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博士(水産学)南 浩史 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(水産学)南   浩史 学位論文題名

炭 素、窒 素安定同位体比を利用した北太平洋に お け るミ ズ ナギドリ 科海烏 類 4 種の

生物 地球化学および生態学的研究

学位論文内容の要旨

  ハ イ イ 口 ミ ズ ナ ギ ド リ(Puffinus griseus)、 ハ シ ボ ソ ミ ズ ナ ギ ド リ(P.

tenuirostris)、ミナミオナガミズナギドリ(P. bulleri)、およびアカアシミズナギドリ (P. cameipes)は 、 南 半 球 に 繁 殖 地 を 持 ち 、 南 北 両 半 球に また がり10,OOOkmの 距 離 を 季 節 的 に 往 復 す る 外 洋 性 海 鳥 類 で あ る 。 こ れ ら ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 は 、 海 洋 生 態 系 に お い て 高 次 捕 食 者 と し て 機 能 す る 重 要 な生 態系 構成 種で ある こと 、 長 寿 命 生 物 で あ る こ と 、 外 洋 域 に 広 範 囲 に 分 布 す る こ と 等 か ら 、 海 洋 環 境 指 標 種 と し て 注 目 さ れ て い る 。 さ ら に 、 ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 は 、 表 層 性 浮 魚 類 、 頭 足 類 、 動 物 プ ラ ン ク ト ン 等 に 対 し て 捕 食 者 あ る い は 競 合 者 と し て 機 能 す る こ と か ら 、 ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 の 食 性 、 食 地 位 を 解 明 す る こ と は 、 こ れ ら 海 洋 生 物 の 分 布 、 移 動 を 間 接 的 に 知 る こ と が で き る た め 、水 産学 的に も重 要で ある 。 し か し な が ら 、 ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 の 食 性 、 食 地 位 に 関 す る 研 究 は 沿 岸 域 に 限られ、外洋域に関しては未だ少ないのが 現状である。

  生 物 の 食 物 連 鎖 に お い て 、 生 物 体 内 の13C、15Nが 濃 縮 す る こ と が 明 ら か に な る に っ れ 、813C、815Nを 利 用 し た 研 究 は 、 食 性 、 食 地 位 解 析 等 、 生 物 界 の 生 態 学 的 構 造 を 解 明 す る 上 で 有 望 な 指 標 と な る こ と が 明 ら か と な っ て い る 。 近 年 、 同 位 体 解 析 を 用 い た 鳥 類 の 食 性 、 食 地 位 等 の 研 究 も 多 く 報 告 さ れ て き た が 、 鳥 類 で は 摂 餌 過 程 に よ っ て 他 の 動 物 に 比 ベ 、 異 な っ た813C、815Nの 濃 縮 係 数 を 示 すことが明らかになりつっあるなど、未だ 不明な点が多い。

  以 上 の 背 景 か ら 、 本 研 究 は 、 北 太 平 洋 に お け る ミ ズ ナ ギ ド リ 科4種 を 研 究 対 象 種 と し て 、 以 下 の 項 目 に つ い て 解 析 を 行 っ た 。1) フ ァ ブ リ キ ウ ス 嚢 お よ び 生 殖 腺 に よ り 海 鳥 類 の 成 長 段 階 を 区 分 す る こ と 、2) 各 種 の 生 体 内 に お け る 安 定 同 位 体 分 布 を 明 ら か に し 、813c、815Nの 濃 縮 係 数 を 決 定 す る こ と 、 ま た 、 ミ

(2)

ズナ ギド リ科 等の 海鳥 類お よび 魚類、頭足類、動物プランクトン等を材料とし て 、 こ れ ら の813C、815Nを 測定 し、3)ミ ズナ ギド リ科 海鳥 類4種 の渡 り機 構 を 解 明 す る こ と 、4) ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類4種 の 食 地 位 を 明 ら か に す る 。 1)ミズナギドリ科海鳥類の性成熟判定

  ハイイ口ミズナギドりは、フんブリキウス嚢の有無と卵巣、精巣重量により、

幼鳥 およ び成 鳥の2段階 に区 分で きる 。本 項目 で対 象と した ミナミオナガミズ ナギ ドり およ びア カア シミ ズナ ギドりの卵巣、精巣重量が増加するに従って、

フん ブリ キウ ス嚢 の出 現頻 度が 減少することから、両種のファブリキウス嚢の 有 無 が 幼 鳥 お よび 成鳥 を区 分す る指標 とし て有 効で ある こと が示 唆さ れた 。 2)生体内における各体組織の炭素、窒素安定同位体比

