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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 農 学 ) 藤 根 学 位 論 文 題 名

アズキ萎凋病抵抗性品種選抜に有用な アズキ萎凋病菌の植物毒素の検出

学位論文内容の要旨

  ア ズ キ 萎凋 病 はFuSa々um(斑 卿 〇njmf.sp.a出u衄 叩 ぬに よ っ て 引 き起 こ さ れ る 土壌 病害 である ,本 病 に 罹 病 し た アズ キ は , 葉 脈 の褐 変 と 葉 の 萎縮 ,維管 東部 の褐変 を起こ した後 ,急 速に萎 凋枯死 する, 症状の 発 現に は植物 毒素の 関与が 考えら れた .アズ キ萎凋 病菌の 宿主 範囲は アズキ とその 近縁種 に限 定され ており , 病 徴 の 発 現 に植 物 毒 素 が 関 与し て い る な らば ,アズ キ萎 凋病菌 の宿主 特異性 への 植物毒 素の関 与も考 えられ る . 本 研 究 では , ア ズ キ 萎 凋病 菌 の 病 原 性に 関与す る植 物毒素 の確認 とその 化学 的特性 ,及び 植物毒 素を利 用 した アズキ の萎凋 病抵抗 性品種 選抜 の可能 性につ いて検 討し た.

1.植物 体によ る植物 毒素 の生物 検定

  アズ キ 萎 凋 病 菌の 培 養 濾 液 を 作出 し , そ の 希釈液 を萎凋 病感受 性品 種「ハ ヤテシ ョウズ 」の苗 (地 際部で 切 断 し た茎 葉 付 き の 苗: 以 下 切 離 茎) に 処 理 する と,自 然発病 の場合 とはそ の症 状は異 なるが ,葉や 茎に は 褐 変 症 状な ど の 障 害 が認 め ら れ た .培 養 濾 液 処理 した各 アズキ 品種で は,葉 脈褐 変で萎 凋病感 受性品 種と 抵 抗 性 品 種と の 聞 に 差 が認 め ら れ た が, 導 管 褐 変で は品種 間差は 認めら れず, 茎の 伸長は 供試し た全品 種が 抑 制さ れた.

  アズ キ 萎 凋 病 菌の 出 芽 細 胞(bud−cell)を 蒸留 水 中 で 培 養し て 得 た 出芽細 胞培養 液を処 理し た「ハ ヤテシ ヨ ウ ズ 」の 切 離 茎 に おい て , 罹 病 アズ キ と 同 様の 葉脈と 茎導管 の褐変 症状が 見ら れ,茎 の伸長 抑制も 認め ら れ た . 褐変 症 状 は 萎 凋病 罹 病 ア ズ キの 症 状 に 類似 してい たこと から, 病徴発 現に 関与す る物質 の存在 が考 え ら れ た .20倍 に 濃縮 し た 出 芽 細 胞培 養 液 を 処 理した 場合に はより 明確 な褐変 症状と 伸長抑 制が認 めら れた.

出 芽 細 胞培 養 液 を 処 理し た 抵 抗 性 品種 「 き た のお とめ」 及び「 しゅま り」の 葉脈 褐変は 感受性 品種「 ハヤ テ シ ョ ウ ズ」 及 び 「 寿 小豆 」 よ り も 軽度 で , 萎 凋病 感受性 と一致 する品 種間差 が認 められ た.し かし, 感受 性 品 種 「 エリ モ シ ョ ウ ズ」 の 褐 変 症 状は 抵 抗 性 品種 と同等 に軽度 であっ た.導 管褐 変と伸 長抑制 では萎 凋病 感 受性 品種と 抵抗 性品種 との聞 に差は 認めら れな かった .

