3.2

結合倒立振子モデル

図 3.3 に示した機械装置の具体的なモデルを図 3.4 に示す. 図 3.4: 協調と競争のダイナミクスを有する機械装置の具体例 このモデルは,制御入力 ui(t)および Ei(t)(i = 1, 2)により倒立安定化された等 価な倒立振子 A1B1,A2B2の振子先端同士を長さ `0の剛体リンク B1B2で接続し たものである. 台車 A1,A2はそれぞれ同一水平方向に直進運動を行い,振子 B1,B2は同一の 垂直平面上で回転運動するものとする.台車 A1,A2の水平方向の位置をそれぞれ x1,x2,振子 B1,B2の鉛直方向からの角度をそれぞれ θ1,θ2とする.また,xi向に作用する外力を ui(t),θi方向に作用する外力を Ei(t)とする.この力学モデル を結合倒立振子モデルと呼ぶ.

(24)

3.3 結合倒立振子モデルの提案 図 3.4 の各システムパラメータを表 3.2 に示す. 表 3.2: 結合倒立振子モデルのシステムパラメータ m [kg] 台車 A1,A2および振子 B1,B2の質量 r [m] 振子 B1,B2の長さ `0 [m] リンク B1B2の長さ cx [Ns/m] x1,x2方向の減衰係数 [Nms] θ1,θ2方向の減衰係数 g [m/s2] 重力加速度 x1 [m] 台車 A1の位置 x2 [m] 台車 A2の位置 θ1 [rad] 振子 B1の鉛直方向からの角度 θ2 [rad] 振子 B2の鉛直方向からの角度 u1(t) [N] x1方向に作用する外力 u2(t) [N] x2方向に作用する外力 E1(t) [N· m] θ1方向に作用する外力 E2(t) [N· m] θ2方向に作用する外力

(25)

3.3.3

四重安定性

結合倒立振子モデルの各台車 Aiおよび振子 Biに加える制御入力を ui(t) = r(K sin θi+ L ˙θicos θi), Ei(t) = 0 (i = 1, 2) (3.8) とおくことで,台車 Aiと振子 Biの水平方向の相対変位に関する PD 制御を行う. この PD 制御器は,振子の上死点側と下死点側に対象な制御力を発生するので, `0 > 2rの条件下で適当なゲイン K,L を選ぶと,各振子の上死点と下死点は,全 ての組み合わせにおいて安定平衡点となり,4 状態 1, θ2) = ξ1 := (0, 0), ξ2 := (0, π), ξ3 := (π, 0), ξ4 := (π, π) (3.9) からなる四重安定性 (quadra-stability) が現れる.表 3.3 に式 (3.9) で示した結合倒 立振子モデルの 4 つの姿勢を示す. 表 3.3: 結合倒立振子モデルの各振子の姿勢とその組み合わせ 振子 A2B2(青色の振子) θ2 = 0 θ2 = π 振子 A1 B1 (赤色の振子 ) θ1 = 0 θ1 = π

(26)

3.3 結合倒立振子モデルの提案

3.3.4

ペナルティ法

図 3.4 に示した結合倒立振子モデルの運動方程式を式 (3.10) に示す.                        2m¨xi+ mr cos θiθ¨i− mr ˙θi2sin θi = ui+ λ ∂φ ∂xi , cos θix¨i+ r ¨θi− g sin θi = 1 mrEi(t) + λ mr ∂φ ∂θi , φ := (r cos θ1− r sin θ2)2 +(r sin θ1 − r sin θ2+ x1− x2)2− l2 = 0 (i = 1, 2) (3.10) 式 (3.10) に示した結合倒立振子モデルの具体的な挙動を得るためには,微分代 数方程式 (DAE) を解かなければならない.しかしながら,DAE の直接的な数値 計算法は発展途中にある.例えば,拡大法 [35] などの汎用解法は位置拘束の不定 性を有するため,図 3.4 のリンク構造が各対偶 Biの部分で数値的に大きく分離す る等の困難が生じる.そこで,本研究ではペナルティ法 (penalty method) を用い, DAEと等価な常微分方程式を導くことで,図 3.4 の結合倒立振子モデルの数値解 を求める.

(27)

図 3.4 の剛体リンク B1B2を,同じ自然長 `0のばねとダンパを持った柔軟リンク に置き換えると,図 3.5 に示すような近似モデルが得られる.このモデルの支配方 程式は,通常の常微分方程式となるので,DAE の数値解法の問題が回避される. 柔軟リンクのばねのばね定数とダンパの減衰係数が十分に大きいとき,図 3.5 の近 似モデルは図 3.4 の挙動をよく再現する.このような近似解法を一般に,ペナル ティ法という. 図 3.5: 剛体リンクをばねとダンパを持った柔軟リンクに置き換えた近似モデル 台車 A1,A2はそれぞれ同一水平方向に直進運動を行い,振子 B1,B2は同一の 垂直平面上で回転運動するものとする.台車 A1,A2の水平方向の位置をそれぞれ x1,x2,振子 B1,B2の鉛直方向からの角度をそれぞれ θ1,θ2とする.また,xi向に作用する外力を ui(t),θi方向に作用する外力を Ei(t)とする.

