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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 新 保 和 賢

    Selective vulnerability of spinal motor neurons      to reactive dicarbonyl compounds, intermediate products of glycation, in vitro:implication of inefficient        glutathione system in spinal motor neurons

   (糖化反応中間産物である反応性ジカルボニル化合物に対する 脊髄運動ニューロンの選択的脆弱性:脊髄運動ニューロンにおける      非効率的なグルタチオン系の示唆)

学位論文内容の要旨

  後期糖化最終生成物、Advanced glycation end products (AGEsは老化や糖尿病の病態研究 の みな らず 、ア ルツ ハイ マー病やバーキンソン病などの神経変性疾患でもその関与が示唆さ れ てい る。 筋萎 縮性 側索 硬化 症(ALS) は上 位及 び下 位運動二ユー口ンの変性を特徴とする 神 経変 性疾 患で あり 、ALS患者 とAMモデ ルマ ウス の運 動二ユー口ンにはAく氾sの蓄積が報告 さ れて いる 。二 つの 反応 性ジ カル ポニ ル化 合物 であ る、ヌ チル グリ オキ サー ル(MG)と争 デオキシグルコソン(3‐DG)はAく黽s生成を促進し、また種々の細胞でフリーラジカル産生と 関 連し た毒 性を 示す こと が知られている。一方、グルタチオンは細胞内でフリーラジカルか ら 細胞 を防 御す る最 も豊 富なチオールであり、特にカタラーゼ活性の低い神経細胞において は最も重要な抗酸化機構とされている。今回我々は、培養脊髄二ユー口ンにおける、MG、3‐ 以ユの神経毒性を確認し、この毒性がグルタチオン増強物質の前投与、アミノグアニジンの同 時 投与 によ り軽 減さ れ、 グルタチオン枯渇剤の前投与により増強されることを観察した。脊 髄 運動 二ユ ー口 ンは 、非 運動 二ユ ー口 ンに 比較 しジ カルポ ニル 化合 物に 選択 的脆 弱性を示 し 、 こ の 脆 弱 性 は 非 効 率 な グ ル タ チ オ ン 系 の た め で あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   胎生14日SlコraguやDMlyラット胎児の大脳皮質及び脊髄より分散培養系を確立した。大脳 あ るい は脊 髄よ り髄 膜を 剥離し、20分間トリプシン処理後、ピベッテイングで分散神経細胞 を 調整 した 。大 脳皮 質細 胞はEagle sminimaleSsen五almedim(MEM)に1〔%胎児ウシ血清   (FBS)、グルタミン、グルコース添加した培養液に懸濁し、ポリ一L「リジンでコーティン グ した8穴 チェ ンバ ース ライド にプ レー ティ ング した 。脊髄培養細胞は同じ培養液中に懸濁 し 、あ らか じめ 大脳 皮質 アストログリアの単層をシート状に敷き詰めたの上にプレーティン グ し た 。 培 養 は37°C、5%C02培 養 器 で 維 持 し た 。 翌 日 、培 養液 をB27サプ リヌ ント 添加 N師roba瑚mediumに 交換 した。 脊髄 培養 細胞 は、 アス トログリアのないチェンバースライド

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に もプ レー ティ ング し、 翌日 、グ リア 調整培養液に交換した。グリア調整培養液は、グリア 培 養継 代後 チ8日 の培 養液 を新 鮮な 培養 液に 交換 し、48時 間後 に採 取した。採取した培養液 は 遠心 後、 滅菌 フィ ルタ ーに かけ 、等 量のB27サプリヌント添加Neurobasal mediumと混合し た 。(50% グ リ ア調 整 培 養 液 ) 。 実 験 は7110日 培 養 後 に 行 っ た 。MGあ る いは3‑DGを50, 100,250,500 VMと なる よう に培 養液 に添加 し、 これ に上 記培 養細 胞を2甜間暴露した。ア ミ ノ グ ア ニ ジ ン と 、 グ ル タ チ オ ン 増 強 物 質(N− アセ チ ル シ ス テ イ ン(NAC)  10 mM、グ ル タ チ オ ン ェ チ ル エ ス テ ル(GEE) ImM、1‑ 2‑オ キ ソ‑ 4‑チ ア ゾ リ ジ ン ー カル ポ キ シ ル 酸 (LOTC) 10mrv) 及 び グ ル タ チ オ ン 枯 渇 剤 ( エ タ ク リ ン 酸 (Bい10mM、 プ チ オ ニ ン ス ル フ エ キ シ ミン (BSO)50いM)は 毒性実 験の 淵寺 間前 に添 加し た。 大脳 皮質 及び 脊髄 培養 細 胞 を4謝ヽ ラホルムアルデヒドで30分固定し、0.2%Tr而nX‐100で5分間処理した。30分間適 当 なプ 口ッ キン グ溶 液で 処理 後、 一次 抗体(抗MA成抗体及び抗SM132抗体それぞれ1:1(Xめ 希 釈 ) 傘C、オ ーバ ーナ イト イン キュ ベー トし た。 ピオ チン 化二次 抗体 、ABC液 、ジ アミ ノ ベ ンジ ジン を染 色細 胞を 可視 化す るた め使用した。細胞内グルタチオンレベルを観察するた め 、 培 養 脊髄 二ユ ーロ ンを10いMのモ ノク 口口 バイ ヌイ ンで37°C、10分間 処理 した 。洗 浄 後 、氷 冷ヌ タノ ール 固定 をし た。 螢光 顕微鏡下で紫外線領域フィルターを用いて観察した。