  出芽 細 胞 培 養 液を 処 理 し た ダ イズ で は 葉 の 黄化症 状を中 心とす る異 常が認 められ が,イ ンゲン マメ では出 芽 細胞培 養液処 理によ る異 常は認 められ なかっ た. また, アズキ に対し て非病 原性 のF. 匸〕 め′sporum 13菌 株 の 出 芽細 胞 培 養 液 にも 同 様 な 毒 性が 認 め ら れ た. 特 に , 夕 マ ネギ 乾 腐 病 菌 ,ク リ ム ソ ンクD‑バ一 病原性 菌, アズキ 根圏 から分 離した腐生性F く)∞′ rsl)or umの出芽細胞培養液の毒性が強かった.一方,他の7つの 分 化 型 の出 芽 細 胞 培 養液 は 毒 性 が 低く , ア ズ キに ほとん ど褐変 症状を 起こさ なか った. アズキ 萎凋病 菌の 出 芽 細 胞 培養 液 が ア ズ キ以 外 の 植 物 に対 し て も 毒 性を 示 し , ア ズ キ萎 凋 病菌以 外のF oxysporUITlの出芽 細胞     ー1327―

(2)

培養液がアズキに毒性を示レたことから,アズキ萎凋病菌の出芽細胞培養液中の植物毒素は宿主特異的毒素 ではないと考えられた.

2.植物毒素とアズキのカルスを用いた抵抗性検定

  本研究では,アズキ萎凋病菌の植物毒素とアズキのカルスを利用した抵抗性検定の可能性を検討した.透 析 処理後 の出芽 細胞培 養液の 内容物 を100mgノし50m/L,lOmg/Lの濃度で2,4―Dを添加したムラシゲ・

スクーグ(MS)培地に混入し,その培地上で萎凋病感受性品種及び抵抗性品種・系統のカルスを培養した.

lOOmg/L及び50m/Lの濃度 では,2週間培養 後の感 受性品 種のカルスと抵抗性品種・系統のカルスとの問 には,褐変程度と生重で明確な差があり,各品種・系統の萎凋病感受性に一致した.抵抗性品種・系統のカ ルスは感受性品種のカルスに比ベ褐変程度は低く,カルスの重量は増加した,一方,septoria medium由来 の培養濾液を2,4−D添加MS培地に0.5%及び0.1%の濃度で添加した培地に各品種・系統のカルスを移植し て同様に培養したところ,各品種・系統の萎凋病感受性と褐変程度や生重との問に関連性は認められなかっ た.カルスによる生物検定から,アズキ萎凋病菌の出芽細胞培養液中の植物毒素はアズキ萎凋病菌の病原性 に関与していることが確認された.この植物毒素とアズキのカルスを利用した萎凋病抵抗性検定は可能であ り,抵抗性育種への利用も期待できると考えられた,また,出芽細胞培養液中の植物毒素と培養濾液中の植 物毒性物質が互いに異なる物質であり,培養濾液中の植物毒性物質とアズキ萎凋病菌の病原性との関連性は 低いことが示唆された.

3.植物毒素の特性

  出芽細胞培養液に含まれる植物毒素の特性を検討した.出芽細胞培養液を60℃〜121℃の各段階で加熱処 理したところ,121℃20分間の加熱処理で毒性の低下が認められたものの,他の条件では毒性低下はなく,

この植物毒素カ淵熱性を持つことがわかった.出芽細胞培養液を各種酵素,proteaseK,ロ−gulucosidase, ロ‑galactosidase,dーmannosidaseで処理した結果,ローgalactosidase処理による毒性の低下が認められ たが,いずれの酵素によっても出芽細胞培養液の毒性は失活することはなかった.出芽細胞培養液の透析で は,透析膜内液に活性が認められた.透析後の出芽細胞培養液の内容物をセルロファインGCL‑2000によル ゲル濾過を行ない,その分画の毒性を生物検定試験により確認したところ,短時間で溶出された分画にアズ キに対する最も強い毒性が認められ,分子量が非常に大きいことがわかった.最も強い毒性のある分画には

280nmの吸光が確認され,植物毒素にタンパク質が含まれることが推察された.培養濾液には,出芽細胞

培養液の毒性の強い分画と同じ分画には吸光はほとんど認められないことから,出芽細胞培養液の植物毒素 と培養濾液の植物毒性物質が異なることが示唆された.出芽細胞培養液の毒性分画にっいて非変性ポリアク リルアミド電気泳動を行なったところ,銀染色とシッフ染色により染色されたことから,植物毒素は糖夕ン パクであることが推察されたが,分子量は不明であった.この分画を加水分解すると,mannoseとgalactose が検出され,先の酵素処理の結果と合わせ,出芽細胞培養液の植物毒素の活性へのgalactoseの関与が考え られた.