(28)

3.3 結合倒立振子モデルの提案 図 3.5 の近似モデルの各システムパラメータを表 3.4 に示す. 表 3.4: 結合倒立振子モデルのシステムパラメータ m [kg] 台車 A1,A2および振子 B1,B2の質量 r [m] 振子 B1,B2の長さ ` [m] リンク B1B2の長さ `0 [m] リンク B1B2の自然長 cx [Ns/m] x1,x2方向の減衰係数 [Nms] θ1,θ2方向の減衰係数 k` [N/m] リンク B1B2の内的ばね定数 c` [Ns/m] リンク B1B2の内的粘性係数 g [m/s2] 重力加速度 x1 [m] 台車 A1の位置 x2 [m] 台車 A2の位置 θ1 [rad] 振子 B1の鉛直方向からの角度 θ2 [rad] 振子 B2の鉛直方向からの角度 u1(t) [N] x1方向に作用する外力 u2(t) [N] x2方向に作用する外力 E1(t) [N· m] θ1方向に作用する外力 E2(t) [N· m] θ2方向に作用する外力

(29)

図 3.5 に示した結合倒立振子モデルの近似モデルの運動方程式を導出する. 一般化座標を x1,θ1,x2,θ2とすると,台車 A1の重心の座標 (X1,Y1),振子 B1 先端部の質点の座標 (X2,Y2),台車 A2の重心の座標 (X3,Y3),振子 B2先端の質点 の座標 (X4,Y4)の座標はそれぞれ                (X1, Y1) = (x1, 0), (X2, Y2) = (x1 + r sin θ1, r cos θ1), (X3, Y3) = (x2, 0), (X4, Y4) = (x2 + r sin θ2, r cos θ2) (3.11) で表される.結合倒立振子系の運動エネルギー T は T = m( ˙x21+ ˙x22) + mr( ˙x1θ˙1cos θ1+ ˙x2θ˙2cos θ2) + 1 2mr 2( ˙θ2 1+ ˙θ 2 2) (3.12) となる.同様に,重力による位置エネルギー UaUa= mgr(cos θ1+ cos θ2) (3.13) となる.また,柔軟リンクのばねの伸び `s`s = `− `0 =√∆X2+ ∆Y2− ` 0 となる.ただし    ∆X = r cos θ2− r cos θ1,

∆Y = r sin θ2− r sin θ1+ x2− x1

(3.14) である.よって,ばねによる弾性エネルギー UsUs= 1 2k``s 2 (3.15) となる.したがって,全体の位置エネルギーは U = Ua+ Us = mgr (cos θ1+ cos θ2) + 1 2k``s 2 (3.16) となる.また,x1,x2方向の減衰係数を cx,θ1,θ2方向の減衰係数を cθ,柔軟リ ンクのダンパに関する減衰係数を c`とおくと散逸関数 S は

(30)

3.3 結合倒立振子モデルの提案 となる.結合倒立振子系に作用する外力は水平方向と回転方向の制御入力を考え るので,一般化力 Q0iは x1方向,θ1方向,x2方向,θ2方向それぞれ Q01 = u1(t), Q02 = E1(t), Q03 = u2(t), Q04 = E2(t) (3.18) となる. これらを式 (3.5) の Lagrange の運動方程式に代入することで近似モデルの運動方 程式が得られる.結合倒立振子モデルでは自由度が n = 4 であり,q1 = x1,q2 = θ1, q3 = x2,q4 = θ2である.式 (3.12)∼式 (3.18) を式 (3.5) に代入することにより,結 合倒立振子モデルの運動方程式は,式 (3.19) のように 4 連立の 2 階非線形微分方 程式となる.                                                            2m¨x1+ mr ¨θ1cos θ1− mr ˙θ12sin θ1 + cx˙x1 +k` 2 · ∂`2 s ∂x1 + c` 2 · ∂ ˙`2 ∂ ˙x1 = u1(t), mr ¨x1cos θ1+ mr2θ¨1+ cθθ˙1− mgr sin θ1 +k` 2 · ∂`2 s ∂θ1 +c` 2 · ∂`2 ∂ ˙θ1 = E1(t), 2m¨x2+ mr ¨θ2cos θ2− mr ˙θ22sin θ2 + cx˙x2 +k` 2 · ∂`2s ∂x2 + c` 2 · ∂ ˙`2 ∂ ˙x2 = u2(t), mr ¨x2cos θ2+ mr2θ¨2+ cθθ˙2− mgr sin θ2 +k` 2 · ∂`2s ∂θ2 +c` 2 · ∂`2 ∂ ˙θ2 = E2(t) (3.19) ただし                ` =√∆X2+ ∆Y2, `s = `− `0 = ∆X2+ ∆Y2− ` 0, ∆X = r cos θ2− r cos θ1,

