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博 士 ( 農 学 ) 桑 田 博 隆 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 桑 田 博 隆

学 位 論 文 題 名

イ ネ か さ 枯 病 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  イ ネ か さ 枯 病 は ,1983年 世 界 で は じ め て 青 森 県 で 発 見 さ れ た 新 病 害 で あ る 。   イ ネか さ枯 病 の病 徴は ,イネの葉 身に黄色で円形〜 長円形の大型病斑を 形成するもので, 病斑 の 中 心部 は直 径1〜2 mm程 度の 褐 点ま たは 長 さ数mm程 度の褐条となり,そ の周囲は黄色〜黄 褐色 の ハ 口一 とな る 。こ の病 徴 から イネ 科 牧草 等の 例 に従 い, 病 名を 「か さ 枯病 ,英 名bacterial halo blight」 とし た 。多 発条 件 下で は葉 鞘 部分にも 類似の病斑を形成す ることがあるが, 穂の 発 病 は確 認さ れ てい ない 。病原細菌 の人工接種は容易 で,無傷・付傷接種 とも自然発病に類 似す る病 斑を形成した。

  青 森県 にお け る本 病の 発生分布は 主に津軽半島一帯 に集中し,常発地は 一部地域に限られ ,他 は い ずれ も単 年 度だ けの 発生であっ た。本病はイネの 幼穂形成期から減数 分裂期にかけて一 斉に 発 生 し, その 後 は新 たな 病勢進展は 見られず徐々に衰 退し,出穂期までに は病斑は消失した 。本 病 発 生に は気 温 の影 響は 少なく,数 日間の連続降雨の7 ‑‑10日後に病勢が 急激に進展する傾 向が 明ら かであった。

  病 原細菌はグラ厶陰 性桿菌で,大きさはO.5〜O.9xl. 2〜2. 6pm,1〜5本の単極べん毛を有し,

ポ リ ロ亠 ヒド 口 キシ 酪酸 の 菌体 内蓄 積 は認 めら れ なか った 。 普通 寒天培 地上でのコロニー は白 色 , 円形 ,全 縁 ,わ ずか に中高で, 表面平滑であった 。好気性でグルコー スを酸化的に分解 し,

King sB培地 上 で黄 緑色 螢 光色 素を 産 生し た。 ま た,40℃ で 発育 できず ,夕バコ過敏感反 応は 陽 性 であ った が ,オ キシ ダーゼ,ア ルギニンジヒド口 ラーゼの活性及びジ ャガイモ塊茎の腐 敗は 陰 性 で あ っ た 。 こ れ ら の 性 質 並 び に そ の 他 の 詳 細 な 検 査 結 果 の ほ と ん ど はPseudomonas syrtngae van Hall 1902と 一致 した 。 また ,本 細 菌は イネ の 他に ,オ オ ムギ ,工 ン バク 及び イ ン ゲン マメ に のみ 寄生 性 を示 し, こ れは 既知 のP. syringae群菌いずれ とも異なるもので あっ た 。 以 上 の 結 果 か ら 本 細 菌 を イ ネ に 病 原 性 を有 するP. syringaeのpathovarと認 め ,新 学名 P. syringae pv. oryzae Kuwata 1985と した。

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  自然発 病イネ の病 斑組織 から分 離され る菌数 と, 病斑の ハ口ー 部分の 大きさとの間には,有意 な正の 相関が 認めら れた。 自然 発病及 び人口 接種病 斑と もに, 中心の 褐変部分から高濃度の菌が 分離さ れるが ,周囲 のハ口 一部 分から 分離さ れる菌 数は 極めて 少ない か,または全く分離されな かった 。病斑 形成と 接種菌 量と の関係 は,無 傷噴霧 接種 ではlO'CFU/ml, 付傷噴 霧接種 では10 CFU/mlが 病 斑 を 形 成で き る 限 界 の菌 量 で あ っ た。 菌 は イ ネ 葉組 織 内 で対数 増加的 に増殖 し,

