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第 3 章 協調と競争を表す機械モデル 11

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験

4.5.2 実験結果

単体モデルおよび結合モデルの実験システムでの実験結果を以下に示し,第4.3 節の数値シミュレーションと同様に安定性および追従性について述べる.

安定性の向上について

被験者Aおよび被験者Bが,単体モデルの実験システムで実験を行った結果を 図4.14に,結合モデルの実験システムで実験を行った結果を図4.15および図4.16 に示す.

-0.15 0 0.15

Velocity

t

(A)

RMS = 5.5x10-2 x.

m

x.

t

-0.15 0 0.15

0 5 10 15 20

Velocity

t

(A)

RMS = 5.5x10-2

(B)

RMS = 5.0x10-2

図 4.14: 被験者Aおよび被験者Bにおける単体モデルの速度誤差

図4.14の横軸は経過時間t[s],縦軸はターゲットBおよびコントローラAの速 度誤差∆ ˙xt,∆ ˙xmである.緑色の点線がターゲットの速度誤差∆ ˙xt,赤色の実線 がコントローラの速度誤差∆ ˙xmを表わしている.図中のRMSの値は第4.3.3節で も用いた二乗平均平方根値であり,ターゲットBとコントローラAの速度誤差の RMS値を算出している.

-0.15 0 0.15

Velocity

t

(A)

RMS = 2.4x10-2 x.

m

x.

t

-0.15 0 0.15

0 5 10 15 20

Velocity

t

(A)

RMS = 2.4x10-2

(B)

RMS = 2.0x10-2

図 4.15: 被験者Aおよび被験者Bにおける結合モデルの速度誤差-1

-0.15 0 0.15

Velocity

t

(A)

RMS = 3.0x10-2 x.

m

x.

t

-0.15 0 0.15

0 5 10 15 20

Velocity

t

(A)

RMS = 3.0x10-2

(B)

RMS = 2.9x10-2

図 4.16: 被験者Aおよび被験者Bにおける結合モデルの速度誤差-2

図4.15および図4.16の横軸は経過時間t[s],縦軸はターゲットBiおよびコント ローラAiの速度誤差∆ ˙xt,∆ ˙xmである.緑色の点線がターゲットの速度誤差∆ ˙xt, 赤色の実線がコントローラの速度誤差∆ ˙xmを表わしている.図中のRMSの値は

第4.3.3節でも用いた二乗平均平方根値であり,ターゲットBiとコントローラAi

の速度誤差のRMS値を算出している.

結合モデルのターゲット同士は,剛体のリンク棒で接続されているため,図4.15

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験

図4.14,図4.15より,振幅の大きさが結合モデルでは小さくなっているので,安

定性の向上が見られる.また,図4.16は,実験時の被験者の空間的な位置を入れ 替えて実験を実施した場合の結果である.これより,被験者の位置を左右入れ替 えた場合でも同様に安定性の向上が見られることがわかる.

被験者Aおよび被験者Bの実験における速度誤差のRMS値とその平均値を表 4.7にまとめた.表中のA’,B’は被験者を左右入れ替えて実験をした際の値である.

表 4.7: 被験者AおよびBにおける速度誤差のRMS(×102)

被験者 実験回数 平均

A/B 01 02 03 04 05 hRM Si

単体モデル

A 2.4 2.9 3.8 5.5 3.5 3.62

B 4.9 4.9 5.8 5.0 6.1 5.34

結合モデル

A 2.9 3.5 2.4 3.9 2.4 3.02

B 2.4 2.8 2.6 2.7 2.0 2.50

A’ 3.0 2.5 1.7 2.8 2.2 2.44

B’ 2.9 2.0 1.5 2.2 2.1 2.14

表4.7より,被験者A,B共に結合による安定性の向上が見られる.被験者の位 置を左右入れ替えた場合でも同様の安定性の向上が見られることがわかる.また,

単体モデルでの実験では被験者A,Bの安定性が2倍近く離れているが,結合モ デルではどちらも同程度の安定性を示す傾向が見られた.

被験者A,Bと同様に,被験者Cおよび被験者Dが単体モデルの実験システム で実験を行った結果を図4.17に,結合モデルの実験システムで実験を行った結果 を図4.18に示す.

-0.05 0 0.05

Velocity

t

(C)

RMS = 1.6x10-2 x.

m

x.

t

-0.05 0 0.05

0 5 10 15 20

Velocity

t

(C)

RMS = 1.6x10-2

(D)

RMS = 9.1x10-3

図 4.17: 被験者Cおよび被験者Dにおける単体モデルの速度誤差

-0.05 0 0.05

Velocity

t

(C)

RMS = 1.0x10-2 x.

m

x.

t

-0.05 0 0.05

0 5 10 15 20

Velocity

t

(C)

RMS = 1.0x10-2

(D)

RMS = 8.5x10-3

図 4.18: 被験者Cおよび被験者Dにおける結合モデルの速度誤差

図4.17および図4.18の横軸は経過時間t[s],縦軸はターゲットBiおよびコント

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験 赤色の実線がコントローラの速度誤差∆ ˙xmを表わしている.図中のRMSの値は

第4.3.3節でも用いた二乗平均平方根値であり,ターゲットBiとコントローラAi

の速度誤差のRMS値を算出している.被験者を左右入れ替えた場合の結合モデル での実験は結果が図4.18と同様になるので省略する.