∆Y = r sin θ2− r sin θ1+ x2− x1

(3.20)

(31)

3.4

結合倒立振子モデルの初期値依存性

本節では,第 3.3 節で述べた結合倒立振子モデルの運動方程式を用いて,初期角 度に対する応答を求める数値シミュレーションを行う. 第 3.4.1 節では,運動方程式の一階化について述べ,第 3.4.2 節では,数値シミュ レーションの条件について述べる.第 3.4.3 節では,数値シミュレーションの結果 を示し,結合倒立振子モデルが四重安定性を持つことを確かめる.

3.4.1

運動方程式の一階化

式 (3.19) の一階化を行う.式が複雑になるので,いくつかの項をまとめて                                A = mr ˙θ12sin θ1− cx˙x1 k` 2 · ∂`s2 ∂x1 −c` 2 · ∂`2 ∂ ˙x1 , B =−cθθ˙1+ mgr sin θ1 k` 2 · ∂`2s ∂θ1 c` 2 · ∂`2 ∂ ˙θ1 , C = mr ˙θ22sin θ2− cx˙x2 k` 2 · ∂`2s ∂x2 c` 2 · ∂ ˙`2s ∂ ˙x2 , D =−cθθ˙2+ mgr sin θ2 k` 2 · ∂`2s ∂θ2 c` 2 · ∂`2s ∂ ˙θ2 (3.21) とおく.さらに x1 := y1, dx1 dt := y2, θ1 := y3, 1 dt := y4, x2 := y5, dx2 dt := y6, θ2 := y7, 2 dt := y8 (3.22) とすると,一階化した式は                                dy1 dt = y2, dy2 dt = Amr2− Bmr cos θ1 m2r2(2− cos2θ 1) , dy3 dt = y4, dy4 dt = Amr cos θ1− 2Bm m2r2(2− cos2θ 1) , dy5 dt = y6, dy6 dt = Cmr2− Dmr cos θ2 m2r2(2− cos2θ 2) , dy7 dt = y8, dy8 dt = Cmr cos θ2− 2Dm m2r2(2− cos2θ 2) (3.23) となる.

(32)

3.4 結合倒立振子モデルの初期値依存性

3.4.2

数値シミュレーション条件

数値シミュレーション条件を示す. • 数値積分法:Runge-Kutta-Gill 法 • 積分刻み:0.01[s] • フィードバックゲイン:K = 100,L = 10 数値シミュレーションに用いるシステムパラメータ値を表 3.5 に示す. 表 3.5: 結合倒立振子モデルのシステムパラメータ値 台車 A1,A2および振子 B1,B2の質量 m = 1.0 [kg] 振子 B1,B2の長さ r = 0.3 [m] 柔軟リンク B1B2の自然長 `0 = 1.0 [m] 柔軟リンク B1B2の内的ばね定数 k` = 5× 104 [N/m] 柔軟リンク B1B2の内的粘性係数 c`= 5.0 [Ns/m] x1,x2方向の減衰係数 cx= 1.0 [Ns/m] θ1,θ2方向の減衰係数 = 1.0 [Nms] 重力加速度 g = 9.8 [m/s2] 初期角度 θ1(0),θ2(0)は,それぞれ−π ≤ θ1 ≤ π,−π ≤ θ2 ≤ π の範囲で 設定し,初期角度の刻みは π/250[rad] とした.また,その他の初期条件として, x1(0) = 0[m], ˙x1 = ˙x2 = 0[m/s], ˙θ1 = ˙θ2 = 0[rad/s]とした.

(33)

3.4.3

数値シミュレーション結果

数値シミュレーションにより得られた結果を吸引域としてまとめたものを図 3.6 に示す.吸引域とは,式 (3.9) に示した 4 つの安定した姿勢 ξi(i = 1, 2, 3, 4)へ至る 初期角度 (θ1(0), θ2(0))の集合である. 図 3.6 の横軸は初期角度 θ1(0),縦軸は初期角度 θ2(0)であり,それぞれの初期 角度は領域 [−π, π] × [−π, π] を等分割した 500 × 500 の直交格子上に配置した. また,結合倒立振子モデルの最終的に安定した姿勢を,白,赤,青,黒の 4 色に 色分けした.白色の領域が ξ1((θ1, θ2) = (0, 0))に属する初期角度,赤色の領域が ξ2((θ1, θ2) = (0, π))に属する初期角度,青色の領域が ξ3((θ1, θ2) = (π, 0))に属する 初期角度,黒色の領域が ξ4((θ1, θ2) = (π, π))に属する初期角度である.

