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博士(水産学)野田隆史 学位論文題名

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     博士(水産学)野田隆史 学位論文題名

キサゴUrnbonLu,rn cos そ a とMm の個体群生態学的研究 学位論文内容の要旨

  個 体 群 動 態 とtま 特 定 の 種 の 個 体 群 の 時 間 的 ・ 空 間 的 変 化 と 、 そ れ を 支 配 す る 要 因 の 関 係 を 指 し 、 個 体 群 動 態 の 解 明tま そ れ 自 体 が 生 態 学 に お け る 主 要 な 研 究 テ ー マ で あ る 。 し か し 、 現 在 ま で 潮 下 帯 砂 泥 底 域 で の 腹 足 類 の 個 体 群 動 態 の 特 徴 は ま っ た く 明 ら か に さ れ て い な い と 言 え る 。 本 研 究 で は 、 函 館 湾 に 生 息 す る キ サ ゴ を 対 象 に 、 年 齢 査 定 と 殻 の 成 長 様 式 を 明 ら か に レ 、 さ ら に 生 活 史 特 性 、 個 体 群 統 計 、 個 体 群 の 空 間 的 動 態 の 詳 細 を 明 ら か に し 、 匸 れ ら を も と に 個 体 群 動 態 の 解 析 を 行 っ た 。 て れ ら の 結 果tま 潮 下 帯 砂 泥 域 の 水 産 有 用 種の資源管理を行う上でも重要な知見を提供すると考える。

  ま ず 、 殻 に 形 成 さ れ る ′ 外 部 成 長 休 止 帯 を 用 い て 函 館 湾 に お け る キ サゴ の 年 齢 査 定 と 殻 の 成 長 様 式 を 検 討 し た 。 殻 表 面 の 体 層 上 に 見 ら れ る 成 長 休 止 帯 は 毎 年6 ‑‑‑8月 の 期 間 に 、 す ぺ て の 年 齢 で1年 に 一 本 の 成 長 休 止 帯 が 形 成 さ れ る匸とから、匸れを年齢形質と見なし得ると判断した。

  ま た 、8月 を0齢 と レ て 求 め た 月 齢 ′ に お け る 殻 径L. (mm) の 成 長 式 は 以 下 の よ う に 求 め ら れ 、 年 間 の 成 長 の ほ と ん ど が4月 か ら10月 の 期 間 に 生 じ て い た 。 て の 殻 成 長 の 季 節 性 は 水 温 の 影 響 を 強 く 受 け て い る て と が 示 唆 さ れ た 。     工tニ22.024[1ーexp'・O, 7"3" /12‑0.050)+Ot50 sin(2襾(|f12ユ0421)))J キ サ ゴ の 生 活 史 特 性 と レ て 雌 雄 別 に 繁 殖 サ イ ク ル 、 性 成 熟 サ イ ズ と 齢 、 齢 別 の 生 殖 物 質 放 出 量 と 産 卵 量 、 お よ び 齢 別 の 純 生 産 量 を 求 め た 。 そ の 結 果 、 繁 殖 は 性 成 熟 以 後 の 雌 雄 と も に 年2回 、67月 と910月 に 認 め ら れ 、 個 体 群 中 の 各 個 体 が 年2回 の 繁 殖 を 行 う と 推 定 さ れ た 。 ま た 、 雌 の 性 成 熟 サ イ ズt 殻 径llmm、 性 成 熟 齢 は13月 齢 (1歳 の9月 ) と 半 |j断 し た 。 雄 でtま 初 め て む か え る 繁 殖 期 (6月 ) に は 性 成 熟 す る と 考 え ら れ 、 齢 別 の 生 殖 物 質 放 出 量 は

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雌 雄 とも 繁 殖 初 年 齢 に は 少 な く 、以 後 急 激に増 加し4歳 以降 はほ とん ど飽和 し た 。齢 別 の 産 卵 数 は 生 殖 物 質 放出 量 と 同様の 変化 を示 し、1歳 の2100から 8歳 の37000ま で変化 レナ く。 齢別の 純生 産量 は雌 雄とも 、1回目 と2回 目の繁 殖 期 の聞 で最 大とな り、 以後 減少し た。 てれ に対 し、生 殖物 質放 出量 は体サ イズ に対し て一 定の 害lI合を保ちつつ、加齢に伴い増加し、齢別の純生産量と 生殖物質放出量は5歳以降はほぼ同じ値をとった。