本研究では,アズキ萎凋病菌がその病原性に関与する植物毒素を産生することが確認された.カルスを用 いた生物検定では各品種の植物毒素に対する反応と萎凋病感受性が一致しており,アズキ萎凋病菌の植物毒 素は,アズキ萎凋病菌の宿主特異性への関与は低いが,アズキ萎凋病の病徴発現に重要な役割を果たしてい ると考えられた.この植物毒素とカルスを用いた萎凋病抵抗性アズキ品種選抜は有効であることが明らかと

なった,

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    内 藤繁男 副 査    教授    幸 田泰則 副査   助教授    近藤則夫

学 位 論 文 題 名

アズキ萎凋病抵抗性品種選抜に有用な アズキ萎凋病菌の植物毒素の検出

  

本 論 文 は 図

48

, 表

8

を 含 む 総 頁 数

159

の 和 文 で あ り , 別 に 参 考 論 文

2

編 が 付 さ れ て い る 。

  

ア ズ キ 萎 凋 病 は

Fusarium oxysporumf

sp. a

〔 切 ! を

fcc

ね を 病 原 と し , そ の 症状 は 葉 脈 の 褐 変 と 葉 の 萎 縮 , 維 管 東 部 の 褐 変 , 最 終 的 な 萎 凋 , 枯 死 で あ る . こ れ ら 病 徴 の 発 現 に は 植 物 毒 素 の 関 与 が 考 え ら れ た . 本 研 究 は , ア ズ キ 萎 凋 病 菌 の 病 原 性 に 関 与 す る 植 物 毒 素 の 単 離 と そ の 化 学 的 特 性 , 及 び 植 物 毒 素 を 利 用 し た ア ズ キ の 萎 凋 病 抵 抗 性 品 種 選 抜 の 可 能 性 に つ い て 検 討 し た も の で あ り , 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以 下 の と お り で あ る .

1

. 植 物 体 に よ る 植 物 毒 素 の 生 物 検 定

  

ア ズ キ 萎 凋 病 菌 の 培 養 濾 液 ( 以 下

CF)

の 希 釈 液 を 萎 凋 病 感 受 性 品 種 「 ハ ヤ テ シ ョ ウ ズ 」 の 苗 ( 地 際 部 で 切 断 し た 茎 葉 付 き の 苗 : 以 下 切 離 茎 ) に 処 理 す る と , 葉 の 褐 変 な ど の 障 害 が 認 め ら れ た . た だ し 、 そ の 症 状 は 本 病 罹 病 ア ズ キ と は 異 な っ て い た 。 本 病 感 受 性 品 種 と 抵 抗 性 品 種 と の 間 に

CF

処 理 に よ る 葉 脈 の 褐 変 程 度 で は 差 が 認 め ら れ た が , 維 管 束 は い ず れ の 品 種 で も 同 様 に 褐 変 し て そ の 差 は 認 め ら れ ず , 茎 の 伸 長 も 全 品 種 が 抑 制 さ れ る な ど そ の 差 は な か っ た .

  

ア ズ キ 萎 凋 病 菌 の 出 芽 細 胞

(bud

cell)

を 蒸 留 水 中 で 培 養 し て 得 た 出 芽 細 胞 培 養 液 ( 以 下

BF)

を 処 理 し た 「 ハ ヤ テ シ ョ ウ ズ 」 の 切 離 茎 に お い て , 葉 脈 と 茎 維 管 束 に 褐 変 症 状 が 見 ら れ , 茎 の 伸 長 抑 制 も 認 め ら れ た , 褐 変 症 状 は 本 病 罹 病 ア ズ キ の 症 状 に 類 似 し て お り , 病 徴 発 現 に 毒 性 物 質 の 関 与 が 示 唆 さ れ た . 抵 抗 性 品 種 の 葉 脈 褐 変 は 感 受 性 品 種 よ り も 軽 微 で , 本 病 感 受 性 と 一 致 す る 品 種 間 差 が 認 め ら れ た . た だ , 感 受 性 品 種 の 中 で 唯 一 「 エ リ モ シ ョ ウ ズ 」 の 褐 変 の 程 度 は 抵 抗 性 品 種 と 同 等 で あ り , 維 管 束 褐 変 と 伸 長 抑 制 で は 品 種 間 に 差 は な か っ た .

