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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 岡 田 学 位 論 文 題 名

アズキピシウム苗立枯病の病原め励iu7n 属菌と それらに対するアズキ品種の感受性に関する研究

学位論文内容の要旨

−E聾.

北海道 のアズ キ栽培地 帯では 、播種後 に土壌水 分量が 多い条件 で低温が続くと、アズキの 出芽率の低下がしばしば問題となる。特に、「ホッカイシロショウズ」等の白色種皮の品種・系 統(白 小豆) では、赤色種皮の品種・系統に比べて、出芽率が劣る傾向にある。白小豆は高 級和菓 子の原 料として 商品価 値が高く 、生産の 拡大が 望まれて いるが、出芽前後の立枯れ が栽培 上の障 害となっ ている 。白小豆 の出芽率 低下の 原因は、 従来アズキの品種特性と見 なされ、病原菌の関与については軽視されてきた。しかし、チウラム剤の種子粉衣処理によっ て、白 小豆の 出芽率が 改善さ れた事例 があり、 菌が出 芽前立枯 れの要因である可能性が考 えられた。低温(10℃前後)下で作物の出芽率が低下する病害には、Pythium属菌によるトウ ロモコシ苗立枯病があり、チウラム剤による種子消毒の有効性が報告されている。白小豆の事 例は、 低温条 件で出芽率の低下が著しいこと、およびチウラム剤の種子粉衣による出芽率の 改善がトウモロコシ苗立枯病の例と一致する。これらのことから、アズキの出芽前立枯れでも Pythium属菌の関与が疑われた。

本 研究では 、北海 道におけ る白小 豆を中心 とした アズキの 出芽前立 枯れの 原因をPythium 属菌の面から検討し、さらにそれらPythium属菌に対するアズキ品種・系統の感受性、アズキ の抵抗性機作、および防除法について検討した。

1.病原菌の同定

  アズ キ の 出芽 前 立 枯れに罹 病した子 葉、胚 および胚 軸からPythium属菌 が高頻 度で分離 された。分離菌は、形態的、生理的および分子生物学的諸性質により、P mamillatum Meurs、 P myriotylum Drechsler、Pspめ甜肛田Sawada、およびFM轟轟珊spp.と同定された。この中で、

特にP叩 加甜珊が 優占して いた。 分離菌の 人工接 種土壌にアズキを播種したところ、供試菌 株 の 全て が 白 小豆 の 出芽を 著しく阻 害し、 特にP叩め甜脚 で強い 病原性が 認めら れた。病 徴は 、発芽 前の種子 腐敗、 胚軸部の赤褐色小斑点、主根・幼芽先端部の褐変・壊死である。

出芽 後は地 下部が褐 変し、 根の発達 が阻害さ れ、地 上部では 萎凋お よび生育 抑制が見られ るこ とがあ った。供 試菌株 間に病徴の差異は認められず、罹病したアズキ組織からは接種し た菌 が再分 離された 。この ことから、アズキの出芽前、出芽後の苗立枯れは、P叩め甜u田を 中心とする複数種のヶめ轟珊属菌が要因となっていることが判明した。これまでアズキでは、

聊カ ぬz田属菌により苗立枯れ症状を呈する病害の報告はない。よって、B蝕m用属菌による出

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芽 前後 の 苗 立 枯れ 症 状 に つい て 、 病 名を 「 ア ズ キピ シ ウム 苗立枯 病」と 提案し ,P mam窃をf跚 Meurs、P卿 ´7め 馴 む 田Drechsler、P叩 め 甜HmSawadaおよ びB勘 五 脚Spp.を 病 原 として報 告し た 。 病 原 菌 の 宿 主 範 囲 に つ い て 検 討 し た 結 果 、P閉 鋤mをf .m、P卿 概 蜘k田 お よ びP 叩め甜Hmは、アズキ、インゲンマメ、ダイズ、エンドウ、リョクトウ、アルファルファ、ホウレンソウ、