  ミ ナミ オナ ガミ ズナ ギド りの 筋肉および肝臓と餌生物との間の815Nの濃縮係 数は、それぞれ1 .6c700および2.7U/ooであり、アカアシミズナギドりでは、それぞ れ1 .60/00および2.3%0であった。一般に、餌とそれを摂取する動物体の間の815N の濃 縮係数が3.4c700であることと比較すると、ミズナギドリ科を含む海鳥類の 815Nの濃縮係数は、筋肉で約2a/o。、肝臓は筋肉より約1a̲/oo高い値であることが明 らか とな った 。813Cに 関し ては 、両種の筋肉および肝臓と餌生物との間の813C の濃 縮係数は、0.1〜‑0.8%0の値を示した。この結果から、ミズナギドリ科海鳥 類の813Cの濃 縮係 数は 低く 、食 物連鎖の低次栄養段階の813Cを反映することが 明らかとなった。

3)ミズナギドリ科海鳥類の渡り特性

  4,5月 の西 部北 太平 洋に おけ るハイイロミズナギドりの幼鳥、成鳥およびハ シボ ソミ ズナ ギド りの 筋肉 の813C、815Nが低いことから、両種ともに南半球繁 殖地 の低 い同 位体 比の 影響 を受 けて いる こと が示唆 され た。6月以降は、北太 平 洋 で の 餌 生 物を 捕食 した 高い 同位体 比に 置換 する こと が明 らか とな った 。 北 太 平 洋 の ミ ナミ オナ ガミ ズナ ギドり およ びア カア シミ ズナ ギド りの 筋肉 の 813C、815Nは 、幼 鳥お よび 成鳥 ともに6,7月個体が高く、北太平洋での餌生物 よ り も 高 い こ と か ら 、 渡 り 径 路 上 で 脱 窒 が 駆 動 す る ぺ ル 一 海 流 域 、 あ る い は カ リ フ ォ ル ニ ア海 域 で 高 い づ15Nの餌 生物 を捕 食し たこ とが 考え ら れた 。ま た、 両種 の幼 鳥、 成鳥 は脱窒の影響を受けた餌生物を捕食しているこ とか ら、 渡り 途中 に摂 餌し なが ら通 過す るこ とが示 唆さ れた 。8月以降は西部 北太平洋のサンマ(C,0´〇ぬ6むsa加)等の魚類を捕食した同位体比に置換して行<

ことが示唆された。

  一 方、 東部 北太 平洋 のハ イイ ロミズナギドりの渡り経路上と考えられる脱窒 海域 にお いて 、幼 鳥は この 脱窒 の影響を受けた餌生物を捕食することが考えら

(3)

れ、成鳥は脱窒の影響を受けた餌生物は捕食しない、っまり渡り途中は何も捕 食せずに通過することが示唆された。6月以降は東部北太平洋の餌生物である サンマ等を摂餌した同位体比に置換して行くことが明らかとなった。東部北太 平洋のミナミオナガミズナギドりおよびアカアシミズナギドりは、西部個体と 同様に、幼鳥、成鳥ともに脱窒の影響を受けた餌生物を捕食したことが考えら れた。

4)海域によるミズナギドリ科海鳥類の食地位

  栄 養 段 階 と 海 鳥 類 の 815Nに は 、 以 下 の 関 係 式 が 成 立 し た 。     栄養段階(海鳥類)=1十{815N(海鳥類)‑ 815N(粒状有機物))/3.4十0.4   繁殖地および西部北太平洋におけるハイイロミズナギドりの幼鳥、成鳥およ びハシボソミズナギドりの栄養段階は、繁殖地ではそれぞれ3.7、3.9および3.6 であり、また、西部北太平洋ではそれぞれ3.2、3.5および3.3であった。ハシボ ソミズナギドりの栄養段階は、ハイイ口ミズナギドりの成鳥よりも低い値を示 した。両種の胃内容物による餌生物の報告では、ハイイロミズナギドりがプラ ンクトン食性の魚類および頭足類を中心に、ハシボソミズナギドりが動物プラ ンクトン類を中心とした食性を示す。同位体比によって得られた栄養段階は、

胃内容物による食性の報告と極めて良く一致した。また、西部北太平洋におけ るミナミオナガミズナギドりおよびアカアシミズナギドりの栄養段階は3.2〜 3.5で、ほぽハイイロミズナギドりの栄養段階に近い値を示した。両種の胃内容 物による食性の報告はないが、同位体比から魚食性である・ことが示唆された。

