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神経症の心理治療に関する一考察 : 医師とカウンセラーの連携に着目して

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(1)神経症の心理治療に関する一考察 一医師とカウンセラーの連携に着目して一. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 障害児教育専攻. M92323A 福岡 直樹.

(2) 目. 次. 要約 第1章 問題点と:目的 ・・. 第2章事例. 一一一一一一e一一一一e一一一一一 1 3. …. 1.主訴および臨床像 II.生活史および病歴. 3. III.家族関係. 6. IV.治療の場所 V.医師とカウンセラーの連携 VI.診断・処置. 9. 4. 9. 10 13 13 20 36 49 51 59 59 68 71 72 73 73 75 76. 第3章 治療経過 1.治療前期 II.治療中期 III.治療後期 IV.予後面接(第二次面接)の概要. V.治療経過のまとめ VI.心理テストの結果. 【1】箱庭療法 【2】自己画法. [3] HTPP [4] YG. [5] TEG [6] MMPI (7] MAS [8] MPI. 第4章. P煮毒テストの痴∵ごゴこご.”…r…. II.クライエントの不安神経症症状 III.発症にかかわる要因 一一 IV.クライエントの変容 ’一一. V.医師とカウンセラーの連携 VI.スーパーヴィジョン 一一 VH.初心カウンセラーの失敗と変容. 第5章. P『難 …∵●. ’●. 諱f●ゴ1器 136. II.今後の課題 文 献 謝 辞. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …. 78 78 94 98 103 111 123 125. 138.

(3) 要約 不安神経症によって慢性的な排尿困難症状を呈する男子大学生の治療につい て、精神神経科医師と初心カウンセラーの連携のもとに薬物療法を伴う精神療 法と心理治療が実施された。その結果、比較的短期間にクライエントの変容が 認められた事例の研究報告である。. 本論文では、治療にかかわった精神神経科医師とカウンセラーの連携による 役割分担に注目しつつ、クライエントの症状の軽減および心理的変容について 考察する。併せて、初心カウンセラーの失敗についても考察する。. キー・ワード:不安神経症(anxiety neurosis). 排尿困難 治療者間の連携. 心理療法上の役割分担.

(4) 第1章. 問題点と二目白勺. ■.問是璽,点、 人が心の病によって、人としての一般的な生活に支障が生じたとき、一つの 有効な方法としての心理療法を用いることによって、支障なく生活できるまで 援助することができる。 フロイト(Freud, S)をはじめ、多くの先人たちが多種多様な方法で心理療法. に挑戦し、数多くの成果を修めてきたが、患者たちは各々他人と同質または異. 質の心理を有するが故に、それぞれの状況に応じて異なった対応が必要であ る。. 現在、心理療法に関する理論や技法の発展と同時に、心理療法に求められて いるものの一つに、短時間のうちに有効な治癒が達成されることをあげること. ができる。そして、早期治癒をめぐって時間制限心理療法等の多くの理論や技 法が開発されてきた。. わが国においても、種々の短期治療法が開発されつつあるが、なかでも近年 注目されつつあるのがチーム医療である。そして、心理療法においても医師と 心理士による連携が注目されはじめた。ところが、両者の連携についてコメン トしている論文は存在しても、事例研究を通じて分析している論文は、ほとん ど認められない。. II一(1).目的■ 人間の持つ普遍的な心の動きを研究する際、複数の人物を調査することによ って一般的な結果を求める方法がある。これに対して、本論文は一入の人間の 心を深く追求することによって、広く人間の誰しもが持ち合わせているが、平. 常の状態では表面に現れない深層心理を追求することを目的とする事例研究 (Case study)である。. 一人遅神経症患者のカウンセリングを通じて、できるだけ多くのデータをも とに、その患者の根幹た潜んでいた心の状況を追求し、カウンセリングによる. 1.

(5) 患者の変容過程を研究するとともに、人の心の普遍性の発見に資することを目 的とする。. II一(2).目的2 わが国で行われている心理療法では、医師と心理士の連携は始まったばかり であり、有効な連携のあり方は確立されていないといえる。 本論文の事例は、両者の連携によって心理療法が進展したものであるので、. 両者の患者に対する関わりの記録をもとに、より有効な連携のあり方を探究す る。. II一(3).目白勺 3 本事例のカウンセラー(筆者)にとって、本事例は事実上初めてのケースで ある。したがって、初心カウンセラーが陥るr失敗につながる言動』が随所に. 発見できる。同時に、多くのr気づき』も発見され、カウンセラー自身も変容 しているので、カウンセラーの変容についても率直に考察する。. 2.