菌数が 最高値 に達し た後に 接種 部の周 囲にハ 口ーが 発現 しはじ めた。 菌の組織内での増殖量の推 移は, しゃ光 条件下 でも日 照条 件下と 同様に 対数的 な増 加を示 したが ,しゃ光条件下ではハロー の形成 は接種10日後 でも認 められ なかっ た。し かし ,接種 後しゃ 光条件 下に置いたイネを途中で 日照条 件下に 移すと ,その 翌日 には鮮 明なハ 口ーが 形成 された 。

  本菌の 液体培 養で 対数増 加期の 濾液に はイネ 葉に 対する 毒性は 認めら れず,最高値に達して以 降。減 数期に かけて の濾液 に毒 性が認 められ た。こ の濾 液処理 によっ て自然発病及び人口接種に よるも のと同 様のハ 口一が 形成 され, 毒素の 産生が 推定 された 。本菌 の培養濾液を処理したイネ をしゃ 光条件 下に置 いた場 合に は,ハ ローは 生じな かっ たが, これを 日照条件下に移すと,その 翌日に は鮮明 なハロ ーが発 現し た。平 板培養 菌を蒸 留水 に懸濁 しただ けの濾液でも,イネ葉にハ 口一を 生じた が,こ の懸濁 液中 の生菌 数が減 少して も濾 液の毒 性に変 化は見られなかった。培養 濾液tまイ ネ以外 に,供 試した 植物す べて の葉に イネに類似するハ口―を生じ,菌の宿主範囲とは 無関 係 で あ り ,本 菌 毒 素は他 のP. syringae群菌 の毒 素同様 に非特 異的な ものと 認め られた 。 培養 濾 液 は110℃ .10分 間 の 加 熱 処理 に よ っ て, また1/32以 上の 希釈に よって イネ葉 にハ 口一 を生じ なくな った。

  本菌は ジャガ イモ ,サ` ソマイモ,二ンジン等の各種植物の貯蔵組織に対して,組織の肥大やカ ルス誘 導等の 生理活 性を示 さな かった 。また ,Geotrichu.m candidM′n,及びその他26種の植物 病原 糸 条 菌 に 対し て , 生育阻 害活性 は認 められ なかっ た。本 菌はEscherichia coliに 対し て生 育阻 害 作 用 を 示し , こ の 作 用はL― グ ル タミ ン に よ ヮ て部 分 的 に ,ま たは 完全に 回復し ,P. syrmgae pv. tabaci及 びP. syringae pv. coronafaciensに っい て の 結 果 と 一致 し た 。 本菌 の液体 培養濾 液はE. coliの 生育を 阻害し ,イ ネ葉に ハ口ー を生じ たが ,これ らの作 用性は ,12 O℃. 10分 間の 加熱で 部分的 にまた は完 全に失 活した 。またL― グルタ ミン添 加に よってE.col f生 育 阻 害 は 不完 全 な が ら 回復 し た 。 以 上の 結 果は, 本菌毒 素はP. syringae pv. tabaci及び P. syringae pv. coronafaciensの 毒素 ( タ ブト キシン )と類 似し たもの である ことを 示すも のと認 められ た。

  本菌毒 素の構 造決 定を試 みた結 果,毒 素はト レオ ニン及 び非蛋 白構成 アミノ酸から成るジペプ

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チ ド で あ った 。1Mピ リジ ン 溶 出 粗 毒素 及 び0.2Mピル ジン平 衡化 陽イオ ンカラ 厶溶出 の精製 毒 素 を ,D:0中 で270MHイ .IHーNMR分 析 し た 結 果 ,粗 毒 素 に は タブ ト キ シ ン が, ま た 精 製 毒 素 に は タ ブト キ シ ン と1SO夕 ブ ト キシ ン が 含 まれる ことが 明らか となり ,本 菌の病 徴発現 毒素 は タブト キシン と同定 され た。夕 ブトキ シンの 異性 化はカ ラム中 の存在 時間が長いために起こる も の で , 流 速 を2倍 に す る と 異 性 化 し て い な い タ ブ ト キ シ ン を 得 る こ と が で き た 。   本 菌 の継 代 培 養 に より病 原性を 喪失し た菌 株は,2,3の細 菌学 的性質 に変化 が見ら れたも の の ,P.syringaeの 主要な 性質 は保持 してい ると認 められ た。 病原性 喪失株 は野性 型株 と同様 に イ ネ葉組 織内で 増殖し たが ,ハ口 ーの発 生は認 めら れなか った。 また, その液体培養濾液処理に よ っても ,イネ 葉のハ 口ー 発生及 びE. col.iの 生育 阻害は 認めら れなか った。本菌をアクリジン オ レンジ 添加液 体培地 で培 養する ことに より,E.coぬ生 育阻害 能の喪 失が認 めら れ,本 菌の毒 素 産生能 はプラ スミド によ り支配 されて いる可 能性 が示唆 された 。

