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博 士 ( 農 学 ) 志 賀 一 希

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 志 賀 一 希

学 位 論 文 題 名

カルシウム,マグネシウム吸収に対する大腸部位の寄与 学位論文内容の要旨

  カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム の 主 要 な 吸 収 部 位 は 小 腸 で あ る 。 し か し 、 近 年 、 下 部 消 化 管 で あ る 大 腸 が カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム を 吸 収 す る た め の 高 い 能 カ を 保 持 し て い る こ と 、 お よ び 、 生 体 側 の 状 態 ( 小 腸 で の カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム 吸 収 能 が 低 下 し て い る 場 合 ) や 同 時 に 摂 取 す る 食 物 成 分 ( 高 発 酵 性 の 難 消 化 性 糖 類 な ど ) に よ っ て は 、 大 腸 が カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム 吸 収 に 大 き く 寄 与 し て い る こ と が 明 ら か に な り つ っ あ る 。 本 研 究 で は 、 こ の こ と を 従 来 と は 異 な る 手 法 を 用 い て 検 討 す る と と も に 、 新 た に 、 生 体 内 で の カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム の 貯 蔵 庫 で あ る 骨 に 対 し て 大 腸 が ど の よ う に 関 与 し て い る の か を 調 べ る こ と を 目 的 と し た 。 具 体 的 に は 、 ま ず 、 小 腸 で カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム が 吸 収 さ れ に く い 飼 料 を 作 成 し て ラ ッ ト に 与 え 、 こ の と き に 大 腸 が 小 腸 で の カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム 吸 収 の 低 下 を 補 償 で き る か を 検 討 し た 。 次 に 、 大 腸 部 位 そ の も の の 切 除 が 、 カ ル シ ウ ム 、 マ グ ネ シ ウ ム 吸 収 、 骨 に 対 し て ど の よ う な 影 響 を 与 え る の か に つ い て 検 討 し た 。 最 後 に 、 高 発 酵 性 の 難 消 化 性 糖 類 の1つ で あ る 水 溶 性 大 豆 セ ン イ の 摂 取 が 胃 切 除 後 に 高 頻 度 で み ら れ る カ ル シ ウ ム 吸 収 の 低 下 と 骨 障 害 に 対 し て 改 善 効 果 を も つ か ど う か を 検 討 し た 。

! 太 腸 はd≧ 腸 左22立 ム ュ ヱ22空 ム 吸 収Q低 工 を 補 償 立 る

  第 二 リ ン 酸 塩 摂 取 下 、 不 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 ( 炭 酸 塩 ) 摂 取 と 可 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 ( グ ル コ ン 酸 塩 、 乳 酸 塩 、 ク エ ン 酸 塩 ) 摂 取 を 比 較 す る こ と に よ り 、 大 腸 が 小 腸 で の カ ル シ ウ ム 吸 収 の 低 下 を 補 償 で き る か を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 小 腸 で の カ ル シ ウ ム 吸 収 率 は 、 不 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 ( 炭 酸 塩 ) 摂 取 群 で 可 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 ( グ ル コ ン 酸 、 乳 酸 、 ク エ ン 酸 塩 ) 摂 取 群 に 比 べ て 低 く な っ た 。 一 方 で 、 腸 管 全 体 で の カ ル シ ウ ム 吸 収 率 は 、 不 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 摂 取 群 と 可 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 摂 取 群 と の 間 に 違 い は み ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 以 下 の こ と を 示 し て い る 。 第 二 リ ン 酸 塩 摂 取 下 、 不 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 ( 炭 酸 塩 ) を 摂 取 し た 場 合 、 カ ル シ ウ ム は 小 腸 で は 十 分 吸 収 さ れ な い 。 し か し 、 大 腸 部 位 が 小 腸 で の カ ル シ ウ ム 吸 収 の 低 下 を 補 償 し 、 腸 管 全 体 で の カ ル シ ウ ム 吸 収 率 は 可 溶 性 カ ル シ ウ ム 塩 を 摂 取 し た 場 合 と ほ ぽ 等 し く な る 。 な お 、 こ の 研 究 で は 、 大 腸 が 小 腸 で の マ グ ネ シ ウ ム 吸 収 の 低 下 を 補 償 す る こ と 、 さ ら に 、 マ グ ネ シ ウ ム の 吸 収 に は 小 腸 だ け で は な く 大 腸 も 大 き く 関 与 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。