キュウリ、ナス、トウガラシ、ダイコン、タマネギ、コムギ、トウモロコシ、テンサイ、イネに病原性 を 示 し た 。 ソ ラ マ メ お よ び ヒ マ ワ り で は 、 生 育 抑 制 お よ び 病 徴 は 見 ら れ な か っ た 。 2. Pythium属 菌 に対 す る ア ズキ 品 種 ・ 系統 の 感 受 性

  白 小豆 の4品 種 ・ 系 統と 赤 色 種 皮品 種 「 エ リモ シ ョ ウ ズ」 の 圃 場 にお け る 出 芽率 の 差 を 検討 した 。 前 作 がア ズ キ の 音更 町 の 圃 場で は 、 「 エリ モ シ ョ ウズ 」 に 比 べ白 小豆 の出芽 率が有 意に 低 く な っ た 。 白 小 豆 「 十 育146号 」 およ び 「 エ リモ シ ョ ウ ズ」 の12、20、25お よ び33℃ で のP spめ 甜 珊 に 対 す る 感 受 性 を 検 討 した 。 そ の 結果 、12℃で は 両 品 種・ 系 統 と も出 芽 前 に 立枯 れ たが 、20、25お よ び33℃ では 「 エ リ モシ ョ ウ ズ 」に比 べ「十 育146号」 の出芽 率が低 かった 。ま た 、 白 小 豆28品 種 ・ 系 統 お よ び 赤 色 種 皮2品 種 を 用 い 、P用 卸mをfH田 お よ びP叩 め 甜 卿 へ の 感 受 性の 差 を 検 討し た 。 そ の結 果 、 感 受性 は 白 小 豆で 高 く 、 赤色 種 皮2品 種 で低 か っ た 。 白小 豆 の 品 種・ 系 統 問 に感 受 性 の 差は ほ と ん どな か っ た 。

3. 病原菌 に対す るアズ キの抵 抗性機 作の検討

  ア ズ キ ピ シ ウ ム 苗 立 枯 病 に 対 し、 白 小 豆 は罹 病 し や すく 、 赤 色 種皮 の も の は比 較 的 強 い原 因 につい て、以 下の観 点から 検討し、 考察し た。

1) 白 小 豆 種 子 に 特 有 の 皮 切 れ の 有 無 と 発 病 度 に 関 連 性 は認 め ら れ なか っ た 。 よっ て 「 皮 切     れ に よ り 種子 へ のPythium属 菌の 侵 入 が 容易 に な り 、発 病 が 激 しく な る 可 能性 」 は 低 いと     考えられ た。

2)「 ホ ッ カ イシ ロ シ ョ ウズ 」 で は 、Pythjum属 菌 の 菌 糸は 種 子 の 周囲 で 旺盛 に生育 した。 種皮     内 へ の 菌 の侵 入 経 路は 、臍の 開口部 および 種皮か らであ る。「 エリモシ ョウズ 」では 、菌の     侵入経路 が臍の 開口部 にほぼ 限られ た。

3) 吸 水 時 の 種 子 か ら の 浸 出 物 量(Brix値 ) は 、 白 色2品 種 ・ 系 統 と 赤 色2品 種 の 間 に 差 が な   か った。

4) 「エリ モショ ウズ」 または 「ホッ カイシロ ショウズ」の種皮抽出物を添加したトウモロコシ煎汁     寒 天 培 地 上 で のPythium属 菌 の 菌 糸 生 育 は 、 「 エ リ モ シ ョ ウ ズ 」 種 皮 抽 出 物 添 加 区     (5,OOOppm)で 顕 著 に 抑 制 さ れ た 。 赤 色 ア ズ キ が 本 病 に 強 い 一 因 と し て 、 種 皮 中 の   Pythium属 菌 に 生 育 抑 制 作 用 を 持 つ 水 溶 性 の 抗 菌 性 物 質 が 、 赤 色 ア ズ キ に 静 的 抵 抗 性     を与えて いるこ とが考 えられ た。