  BF

処 理 し た イ ン ゲ ン マ メ に は 異 常 は 認 め ら れ な か っ た が , ダ イ ズ で は 葉 の 黄 化 を

特 徴 と す る 障 害 が 認 め ら れ た . ま た , ア ズ キ に 対 し 非 病 原 性 の

F

. 〇 め ′

sporum 13

(4)

株の BF に,アズキに対する毒性が認められた.その中でタマネギ乾腐病菌,クリム ソンク口ー バー病原性 菌,アズキ 根圏由来の腐生性 F . oxysporum のBF の毒性が 強く,一方,他の7 つの分化型の BF はアズキに褐変症状を起こさなかった,アズキ 萎凋病菌の BF がアズキ以外の植物に対しても毒性を示し,アズキ萎凋病菌以外のF . OXjr Sp On.uT1 のBF がアズキに毒性を示したことから,BF 中の植物毒素は宿主特異 的毒素ではないと考えられた,

2. 植物毒素とアズキのカルスを用いた抵抗性検定

   アズキ萎凋病菌の植物毒素とアズキのカルスを利用した抵抗性検定法を検討した.

透 析後 の BF の 内 容物 を . 10mg/L ,50mg/L ,lOOmg/L の 濃 度で 2 , 4 − D 添 加ムラ シゲ・ スクーグ (MS) 培地に混入し,本病感受性品種及び抵抗性品種・系統のカル ス を培 養 した . 50mg/L 及 び lOOmg/L の濃度で は,抵抗性 品種のカル スは感受性 品種のカルスに比ベ褐変程度は軽微で,カルス重量が植物毒素無添加の対照と同等な ことからカルスの成長抑制はほとんどないなど,これらの反応は各品種・系統の本病 感受性に一致した.カルスによる生物検定から,BF 中の植物毒素がアズキ萎凋病菌 の病原性あるいは発病カに関与していることが確認された.この植物毒素とアズキの カルスによる本病抵抗性検定は有効で,抵抗性育種への利用も期待できる.一方,CF を添加した培地では,カルスの褐変程度や重量に対する影響の間に本病感受性との関 連性は 認められず,BF 中の植物毒素は CF 内の毒性物質と異なることがあらためて 示唆された.

3 .植物毒素の特性

  BF を60 ℃〜 121 ℃の各段階で加熱処理したところ, 121 ℃ 20 分間の処理で毒性の 低 下 が 認 め ら れ た が , 植 物 毒 素 が 耐 熱 性 を 持 つ こ と がわ か った . BF の ロ―

galactosidase 処理による毒性の低下が認められたが,他の酵素による毒性の失活は なかっ た. BF の透析 膜内液に活 性が認めら れたので, セルロファ イン GCL‑2000 によるゲル濾過で透析BF 内容物を分画し,各分画の毒性を確認したところ,分子量 が非常に大きい分画に毒性が認められた.毒性分画には 280nm の吸光が確認され,

夕ンパク質の存在が推察された.非変性ポリアクリルアミド電気泳動では,銀染色と シッフ染色により植物毒素は糖夕ンパクであることが推察されたが,分子量は不明で あった .この分画 を加水分解 するとgalactose が検出され,植物毒素の活性への galactose の関与が考えられた.

   本研究では,アズキ萎凋病菌がその病原性に関与する植物毒素を生産することを確 認し,これがアズキ萎凋病の病徴発現に関与していることを明らかにした.また,ア ズキ各品種の本病に対する感受性が植物毒素に対するアズキ各品種のカルスの反応と 一致したことから,植物毒素とカルスを用いた抵抗性アズキ品種の選抜は本病抵抗性 育種に有効であると推察される。従ってこれらの成果は、実用的に利用可能性が高く、

学術的にも高く評価される。

   よって、審査員一同は、藤根統が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を 有するものと認めた。

     ―1330 −

参照

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