-

π

0

π

-

π

0

θ

π

1

(0)

θ

2

(0)

図 3.6: 結合倒立振子モデルの吸引域 図 3.6 の吸引域は 4 色に塗り分けられていることから,結合倒立振子モデルは初

(34)

3.4 結合倒立振子モデルの初期値依存性 可能であることがわかる. 初期姿勢 (θ1(0), θ2(0))に応じて 4 状態のいずれかに到達していることから,結 合倒立振子モデルは初期値依存性を有する.また,結合倒立振子モデルの左右対 称性から,直線 θ1(0) + θ2(0) = 0に関して対象な結果が得られている.さらに,4 状態の全てに隣接する点の存在が (θ1, θ2) ≈ (±π/2, ±π/2),(±π/2, ∓π/2) 付近に 確認できる.これらの隣接点近傍では,初期姿勢のわずかな変化により全ての姿 勢へ移行可能であることから,結合倒立振子モデルは初期値敏感性を有する. 以上より,図 3.4 の結合倒立振子モデルは,各台車 A1,A2に付加した PD 制御 器 u1(t),u2(t)によって,四重安定性を持つことを確かめた.

(35)

3.5

まとめ

本章では,まず,一般的な倒立振子モデルおよびその双安定性について述べた. 次に,協調と競争のダイナミクスを有する機械モデルの具体例として,結合倒立 振子モデルを提案し,提案した結合倒立振子モデルの四重安定性について述べた. 第 3.2 節では,これまでの研究で用いられている一般的な倒立振子の力学モデ ルと運動方程式を示した.また,PD 制御器による倒立振子の双安定性について述 べた.第 3.3 節では,協調と競争のダイナミクスを有し,すべてのシステム・パラ メータを機械工学的に同定可能な結合倒立振子モデルを提案し,PD 制御器による 四重安定性について述べた.また,ペナルティ法を用いて結合倒立振子モデルの 運動方程式を導出した.第 3.4 節では,数値シミュレーションにより,初期角度に 対する応答を求め,その結果を吸引域として示した.また,結合倒立振子モデル の吸引域より,提案した結合倒立振子モデルが初期値依存性,初期値敏感性を有 することを明らかにし,四重安定性を持つことを確かめた.

(36)

4

ヒトによる協調的なバランス運動

4.1

はじめに

本章では,数値シミュレーションおよびヒトによる実験により,一対のヒトが 協力的にバランス運動を行った際の基本的な性質を明らかにする. 第 4.2 節では,第 3.2 節で述べた倒立振子モデルと第 3.3 節で提案した結合倒立 振子モデルについて,それぞれ簡約化および低次元化を行い,小自由度モデルを 導出する.第 4.3 節では,第 4.2 節で導出した小自由度モデルに対し,ヒトの反応 遅れとゆらぎを考慮した拡張を行い,数値シミュレーションにより一対のヒトが 行う協調的なバランス運動の基本的な性質を明らかにする.第 4.4 節では,第 4.3 節の数値シミュレーションに用いた制御器を,ヒトの視覚性運動に置き換えるた めの実験システムについて述べる.第 4.5 節では,第 4.4 節で述べた実験システム を用いた実験について述べ,ヒトによる実験においても,一対のヒトが行う協力 的なバランス運動の基本的な性質を明らかにする.

(37)

4.2

小自由度モデルの導出

本節では,第 3 章で述べた倒立振子モデルおよび結合倒立振子モデルの簡約化 について述べる. 第 4.2.1 節では,倒立振子モデルの簡約化について述べ,第 4.2.2 節では,結合倒 立振子モデルの簡約化について述べる.倒立振子の簡約化については Borman [36] や Cabrera [37] などによって行われているが,結合倒立振子の簡約化については 前例はない.

