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車輪背面横圧に対するガード・クロッシング部強度の一考察

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Academic year: 2022

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車輪背面横圧に対するガード・クロッシング部強度の一考察

(財)鉄道総合技術研究所 正会員 吉田 眞

(財)鉄道総合技術研究所 正会員 及川 祐也

(財)鉄道総合技術研究所 正会員 柳川 秀明

1. はじめに 

 在来線の分岐器の直線側通過速度向上を制限する一因として,ガードレールおよびクロッシング・ウィン グ部に発生する車輪背面横圧(以下「背面横圧」という.)がある.現在,分岐器直線側通過速度が120km/h を超えるような速度向上試験において,背面横圧の最大値に対して118kNを判定の目安値としている.しか し,この目安値は,過去に実測されたガード部背面横圧の最大値が118kN程度であり,この最大値に対して ガード各部に損傷等の異常が発生していないことなどから経験的に決められた値である.また,これまでガ ード部およびクロッシング部の詳細な応力解析は実施されていなかった.このため,背面横圧に対するガー ド部およびクロッシング部の構造解析を行い,部材強度および現行の目安値に対する検討を行った.

2. ガード部の強度解析 

 直線側通過速度が120km/hを超える ような分岐器のガード部には,H形ガ ードが一般的に使用されている.よっ て,背面横圧に対するガード部強度の 検討は,60kgレール用H形ガード(図

面番号,G60H共-351)を対象とした. 図1 H形ガード全体載荷試験  強度解析の前に,解析モデル作成に供

する目的で,図1に示すような短まくら ぎに組み立てられたH形ガード全体およ び1床板分に対して,背面横圧が加わっ た状態を模擬した静的載荷試験を行い各 部応力の測定を行った.次に,図2に示

すような有限要素解析モデルを作成し,静的載荷試験と解析 結果の比較を行った.その結果,同様の応力状態であり,強 度確認に問題はないと考えられる解析モデルが得られた.作 成した解析モデルを用いて,床板へ作用する荷重が最も大き いと考えられる床板中央を載荷位置とし,輪重に相当する垂

直荷重63.7kNを基本レール頭頂面に,背面横圧に相当する水

平荷重は目安値である118kNをガードレール頭部側面に加え て解析を行った.その結果,図3に示すように載荷位置のガ ード床板の衝立部分下部に 136N/mm2の最大主応力が発生す る結果となり,ガード床板の設計許容限度 147N/mm2以下で はあるが近い値であった.また,当該床板のねじくぎの1本 当たりに加わる横押し力は最大約17kNという結果が得られた.

図2 H形ガード解析モデル

136 N/mm2 

図3 H形ガード構造解析結果

(垂直荷重63.7kN、水平荷重118kN)

キーワード:分岐器,H形ガード,マンガンクロッシング,有限要素解析

連絡先:〒185-8540 東京都国分寺市光町2-8-38  TEL 042-573-7275  FAX 042-573-7432 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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3. クロッシング部の強度解析 

 直線側通過速度が120km/hを超える分岐器 のクロッシング部にはマンガンクロッシング または圧接クロッシングが使用されるが,こ の中でマンガンクロッシングが多く使用され ている.よって,背面横圧に対するクロッシング部 の強度の検討は,車輪背面との接触角度が最も大き くなる8番マンガンクロッシング(図面番号,C50NM 共101)を対象とした.

 H形ガードと同様に,解析モデル作成に供する 目的で,短まくらぎに締結されたマンガンクロッ シングに対して,図4に示すように背面横圧 および輪重が加わった状態を模擬して静的載 荷試験を行い,各部応力の測定を行った.次 に,図5に示すような有限要素解析モデルを 作成し,試験結果と解析結果の比較を行った.

その結果,同様の応力状態であり,強度検討

を行う上で問題が無いと考えられる解析モデルが得られた.

図4 マンガンクロッシング載荷試験

図5 マンガンクロッシング解析モデル

 作成した解析モデルを用いて,背面横圧が発生すると考えられる範囲に輪重に相当する垂直荷重 63.7kN,

背 面 横 圧 に 相 当 す る 水 平 荷 重 は 目 安 値 で あ る

118kN を加え,最も大きな最大主応力が発生する

載荷断面を調べた.その結果,静的載荷試験時の 載荷断面Bにおいて最も大きな最大主応力が発生 し , 図 6 に 示 す よ う に フ ラ ン ジ ウ ェ ー 裏 側 に

80N/mm2の最大主応力が発生する結果となったが,

マ ン ガ ン ク ロ ッ シ ン グ の 設 計 許 容 応 力 度 147N/mm2以下であった.

80 N/mm2 

図6 マンガンクロッシング構造解析結果

(載荷断面B、垂直荷重63.7kN、水平荷重118kN) 4. 考 察 

 近年,軌道保守のコスト低減が求められており,現行の通り狂い,軌間狂いおよびバックゲージの保守管 理値を緩和すれば保守量が低減できる.しかし,ガード部およびクロッシング・ウィング部で背面横圧が増 加する.H形ガードおよびマンガンクロッシングの構造解析結果より,現行の背面横圧の判定の目安値は,

H形ガードのガード床板の設計許容応力度に対して余裕があまりなく,ねじくぎの横押し力に対してもこれ までの知見から得られている限度 20kN に近い値であったことから,目安値は妥当であり,背面横圧の増加 が伴うような保守管理の緩和は行うべきではないと考えられる.また,マンガンクロッシングに対しては,

設計許容応力度に達するまで十分な余裕がある.しかし,低番数のクロッシングの車輪誘導角はH形ガード より大きく,比較的大きな背面横圧が発生することと,最大応力の発生する箇所が通常の検査では確認でき ない箇所であるため,判定時の目安値の緩和は慎重に検討する必要がある.

5. まとめ 

 分岐器の通過速度向上時の背面横圧の目安値118kNは,H形ガードの強度上の観点から妥当な値であると 考えられる.マンガンクロッシングに対しては,設計許容応力度に達するまで余裕はあるが,最大応力の発 生箇所が通常の検査では確認できないフランジウェー裏側であるため,目安値の緩和は慎重に検討する必要 がある.

土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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