ニ ュ ー 口 ンの 生存 率は 免疫 染色 された 細胞 の数 を直 接数 えた 。MA硯陽 性細 胞で は辺 縁整 の 円 形も しく は卵 円形 の胞 体と 比較 的均 一な直径で滑らかな外観の神経突起を持っものを生存 二 ユー 口ン とし て数 えた 。SM{32陽性 細胞は 、20いm以上 の大 きな 胞体を持ち、著明な樹状 突 起と 単一 の長 い軸 索様 突起 を有 して いるものを生存運動二ユーロンとして数えた。少なく と も3回の 異なる 培養 での 結果 を基 に比 較し 、分 散分 析(ANOヽ ′心 及びScheポsp鷆hoctest で統計学的有意差を検討した。

  大脳 皮質 由来 の単 層ア スト 口グ リア をシー ト状 に敷 き詰 めた 上に 、血清を含むMEM培養液 を 用い て脊 髄こ ュー 口ン を培 養し たと ころ、SM132陽性の大きい運動二ユーロンは全体の1− 2%を 占め ていた 。培 養液 がB27サ プリ メン卜添加N由robasalmediumのみでは大きい運動二ユ ー 口ン は1%以下であった。単層アストログリアシートの代わりにグリア調整培養液を使用す ると、よく発達した運動二ユー口ンが1―2%に認められるようになった。この培養条件ではア スト口グリアが全体の約1〔)%を占め、比較的二ユー口ン豊富な培養となっていた。MG及び3‐ 以4時 間暴 露は、 培養 大脳 皮質 二ユ ー口 ン、 脊髄 こュ ー口 ンに 、用 量依存性の神経細胞毒性 を 示し た。 脊髄 運動 二ユ ー口 ンは 大脳 皮質二ユー口ン及び脊髄非運動二ユー口ンより脆弱で あった。

  グ ル タ チオ ンの 影響 を検 討す るため 、培 養脊 髄二 ユー ロン にグ ルタ チオ ン増 強物 質で あ る 、NAC、Q亜 、LOrCを 前 処 置 し 、MG丶3−Iコ く初 毒性 を観 察した 。上 記物 質2鏘間 前投 与 に より ニュ ー口 ンの 生存 率は コン ト口 ールに比較して著明に改善した。グルタチオン枯渇剤 の 上 記 毒 性 の 影 響 を 検 討 す る た め 、BSOとEAを 用 い た 。50いMBSO及 び10uMB` の 御 寺 問 暴 露で は、 培養 脊髄 二ユ ーロ ンに 形態 的変化を認めなかった。これら物質の御寺問前処置は MG丶3‐DGによる 神経 毒性 を著 明に 増強 した 。こ の際 運動 二ユ ー口 ンは非運動二ユー口ンに 比 較し てよ り脆 弱で あっ た。 神経 細胞 内グルタチオン量を半定量的に調べるため、螢光指標 と して モノ ク口 口バ イメ イン を使 用し た。グリアーニューロン混合培養では、背景にグリア が 存在 して おり 、グ リア のグ ルタ チオ ン濃度がニュー口ンに比較して高いため、二ユー口ン

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の細胞内グルタチオンを決定することが困難である。これに対処するためグリア調整培養液 での比較的二ユー口ン豊富な培養系を用いた。結果は予想に反しコント口ールでは運動二ユ ー口ンと非運動ニュー口ンの間で明らかな差はなかった。NAC処置にて螢光強度は増加し、

BSO処置にて減少した。運動二ユー口ン、非運動二ユー口ン間で有意な差を認めなかった。

アミノグアニジン1 mM、24時間前投与とコント口ール間にMG丶3‑DGの毒性の変化を認めな かった。同時投与では保護作用を認めた。しかし、運動二ユー口ンと非運動二ユー口ンの間 に有意な差はなかった。

  以上、培養脊髄運動二ユー口ンは反応性ジカルポニル化合物である、MG3‑DGO)急性神 経毒性に対して選択的脆弱性を示した。この選択性は脊髄運動ニュー口ンのグルタチオン系 の非効率性にあると推察された。今後は、より長期の培養系を用いた、AGEs形成を促す慢性 糖化毒性の検討と、細胞種間での酸化的ストレスに対する防御機構の違いを明らかにするこ とが必要である。

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学位論文審査の要旨

    Selective vulnerability of spinal motor neurons      to reactive dicarbonyl compounds, intermediate products of glycation, in vitro:implication of inefficient        glutathione system in spinal motor neurons

  (糖 化反 応中間 産物 であ る反応性ジカルボニル化合物に対する 脊髄運動ニューロンの選択的脆弱性:脊髄運動ニューロンにおける     非効率的なグルタチオン系の示唆)