  次 に、 函 館 湾 の キ サ ゴ 個 体 群 を1982年10月 か ら1988年ll月 まで の 期 間と 1992年の10月 に調査 レ、 匸の 期間の 個体 群の 経時 変化を 数量 的な 側面 (数)

と、空間的な側面(分布)から明らかにした。

  ま ず、 本種 の加入 (目 合1 mmのふ るい を用 いて 採集さ れる 殻径 に成 長する 匸 と )と 死亡 の過程 、個 体群 密度、 およ び齢 組成 の年変 動を 記載 し、 採集し た死殻の形状から死亡原因の検討も行った。

    ユ

  キ サゴ の 加 入 は 毎 年9月 ま た はIO月 の 短期 間に 集中的 に起 匸っ てい た。加 入 群 の密 度の 年変動 は極 めて 大きく 、そ の変 動幅 (最大 値/ 最小 値) は約84 倍に達レた。齢別の年間生存率は0,1歳間では.タタくの年で40%以下であった のに対し、1歳以上では.タタくの年で70%以上であった。また、年間生存率の 年 変 動は0‑1歳 間 で は15% 以 下 か ら70% 以 上 で 、1歳 以 上 の 変 動幅 (40・90

%)と比べると大きかった。

  加 入月 の個 体群密 度の 年変 動幅( 最大 値/ 最小 値)は 全個 体で は調 査期間 中 に 約6倍で あっ た。 匸れに 対し 、成 体(1歳 以上 )の密 度変 動幅 は約2.5倍 と小さかヮた。また、齢組成は調査期間中、常に加入量の.タタかった卓越年級 によって優占されており、凹凸の.タタい形であった。

  死 殻の 形状 はタマ ガイ の捕 食痕の ある もの 、力 二によ って 破壊 され たと思 わ れ るも の、 無傷の もの とに 大別さ れた 。殻 サイ ズに関 わら ず、 無傷 の死殻 が最もタタかった。

  次 に、函 館湾 のキ サゴ個体群の空間分布様式を検言寸したのち、個体群の分 布の時間変化を記載レた。

  個 体群 全体 、およ び各 年級 群の分 布は 汀線 に平 行して 帯状 に見 られ 、隣接 レ た 地点 間で は採集 密度 は類 似して いた 。ま た、 地点間 で密 度に 大き な差が 認 め られ たに もかか わら ず、 各年級 群、 全個 体と も局所 的な 分布 様式 はラン

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ダム分布であった。

  加 入群 と 成体 群 (1歳 以上 ) 間で 分 布域 のf立置 や 広がり、お よびそれら の 年 変 動が 大 きく 異 な って い た。O歳個 体 は常 に 成体 よ り岸儂4に分布し、 その 分 布 域の 広 かり と 高 密度 の 位置 変 動も 大 きか っ た。 また、 沖合いの高 密度域 に は多くの1歳以上の 年級群が集 中していた 。この現象 は岸fR4にヵロ入してい た 稚 貝 が1年後 に 移動 し 、 沖に 位 置す る 成体 の 高密 度 域に 入 って い くて と に よって生じたと考えられた。

  以 上で 得 られ た 個体 群 統計 値 と生 活 史特 性 値か ら 、変動主 要因分析、 密度 効 果 の分 析 、お よ び レズ リ 一行 列 を用 い た個 体 群の 長期変 動パターン の解析 を行って、キサゴ個体群の変動特性を検討した。

  各 年級 群 の相 対 的大 小関係は1歳、ま た:ま2歳にtま決定され ていると考 え ら れ た 。 そ こ で 卯 か ら1歳 、 お よ び 卵 か ら2歳ま で の期 間 の死 亡 率 を全 死 亡 率 とし、変動 主要因分析 を行った結 果、ぢBカユら2歳までの 期間の死亡率が変 動 主 要因 で あっ た 。 なお 、 キサ ゴ の加 入 率、 生 存率 および 成長率には 密度効 果は検出されなかった。

  個 体群の長期 的変動´く ターンの解 析を加入率 、齢別産卵 数、齢別生存率の 実 測 値 を 用 い、8つの 推 移 行列 を 組み 台 せて 行 った 。 その 結 果、 キ サゴ の 個 体 群 は長 期 的に も 単 独で 存 続し 得 るこ と 、個 溶 群存 続には たまに起こ る良好 な加入カi必要である匸と、f幽体群密度(ま多くの年でお戎少傾向にあることが准 瀞1された。