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2

2

2

空 ム ュ ヱ

2

主 芝 立 ム 吸 収 ユ 畳

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三 対 立 る 太 腸 広 範 囲 切 除

Q

髢 饗

  1

より、下部消化管である大腸が小腸でのカルシウム、マグネシウム吸収の低下を補償 すること、さらに、マグネシウム吸収には大腸も重要な役割を果たしていることが明らか となった。これをふまえて、大腸部位そのものの切除がカルシウム、マグネシウム吸収、

さらには生体内でのカルシウム、マグネシウムの貯蔵庫である骨に対してどのような影響 を与えるかを検討した。また、本研究の別の背景として、近年、我が国では、大腸ガン、

あるいは炎症性の大腸疾患が急増している。これらの病態において、その症状の進行度に よっては、大腸部分切除、広範囲切除、あるいは全切除を余儀なくされ、術後の患者への 負担が懸念される。このような状況下、我々は大腸切除後の生体変化を調べることは意義 深いと考えた。その結果、マグネシウム吸収率は大腸広範囲切除により低下した。この結 果は、マグネシウム吸収には大腸部位も大きく関与していることを示しており、1 の結果 と一致する。また、大腿骨の骨強度、マグネシウム含量は大腸広範囲切除により低下した。

一方、大腸広範囲切除は、大腿骨のカルシウム、コラーゲン含量には影響を与えなかった。

以上の結果は、大腸広範囲切除後の骨強度の低下には、骨の主要な構成要素であるカルシ ウム、コラーゲン量の変動ではなく、骨に微量に含まれているマグネシウム量の低下が関 与していることを示唆している。なお、予想に反して、カルシウム吸収率は大腸広範囲切 除により上昇した。大腸ガン、炎症性の大腸疾患などにより大腸を切除した患者では、マ グネシウム不足に注意する必要があるのかもしれない。

3

買切陰後畳瞳害に対立盈丞溶性太豆土

Z

エ摂取cD 影饗

  

胃切除はカルシウム吸収不全、骨障害を引き起こす。一方、最近の研究、および本論文

1

の結果は、大腸がカルシウムを吸収するための高い能カを保持していることを示してい る。また、近年、発酵性の難消化性糖類の摂取が、大腸発酵を介して、カルシウム吸収を 促進することが明らかになりつっある。これらの背景をもとに、本研究では、高発酵性の 難消化性糖類の

1

つである水溶性大豆センイの摂取が胃切除後カルシウム吸収不全を改善 し、骨障害を防止できるかどうかを検討した。その結果、カルシウム吸収量、大腿骨の乾 燥重量、骨強度、カルシウム含量は、胃切除により著しく低下した。胃切除群において、

カルシウム吸収量、上記の骨バラヌ一夕は、水溶性大豆センイ食摂取群でCont rol 食摂取 群に対して高くなった。また、このセンイの摂取により、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸(酢 酸、プ口ピオン酸、酪酸)濃度の増加と盲腸内pH の低下が確認された。さらに、胃切除 群において、カルシウム吸収量と盲腸内容物中の短鎖脂肪酸濃度との間に正の相関が、カ ルシウム吸収量と盲腸内pH との間に負の相関がみられた。以上の結果は、水溶性大豆セ ンイの摂取は胃切除によるカルシウム吸収の低下、骨障害を改善することを示していると ともに、このカルシウム吸収の改善には水溶性大豆センイの大腸発酵が関与していること を示唆している。胃ガン、胃かいよう等で胃を切除した患者への水溶性大豆センイの適応 は、ヒトを対象とした詳細な研究を待たなければならない。しかし、これらのラットにお ける結果は、ヒトにおいても、高発酵性の難消化性糖類を摂取することで胃切除後の骨障 害を改善できる可能性を秘めている。