  以 上4点から、次のように考察できる。「ホッカイシロショウズ」および「エリモショウズ」では、

種 子 か ら の浸 出 物 が 土壌 中 のPythium属菌 を 刺 激 し、 そ の 生 育を 促 進 す る。 た だ し 「エ リ モ シ ヨ ウ ズ 」 で は そ れ に 加 え て 、 種 皮 に含 ま れ る 抗菌 性 物 質 が土 壌 水 に 溶出 し 、 種 皮周 囲 で の 菌 の 繁殖を 抑制す る。一 方「ホ ッカイシ ロショ ウズ」 の種皮 は、抗 菌性物 質を含まず、溶出しない。

そ の た め 種子 は 、 種 子か ら の 浸 出物 を 利 用 して 旺 盛 に 生育 し た 菌 糸に 包 囲さ れる。 さらに 「エ リ モ シ ョ ウズ 」 種 皮 中の 抗 菌 性 物質 は 、 菌 の柵 状 組 織 への 侵 入 を 阻害 す る。 っまり 、この 抗菌 性 物 質 は 、 @ 吸 水 後 に 種 皮 か ら 周 囲の 土 壌 水 に溶 出 し 、 種子 周 囲 で の菌 の 生 育 を抑 制 す る 、

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◎種 皮の 柵状 組織 に静 的抵 抗性 を与 え、 菌による柵状組織への貫入を防ぐ 、の2段階の働 きを 持っ てい ると 考え られ る。

4.アズキ種子にチウラム剤を粉衣処理した結果、出芽率が改善され、チウラム剤の有効性が 示された。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    内藤繁 男 副査    教授    大崎    満 副査    助教授   近藤則夫

学 位 論 文 題 名

アズキピシウム苗立枯病の病原め励22t77l 属菌と それらに対するアズキ品種の感受性に関する研究

  本 論 文 は図50、表21、129頁 からなる 和文であ り、別 に参考論 文2編が付さ れている 。   白色種 皮のアズ ギ品種 ・系統( 白小豆 )は、播 種後に 低温多湿が続くと、出芽率の低下 が 著し い 。 この 原 因 は、従 来アズ キの品種 特性と見 なされ 、病原菌 の関与 について は不 明であ った。立 枯れた アズキか らPythium属菌が分 離され たことか ら、本 菌の関与 が考え られた 。

  本 研 究 で は 、 北 海 道 に おけ る ア ズ キの 出 芽 前立 枯 れ の原 因 をPythium属 菌の 面 か ら 検討し 、さらに それらPythium属菌 に対す るアズキ 品種・ 系統の感 受性、 アズキの 抵抗性 機作、 および防 除法に ついて検 討した 。

1. 病原菌の 同定

  出 芽 前 立枯 れ 症 状の ア ズ キか らPythium属 菌 が 高頻 度で分離 された 。分離菌 は、形態 的 、 生 理 的 お よ び 分 子 生 物 学 的 諸 性 質 に よ り 、P maゼ71atum、Pmyriotylum、P sp仂 甜H册と 同 定 され た 。分離 菌株の 全てが白 小豆の 出芽を著 しく阻害 した。 なかでもP 叩 め恥 珊 で 強い 病 原 性が 認 め られ た 。 病徴 は 、 発芽 前 の 種 子腐 敗 、 胚軸 部 の 赤褐色小 斑 点、 主 根 ・幼 芽 先 端部 の褐変 ・壊死 である。 出芽後 は地下部 が褐変し 、根の 発達が阻 害され 、地上部 では萎 凋およぴ 生育抑 制が見ら れること があった。罹病したアズキ組織か らは接 種した菌 が再分 離された 。これまでアズキでは、腕カ′z珊属菌により苗立枯れ症状 を呈す る病害の 報告は ない。よ って、m.轟轟′田属菌による出芽前後の苗立枯れ症状につ いて、 病名を「 アズキ ピシウム 苗立枯 病」と提 案し,P問鋤mをfu田Meurs、P卿ロ あ伽h加 Drechsler、P叩 め甜u田Sawadaを病 原として 報告し た。

2. Pythium属菌 に対する アズキ品 種・系 統の感受 性

  音更 町 の 圃場 で は、赤 色種皮 品種「エ リモショ ウズ」 に比べ白 小豆の 出芽率が 有意に 低か った。白 小豆「 十育146号」およ ぴ「エ リモショ ウズ」の12、20、25および33℃でのP spmosumに 対 す る感 受 性 を検 討 し た結 果 、12℃ では両 品種・系 統とも 出芽前に 立枯れ た