  近 年、加入の時空間変動が個体詳や群集の勤態におよばす劇的な影響カ;辛夏 数 報 告さ れ てい る 。 これ ら の知 見 と比 較 して も 、函 館湾の キサゴの個 体群動 態 に 対す る 加入 の 影 響力iま他に例を 見ないほど 大きいとい える。加入 の年変 動Iま個 溶 群 の数 量 変動( 個体数や齢 構造)、個 体群の分布 範囲の年変 動、個 体群存続性に対し、圧缶I泊勺な影響カを持っていた。

  開 放性潮下帯 砂浜域のキ サゴをはじ めとするマク口ペントスのタタくiま、定 座 性 の懸 濁 物食 者 で 、長 寿 で成 偉 の生 存 率が 高 く、 散発的 な加入成功 を示す 匸 と が知 ら れて い る 。匸 の こと と 環境 特 性か ら 、開 放性潮 下帯砂浜域 では、

    I

カロ入量の変動:ま不可避である一方で、加入後の高く安定した生存率あミ保証さ れ 易 いた め 、成 体 の 高い 生 存率 と 繰返 し 繁殖 に よっ て散発 的な加入成 功を有

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↓ ´ ・ `hJ: ′ キllF口 ・ 暑 ―ZLt、 五 宀 £ 年dコA: ‐ マ ´1r1. ぜ . ´L ‑7 7r7` ず じJ7Jp、 小tL忠 ・ う チP bn.i丶 ー ´| . |J′IJッ ′ |` 丿 し 丶・ 丿1二tIニIメ、/丿 く  ノk^  `/l  /丶V` ー叫OV゛ 丶一´りく .L′・ .・.`/t゛ッ丶.L.. つn‐´し 。

ヰ ぃ キ サ ゴ の 生 活 世 ゴ P. は 砂 泥 底 に 優 ト l v‑iナ 一 枚 貝 と dh  'し 、    l   i ;s j. 丶 lk <‑    Iき ぇ L ju. d一 ′ t,

i i     7 1 ‑         1     c /´ v

られていると結論できた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教 授  中 教 授  箕 教 授  菅 助教授  五

尾   繁 田   嵩 野泰次 嶋聖治

     学 位 論 文 題 名

キ サ ゴ Urn ろ 〇 凡 ぬ rn cos と Q え urn の 個 体 群 生 態学 的研 究

   現在まで潮下帯砂泥底での腹足類の個体群動態に関する研究は極めて 少なく、その時空間的変化とそれを支配する要因についてはほとんど明 らかにされていない。

   本研究は、函館湾に生息するキサゴを対象にして、成長様式と生活史 特性、および個体群の時空間的数量変動に基づいて個体群動態の解析を 行 っ た も の で あ る 。 得 ら れ た 結 果 の 概 略 は 以 下 の 通 り で あ る 。    ま ず、 殻 表のり ングが1 年に 1 本、6 〜 8 月に形 成され、年齢形質 と レて有効で ある匸とを確かめた。くれを用いて8 月をO 齢として求めた 月 t における殻径Lt (mm )の成長式から、年間殻成長の大部分は4 月から 10 月の高水温期に生じていた。

   繁殖は雌雄ともに6 ー7 月と9 ー10 月の年2 回認められ、性成熟レた各 個体が年2 回の繁殖を行うと推定された。雌の性成熟は殻径1 】mm 、 13 月齢からで 、産卵数は 1 歳の2100 から8 歳の37000 まで変化し、繁殖初 年齢で少なく、以降加齢とともに4 齢まで急増した後一定となる。齢別 の純生産量 は雌雄とも 1 回目と2 回目の繁殖期間で最大となり、以後滅 少した。齢別の純生産量と生殖物質放出量t ま、5 歳以降はほば同じ値を 示した。

   キサゴの加入t ま毎年9 月、または10 月づ短期間に起てっており、加入

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群 密 度 の 年 変 動 は 極 め て 大 き い 。 そ の 変 動 幅 は 約84倍 に達 す る 。 齢 別 の 年 間 生 存 率 は 、0ー1歳 で は40% 以 下 、1歳 以 上 で は70% 以 上 で あ っ た 。   加 入 月 の 個 体 群 密 度 の 年 変 動 幅 は 、 全 個 体 群 で は 約6倍 、1歳 以 上 の 成 体 群 で は 約2.5倍 で あ り 、 齢 組 成 は 常 に 加 入 量 の 多 かっ た 卓 越 年 級 群 によって優占される凹凸のタタい形を示した。

