Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Expression and localization of aqua-glyceroporins
AQP3 and AQP9 in rat oral mucosa.
Author(s)
Poveda, Marlene
Journal
歯科学報, 114(6): 616-617
URL
http://hdl.handle.net/10130/3520
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 アクアポリン(AQP)は6個の疎水性の膜貫通α ヘリックスで構成された小さな複合蛋白のファミリーで, 水に対する高い選択性を持つ小孔を,細胞の内側と外側とをつなぐ膜貫通ドメインが取り巻いている。この ファミリーには,水だけではなく水よりも分子径の大きいグリセロールなどの分子を通過させるアクアグリセ ロポリンがあり,AQP3,AQP7,AQP9はこのグループに属している。また,口腔上皮は口蓋や舌,頬粘 膜などの角化あるいは錯角化重層扁平上皮と,口腔底などの非角化重層扁平上皮によって被覆されており,こ れらの重層扁平上皮においては,上皮表層あるいは顆粒層上部で,狭小となった細胞間隙に MCG(membrane coating granules)が放出され,その中に含まれているセラミドなどの脂質により細胞間隙が閉鎖されて生理学 的透過性関門が構成されていると考えられている。本研究では,口腔重層扁平上皮における水の透過性調節に アクアグリセロポリンが関与するかどうかを明らかにするために,AQP3,AQP7,AQP9の発現とその局 在を,RT-PCR 法,Western Blot 法,免疫蛍光法,金コロイド凍結免疫電顕法により検索した。 2.研 究 方 法 実験動物は体重約200g の SD 系雄ラット60匹を用い,チオペンタールによる腹腔内麻酔下に,口蓋,頬, 舌,口腔底の粘膜組織を摘出し,DispaseⅠ酵素にて処理後,粘膜上皮を剥離して,RT-PCR 法および Western Blot 法にて AQP3,AQP7,AQP9の発現を解析した。免疫染色のためには,粘膜組織を摘出後,ただちに 液体窒素にて急速凍結を行い,6μm の凍結切片を作成し,AQP3,AQP7,AQP9に対するウサギポリク ローナル抗体を用いて免疫蛍光染色をおこない蛍光顕微鏡にて観察した。免疫電顕法のためには,4%パラ フォルムアルデヒドおよび0.2%グルータルにて灌流固定の後,液体窒素にて急速凍結して凍結超薄切片を作 成し,一次抗体を反応させた後,10nm の金コロイドにて標識し,透過型電子顕微鏡にて観察した。 3.研究成績および結論
RT-PCR 法および Western Blot 法により,口蓋,頬,舌,口腔底の口腔粘膜上皮には,AQP3および AQP9 の遺伝子および蛋白の発現が認められたが,AQP7についてはどちらも明らかなバンドは認められなかっ た。免疫蛍光染色において,AQP3の蛍光標識は基底細胞の細胞質に強く認められ,有棘層から顆粒層ある いは表層への分化にともなって,細胞膜に限局するようになり,最表層の角質層では,反応が消失していた。 氏 名(本 籍) ポ ヴ ェ ダ マ ル レ ネ
Poveda
Marlene
(ベネズエラ) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1745 号(甲第1020号) 学 位 授 与 の 日 付 平成20年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Expression and localization of aqua-glyceroporins AQP3 and AQP9 in rat oral mucosa.
掲 載 雑 誌 名 The Bulletin of Tokyo Dental College 第55巻 1号 1−10頁
2014年2月 論 文 審 査 委 員 (主査) 櫻井 薫教授 (副査) 山根 源之教授 井上 孝教授 川口 充教授 下野 正基教授 歯科学報 Vol.114,No.6(2014) 616 ― 84 ―
一方,AQP9の蛍光標識は AQP3のものと比較して基底細胞および傍基底細胞の細胞質辺縁により強く認め られた。免疫電顕像では,AQP3の局在を示す金コロイド粒子は,基底層から有棘層では細胞膜下の細胞質 に存在し,顆粒層上部や中間層上部では,細胞間隙に面する細胞膜上に局在していた。一方,AQP9の金コ ロイド粒子は,基底細胞や有棘層では細胞膜下の細胞質や細胞膜に多くみられた。これらの結果から,水やグ リセロールを通過させるアクアグリセロポリンの AQP3および AQP9がラット口腔粘膜上皮の基底細胞から 顆粒層上部あるいは中間層上部に存在することが明らかとなった。そして,これらが上皮細胞間および細胞内 を通過する浸透圧性の水の輸送・調節に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに,口腔粘膜上皮 の顆粒層上部や中間層上部におけるセラミドやグリコシルセラミド等を含む MCG の放出による生理学的透過 性関門の構築には AQP3が関与すると考えられた。また,基底細胞からのグリセロールの取り込みには AQP 9が何らかの機能を果たしている可能性が示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 本研究は,口腔重層扁平上皮における水の透過性調節にアクアグリセロポリンが関与するかどうかを明らか にするために,AQP3,AQP7,AQP9の発現とその局在を,RT-PCR 法,Western Blot 免疫蛍光法および 金コロイド凍結免疫電顕法を用いて検索したものである。SD 系雄ラット60匹を用い,口蓋,頬,舌,口腔底 の粘膜組織を摘出し,RT-PCR 法および Western Blot 法にて,AQP3,AQP7,AQP9の発現を解析すると ともに,凍結切片を用いた免疫蛍光染色による検討と,凍結超薄切片を用いた金コロイド標識免疫電顕法によ りこれらの免疫局在を検討した。 本研究の結果に示すように,RT-PCR 法および Western Blot 法では,口蓋,頬,舌,口腔底の口腔粘膜上 皮では,AQP3および AQP9の遺伝子および蛋白の発現が認められたが,AQP7については明らかな反応は 認められなかった。また,免疫蛍光染色において,AQP3は基底細胞では細胞質にみられ,有棘層から顆粒 層あるいは表層では細胞膜に限局し,最表層の角質層では消失していた。AQP9は基底細胞および傍基底細 胞の細胞質辺縁に強く認められた。免疫電顕像では,AQP3は基底層や有棘層の細胞膜下の細胞質に存在 し,顆粒層上部や中間層上部では細胞間隙に面する細胞膜上に局在しており,AQP9は,基底細胞の細胞膜 にも多く認められた。このことから,水やグリセロールを通過させる AQP3や AQP9が,上皮細胞間および 細胞内を通過する浸透圧性の水の輸送・調節に重要な役割を果たしている可能性があると考えられた。さら に,口腔粘膜上皮の顆粒層上部や中間層上部の細胞間隙への,セニミドやグリコシルセラミド等を含む MCG (membrane coating granules)の放出による生理学的透過性関門の構築に AQP3が関与すると共に,基底細
胞からのグリセロールの取り組みには AQP9が何らかの機能を果たしている可能性が示唆された。 本審査委員会では,1)粘膜組織採取の術式について,2)上皮の角化様式と AQP3/AQP9の発現の違 いについて,3)上皮の厚さと部位による AQP3/AQP9の発現の違いについて,4)AQP3/AQP9と MCG との関連について,5)AQP3/AQP9の欠損と口腔粘膜疾患との関連について,6)グリセロールの膜透過 機序について,7)AQP の細胞内輸送経路と機能発現などについての討議および質疑がなされ,概ね妥当な 回答が得られた。また,文章および写真の表現などについても適切な指摘があり,修正がなされた。 本研究の知見は,歯科医学の進歩発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判定された。 歯科学報 Vol.114,No.6(2014) 617 ― 85 ―