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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 孫    尚 鉉

学 位 論 文 題 名

A study on synthetic strategy for the     efficient construction of a‑ and r8‑ ( 1      3 ) ‑branched oligosaccharides

(効率的なぱーおよびロ−(1 →3 )一分枝オリゴ糖構築の      合成戦略に関する研究)

学位論文内容の要旨

  光合成によって二酸 化炭素と水から生産される糖質は、地球上でもっとも多量に存在するバイ オマスで、地球上にお ける炭素循環の中心化合物である。糖質は、生物のエネルギー源や構築材 料として利用される一 方、免疫、臓器形成あるいは感染など様々な生命現象における情報分子と しても利用されている 。単糖類の連なった糖質は非常に多様性に富んだ分子構造を持ち、核酸や タンバク質と異なり、 多くの分枝構造を持つ3次元分子であることが大きな特徴である。糖鎖の 機能解明を行うために、化学的な手法による糖鎖の合成も活発に研究されている。しかしながら、

複雑な糖鎖の分枝した 構造を効率よく構築する方法はまだ十分に確立されていない。そこで本研 究では生理活性糖鎖に 普遍的に存在するaおよびB‑(l→3)‑分枝構造を効率よく構築するための 合成戦略の開発を目的として行われた。

  第1章では糖鎖の機能および従来の糖鎖合成法を概説し、分枝構造を持つ糖鎖の合成における 問題点を示し、本研究の目的について述べた。

  第2章では植物が生体防御物質であるファイトアレキシンを産生するきっかけとなる分枝七糖 の新規合成方法についての研究を述べた。この糖鎖はロ.(1→6)で結合したグルコースを主鎖と して、2つのロ.(1→3)結合の分枝を持っている。従来は、後者を先に合成して二糖合成プ口ック とし、主鎖を構築する というラミナリピオース経路で合成が行われてきた。本研究ではより短工 程での合成を目的とし て先に主鎖を合成した後に分枝構造を導入する新規なゲンチオピオース経 路での合成を検討した 。しかしながら、チオグリコシドを供与体としてNIS‑TfOHを活性化剤と した場合は目的とするグリコシドの収率・立体選択性ともに悪く、相当量のaグリコシドが生成し ていることが判った。 そこで種々の活性化剤を比較検討したところBSP‑Tf20が良好な立体選択性 を示し、目的とする七 糖を与えることを見出した。この結果については、前者はジオキソカルベ ニウムイオン中間体を 経由して反応するが糖受容体の立体障害によルロ選択性が低下するのに対 して、後者は強カな求 核剤であるアノメリックトリフラート様の中間体を経由して立体配置の反 転を伴って反応が進行していることが示唆された。

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  第3章では前章で述べたロ・(1→3)分枝を導入する際に立体選択性が低下する要因について詳 細に検討した結果について述べている。まず、D‑グルコース以外の糖供与体についての三糖受容 体との反応を検討したところ、D‑ガラクトースおよびL.フコースでもaグリコシドの生成が認め られた 。しかし 、単糖受容体との反応の場合にはaグリコシドの生成が認められないことから、

単純に 受容体水 酸基周囲の立体障害が立体選択性に影響しているのではなく、受容体の1位ある いは6位に存 在する糖 残基の影響によることが示唆された。筆者はこの糖残基が隣接位の置換基 に影響を与え、さらにグリコシル化反応点である水酸基へ影響を与えるというドミノ効果を提案 している。そこでこのドミノ効果を解消するために、グリコシル化反応点の隣接位の置換基が存 在しないジオール受容体を用いて同様のグリコシル化を行うと、予期したように非常に高収率か つ高選択的にログリコシドがえられることが判明した。

  第4章ではル イス式血液型のLewis a(Lea)抗原である分枝三糖の合成について述べた。N‑アセ チルグ ルコサミ ンの3位にロ ガラクト ース、4位にaフコ ースが 結合して いる。アミノ基の保護 基の立体障害により前者の導入には困難が予想される。そこでこれまでに述べた研究結果を基に ガラクトースの供与体として、より立体障害の小さなアセチル誘導体を用いる計画を立てた。し かしアセチル誘導体はグリコシル化反応に伴ってオルソエステルを形成しやすいという欠点があ る。そこで、アセチル化されたチオグリコシドを供与体として効率的にグリコシル化反応に利用 するた めに、活 性化剤の検討を行った。その結果、前述したBSP系の試薬を低温で作用させるこ とで、高収率でグリコシドを与えることを見出した。この結果を用いて、これまでログリコシド 結合の 形成が困 難であると報告されているフタルイミド保護のグルコサミン誘導体の3位への立 体選択的なグリコシル化に成功した。さらに、4位へL・フコース誘導体を導入して目的とするLea 抗原三糖の合成を達成した。