東部北太平洋におけるハイイロミズナギド1Jの栄養段階は、成鳥が2.7、幼鳥が 2.8とやや西部北太平洋に比ベ低い位置を占めた。同海域におけるミナミオナガ ミズナギドりおよびアカアシミズナギドりの栄養段階は、2.7〜3.2とハイイロ ミ ズ ナ ギ ド り に 近 い 値 で あ り 、 魚 食 性 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   以上の結果から、813C、615Nを利用することで、ミズナギドリ科海鳥類は、

栄養段階を3〜4に位置しつつ、繁殖地から北太平洋へと北上することが明らか となった。また、これら近縁種問においても北上渡りに際して、渡り経路、成 長段階による摂餌生態等が異なることが明らかとなった。これらの知見は、ミ ズナギドリ科海鳥類の北上渡り機構を解明するばかりでなく、個体群構造、海 洋生物資源動態とぃう観点から、また、ミズナギドリ科海鳥類の同位体比の流 れ に よ る 環 境 指 標 モ デ ル と し て も 極 め て 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

炭素、窒 素安定 同位体比を利用した北太平洋に

    ノ丶 gri

(P ミズ シミ のミ に繁 れら 月 . ま に索 と回 る。

   の重 わら が多

お け る ミズ ナ ギドリ科 海烏類 4 種の 生物 地球化 学および生態学的研究

イイロミズナギドリ( Puffinus

seus 、 ) 、    ハ シ ボ ソ ミ ズ ナ ギ ド リ     tenuirostris )、    ミ   ナ    ミ    オ    ナ    ガ ナ ギ ド リ ( P . bulleri ) 、    ア カ ア ズナギドリ( P , carneipes )等

ズ ナ ギ ド リ 科 ・ 海 烏 類 4 種 は 、 南 半 球 殖 地 を 持 つ 外 洋 性 海 鳥 類 で あ る 。    こ 4 種のミズナギドリ類は、 4 月より 9

で 全 て 北 太 平 洋 北 部 海 域 に 渡 り 活 発 餌 す る 。 10 月 に な る と 全 て 南 半 球 ヘ 帰し、翌年の 4 月まで繁殖に従事す

4 種の総個体数は約 5 〜 6 千万羽であ

北 太 平 洋 亜 寒 帯 域 に お い て は 、 夏 季 要 な 海 洋 生 態 系 構 成 種 で あ る に も 拘 ず 、 生 態 に つ い て は 今 だ 未 知 の 部 分 い。

二 昭

健 義

崎 田

島 米

授 授

   

   

教 教

査 査

主 副

(5)

     本研究は、上記4 .種のミズナギドリ類 に ついて、 炭素お よび窒素 の安定 同位体 比、   6  ̄ 3C と 615N 、    を測定することに よ り、南半 球より 北半球へ の渡り 経路の 判 別、海域 別の栄 養段階区 分およ び食地 位 を解析し た。特 記すべき 点を要 約する と次のように示し得る。

1 ) 餌 生 物 と ミ ズ ナ ギド リ 類 の筋 肉 間 の 8  ̄ 5N の 濃 縮 係 数 は 2 瓢 で あ っ た 。 海 鳥 類 以 外 の 生 物 で の 815N の 濃 縮 係 数 は 約 3 .4 %0 であることから、   海鳥類の濃縮係 数 は若干低 いこと が明らか となっ た。筋 肉 の 815N の 回 転 率 は 、    約 20 〜 30 日 間 で あ る の に 対 し 、 肝 臓の そ れ は 1 週 間 以 内 と推察さ れた。 一方、 813C は O . 1 .〜

O . 8 脇と低 く、食物 連鎖の低 次栄養 段階 の813C を反映していた。

2 ) 西 部 北 太 平 洋 で 4 、 5 月 に得 ら れ た、

南 半球より 飛来し たばかり のハイ イロミ ズナギドリ、   およぴハシボソミズナギド り の 筋 肉 の 613C と 615N は 低 く 、    南 半 球 繁殖地周 辺の低 い同位体 比の影 響を受 けていることが示唆された。両種ともに、

6 月 以 降 に な っ て 北 太平 洋 固 有の 餌 生 物

の 高い同位 体比に 置換した 。東部 北太平

洋 で得られ たハイ イロミズ ナギド りの筋

肉 の 813C と 615N は 、   4 、   5 月 は幼鳥で

高 い値であ ったの に対し、 成鳥で は低い

     −914 ―

(6)