(6) 第2:章. 事 イクU. 事例の研究報告を行うにあたって、クライエントのプライバシー保護のた め、固有名詞はすべてランダムに選択したアルファベットで示す。. ■一主訴および臨床像 【1】クライエント. 男子大学生・22歳. 【2】主訴 排尿困難・嘔吐感・対人緊張. 【3】排尿困難. 男子用小便器では排尿できないので、男子便所の中の大便用のボックスに 入って時間をかけて用を足している。普通の人と同じように、小便器で時間を かけないで小便ができるようになりたい。. 自宅では最も出やすいが、父親に怒鳴られた時は出にくい。大学では一大決 心の上、特定の便所の大便用ボックスで時間をかけてやっと用を足すことがで きる。. 【4】嘔吐感 緊張した時はしばしば嘔吐しそうになる。最近は嘔吐していないが、胃から 胸部にかけてのrしこり』は常にある。. 【5】対人緊張. 講義を受けている最中、後ろの学生から「背が高いので目障りだ1」と言わ れそうな気がして緊張する。. 学生食堂で並んでいても、後ろの学生から「早く済ませ、のろいそ!早くし ろ!」と言われそうな気がする。. 3.

(7) 父親が帰宅してきた時や父親の前では、怒鳴られそうで緊張し、恐怖感に襲 われる。. 【6】臨床像. クライエントは中学生の時期から来談に至るまで、対人緊張・排尿困難など の症状に悩んでいた。高校生のときに一度だけ恐慌性発作に見舞われたが、何 とか自力で生活してきた。大学生になって、クラブ活動によって不安症状を克 服すしょうと試みたが、症状が増幅する結果を招いた。苦しくなって自宅近く. の精神内科で自分の意志で診察を受けたが不調に終わったため、所属している A大学の保健管理センターの援助を求めてきた。. カウンセラーのクライエントに対する初対面時の印象は、温厚な感じの男子 大学生であった。. 髪の毛は清潔に刈り、色白でおとなしそうな顔にフレームレスの眼鏡を着用. していた。背が高くかなりスリムであったが、若干猫背で、伏し目がちであ り、初対面のカウンセラーと胸を張って目を合わせることには抵抗があるよう に感じられた。. 服装もブルージーンと自いTシャツで、どこででも見かける大学生といった 至極平凡なものであった。冬は地味な色のセーターやジャンパーを着ていた。. なお、その後の来談時も服装には大きな変化はなかったが、現在の大学生のな かには、もっと奇抜な身なりを楽しむ学生が多い中で、目立たなさすぎる印象 を受けた。. II.生活史および病歴 1970年6月8日兵庫県の都市部であるG市で双生児の第1子として生まれ た。4歳年上に兄がいるので、クライエントは次男である。4歳の時に、父親 の転勤により、香川県の都市部であるH市へ一家転住した。. 4.

(8) 【1】小学生時代. 小学校2学年次に、仲の良かった友人が交通事故死した。担任の先生に連れ られて葬儀に参列し、友人のデスマスクを見せられた。デスマスクはクライエ ントにとっての恐怖体験として現在まで心の片隅に強く焼きついている。. 小学校4年次に大阪市内ヘー家転住した。転入直後は、方言を使うことや双 生児であることをからかわれ、少々いじめに遭った。そのときは体格も大きく なかったので十分な対抗はできなかった。. 両親は非常に教育熱心で、両親が引いたレールに素直に乗ってきた。. 【2】中学生時代 中学生時代は、規律の厳しい公立中学校でしかも兄の成績が優秀であったこ とを先生方が知っていたので、双生児の自分たちも兄のようにあるべきである との重圧からか、双生児の兄弟揃って排尿困難の症状が発生しはじめた。 中学校時代、弟は活発でクライエントより成績は上であった。. 【3】高校生時代. 高校進学に際しては、その学区では超一流校と言われている高校を受験し た。兄がすでに卒業した高校である。弟は合格したがクライエンは不合格で あった。そのため不本意ながら私立の進学校であるC高校へ進学した。クライ エントは合格できなかったことを両親への裏切り行為であると負い目に感じて いた。. また、C高校においても学校は学力競争を扇動するばかりで、自由な気風は なく、クライエントにとっては居心地の悪い学校であった。そのC高校で、ク ライエントの学習成績は徐々に下がっていった。. 高校2年次のある夜、父親が会社のことで荒れ狂った。そのあとクライエン トはテレビでホラー映画を見ていて、あまりにも残酷なシーンがでてきて卒倒. した。一種のr金縛り』のような症状(恐慌性発作?)になって、助けを求め ることもできなかった。. 高校時代も兄弟揃って慢性的に排尿困難症状に陥ったが、大学入学後ほどで はなく、なんとか自力で解決できていた。また、弟は高校生のときに排尿困難. 5.