  第5章では、サルモネラ菌のりポ多糖中のO‑抗原四糖繰り返し構造の合成研究について述べた。

リポ多糖はグラム陰性細菌の外膜成分として存在する複雑は多糖類で病原菌の感染や毒性に関係 した糖鎖である。サルモネラ菌のO‑抗原多糖も、.菌の感染、食物への付着やバイオフィルムの形 成に関与していることが知られている。この化合物は中心となるD‑マンノースの1,2,3・位に3つ の異なる単糖が結合した特異な構造を有している。まず、マンノースを原料として3,6.位をデオ キシ化して希少糖であるチベロースを調製した。ついで常法に従ってマンノース供与体とフコー ス受容 体を結合 させて二 糖ブ口 ックを合 成した。3位へのチベロース導入には3章の研究結果を 基盤としてジオールシステムヘの選択的なグリコシル化反応を試みたところ、期待したように高 収率で 位置およ び立体選択的に糖鎖導入に成功した。最後に残った2位水酸基ヘガラクトース残 基を導入して標的化合物の合成に成功した。

  第6章では本 研究結果を総括している。本研究は自然界に存在する生理活性糖鎖に比較的普遍 的に存在する1,3―分枝構造を持つ糖鎖に着目してその効率的な合成法について検討したものであ る。特に、その結合形成に用いるグリコシル化反応では糖供与体から生じる中間体と糖受容体と の立体的な相互作用が生成物の収率やグリコシド結合の配向に大きく影響するなど興味ある知見 が得られた。さらに、糖供与体であるチオグリコシドの活性化剤の種類や受容体の立体障害の軽 減などにより選択性を制御できることから、今後、合成基質を用いた糖鎖の機能解明などに関す る研究の進展に大きく寄与すると期待される。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

学 位 論 文 題 名

A study on synthetic strategy for the     efficient construction of a‑ and B‑ ( 1 ‑+ 3 ) ‑branched oligosaccharides

(効率的なぱーおよびロ―(1 →3 )一分枝オリゴ糖構築の      合成戦略に関する研究)

  光合成 によっ て二酸化 炭素と 水から生 産され る糖質は 、地球上 でもっ とも多量に存在する バイオ マスで 、地球上 におけ る炭素循 環の鍵と なる化 合物であ る。糖 質は、生物のェネルギ ー源や 構築材 料ばかり でなく 、様々な 生命現象 におけ る情報分 子とし ても重要な化合物であ る。糖 質は、 多くの分 枝構造 を有し、 非常に多 様陸に 富んだ三 次元分 子構造を持つことが大 きな特 徴であ る。糖鎖 の機能 解明を行 うために 、化学 的な手法 による 糖鎖の合成も活発に研 究され ている が、複雑 な糖鎖 の分枝し た構造を 効率よ く構築す る方法 はまだ十分に確立され ていな い。本 論文は生 理活性糖鎖に普遍的に存在するa‑およびロ.(1→3)‑分枝構造を効率よ く 構 築 す る た め の 合 成 戦 略 に つ い て の 研 究 結 果 を ま と め た も の で あ る 。   分枝構 造を持 つ糖鎖を 効率よ く合成す るため には、グ リコシル 化反応 の立体化学の制御や 反応収 率の向 上など解 決しな ければな らない問 題点が 多い。本 論文で は、植物が生体防御物 質 であ る フ ァイ トアレ キシンを 産生す るきっか けとなる 分枝七 糖、ルイ ス式血 液型のLe而s a皿ea)抗原 である分 枝三糖 、および サルモネ ラ菌の りポ多糖 中の0・抗原 四糖繰り返し四糖 構造の合成方法についての詳細な研究結果を述べてしゝる。

  ファイトアレキシンエリシター活性糖鎖はロ.(1→6)で結合したグルコースを主鎖として、

2つのロ.(1→3)結合の分枝を持ってしゝる。本研究ではより短工程での合成を目的として先に 主鎖を 合成し た後に分 枝構造 を導入す る新規な ゲンチ オビオー ス経路 での合成を検討した。