  本 病の種 子伝 染の可 能性が 考えられ,また病原細菌は乾燥罹病葉内で長時間生存が可能であり,

こ れらが ,本病 の第一 次伝 染源と なる可 能性が 示さ れた。

  オ キ シテ ト ラ サ イ クリン ・スト レプト マイ シン水 和削にi凡uitroで の菌の 発育 阻害効 果が高 く ,また ポット 試験で 本剤 の高い 病斑形 勢阻止 効果 が認め られた 。本病 の初発直前から初発時に か け て , 本 剤500倍 液 を1回 散 布 す る こ と に よ り , 高 い 防 除 効 果 が 認 め ら れ た 。   病 原細菌 の分 類学上 の地位 ,ハ口 ー形成 要因 の解明 ,第一 次伝染 源, 並びに薬剤防除等の諸問 題 にっい て考察 した。

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助 教授

生 越 木 村 喜 久田 小 林

    明 郁 夫 嘉 郎 喜 六

本論 文 は 和文で 記さ れ,図28,表33,引用 文献118を含 み, 総頁数166よ りなる 。内容 は12章 を もって 構成さ れ, 参考文 献25編が 添え られて いる。

  イネか さ枯 病は,1983年世 界では じめて 青森県 にお いて発見された病害である。本論文は,そ

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の発 見者が 病気の 発生状 況,病 徴, 病原, 病原性 に関与 する 毒素, 防除法 等にっいて行った研究 を取 りまと めたも のであ り,そ の概 要は次 の通り である 。

  イネ かさ枯 病の常 発地 は北津 軽郡な ど一部 地域に 限ら れ,イ ネの幼 穂形成期から減数分裂期に か け て , 数 日 間 の 連 続 降 雨 の7〜lO日 後 に 病 勢 が 急激 に 進 展 す る傾 向 が 明 ら か であ っ た 。   本病 の病徴 はイネ の葉 身に黄 色で円 形〜長 円形の 大型 病斑を 形成す るもので,病斑の中心部は 直径1〜2 mm程度 の褐点 または 長さ 数mm程度 の褐条 とな り,そ の周囲 は黄色 〜黄褐 色の ハ口ー と なる 。この 病微か らイネ 科牧草 等の 例に従 い,病 名を「かさ枯病,英名bacterial halo blight」 とし た。

  病原 は細菌 であり ,グ ラ厶陰 性,極 毛性捍 菌で白 色コ 口ニー を形成 した。好気性でグルコース を 酸化 的 に 分 解 し ,King sB培地上 で黄緑 色螢光 色素 を産生 した。40℃で 発育で きず, タバコ 過敏 感反応 は陽性 であっ たが, オキ シ夕一 ゼ,ア ルギニ ンジ ヒドロ ーゼ及 びジャガイモ塊茎腐敗 は 陰性 で あ っ た こ とか ら ,Pseudomonas syringae van Hall 1902と 一致し た。ま た, 本細菌 は イネ の 他 に オ オ ムギ , 工 ン バ ク及 び イ ン ゲ ンマ メ に の み 寄生 性 を 示 し , これ は 既 知 のP. syringae群 菌 の い ずれ と も異な るもの であっ た。 以上の 結果か ら,本 細菌 をイネ に病原 性を有 す るP.syringaeの 新pathovarと 認 め ,P. syringae pv. oryzae Kuwata1985と し た 。   病斑 組織か ら分離 され る菌数 と,病 斑のハ 口一部 分の大きさとの間にfま,有意な正の相関が認 めら れ,病 斑中心 の褐変 部分か ら高 濃度の 菌が分 離され た。 菌はイ ネ葉組 織内で対数増加的に増 殖し ,菌数 が最高 値に達 した後 に接 種部の 周囲に ハ口ー が発 現しは じめた 。菌の組織内での増殖 量の 推移は ,遮光 条件下 でも日 照条件下と同様に対数的な増加を示したが,遮光条件下ではハ口一 の形 成は接 種10日後 でも 認めら れなか った。 しかし ,接 種後遮 光条件 下に置いたイネを途中で日 照条 件下に 移すと ,その 翌日に は鮮 明なハ ローが 形成さ れた 。