(9) 症状を母親に訴えたが、クライエントは訴えることもできていない。. 弟は公立高校へ入学できたが、クライエントは私立高校へ入学したので、親. の経済的負担に責任を感じ、また大学間格差を気にして国公立大学を目指し た。しかし、希望に反して1年間の予備校生活の結果、私立のA大学経済学部 へ進学するしがなかった。. 【4】大学生時代. クライエントはA大学入学直後から、ギタークラブに所属していた。2回生 後半からは、苦手な部長になることで自分の性格を変えることに挑戦したが、 自らが選択したものの、部長としての責任が果たせず、排尿困難を中心とする 神経症的症状に悩んで退部した。. 神経症的症状を治療するために、開業医を訪れたが、相性が合わなかったこ とと経済的理由により、A大学保健管理センターを訪れた。. III.家族関係 以下の情報はクライエントが語ったものであるので、実際とは異なる件もあ ろうかと考えられる。しかし、カウンセリングの場での会話から家族像を推測 すると、ほぼ正確に伝えられていると判断できる。. クライエントは誕生以来、典型的な核家族である父・母・兄・弟の4人の中 で育った。両親は特に高学歴指向が強いところへ、気の強い兄の学習成績が高. かったこともあって、クライエントとその双子の弟に対する圧力は非常に強 かった。. 【1】 父親 (クライエントの来談時54歳). 京都市北部の石材業の次男として生まれた。生家は家系と伝統を重んずる老 舗である。次男であるので老舗を継ぐことなく、薬学部卒業の直後から大阪市 内の某製薬会社の営業マン(薬剤師)として勤務している。厳格で短気な性格. のため、会社でも他の社員に憤怒する。また、勤務その他によるストレスか. 6.

(10) ら、家庭外での飲酒も激しく、数年前には肝臓病のため入院した。家庭内でも. 子どもに優しい語りかけは皆無で、家庭外の件で半狂乱になったり、子どもた. ちに怒鳴り散らすことが多かった。飲酒を控えている現在、昔ほどではない が、怒鳴り散らすことは以前と変わらないという。子どもに対しては、母親と 同様に、一流大学から一流企業へ就職するルー一一一トを強く望んでいる。. なお、父親は現在睡眠剤を服用しているらしい。また父親の甥(京都在住) は、精神病のため入退院を繰り返している。. 【2】 母親(クライエント来談時51歳). 学歴は中学校卒業であり、専業主婦である。中卒に対する劣等感が強いた め、学歴に対するこだわりは特に強く、子どもたちには一流大学から一流企業 へのルートを異常に強く望んで育ててきた。. クライエントが小学生の時、一家転住していた香川県でのことであるが、対 人関係のもつれから村八分のような扱いを受けて、母親は深く悩んでいた。 大阪市へ転居した直後も、大阪市に馴染めず、家で寝ていることが多かった。. クライエントに対して「子どもは要らない」とか「今から一緒に死のう か」とか「精神安定剤を私にも分けてくれ。」とか「あなたたちのせいでお父 さんと十分なセックスができなかった。だからお父さんが荒れるのよ」などと. 本気で言ったりした。また、大声で「死んでくる」と家を飛び出したり、時に は刃物を持って家を飛び出したりすることもあり、そのつど兄弟は大阪城近辺 を探し回ったという。また、兄が就職に伴って親のもとを離れて寮生活をする と決まった際には、悲しんで泣いていた。これらから察すると、性格的に完壁 主義でノイローゼ傾向が伺える。. 母親の家系であるが、クライエントの祖母は92年9月に死亡した。祖母は、 結婚生活が不調であったため3人の子どもを抱えて離婚した。母親の兄は、ま じめで気が弱い人であった。自衛隊に勤務して母親(クライエントの祖母)へ 仕送りをしていたが、勤務途中で精神病を発病し自殺した。また、母親の妹は ノイローゼ傾向にあり、未婚である。. 7.

