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粒状体の内部摩擦角と土圧係数の関係に関する DEM を用いた検討

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Academic year: 2022

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粒状体の内部摩擦角と土圧係数の関係に関する DEM を用いた検討

清水建設(株)技術研究所 正会員 ○吉田 順

1.はじめに

内部摩擦角と土圧係数の関係については、古くより Coulomb, Rankine を初めとする、様々な理論式あるい は経験式が提案されている。しかし、土圧問題を釣合問題として考える場合には変形との相関を考慮すること が困難であり、変形問題として捉えると極限釣合を求めることが容易ではない。これに対し、個別要素法(DEM)

を用いて粒状体地盤を表現した場合には、比較的良好に静止土圧状態 から主働あるいは受働状態への移り変わりを表現できると共に、極限 値を求められることが示されている 1)。また、ペア要素を用いた DEM によって、同じような粒度分布および要素間物性値を用いて、異なる 内部摩擦角が表現できることが示されている2)。本報ではペア要素を用 いた 2 次元 DEM 解析により、壁体の移動による土圧変化を算定し、内 部摩擦角と土圧係数の関係を明らかにすることを試みている。

2. 解析方法および条件

図-1 に示すような形で、粒状体を矩形容器に詰め、その中心位置に 擁壁を模擬した部材を設置する。その静止釣合状態から、部材上端を 左右に振ることによって、壁面に作用する荷重(土圧)がどのように 変化するかを検討する。解析モデルは、容器内にランダムに配置した 粒子(粒度分布:図-2 参照)の釣合を求めたもので、それを初期状態と して上記の載荷を行う。ここで、釣合状態において接触している要素 を任意に組み合わせてペア要素とし、その数によって内部摩擦角の大 きさを制御する。検討ケースを表-1 に示す。ただし、ここで示した内 部摩擦角は推定値である。また、用いた物性パラメータを表-2 に示す。

3. 解析結果および考察 3.1 初期状態

図-3 に重力下における釣合状態を求めた Case1 の結果を示す。擁壁の 左右で高さに差が見られるものの、全体的にはほぼ均等な状態になってお り、粒度分布に関しても左右で大きな差が見られない。これを初期状態と して載荷を行う。この状態での擁壁左右に作用している荷重は静止土圧に 近いものと考えられるが、その値は左右ともに約 12.7MN であり、平均高 さは約 42m(擁壁下端から 32m)である。解析領域全

体の平均嵩密度が 15.44kN/m3となることから、初期の 土圧係数は K=1.6 程度となり、通常の静止土圧係数 K0と比較するとかなり大きい値である。

3.2 主働・受働状態

図-4 に各ケースの擁壁左右に対する土圧変化を示 す。当然、右側に倒れた場合には擁壁右面が受働状態、

表-1 解析ケース Case ペア

要素

単一 要素

内部 摩擦角 1 0 4000 約 20°

2 1099 1802 約 25°

3 1811 378 約 35°

表―2 入力パラメータ

材料定数 単位 数値 垂直ばね定数 N/m 1.0×1010 せん断ばね定数 N/m 2.0×109 比例減衰定数 s 1.00×10-4 粒子間摩擦係数(壁面) 0.70(0.10)

単位体積重量 kg/m3 2.0×103 図-1 解析モデル模式図

100m 50m

40m

10m

100 150 200 250

0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

要素半径(m)

要素個数

図-2 粒度分布

キーワード:個別要素法,ペア要素,内部摩擦角,主働土圧, 受働土圧

〒135-8530 東京都江東区越中島 3-4-17,tel:03-3820-8309,fax:03-3820-5959 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-907- 3-455

(2)

左面が主働状態に移行し、左側に倒れた場合には その逆となる。なお、図中の C1L は C(Case)-1 -L(左面)を表す。

各ケースの変位と土圧の関係は、典型的な静止 から主働・受動への変化を表しており、内部摩擦 角が大きいほど受働土圧が大きく、主働土圧が小 さい傾向が見られる。内部摩擦角と主働・受働土 圧の関係を表-3 で KA=(1-sinφ)/(1+sinφ), KP=(1-sinφ)/(1+sinφ)と比較すると、全体に大 きい値を示しているが、これは静止土圧でも既に 大きい値となっていたことと対応している。

この値が大きくなる原因の一つは、擁壁から左 右の境界までの距離がやや短いことが考えられ、

粒子間摩擦を 0.7 と比較的大きくとっていること も受働土圧が大きくなる要因となっている。また、

左右の状態に極端な差がないにもかかわらず、受 働土圧に大きい差が見られる事は今後の検討課 題である。しかし、定性的には内部摩擦角と土圧 の関係が良好に示されていると言える。

3.3 繰返し載荷

上部の変位を 1.0m 与えた状態から、変位 の方向を逆転させて元の位置に戻す解析を Case3 について実施した結果を図-5 に示 す。初期位置に擁壁が戻った段階で、主働 状態にあったものは静止状態を通過して、

受働状態となり、逆の面では反対の経過を たどっている。これは初期載荷においてか なりの塑性変形が生じたことを表してい る。また、載荷経路の先に初期載荷のカー ブがあることも含め、擁壁の複雑な挙動を 追跡する場合に DEM が有力な手段となるこ とを示している。

4. まとめ

ペア要素を用いた DEM 解析によって内部 摩擦角が異なる場合の土圧を定性的には うまく表現できることを示した。今後の課 題も多いが、3 次元への拡張、計測との比 較等により、現象解明の可能性が広がるも のと考えられる。

参考文献

1) 吉田順:壁体の移動による土圧変化に関する粒状体解析, 第 26 回土質工学研究発表会, pp.1581- 1582, 1991 2) 吉田順:一面せん断試験に対する DEM 解析の適用に関する一考察, 第 40 回地盤工学研究発表会, 2005

主働土圧係数 受働土圧係数 内部

摩擦角 理論値 左面 右面 理論値 左面 右面 20° 0.49 1.00 1.00 2.04 3.59 3.03 25° 0.41 0.73 0.50 2.46 4.83 4.13 35° 0.27 0.44 0.48 3.69 9.30 6.86

図-3 初期釣合状態(Case1)

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

変位(m)

壁面荷重(kN)

C1L C1R C2L C2R C3L C3R

図-4 変位-壁面荷重の関係 表-3 内部摩擦角と土圧係数

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

変位(m)

壁面荷重(kN)

図-5 繰返し時の変位-壁面荷重関係(Case3) 土木学会第60回年次学術講演会(平成17年9月)

-908- 3-455

参照

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