  本菌 の液体 培養で 対数 増加期 の濾液 には, イネ葉 に対 する毒 性は認 められず,最高値に達して 以降 ,減数 期にか けての 濾液に 毒性 が認め られた 。この 濾液 処理に よって ,自然発病及び人工接 種に よるも のと同 様のハ 口一が 形成 され, 毒素の 産生が 推定 された 。培養 濾液はイネ以外にも,

供試 した植 物すべ ての葉 にイネ に類 似する ハ口ー を生じ ,菌 の宿主 範囲と は無関係であった。培 養 濾 液 は110℃. 10分 問 の 加 熱 処 理 に よ っ て イ ネ 葉 に ハ 口 ー を 生 じ な く な っ た 。   本 菌 は ジ ャ ガ イ モ 等 の植 物 貯 蔵 組 織に 対 し て 肥 大等 の 生 理 活 性を 示 さ な か っ た。 ま た , Geotrichum candidum及 び そ の他26種 の植 物 病 原 糸 状 菌に 対 し て 生 育阻 害 活 性 を 示さ な か っ た 。Escherichia coliに 対 し て 生育 阻 害 作 用 を示し ,この 作用 はL― グル タミン によっ て部分 的 にま た は 完 全 に 回復 し ,P. syringae pv. tabaci,P. syringae pv. coronafaciensにっい

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ての結 果と 一致し た。

  本菌 の液体 培養濾 液を用 いた 実験で も,微 生物に 対する 作用 性,熱 による失活など菌体と同様 の結果 を得 た。

  培養 濾液か ら抽出 した本 菌毒 素は, トレオ ニン及 び非蛋 白構 成アミ ノ酸から成るジペプチドで あ った 。 粗 毒 素 及び 精 製 毒 素 をNMR分 析 した 結 果 , 粗 毒素 に は タ ブ トキ シ ン が , ま た精 製 毒 素には タブ トキシ ンと1SO一夕 ブトキ シン が含ま れるこ とが明 らかと なり ,本菌 の病徴 発現毒 素 はタブ トキ シンと 同定さ れた。 本菌の 継代 培養に より病 原性を 喪失 した菌株は,野性型株と同様 にイネ 葉組 織内で 増殖し たが, ハロ―の発生は認められなかった。また,その液体濾液処理によっ ても, イネ 葉にハ ロ一発 生はな く,E. coliの 生育阻 害は 認めら れなか った。 更に ,本菌 の毒素 産生能 はプ ラスミ ドによ り支配 される 可能 性が示 唆され た。

  種子 及び乾 燥罹病 葉が本 病の 第一次 伝染源 となる 可能性 が示 された 。また,本病の初発直前か ら 初発 時 に か け て, オ キシテ トラサ イク リン・ ストレ プトマ イシン 剤500倍液 を1回散布 するこ とによ り, 高い防 除効果 が認め られた 。

  以上 の研究 成果は ,新病 害の 記載と ともに ,病原 細菌の 同定 ,病徴 発現機構の解明を行い,さ らに防 除対 策まで 示した もので あり, 高く 評価さ れる。 よって 審査 員一同は,別に行った学力確 認 試験 の 結 果 と 合わ せ て,本 論文の 提出 者桑田 博隆は 博士( 農学) の学 位を受 けるの に十分 な 資格が ある ものと 認定し た。

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