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が、20、25および33℃では「エリモショウズ」 に比べ「十育146号」の出芽 率が低かった。

ま た 、 白 小 豆28品 種 ・ 系 統 お よ び 赤 色 種 皮2品 種 を 用 い 、P mamillatumお よ びP spinosumへ の感受性の差を検討した。 その結果、感受性は白小豆で高く、赤色種皮品種 で 低 か っ た 。 白 小 豆 の 品 種 ・ 系 統 問 に 感 受 性 の 差 は ほ と ん ど な か っ た 。

3.病原菌に対するアズキの抵抗性機作の検討

  白 小 豆 がPythium属 菌 に 弱 い 原 因 に つ い て 、 以 下 の 観 点 か ら 検 討 し 、 考 察 し た 。 1) 白 小 豆 種子 に 特有 の種 皮に 亀裂 が入 った 、い わゆ る皮 切れ の有 無と 発 病度 に関 連性 は認められなかった。

2)「ホッカイシロショウズ」で は、Pythium属菌の菌糸は種子の周囲で旺盛に生育した。種 皮内 への菌の侵入経路は、臍の開口部および種皮からである。「エリモショウズ」では、菌 の侵入経路が臍の開口部にほぼ限られた。

3) 吸水 時の 種子 から の浸 出物 量(Brix値 )は 、白 色2品 種・ 系統 と赤 色2品種の間に差が なかった。

4)「エリモショウズ」または「ホッカイシロショウズ」の種皮抽出物を添加したトウモロコシ煎 汁 寒 天 培 地 上 で のPythium属 菌 の 菌 糸 生 育 は 、 「 エ リ モ シ ョ ウ ズ 」種 皮 抽出 物添 加区

(5,OOOppm)で 顕 著 に 抑 制 さ れ た 。 赤 色 ア ズ キ が 本 病 に 強 い 一 因 と し て 、 種 皮 中 の Pythium属 菌 に 生 育 抑 制 作 用 を 持 つ 水 溶 性 の 抗 菌 性 物 質 が 、 赤 色 アズ キ に静 的抵 抗性 を与えていることが考えられた。

以上4点から、次のように考察できる。「ホッカイシロショウズ」および「エリモショウズ」で は 、種 子 浸出 物が 土壌 中のPythium属 菌を 刺激し、その生育を促進する。ただし「エリモ シ ョウ ズ 」で は、 種皮 中の 抗菌 性物 質も 土壌 水に 溶出 し、 種皮 周 囲での菌の繁殖を抑制 する 。一方「ホッカイシロショウズ」の種皮は、抗菌性物質を含まず、溶出しない。そのため 種 子は 、 種子 からの浸出物を利用して旺 盛に生育した菌糸に包囲される。さらに「エリモ シ ョウ ズ 」種 皮中 の抗 菌性 物質 は、 種皮 の柵 状組 織に 静的 抵抗 性 を与え菌の侵入を阻害 すると考えられる。

4.防 除法 の 検討

  アズ キ種 子に チウ ラム 剤を 粉衣 処理 し た結 果、 出芽 率が 改善さ れ、チウラム剤の有効 性 が示 され た。

  以上 のよ う に本 論文 は、Pyhium属 菌に よる アズ キの 新病 害を 発見し、分類学上の種を 特 定 す る と と も に 、 本 病 原 菌 に 対 する 感受 性が 赤色 種皮 品種 に比 べ白 色 種皮 品種 で著 し く高 いこ と 、そ の原 因が 侵入 経路 の違 いや 種皮 中に 含ま れる 抗菌性物質の有無などに よること、さらにはチウラム剤の種子粉衣により本病を防除できることを明らかにしたもので ある。 この成果は、学術的、実用的に高く評価される。

  よっ て、 審 査員 一同 は、 岡田 貴が 博士 (農 学) の学 位を 受け るに十分な資格を有する ものと 認めた。

参照

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