値 を 示 し た 。 6 月 以 降 に は 、 東 部 北 太 平 洋 の 餌生 物 の 低い 同 位体比 へと置 換して いった。   ミナミオナガミズナギドリ、   お よびアカアシミズナギドりでは、   幼鳥お よび成鳥ともに筋肉の815N は、   4 、   5 月 に 高 く、 以 後 北太 平 洋固有 の値へ と置換 した。   これらの結果は、太平洋のおおよ そ 西 経 170 度 を 境 界 に し て 、 815N は 脱 窒が駆動するフンボルト海流域やカリフォ ル ニ ア海 流 域 で特 異 的に高 いため 、東部 で 高 く西 部 で 低い こ とを反 映して いる。

すなわち、    ハシボソミズナギドりやハイ イ ロ ミズ ナ ギ ドり の 成鳥は 、南半 球の繁 殖 地 より 北 太 平洋 ま で途中 で索餌 する事 なく一気に渡るのに対して、    ハイイロミ ズナギドりの幼鳥、   ミナミオナガミズナ ギドリ、   アカアシミズナギドりは、   繁殖 地 よ り北 太 平 洋ま で の渡り 経路が 東側に ず れ てい る ば かり で なく、 索餌し ながら 渡 り を し て い る こ と が 判 明 し た 。 3 ) 栄 養 段 階 と ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 の 615N に は 、    以 下の 関係 式が成 立するこ とが明らかとなった。

     栄 養 段 階 = 1 十 ( 815N ( 海 鳥 類 ) ‐ 615N ( POM ))/3 .4 十0.4

    POM :海鳥類が生息する海域の粒状有      機物

     繁殖地および西部北太平洋のハイイ口

     ―゛ 915 ―

(7)

ミズナ ソミズ はそれ 部北太 3.3で 魚食性 動物プ 容物解 く一致 イロミ 2.  7  、 比べ低 ミナミ ズナギ ハイイ 魚食性 4)魚 鳥類を 613C 階をプ 海鳥類 殖地か となっ て渡り 異なる     以 上 模で渡 種の北

ギ ド り の 幼 鳥 、 成 鳥 お よ び ハ シ ボ ナ ギ ド り の 栄 養 段 階 は 、 繁 殖 地 で ぞ れ 3 . 7 、 3 . 9 、 3 . 6 で あ り 、 西 平 洋 で は そ れ ぞ れ 3 . 2 、 3 . 5 、 あ った。    ハイイ口ミズナギドりが で あり、    ハシボソミズナギドりが ラ ン ク ト ン 食 性 で あ る と ぃ う 胃 内 析 結 果 と 、 同 位 体 解 析 結 果 と は 良 し た 。 東 部 北 太 平 洋 に お け る ハ イ ズ ナ ギ ド り の 栄 養 段 階 は 、 成 鳥 が 幼 鳥 が 2 . 8 と や や 西 部 北 太 平 洋 に い 位置に あった。    同海域における オ ナ ガ ミ ズ ナ ギ ド り や ア カ ア シ ミ ド り の 栄 養 段 階 は 、 2.7 〜 3 . 2 と 口 ミ ズ ナ ギ ド り に 近 い 値 で あ り 、 であることが示唆された。

類 、 頭 足 類 お よ び ウ ミ ス ズ メ 科 海 も 含めた 海域別の生物群について、

と 815N の 関 係 図 を 作 成 し 栄 養 段 ロ ットし た結果、    ミズナギドリ科 は 栄 養 段 階 3 〜 4 に 位 置 し つ つ 、 繁 ら 北 太 平 洋 へ と 渡 る こ と が 明 ら か た。   また、   これら近縁種間におい 経 路 、 成 長 段 階 に よ り 摂 餌 生 態 が ことが明らかとなった。

の 結果は 、   自由生物であり地球規

り を 行 う ミ ズ ナ ギ ド リ 科 海 鳥 類 4

上 渡 り 経 路 、 成 長 段 階 に よ る 摂 餌

     ―916 −

(8)

生 態の 変 化等 とぃ った 鳥学 的 成果 に留 ま ら ず、 広 く海 洋生 態系 にお け る重 要構 成 員 であ る 海鳥 類の 生態 学的 位 置づ けと 役 割 を解 明 する 上で 、炭 素お よ び窒 素安 定 同 位体 比 によ る解 析が 有効 な 研究 方法 で あることを証明した。    さらに本研究は、

今 後の 海 洋生 態系 研究 にお い て、 外洋 域

に 生息 す る高 次捕 食者 の研 究 に新 分野 を

開いたとみなされる。   よって、   主査・副

査 は本 論 文が 博士 (水 産学 ) の学 位請 求

論 文と し て相 当の 価値 を有 す るも のと 認

定した。

参照

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