  個 体 群 全 体 、 お よ び 各 年 級 群 の 分 布 は 汀 線 に 平 行 に 見ら れ た が 、 加 入 群 と1歳 以 上 の 成 体 群 の 間 で は 分 布 域 の 位 置 や 広 が り 、 ま た は そ れ ら の 年 変 動 に 大 き な 差 が認 め ら れ た 。 加 入 群 は 常 に成 体 群 よ り 岸側に 分布 し、

分 布 域 の 広 が り と 高 密 度 域 の 位 置 の 変 動 が 大 き い 。 沖 合い の 高 密 度 は 多 く の 成 体 群 が 集 中 し て お り 、 匸 れ ら の 現 象 は 岸 側 に 加 入 し た 稚 貝 が 、1 年 後 に 沖 合 い の 成 体 群 分 布 域 に 移 動 し て い く て と を 示 し て い る 。     以上 で得られナく生活史特性値と個体群統計値から、変動主要因分析、密 度効果の分析、およびレズリー行列を用いた個体群の長期変到Jパターンの角牟 析を行って、キサゴ個体群の変動特性を検討レた。

  各 年 級 群 の 相 対 的大 小 関 係 は1歳 、 ま た は2歳に は 決 定 さ れてい ると 考え ら れ た の で 、 卵 か ら1歳 、 お よ び 卵 か ら2歳 ま での 期 間 の 死 亡率を 全死 亡率 と し、変 動主 要因 分析 を彳〒 った 結果 、卵から2歳までの期間の死亡率が変動 主 要因で あっ た。 なお 、キサ ゴの 加入 率、 生存率 およ び成 長率に は密 度効果 は検出されなかった。

  個体群 の長 期的 変動 パター ンの 解析 を加 入率、 齢別 産卵 数、齢 別生 存率の 実 測値を 用い、8っの推移行歹l亅を組み合せて行った。その結果、キサゴの個 体群密度はタタくの年で減少傾向にあるカく、たまに起てる良好な加入によって キ サ ゴ 個 体 群 は 長 期 的 に も 単 独 で 存 続 し 得 る 匸 と が 推 測 さ れ た 。   函館湾 のキ サゴ 個体 群に関 して 、そ の動 態に与 える 加入 量の年 変動 の影響 は 、てれ まで 報告 され ている 結果 と比 較し て極め て強 いと 言える 。ま た、キ サ ゴ個体 群の 維持 にtま、 高い 成体の 生残率と繰り返し産卵が寄与していると 考 えた。 ての 成体 の高 い生残 率を 保証 する と推察 した 移動 カは、 生活 様式が 多 く の 点 で 共 通 す る ニ 枚 貝 と tま 明 ら か に 異 な る 点 で あ っ た 。   さいご にく れら の結 果から 、開 放性 潮下 帯砂浜 域の 環境 特性に 対す るマク

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ロ ベン トスの 個体 群維 持機 構につ いて 論じ ている 。開 放性 潮下 帯砂浜 域のキ サ ゴをtよじめとするマクロベントスの多くtま、定座性の懸濁物食者で、長寿 で 成体 の生存 率が 高く 、散 発的な 加入 成功 を示す てと が知 られ ている 。匸の 匸 とと 環境特 性か ら、 開放 性潮下 帯砂 浜域 では、 加入 量の 変動 は不可 避であ る ー方 で、加入後の高く安定した生存率カミ保証され易いため、成体の高い生 存率と一生の間のタ・タくの繰返し繁殖による散発的な加入成功を有効に利用す る と い う 生 活 史 が マ ク ロ ベ ン ト ス に お い て 成 立 し 易 い と 考 え た 。   環 境 特 性 の 解 析 で は 野 外 の デ ー タ が 不 充 分 な 点 や キ サ ゴの 移 動 に 関 す る 適 応 的 意 義 、 あ る い は キ サ ゴ 個 体 群 の 隔 離 性 な ど が 今 後に 残 さ れ た 課 題 で あ る が 、 得 ら れ た 結 果 は 、 生 態 学 上 の 研 究 テ ー マ で ある 個 体 群 動 態 に 関 し て 極 め て 貴 重 な 成 果 で あ り 、 て れ は ま た 、 砂 浜 域 の水 産 有 用 腹 足 類 の 資 源 管 理 を 考 え る 上 で も 重 要 な 知 見 を 提 供 し て い る 。   以 上 の 観 点 か ら 、 審査 委 員 一 同tま 本 研 究 カj博士 ( 水 産 学) の学位 を受 けるに充分な内容であると判定した。

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