4.2.1

倒立振子の簡約化〔単体モデル〕

本節では,第 3.2 節で述べた倒立振子モデルの簡約化について述べる. 図 3.1 に示すような一般的なの倒立振子は 2 次元 2 自由度の非線形モデルである. このモデルを簡約化し,1 次元 2 自由度の線形モデルを提案する. 倒立振子モデルの簡約法として,まず,図 3.1 の視点を変え,モデルを上部から 見る.これにより,台車及び振子先端の質点は同一直線上を運動するとみなすこ とができる.次に,台車と質点をばね定数が負の仮想的なばねで接続する.これ により,質点間に逆比例する復元力が現れる.低次元化して 1 次元で考えたこと で,図 4.1 に示すように θ = ±π[rad] の安定平衡点が消え,θ = 0[rad] の不安定平 衡点 (サドル) のみであると近似できる. 図 4.1: 倒立振子モデルの平衡点の近似

(38)

4.2 小自由度モデルの導出 以上により,図 3.1 の 2 次元 2 自由度の倒立振子の力学モデルを図 4.2 に示すよ うに,1 次元 2 自由度のモデルに簡約化することができた.このモデルを単体モデ ルと呼ぶ.また,倒立振子の台車にあたる質点 A をコントローラ A,振子先端に あたる質点 B をターゲット B とし,ばねによる弾性力はターゲットのみに作用す るとする. 図 4.2: 単体モデルの力学モデル 図 4.2 に示した力学モデルの各システムパラメータを表 4.1 に示す. 表 4.1: 単体モデルのシステムパラメータ m [kg] コントローラ A およびターゲット B の質量 xm [m] コントローラ A の位置 xt [m] ターゲット B の位置 −α [N/m] 仮想的なばねのばね定数 u(t) [N] 制御入力

(39)

Lagrangeの運動方程式 (式 (3.5)) を用いて導出した単体モデルの運動方程式は    m¨xt+ c ˙xt− α(xt− xm) = 0, m¨xm+ c ˙xm = u(t) (4.1) となる.さらに,この 1 次元 2 自由度の運動方程式の低次元化を行い,1 次元 1 自 由度の運動方程式を得る.このために,ターゲット B とコントローラ A の位置の 差をバランス誤差 ∆x とすると ∆x := xt− xm (4.2) と表わせる.運動方程式にバランス誤差を取り入れるために,式 (4.1) の辺々を減 じると m (¨xt− ¨xm) + c ( ˙xt− ˙xm)− α(xt− xm) = −u(t) (4.3) となり,式 (4.2) を代入すると m∆¨x + c∆ ˙x− α∆x = −u(t) (4.4) となる.よって,単体モデルの 1 次元 2 自由度の運動方程式 (式 (4.1)) を,1 次元 1自由度に簡約化することができた. 以上の方法により,2 次元 2 自由の非線形モデルをを 1 次元 1 自由度の線形モデ ルに簡約化することができた.

(40)

4.2 小自由度モデルの導出

4.2.2

結合倒立振子モデルの簡約化〔結合モデル〕

本節では,第 3.3 節で述べた結合倒立振子の簡約化について述べる. 図 3.4 に示した結合倒立振子モデルは 2 台の倒立振子モデルの振子先端同士をリ ンク棒で接続したものである.これと同様に,2 台の単体モデルのターゲット (倒 立振子モデルの振子先端に相当) 同士をリンク棒で接続する.このモデルを結合モ デルとよぶ.以上により,図 3.4 に示した 2 次元 4 自由度の結合倒立振子モデルを, 図 4.3 に示すように 1 次元 4 自由度に簡約化することができた. 図 4.3: 結合モデルの力学モデル 図 4.3 に示した力学モデルの各システムパラメータを表 4.2 に示す. 表 4.2: 結合モデルのシステムパラメータ m [kg] コントローラ A1,A2およびターゲット B1,B2の質量 ` [m] リンク棒 B1B2の長さ −α [N/m] 仮想的なばねのばね定数 xm1 [m] コントローラ A1の位置 xm2 [m] コントローラ A2の位置 xt1 [m] ターゲット B1の位置 xt2 [m] ターゲット B2の位置 u1(t) [N] コントローラ 1 に加える制御入力 u (t) [N] コントローラ 2 に加える制御入力

(41)

Lagrangeの運動方程式 (式 (3.5)) を用いて導出した結合モデルの運動方程式は                m¨xt1+ c ˙xt1 − α(xt1 − xm1) = 0, m¨xt2+ c ˙xt2 − α(xt2 − xm2) = 0, m¨xm1 + c ˙xm1 = u1(x), m¨xm2 + c ˙xm2 = u2(x) (4.5) となる.ここで,ターゲット B1とターゲット B2は長さ ` の剛体棒で接続されい るので xt2 = xt1 + ` (4.6) と置き換えることができる.よって,式 (4.5) の第 2 式は md 2 dt2 (xt1 + `) + c d dt (xt1 + `)− α(xt1 + `− xm2) = 0 (4.7) m¨xt1+ c ˙xt1 − α(xt1 + `− xm2) = 0 (4.8) となる.したがって,第 1 式と第 2 式をまとめると,式 (4.5) は          2m¨xt1 + 2c ˙xt1 − α(2xt1 − xm1 − xm2 + `) = 0, m¨xm1 + c ˙xm1 = u1(x), m¨xm2 + c ˙xm2 = u2(x) (4.9) となり,1 次元 3 自由度にまで低次元化することができた. さらに,バランス誤差を取り入れることにより,1 次元 2 自由度の運動方程式を 得る.第 4.2.1 節と同様に,ターゲット Biとコントローラ Aiの位置の差をバラン ス誤差 ∆xiとすると ∆xi := xti − xmi (i = 1, 2) (4.10) と表わせる.運動方程式にバランス誤差を取り入れるために,式 (4.9) の第 1 式か ら第 2 式,第 3 式をそれぞれ減じると m(¨xti − ¨xmi) + c( ˙xti− ˙xmi) 1 2α(xti− xmi) =−ui(t) (i = 1, 2) (4.11) となり,式 (4.10) を代入すると m∆¨xi+ c∆ ˙xi− 1 2α∆xi =−ui(t) (i = 1, 2) (4.12) となる.よって,結合モデルの運動方程式 (式 4.5) を 1 次元 2 自由度に簡約化する ことができた. 以上の方法により,2 次元 4 自由度の非線形モデルを 1 次元 2 自由度の線形モデ