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(3)

  

以上より、大腸は小腸カルシウム、マグネシウム吸収の低下を補償すること、また、マ グネシウムの吸収には小腸だけではなく大腸も大きく関与していることが明らかとなった。

さらに、大腸部位はこれらのミネラルの吸収を通して、骨の強度、骨成分に影響を与える ことが示された。本研究の成果は、大腸を切除された方、胃を切除された方のQOL (quality

of life)

の向上に寄与することが期待される。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

カルシウム,マグネシウム吸収に対する大腸部位の寄与

  カ ル シ ウ ム (Ca) 、 マ グ ネ シ ウ ム (Mg) の 主 要 な 吸 収 部 位 は 小 腸 で あ る 。 し か し 、 近 年 、 下 部 消 化 管 で あ る 大 腸 がCaMgを 吸 収 す る た め の 高 い 能 カ を 保 持 し て い る こ と 、 お よ ぴ 、 生 体 側 の 状 態 や 同 時 に 摂取 す る 食物 成 分 によ っ て は、 大 腸 がCaMg 吸 収 に 大 き く 寄 与 し て い る こ と が 明 ら か にな り つ つあ る 。 本研 究 で は、 こ の こと を 従 来 と は 異 な る 手 法 を 用 い て 検 討 す る と と も に 、 新 た に 、 生 体 内 で のCaMgの 貯 蔵 庫 で あ る 骨 に 対 し て 大 腸 が ど の よ う に 関 与 し て い る の か を 調 べ る こ と を 目 的 と し た 。

1大 腸 は 小 腸Ca, MgVRQ低 下 を 補 償 す る

  第 二 リ ン 酸 塩 摂 取 下 、 不 溶 性Ca塩 ( 炭 酸 塩 ) 摂 取 と 可 溶 性Ca塩 ( グ ル コ ン 酸 塩 、 乳 酸 塩 、 ク エ ン 酸 塩 ) 摂 取 を 比 較 す る こ と に よ り 、 大 腸 が 小 腸 で のCa吸 収 の 低 下 を 補 償 で き る か を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 小 腸 で のCa吸 収 率 は 、 不 溶 性Ca塩 摂 取 群 で 可 溶 性Ca塩 摂 取 群 に 比 べ て 低 く な っ た 。 一 方 で 、 腸 管 全 体 で のCa吸 収 率 は 、 不 溶 性 Ca塩 摂 取 群 と 可 溶 性Ca塩 摂 取 群 と の 間 に 違 い は み ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 以 下 の こ と を 示 し て い る 。 第 二 リ ン 酸 塩 摂 取 下 、 不 溶 性Ca塩 を 摂 取 し た 場 合 、Caは 小 腸 で は 十 分 吸 収 さ れ な い 。 し か し 、 大 腸 が 小 腸 で のCa吸 収 の 低 下 を 補 償 し 、 腸 管 全 体 で のCa吸 収 率 は 可 溶 性Ca塩 を 摂 取 し た 場 合 と ほ ぼ 等 し く な る 。 なお 、 本 研 究で は 、 大 腸 が 小 腸 で のMg吸 収 の 低 下 を 補 償 す る こ と 、 さ ら に 、Mg吸 収 に は 小 腸 だ け で は な く 大 腸 も 大 き く 関 与 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。