図4.17および図4.18より,被験者Cのターゲットおよびコントローラの振幅の 大きさは小さくなったので安定性の向上が見られたが,被験者Dに関してはほと んど向上が見られなかった.

被験者Cおよび被験者Dの実験における,速度誤差のRMS値とその平均値を 表4.8にまとめた.表中のC’,D’は被験者を左右入れ替えて実験をした際の値で ある.

表 4.8: 被験者CおよびDにおける速度誤差のRMS(×102)

被験者 実験回数 平均

C/D 01 02 03 04 05 hRM Si

単体モデル

C 1.0 1.4 1.3 1.0 1.6 1.26

D 1.2 0.9 0.9 0.8 0.9 0.94

結合モデル

C 1.0 1.6 1.3 1.0 0.9 1.16

D 1.0 1.4 1.1 0.9 0.8 1.04

C’ 1.1 1.0 1.5 1.1 0.9 1.12

D’ 0.9 0.8 1.0 0.8 1.0 0.90

表4.8より,単体モデルでの実験時から被験者C,D共に安定性が良く,結合モ デルでの安定性の向上が見られなかった.また,被験者A,Bの組に見られた結 合することで安定性が同程度になるという傾向もほとんど見られなかった.

被験者Eおよび被験者Fにおいても同様に実験を行い,単体モデルでの結果を 図4.19,結合モデルでの結果を図4.20に示す.

-0.1 0 0.1

Velocity

t

(E)

RMS = 1.7x10-2 x.

m

x.

t

-0.1 0 0.1

0 5 10 15 20

Velocity

t

(E)

RMS = 1.7x10-2

(F)

RMS = 1.6x10-2

図 4.19: 被験者Eおよび被験者Fにおける単体モデルの速度誤差

-0.1 0 0.1

Velocity

t

(E)

RMS = 1.0x10-2 x.

m

x.

t

-0.1 0 0.1

0 5 10 15 20

Velocity

t

(E)

RMS = 1.0x10-2

(F)

RMS = 1.0x10-2

図 4.20: 被験者Eおよび被験者Fにおける結合モデルの速度誤差

図4.19および図4.20の横軸は経過時間t[s],縦軸はターゲットBiおよびコント ローラAiの速度誤差∆ ˙xt,∆ ˙xmである.緑色の点線がターゲットの速度誤差∆ ˙xt

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験

第4.3.3節でも用いた二乗平均平方根値であり,ターゲットBiとコントローラAi

の速度誤差のRMS値を算出している.

図4.19および図4.20より,被験者Eは全体的に振幅が小さくなった.また,被 験者Fに関しては0≤t 10の範囲では振幅に変化が見られなかったが,10< t の範囲では振幅が大きくならず,全体的に振幅が小さくなっている.

以上より,被験者Eおよび被験者Fに関しても,安定性の向上が見られる.

被験者Eおよび被験者Fの実験における速度誤差のRMS値とその平均値を表 4.9にまとめた.表中のE’,F’は被験者を左右入れ替えて実験をした際の値である.

表 4.9: 被験者EおよびF における速度誤差のRMS(×102)

被験者 実験回数 平均

E/F 01 02 03 04 05 hRM Si

単体モデル

E 1.7 4.8 4.9 3.4 3.4 3.64

F 1.6 0.8 0.7 0.9 1.0 1.00

結合モデル

E 1.4 0.9 1.7 1.6 2.0 1.52

F 1.8 1.3 1.4 1.7 2.9 1.82

E’ 2.5 2.3 1.0 1.3 1.0 1.62 F’ 3.5 3.7 1.0 1.9 1.0 1.68

表4.9より,被験者Eに関しては安定性の向上が顕著に見られるが,被験者Fに 関しては安定性が低下している.

また,被験者E,F間に単体モデルでの安定性では約3倍の開きがあったのに対 し,結合モデルでの安定性は同程度にまでなっている.このことから,被験者A,

Bの組に見られた,結合することで安定性が同程度になる傾向が見られる.

追従性の向上について

数値シミュレーションと同様に追従性については,式(4.15)の短時間相互相関 係数を計算する.被験者Aおよび被験者Bの短時間相互相関係数を図4.21および 図4.22に示す.

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4

τ

Short-time cross- ncorrelation coefficient

τ

^

x.

A

τ

^

x.

B

RA RB

図 4.21: 被験者Aおよび被験者Bにおける単体モデルの短時間相互相関係数

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4

τ

Short-time cross- ncorrelation coefficient

τ

^

x.