(42)

4.3 擬似神経制御モデルへの拡張

4.3

擬似神経制御モデルへの拡張

本節では,第 4.2 章で導出した単体モデルおよび結合モデルの制御入力に,ヒト の反応遅れ時間とゆらぎを考慮した拡張を行い,数値シミュレーションによって 一対のヒトが行う協調的なバランス運動の基本的な性質を解明する. 第 4.3.1 節では,ヒトの反応遅れ時間とゆらぎを考慮した制御入力について述べ る.また,第 4.3.2 節では,シミュレーション条件について述べ,第 4.3.3 節では 数値シミュレーションを行う.

4.3.1

ヒトの反応遅れ時間を考慮した制御入力

単体モデルおよび結合モデルをヒトが操作した場合を考慮して,各モデルの制 御入力をヒトの反応遅れ時間とゆらぎを含めた制御入力に置き換える.制御入力 を置き換えた本節のモデルは神経回路の構造を持たないので,擬似神経制御モデ ルと呼ぶ [36, 37]. 単体モデルにおけるバランス誤差の運動方程式 (式 (4.4)) の制御入力を u(t, τ ) = β{1 + ν ξ(t)} {xt(t− τ) − xm(t− τ)} (4.13) と置き換え,結合モデルにおけるバランス誤差運動方程式 (式 (4.12)) の制御入力を ui(t, τ ) = β{1 + ν ξi(t)} {xti(t− τ) − xmi(t− τ)} (i = 1, 2) (4.14) と置き換える. ここで,τ はヒトの平衡維持機構の遅れ時間 (反応遅れ時間),β{1 + ν ξ(t)}, β{1 + ν ξi(t)} はランダムなフィードバックゲインである.また,ξ,ξiは互いに独 立な正規白色雑音 (ホワイトノイズ) であり,ν はその強度である.

(43)

4.3.2

数値シミュレーション条件

本節では,各モデルの数値シミュレーション条件を示す. 単体モデル 単体モデルの数値シミュレーション条件を示す. • 数値積分法:Runge-Kutta-Gill 法 • 積分刻み:0.01 [s] • フィードバックゲイン:β = 20.306 • 初期値:∆x(0) = 0.5[m], ∆ ˙x(0) = 0.0[m/s] シミュレーションに用いるシステムパラメータの値を表 4.3 に示す. 表 4.3: 単体モデルのシステムパラメータ値 質点の質量 m = 1.0 [kg] 仮想的なばねのばね定数 −α = −22.0 [N/m] 減衰係数 c = 50 [Ns/m] 反応遅れ時間 τ = 0.1 [s] 以上の条件でノイズのサンプルを変化させ,数値シミュレーションを行う.

(44)

4.3 擬似神経制御モデルへの拡張 結合モデル 結合モデルの数値シミュレーション条件を示す. • 数値積分法:Runge-Kutta-Gill 法 • 積分刻み:0.01 [s] • フィードバックゲイン:β = 21.032 • 初期値:∆x1(0) = 0.5[m], ∆ ˙x1(0) = 0.0[m/s], ∆x2(0) =−0.5[m], ∆ ˙x2(0) = 0.0[m/s] シミュレーションに用いるシステムパラメータの値を表 4.4 に示す. 表 4.4: 結合モデルのシステムパラメータ値 質点の質量 m = 1.0 [kg] リンク棒の長さ ` = 1.0 [m] 仮想的なばねのばね定数 −α = −22.0 [N/m] 減衰係数 c = 50 [Ns/m] 反応遅れ時間 τ = 0.1 [s] 以上の条件でノイズのサンプルを変化させ,数値シミュレーションを行う.