2垈 !2 Mgr{R、 骨 に 対 す る 大 腸 広 範 囲 切 除 の 影 響

  1よ り 、 下 部 消 化 管 で あ る 大 腸 が 小 腸 で のCaMg吸 収 の 低 下 を 補 償 す る こ と 、 さ ら に 、Mg吸 収 に は 大 腸 も 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ を ふ ま え て 、 大 腸 部 位 そ の も の の 切 除 がCaMg吸 収 、 さ ら に は 生 体 内 で のCaMgの 貯 蔵 庫 で あ る 骨 に 対 し て ど の よ う な 影 響 を 与 え る か を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、Mg吸 収 率 は 大 腸 切 除 に よ り 低 下 し た 。 こ の 結 果 は 、Mg吸 収 に は 大 腸 も 大 き く 関 与 し て い る こ と を 示 し て お り 、1の 結 果 と 一 致 す る 。 ま た 、 大 腿 骨 の 骨 強 度 、Mg含 量 は 大 腸 切 除 に よ り 低 下 し た 。 一 方 、 大 腸 切 除 は 大 腿 骨 のCacollagen含 量に は 影 響を 与 え なか っ

頼 隆

山 西

   

   

(5)

た。 以上 の結 果は 、大腸 切除 後の 骨強 度の 低下には、骨の主要な構成要素であるCa

collagen

量の変動ではなく、骨に微量に含まれているMg 量の低下が関与していること を示 唆し てい る。 なお、 予想 に反 して 、Ca 吸収率は大腸切除により上昇した。大腸 ガン 、炎 症性 の大 腸疾患 など によ り大 腸を 切除した患者では、Mg 不足に注意する必 要があるのかもしれない。

3

胃切除後骨障害に対する水溶性大豆センイ量堅の影響

  

胃切 除は

Ca

吸 収不 全、 骨障 害を 引き 起こ す。 一方 、最近 の研 究、 およ び本 論文

1

の 結果 は、 大腸 がCa を吸 収す るた めの 高い 能カ を保 持していることを示している。

ま た、 近年 、発 酵性 の難 消化 性糖 類の 摂取 が、 大腸 発酵を介して、Ca 吸収を促進す ることが明らかになりつっある。これらの背景をもとに、本研究では、高発酵性の難 消 化性 糖類 の1 つで ある 水溶性 大豆 セン イの 摂取 が胃 切除 後Ca 吸収 不全 を改 善し 、 骨障害を防止できるかどうかを検討した。その結果、Ca 吸収量、大腿骨の乾燥重量、

骨 強度 、Ca 含量 は、 胃切 除に より 著し く低 下し た。 胃切除群において、Ca 吸収量、

上記の骨パラメータは、水溶性大豆センイ食摂取群でCo ntrol 食摂取群に対して高く なった。また、このセンイの摂取により、盲腸内容物中の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピ オ ン酸 、酪 酸) 濃度 の増 加と 盲腸 内pH の低 下が 確認 された。さらに、胃切除群にお い て、

Ca

吸 収量 と盲 腸内 容物 中の 短鎖 脂肪 酸濃 度と の間に正の相関が、Ca 吸収量と 盲 腸内

pH

と の間 に負 の相 関が みら れた 。以 上の 結果 は、水溶性大豆センイの摂取は 胃 切除 によ るCa 吸収 の低 下、 骨障 害を 改善 する こと を示しているとともに、このCa 吸収の改善には水溶性大豆センイの大腸発酵が関与していることを示唆している。胃 を切除した患者への水溶性大豆センイの適応は、ヒトを対象とした詳細な研究を待た なければならない。しかし、本研究の結果は、ヒトにおいても、このセンイを摂取す る こ と で 胃 切 除 後 の 骨 障 害 を 改 善 で き る 可 能 性 を 秘 め て い る 。

  

以 上よ り、 大腸 は小 腸Ca ,Mg 吸収 の低 下を 補償す るこ と、 また :Mg 吸収には小腸 だけ では なく 大腸も大きく関与していることが明らかとなった。さらに、大腸部位は これらのミネラルの吸収を通して、骨の強度、骨成分に影響を与えることが示された。

本研究の成果は、大腸や胃を切除された方のQOL (quality of life) の向上に寄与するこ とが期待されるとともに、その成果は学術的に高く評価される。よって審査員一同は、

志 賀 一 希 が 博 士 ( 農 学 )の 学 位 を 受 け る の に 十 分な 資格 を有 する もの と認 めた 。

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参照

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