(11) 【3】 兄(クライエント来談時26歳). 両親の期待通りに一流高校から一流私学と称されているD大学へ進学し、某 電鉄会社に勤務している。入社直後から会社の寮に住んでいる。93年3月に親 の反対を押しきって結婚した。クライエントは、兄めことを攻撃的で冷たく、 出合う度に罵倒されると言っている。. 【4】 弟. クライエントとは双生児(二卵性?)である。すでに小学生時代から人の前 で手が震え、中学生時代には排尿困難症状が発症していた。クライエントより. はやんちゃな性格で、活動的で学習能力も高かったが、高校在学中は勉強しな いで両親に対してかなり反抗的であり、勝手気儘に遊んで楽しんでいた。その ため、一流高校との世評の高い公立高校へ進学しながら、二年浪人の末私立B 大学法学部へ進学した。. 大学入学後も、相変わらず遊びまわると共に英会話教室に通ったりアルバイ. トに精を出したりして通学せず、二回隼から三回生への進級ができなくなっ た。このとき(1992年3月)自宅で一度だけ恐慌性発作(?)に襲iわれ、総合病. 院の精神科の診察を受け、待ち時間中に近くに置いてあった医療機械が自分の 名前を呼んでいるとの幻聴を経験し、分裂病ではないかと自分で心配したとい う。そのあと、以前の状況に戻ったものの、過去の排尿困難症状が頻発してき た。. 排尿困難症状そのものはクライエントより若干軽いようであるが、クライエ ントの勧めでB大学の学生相談室でカウンセリングを受け、医師による薬物療 法はなく、カウンセリングのみで、1992年夏現在では、何とか小便器で排尿で きていた。. ところが、1993年4月中旬になって、一人で店番を任されていたコンビニエ ンスストアーのアルバイトの最中に、店を放置して帰宅したり、トイレを誰か がカメラで覗いているとか、テレビの中にカメラが仕組まれていて、誰かが自 分を見ているとか、電柱から電気が下りてきてメガネを壊されたとか、理解不 可能な言動が目立つようになった。この境界例を推測させる症状は同年9月ま で続いたあと急激に解消した。. 8.

(12) クライエントとの間に敵対感情はないが、双生児であるにもかかわらず、ク ラィエントとは通常の年齢の異なる兄弟のようであり、表面上は深いつながり が感じられない。. IV.治療の場所 治療の場所は、A大学保健管理センターの診察室である。当センターは木造 三階建ての古い建築物である本館と、数年前に増築された別館に分かれてい る。別館には、心電計など健康診断に使用する機器が設置してあり、一部屋の み診察室があって、その診察室がカウンセリングに使用されるのみで、通常は 閉鎖されている。. 別館の診察室は、学内の道路に面したところにあるが、窓と道路の間には植 えこみがあり、道路への落差も2メートルほどあるので、通行人の目に触れる ことはなく、廊下を歩く人もないので心理治療には最適である。. ただし、医師用の両袖机の上には、X線フイルム観察用のライトボックスが 置いてあり、.診察用のベッドもあることは、r診察室』という雰囲気であっ ても、決してカウンセリングルームといった雰囲気ではない。. 合計26回のカウンセリングは、主にこの診察室が使用されたが、数回だけ は他の医師の都合で、本館の勤務医の個室が利用された。. V.医師とカウンセラーの:連携 本事例は、M医師の初期の診察時からカウンセラーが少しずつ関与し、治療 前期の終わり頃からは、カウンセラーが面接の中心になっていったケースであ る。. 治療構造の規定をどうするかに関しては、M医師とカウンセラーの間で話し 合いがもたれることはなかったが、つぎの事項は概ね暗黙の了解事項として進. 行した。すなわち、rM医師またはカウンセラーが個別に面接し、面接時間は. 9.