(45)

4.3.3

数値シミュレーション結果

本節では,数値シミュレーションの結果および解析結果について述べる.まず, 安定性の向上について述べ,次に,追従性の向上について述べる. 安定性について 図 4.4 に単体モデルおよび結合モデルのバランス誤差を示す. 0 20 40 60 0 200 400 600 800 1000 1200

x

( t ) [m]

t

[s] rms = 5.8 0 0.2 0.4 0 200 400 600 800 1000 1200

x

1 ( t ) [m]

t

[s] rms = 4.2x10-2 図 4.4: 単体モデルのバランス誤差 ∆x(t) および結合モデルのバランス誤差 ∆x1(t) 図 4.4 の上側が単体モデル,下側が結合モデルに関するグラフであり,横軸は時 間 t[s],縦軸はバランス誤差 ∆x(t)[m] および ∆x1(t)[m]である. バランス誤差 ∆x(t) は単体モデルのターゲット B とコントローラ A の位置の差,

(46)

4.3 擬似神経制御モデルへの拡張 差の値である.結合モデルのバランス誤差 ∆x2(t)は ∆x1(t)と同様になるので省 略する.図 4.4 中の rms は,∆x(t) および ∆1x(t)の二乗平均平方根 (Root Mean Square)値である. 図 4.4 より,最大振幅が単体モデルでは 61.151[m] であったのに対し,結合モデ ルでは 0.357[m] と,約 0.6% まで小さくなった.また,RMS においても単体モデ ルでは 5.8[m] であったのに対し,結合モデルでは 4.2× 10−2[m]と約 0.7% にまで 小さくなった.このことから,単体モデルよりも結合モデルの方が安定性が向上 していることがわかる. また,ノイズのサンプルを変えた場合のバランス誤差の RMS 値を図 4.5 に示す. 0 500

Root mean square

2.7x102

rms of

x

0 500

Root mean square

2.7x102 0 500 100 105 1010 1015

Index of sample

1.5x10-1 rms of

x

1 0 500 100 105 1010 1015

Index of sample

1.5x10-1 図 4.5: ノイズのサンプルを変えた場合の RMS 値 図 4.5 の左側は単体モデル,右側は結合モデルに関するグラフである.横軸はノ イズのサンプル数,縦軸はそれぞれのモデルにおけるバランス誤差の RMS 値であ る.RMS 値は対数表示であり,図中の青の実線は RMS 値の集合平均の値を表わ

(47)

付近から 1.0× 105[m]付近まで分布しており,集合平均は 1.5× 10−1[m]である. 集合平均値を見ても RMS 値が 5.5× 10−2倍となり,図 4.4 の結果と同様に,結合 モデルは単体モデルよりも安定性が向上している. 単体モデルの速度誤差 ∆ ˙x(t) および結合モデルの速度誤差 ∆ ˙x1(t)の確率密度分 布の比を図 4.6 に示す.∆ ˙x(t) は単体モデルのターゲット B の速度とコントローラ Aの速度の差,∆ ˙x1(t)は,結合モデルのターゲット B1の速度とコントローラ A1 の速度の差である. 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4

p

(

x

.

1

)

/

p

(

x

. )

x

.

,

x

.

1 図 4.6: ∆ ˙x(t) および ∆ ˙x1(t)の確率密度分布の比 図 4.6 の横軸は ∆ ˙x(t) および ∆ ˙x1(t)の値であり,縦軸は確率密度の比である. ∆ ˙x(t)と ∆ ˙x1(t)の値が 0 の付近では確率密度の比が約 2 倍になっている.これ は,結合モデルの制動性が単体モデルよりも高いことを意味している. 以上,振幅の減少に加えて,制動性の向上の意味から,結合による安定性の向 上が確かめられた.

(48)

4.3 擬似神経制御モデルへの拡張 追従性について 安定限界付近の条件では,ランダムゲインの時間遅れ制御器による棒下端での修 正動作は,制御器の遅れ時間より短い遅れ時間で運動が行われる可能性がある [38]. そこで,コントローラの修正動作がターゲットの運動にどの程度すばやく追従し ているかを見るために,ターゲットとコントローラの運動の時間相関を算出する. x(t),y(t) が比較対象の時系列,∆t を短時間平均のための時間間隔とするとき, 短時間相互相関係数は式 (4.15) で定義される [38]. R(x, y, τ )(t) = C(x− mx, y− my; τ, t) σxσy (4.15) ただし          C(x− mx, y− my; τ, t) :=hx(s)y(s + τ)i[t,t+∆t]mx :=hx(s)i[t,t+∆t]σx:=h(x(s) − mx)2i 1/2 [t,t+∆t] (4.16)

である.また,hx(s)i[a,b]は以下に示すように区間 [a, b] での X(s) 時間平均である. hx(s)i[a,b]:= 1 b− ab a X(s)ds (4.17) 式 (4.15) より,単体モデルおよび結合モデルそれぞれのターゲットとコントロー ラの速度について,相互相関係数を導出し,遅れ時間の変化を評価するために最 初のピーク値に注目する.