しかし ながら 、チオグ リコシ ドを供与 体とした 通常の 糖鎖構築 法では 目的とするグルコシド の 収率 ・ 立 体選 択性と もに悪く 、相当 量のaグリコシ ドが生 成してい ること が判った 。この 問題を 解決す るために 、強カ な求核剤 であるア ノメリ ックトリ フラー ト様の中間体を経由す

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夫 彦

博 明

信 冬

   

西

授 授

授 授

   

   

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る 新 規 な 活 性 化 剤 を 用 い 、 目 的 化 合 物 の 立 体 選 択 的 な 合 成 を 達 成 し て い る 。   さら に、 ロ‑(1→3)分 枝を 導 入す る際 に立体選択性が低下する 要因について詳細に検討し た 結果 、グ リコ シル 化反 応の 糖 受容 体の1位 あるいは6位に存在す る糖残基による立体障害が 主 要な 原因 であ るこ とを 見出 し た。 すな わち、糖残基が隣接位の 置換基に影響を与え、さら にグリコシル化 反応点である水酸基の反応性を低下させるというドミノ 効果を提案している。

  この ドミ ノ効 果に よる 悪影 響 を低 減す るために、比較的立体障 害の小さなアセチル基で保 護 され た糖 供与 体な らび にジ オ ール 系糖 受容体を用いる分岐糖鎖 構築法を新たに考案し、そ の 有効 性を 示し ている。前者の方法に より、Lea抗原である分枝三 糖の合成を達成している。

ま ず、 アセ チル 化さ れた チオ グ リコ シド を供与体として効率的に グリコシル化反応に利用す る ため に、 前述 レた グリ コシ ル 卜リ フラ ートを経由する方法を低 温で作用させる方法を開発 し た。 この 方法 によ り、 ログ リ コシ ド結 合の形成が困難であると 報告されているフタルイミ ド 保護 のグ ルコ サミ ン誘 導体 の3位 への 立体 選択 的な グリ コ シル 化に 成功し、4位へL.フコ ー ス誘 導体 を導 入し て目 的と す るka抗原 三糖の合成を達成した。 一方、後者の方法により、

サ ルモ ネラ 菌のO‑抗 原四 糖繰 り 返し 構造 の合成に成功した。リポ 多糖はグラム陰性細菌の外 膜 成分 とし て存 在す る複 雑は 多 糖類 で病 原菌の感染や毒性に関係 した糖鎖である。サルモネ ラ 菌のO‑抗 原多 糖も 、菌 の感 染 、食 物へ の付着やバイオフィルム の形成に関与していること が知られている 。この化合物は中心となるD‑マンノースの1,2,3.位に3つの異なる単糖が結合 し た特 異な 構造 を有 して いる 。 つい で常 法に従ってマンノース供 与体とフコース受容体を結 合 させ て二 糖ブ ロッ クを 合成 し た。3位 への チベ口ース導入には3章の研究結果を基盤として ジ オ ー ル シス テム ヘの 選択 的な グリ コシ ル化 反応 を試 みた とこ ろ 、期 待し たよ うに 高収 率 で 位置 およ び立 体選 択的 に糖 鎖 導入 に成 功し た。 最後 に残 った2位水 酸基ヘガラクトース残 基を導入して標 的化合物の合成に成功した。

  以上、本研究 によりいくっかの1,3―分枝構造を持っオリゴ糖の高い 立体選択性を持って高 収 率で 合成 でき るこ とを 明ら か にし た。 特に、その結合形成に用 いるグリコシル化反応では 糖 供与 体か ら生 じる 中間 体と 糖 受容 体と の立体的な相互作用が生 成物の収率やグリコシド結 合 の配 向に 大き く影 響す るな ど 興味 ある 知見が得られた。さらに 、糖供与体であるチオグリ コシドの活性化 剤の種類や受容体の立体障害の軽減などにより選択性を 制御できることから、

様 々な 分岐 糖鎖 の効 率的 な合 成 に応 用可 能である。今後、合成基 質を用いた糖鎖の機能解明 などに関する研 究の進展に大きく寄与すると期待される。

  審査 委員 一同 は, これ らの 成 果を 高く 評価し,また研究者とし て誠実かつ熱心であり,大 学 院 博 士 課程 にお ける 研鑽 や修 得単 位な ども あわ せ, 申請 者が 博 士備 謝譁 に讖 の学 位を 受 けるのに充分な 資格を有するものと判定した。

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