A

τ

^

x.

B

RA RB

図 4.22: 被験者Aおよび被験者Bにおける結合モデルの短時間相互相関係数

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験 図4.21および図4.22の横軸はヒトの反応遅れ時間τ[s],縦軸は相関係数である.

また,RAは被験者Aの相互相関係数(赤色の四角印),RBは被験者B相互相関係

数(緑色の丸印)である.

図4.21および図4.22より,単体モデルでは被験者Aのピーク点がτ = 0.12[s]で あったのに対し,結合モデルではτ = 0.18[s]と拡大している.また,被験者Bを 見ると,単体モデルではτ = 0.14[s]であったのが,結合モデルではτ = 0.12[s]と ほぼ変化していない.

被験者Aおよび被験者Bの実験における反応遅れ時間とその平均値を表4.10に まとめた.表中のA’,B’は被験者を左右入れ替えて実験をした際の値である.

表 4.10: 被験者AおよびBにおける反応遅れ時間

被験者 実験回数 平均

A/B 01 02 03 04 05 ˆi

単体モデル

A 0.14 0.14 0.12 0.12 0.14 0.132 B 0.14 0.12 0.14 0.14 0.14 0.136 結合モデル

A 0.18 0.16 0.16 0.14 0.16 0.152 B 0.12 0.12 0.12 0.14 0.12 0.124 A’ 0.18 0.16 0.16 0.14 0.18 0.148 B’ 0.12 0.14 0.14 0.14 0.14 0.136

表4.10より,単体モデルでの反応遅れ時間の平均値がˆi = 0.132[s],0.136[s]

と同程度であったのに対し,結合モデルでは被験者Aがˆi = 0.52[s],0.48と単 体モデルの場合よりも拡大し,被験者Bはˆi = 0.124[s],0.136[s]と単体モデル の場合とほぼ変化が見られなかった.

これより,単独の状態ではほぼ等しい追従性を持つ被験者に,結合モデルを操 作させると,追従性が非対称となる傾向が確かめられた.

被験者C,Dおよび被験者E,Fの実験における反応遅れ時間とその平均値を表 4.11にまとめた.表中のC’,D’,E’,F’は被験者を左右入れ替えて実験をした際 の値である.

表 4.11: 被験者C,DおよびE,Fにおける反応遅れ時間

被験者 実験回数 平均

C/D 01 02 03 04 05 ˆi

単体モデル

C 0.10 0.12 0.12 0.12 0.12 0.116 D 0.12 0.12 0.12 0.12 0.12 0.120 結合モデル

C 0.14 0.10 0.12 0.12 0.10 0.116 D 0.12 0.14 0.12 0.16 0.16 0.128 C’ 0.12 0.12 0.12 0.12 0.12 0.120 D’ 0.18 0.16 0.16 0.16 0.16 0.164

被験者 実験回数 平均

E/F 01 02 03 04 05 ˆi

単体モデル

E 0.14 0.12 0.14 0.12 0.14 0.132 F 0.16 0.14 0.12 0.14 0.14 0.140 結合モデル

E 0.12 0.14 0.14 0.14 0.12 0.132 F 0.18 0.20 0.18 0.16 0.16 0.176 E’ 0.14 0.14 0.12 0.14 0.10 0.128 F’ 0.16 0.18 0.16 0.20 0.18 0.176

表4.11より,表4.10と同様に単体モデルではほぼ等しい追従性を示していた被 験者が結合モデルを操作した場合,追従性が非対称となっていることがわかる.

この結合モデルの実験における非対称性の一つの解釈として,ヒトの協調行動 における役割分担の発現を挙げることができる.しかし,類似する非対称性が知 能を持たない擬似神経制御器による第4.3節の数値シミュレーションにおいても,

4.5 ヒトによる協調的なバランス実験

結合によるバランス誤差と反応遅れ時間

本節で算出した実験ごとのRMS値および反応遅れ時間を示した.

0.08 0.12 0.16 0.2

0 1 2 3 4 5 6 7

τ

Root mean squre

(x10-2)

Single Coupled

図 4.23: 全被験者に関するRMS値および反応遅れ時間τ

図4.23の横軸はバランス誤差∆xおよび∆xi(i = 1,2)のRSM値,縦軸に反応 遅れ時間τ[s]である.また,赤色の丸印は単体モデルの実験システムでの実験結 果,青色の四角印は結合モデルの実験システムでの実験結果を表わしている.

図4.23より,単体モデルを操作した場合のRMSの値の範囲が0.5×102[s]から 6.0×102[s]であったのに対し,結合モデルでは0.5×102[s]から4.0×102[s]と なり,被験者全体的に安定性が向上したことがわかる.また,反応遅れ時間τで は,単体モデルが0.12[s]および0.14[s]に集中しているのに対し,結合モデルでは

0.12[s]から0.18[s]の範囲に集中している.これは,反応遅れ時間の非対称性が表

れているためだと考えられる.