(49)

図 4.7 に結合モデルの短時間相互相関係数のサンプルを示す.横軸は遅れ時間 τ [s],縦軸は相互相関係数である. R( ˙xt1, ˙xm1; τ )はターゲット B1( ˙xt1)とコントローラ A1( ˙xm1)の相互相関係数 (赤 色の実線),R( ˙xt2, ˙xm2; τ )はターゲット B2( ˙xt2)とコントローラ B2( ˙xm2)の相互相 関係数 (青色の点線) である.また,t = 36[s],∆t = 5[s] とした. 0 0.1 0.2 0.3 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

τ

Short-time

cross-ncorrelation coefficient

t

= 36

τ

^

x.1

τ

^

x.2 R(x.T,x.M1;τ) R(x.T,x.M2;τ) 図 4.7: t = 36[s] における短時間相互相関係数 短時間相互相関係数の最初に現れる支配的なピーク点を単体モデルでは ˆτx,結˙ 合モデルでは ˆτx˙i(i = 1, 2)とする.このピークが現れる時間を,反応遅れ時間とよ ぶことにする. 図 4.7 より,コントローラ A1の反応遅れ時間が ˆτx1 = 0.105[s],コントローラ A2 では ˆτx2 = 0.035[s]と得られる.コントローラ A1の制御器の修正動作は平均的に 制御器の遅れ時間 0.1[s] と同程度の時間スケールで起こり,コントローラ A2の制 御器の修正動作は,平均的に 3 倍程度短いスケールで生じている. これより,力学的に対称的に置かれた結合モデルであっても,非対称な挙動を 示していることが分かる.

図 3.1 の倒立振子モデルの各システムパラメータを表 3.1 に示す. 表 3.1: 一般的な倒立振子モデルのシステムパラメータ m [kg] 台車 A および振子 B の質量 r [m] 振子 B の長さ g [m/s 2 ] 重力加速度 x [m] 台車 A の位置 θ [rad] 振子 B の鉛直方向からの角度 u(t) [N] x 方向に作用する外力 E(t) [N · m] θ 方向に作用する外力
図 3.4 の剛体リンク B 1 B 2 を,同じ自然長 ` 0 のばねとダンパを持った柔軟リンク に置き換えると,図 3.5 に示すような近似モデルが得られる.このモデルの支配方 程式は,通常の常微分方程式となるので,DAE の数値解法の問題が回避される. 柔軟リンクのばねのばね定数とダンパの減衰係数が十分に大きいとき,図 3.5 の近 似モデルは図 3.4 の挙動をよく再現する.このような近似解法を一般に,ペナル ティ法という. 図 3.5: 剛体リンクをばねとダンパを持った柔軟リンクに置き換えた近似モ
図 3.5 に示した結合倒立振子モデルの近似モデルの運動方程式を導出する. 一般化座標を x 1 ,θ 1 ,x 2 ,θ 2 とすると,台車 A 1 の重心の座標 (X 1 ,Y 1 ),振子 B 1 先端部の質点の座標 (X 2 ,Y 2 ),台車 A 2 の重心の座標 (X 3 ,Y 3 ),振子 B 2 先端の質点 の座標 (X 4 ,Y 4 ) の座標はそれぞれ                (X 1 , Y 1 ) = (x 1 , 0),(X2, Y2) = (x
図 4.7 に結合モデルの短時間相互相関係数のサンプルを示す.横軸は遅れ時間 τ[s],縦軸は相互相関係数である. R( ˙ x t 1 , x˙ m 1 ; τ) はターゲット B 1 ( ˙ x t 1 ) とコントローラ A 1 ( ˙ x m 1 ) の相互相関係数 (赤 色の実線),R( ˙ x t 2 , x˙ m 2 ; τ ) はターゲット B 2 ( ˙ x t 2 ) とコントローラ B 2 ( ˙ x m 2 ) の相互相 関係数 (青色の点線) である.また,t = 36[s],∆t
+7

参照

関連したドキュメント

Type of notification: Customers must notify ON Semiconductor (<[email protected] >) in writing within 90 days of receipt of this notification if they consider

Type of notification: Customers must notify ON Semiconductor (<[email protected] >) in writing within 90 days of receipt of this notification if they consider

Type of notification: Customers must notify ON Semiconductor (<[email protected] >) in writing within 90 days of receipt of this notification if they consider

When value of <StThr[3:0]> is different from 0 and measured back emf signal is lower than <StThr[3:0]> threshold for 2 succeeding coil current zero−crossings (including