(13) 約60分、面接料金は心理テストを含めて60点(600円・ただし薬剤費は別)、 面接回数・面接期間は未定。』ということである。. 治療目標についても、とりたてて特別に話し合われることはなかったが、互. いにr症状が軽減して、クライエントの日常生活に支障をきたさない程度ま で。』を終結目標にしていることが、相互の会話によって暗黙のうちに了解さ れていた。ただし、この件に関しては、くい違いがあることが終結の時点にな って明確になった。. 連携に臨んでM医師がカウンセラーに期待したことは、つぎの3点である。 1.心理テストやカウンセリングによるクライエントの精神心理的情報の入 手。. 2.時間をかけたカウンセリング(医師は他にも患者を抱えているので)。. 3.M医師は女性であり、クライエントの父親役を引き受ける男性として。. また、カウンセラーが医師に期待したことは、つぎの3点である。 1.カウンセラーの指導。. 2.薬物療法による症状の管理。. 3.症状の精神医学的な診断(治療指針が立てやすくなる)。. 以上の相互依存的な期待により、互いの力不足を補充しつつ連携が行われ た。. なお、臨床場面においては、多くの場合、医師の診察とカウンセラーのカウ ンセリングの二本立てで進行した。各回終了後は、短時間ではあったがM医師 とカウンセラーによる状況分析とその後のかかわり方に関する話し合いの機会 が持たれた。. VI.診断・処置 当初のM医師の診察によると、病名をr神経症』と診断し、薬物療法が開始 された。当然のことながら、神経症以外(境界例)の症状の有無など、初心カ ウンセラーの関与に耐えるか否かの判断のために数回の注意深い診察(M医師 によるカウンセリング)があった。症状の管理のための薬物の効果の確認も必. 10.

(14) 要であった。. 下記の薬剤投与でわかることであるが、クライエントは#8まではM医師の 処方に応じて服用していた。それ以後は、自分の意志で服用量を減らし始めた ため、終結後も数週間分の薬を蓄えていることが後日判明した。. 当初の数回の診察の結果、M医師はr不安神経症』であるとの診断を下し た。そして、他に新たな患者を継続的に診察する必要が生じたこともあって、 薬物療法以外の部分をカウンセラーに委ねた。. 参考までに、以下にM医師が処方した薬剤を、まとめて記述しておく。. # 1(1992,7,1)クロチアゼパム・塩酸アミトリプチリン # 2(1992,7,8)クロチアゼパム・塩酸アミトリプチリン. # 3 処方なし # 4(1992,8,5)クロチアゼパム・塩酸アミトリプチリン # 5(1992,、8,26)クロチアゼパム・塩酸アミトリプチリン. # 6(1992,9,9)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン # 7(1992,9,30)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸じペリデン # 8(1992,10,21)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン. # 9、10、11、12、13 処方なし #14(1992,12,2)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン. #15、16、17、 処方なし #18 (1993,1,13)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン. #19 処方なし #20 (1993,1,27)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン. #21(1993,2,10)クロチアゼパム・スルピリド・塩酸ビペリデン. #22、23、24、25 処方なし #26 (1993,3,31)クロチアゼパム・スルピりド・塩酸ビペリデン. 1.クロチアゼパム(Clotiazepam) 《緩和な精神安定剤(マイナートランキライザー)》. 心身安定剤で、心身症(消化器疾患、循環器疾患)における身体症候な. 1 1.

(15) らびに不安・緊張・心気・抑うつ・睡眠障害、自律神経失調症に伴うめま い・肩こり・食欲不振を改善させる。. 薬効薬理として静穏作用、筋弛緩作用、鎮静・催眠作用がある。. 2.塩酸アミトリプチリン(Amitriptyline Hydrochloride) 《うつ病・うつ状態の治療薬》. 抗不安、鎮静作用を併有する三環系抗うつ剤。典型的な抑うつ症状だけ でなく、不安・焦燥・不眠等を伴うデプレヅションによく奏功する。. 3.スルピリド(Sulpiride) 《胃・十二指腸潰瘍と精神病の治療薬》. 消化性潰瘍治療剤、精神・情動安定剤。視床下部作用性の潰瘍治療剤と して、消化器粘膜の抵抗力の増強作用を示すと共に、精神・情動安定剤と して臨床的には、精神分裂病、うつ病やうつ状態に有用性が認められてい る。. 4.塩酸ビペリデン(Biperiden Hydrochloride) 《パーキンソン症候群の治療剤》. 抗パーキンソン剤。パーキンソニズムにおける筋強剛、振戦、無動、流 挺、発汗当の症状を改善するほか、向精神薬投与による各種錐体外路症状 を抑制する作用がある。. 1 2.