  胎生14日ラット胎児の大脳皮質及び脊髄より分散培養系を確立し、脊髄運動こュー口ンと 非運動二ユー口ンを免疫組織学的に同定した。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態への関与 が示唆されている後期糖化最終生成物、advanced glycation endproducts (AGEs)生成を促 進する反応性ジカルボニル化合物、ヌチルグリオキサール(MG)と3‐デオキシグルコソン (3‑DG)の暴露は、脊髄二ユー口ンに、用量依存性の神経細胞毒性を示した。脊髄運動二ユ ー口ンは非運動二ユー口ンより脆弱であった。グルタチオン増強物質前投与は、培養脊髄 二ユー口ンのMG、3‑DGによる毒性を著明に減少させた。運動二ユー口ンは非運動二ユーロ ンに比較して保護されていた。グルタチオン枯渇剤の前処置はMG、3‑DGによる神経毒性を 著明に増強した。運動二ユー口ンは非運動二ユー口ンに比較してより脆弱であった。神経細 胞内グルタチオン量は、コントロールでは運動二ユー口ン、非運動ニュー口ン間で有意な差 を認めなかった。AGEs阻害剤のアミノグアニジンは同時投与では保護作用を認めたが、運 動二ユー口ンと非運動こューロンの間に有意な差はなかった。以上、培養脊髄運動二ユー口 ンは反応性ジカルボニル化合物の神経毒性に対して選択的脆弱性を示した。この選択性はグ ルタチオン系の非効率性にあると推察された。

  公開発表にあたって、副査の吉岡教授から、3‑DG、MGによる神経細胞死はアポトーシス によるものか、またそれは、活性酸素を介してのみ作用するのかとの質問があった。それに 対して申請者は、培養大脳皮質ニュー口ンを使った我々の先行実験で神経細胞核の断片化を 観察し論文発表しており、今回の培養脊髄二ユー口ンにおける細胞死もアポトーシスによる 可能性が類推され、活性酸素発生以外に、蛋白固有機能低下による可能性もあると回答し

郎 弘 雄 和 充 邦 嶋岡 代 長 吉 田 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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た。次に、運動二ユー口ンと非運動二ユー口ンにおける差は、グルタチオン量の差によるも のではなく、グルタチオン関連の酵素活性などの差にあるとの主張であるが、具体的なデー タがあるか質問があった。これに対して、培養系で運動二ユーロンと非運動二ユ一口ンを分 離して酵素活性を測定することは技術的に困難であるが、ALS運動野でグルタチオンベ口キ シダーゼの低下が報告されていると回答した。次に、3‑DG、MGの代謝にっき質問があっ た。申請者は、3‑DGはアルデヒドリダクターゼにより分解され、これはNADPH依存酵素で あり、酸化ストレスで不足する可能性があること、酵素自体糖化され活性低下を来すこと、

MGはグルタチオン依存性酵素であるグリオキサレースにより不活性化されること、糖化反 応はこれら解毒酵素系に影響し悪循環を形成することを説明した。次に、実験に使用された MG、3‑DGの濃度と生体内での濃度の関係が問われた。これに対して、健康成人血清中 1VM、 糖尿 病患 者血清5VM、腎 不全 を伴う糖尿病患者血清7‑8VMであり、実験上、数VM でも毒性が観察されたと回答した。最後に、3‑DG、MGとALSとの関連示すデータはあるか との質問があった。申請者は、患者髄液中の3‑DG、MG測定を現在試みていること、3‐ DG、MGに特異的に由来するAGEsに対する抗体を入手したので、これら抗体による免疫組 織学的研究が進行中であると回答した。次に、主査の長嶋教授より運動こュー口ンと非運動 二ユー口ンの分別同定において、そのマーカーの妥当性は細胞の大きさや形態だけでなく運 動二ユー口ン特異的毒性物質での実験で確認されるのではないかと質問があった。申請者は 今回の分散培養系では他物質での特異的毒性が確認できなかったと説明した。次に、ALSと グリアの関係にっき質問があった。これに対しては、ALS病態における運動二ユーロンとグ リアの関係は前述したグルタミン酸トランスポーターの実験でも提唱されていると回答し た。最後に、ALSでは保たれる脳幹運動二ユー口ンと脊髄運動二ユー口ンの違いについて実 験で確認可能か質問があった。これに対して、脳幹運動核部分のみ取り出しての培養は困難 であり、今後の検討課題としたいと回答した。最後に副査の田代教授から、今後の研究の展 望と治療の可能性にっき質問があった。これに対し申請者はスライドを用いて説明し、今後 長期の培養系を用いたAGEs形成を促す糖化毒性の検討が重要と回答し、糖尿病合併症治療 として各種AGE阻害薬が開発中で、これらによる治療可能性もあると回答した。本研究は、

脊髄運動二ユー口ンのジカルポニル化合物に対する脆弱性とグルタチオンの関係を明らかに し、ALS病態との関連を示唆した研究発表であり、審査員一同これらの成果を高く評価し、

申 請 者 が 博 士 ( 医 学) の 学 位 を う け る の に 十 分な 資格 を有す るも のと 判定 した。

参照

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