(16) 第3章 治療経過 本事例における治療は、医師による薬物療法を目的とした精神心理療法およ びカウンセラーの心理療法によって進行した。. 各回のカウンセリングの時間は、概ね60分を目標とし、対面法により録音 や筆記メモはまったく取らないようにして行われた。. 26回に及ぶ治療経過を、クライエントの心理的変容に注目して、治療前期 ・治療中期・治療後期の3つの時期に区分することが可能である。. なお、本章VI.に、治療経過の概略および要点を表にしたものを(表1)に 示す。. 治療中に行った箱庭療法・描画・心理テストについては、本章では判定結果 と若干の印象を述べるのみにとどめ、次章で詳しく考察する。 以後、文中のDrはM医師を、 C1はクラ・イエントを、 Coはカウンセラーを示 す。. ■. ?三三前其月 カウンセラーがクライエントに紹介されたのは#3(1992,7,29)である。し たがって、#0 (’92,6,29)、#1(’92,7,1)および#2 (’92,7,8)は、N看護. 婦とM医師より情報を収集したものである。なお、文中の[PT]は心理療法を示 す。. # O (’92,6,29). 看護婦による初回面接. A大学保健管理センターの窓口に、背の高い男子学生がやってきた。何か言 いたそうでφるが、うつむき加減でおどおどしている様子であったので、受付 の看護婦が「どうしたのですか?」と問うと、「ここでカウンセリングを受け. 13.

(17) られますか?」と弱々しく聞いた。受付の看護婦は、早速N主任看護婦にクラ イエントのことを伝え、N看護婦による初回面接がはじまった。. N看護婦の話によると、クライエントは下をむいて弱々しく、小声で小便が 出なくて困っていることと、授業に出席できないことを訴えた。また、家の近 くの精神内科でトランキライザーを処方してもらったが効果がなかったことを 述べるのみで、何を聞いても明確な答は得られなかった。. N看護婦は、データベースよりクライエントが入学時健康診断を受けて以 来、健康診断未受診の再三の呼び出しにも応じていないことを知り、その原因 がクライエントの排尿困難にあったのではないかと推測した。同時に心理治療 の必要があると判断し、クライエントには、さしあたっては無理に健康診断を 受診しなくてもよいことを伝えるとともに、医師の診察を受けることを勧め、 M医師の診察時間の予約をとった。. #. コL. (’92,7,1). M医師の初診日である。 [PT]M医師50分. M医師の質問に対しての返答に、恥ずかしそうに下を向いて時間をかけて答 えていた。答は、「はい」や「いいえ」と答えるにも時間を要し、何か言いた げであるが言えない様子が伺えた。. M医師がかろうじて聞き出せたことは、つぎの程度であった。. 「トイレでは震えて尿が出にくいので個人のところ(大便用)で排尿してい る。人の前で緊張して手が震える。他人に精神科を受診することや薬を飲むこ とが知れることは困る。背が高いことや、双子であることをからかわれた。両 親は教育熱心である」. M医師の診察によると、対人恐怖(anthropophobia)症状があるが真剣に悩ん でいる態度に乏しい。子供じみている感じがする(puerile)との印象を受け、. 一週間様子身見るために、精神安定剤(第2章VL参照)を処方した。. 14.

(18) #2 (’92,7,8). [PT]M医師50分(含箱庭). [箱庭No.1]. 症状およびM医師の受けた印象は#1とほぼ変わらず、質問に対して時間を かけて答えていた。. 「勉強に集中できず能率が低下している。こんなことをしてどうなるのか。. こんな僕が将来何の役に立つのか不安です」との訴えに、M医師は同一性拡散 (ldentity diffusion)を感じ取った。 【箱庭No.1】 (図1参照). 話そうとしないクライエントに、M医師は箱庭によって話を引き出そうとし た。箱庭を置くことに長時聞を要し、置いた箱庭は極めて貧弱で寂しい印象を. 与えるものであった。M医師は、症状を対人恐怖を伴う神経症ではないかと診 断した。. # 3 (’92, 7, 29). カウンセラーとクライエント初対面 [PT]M医師50分(含箱庭)・Co同席. [箱庭No.2]. M医師がこの一週間のことを問うと、アルバイトで単純作業をし、作業がき ちんとできないことが気になると述べた。. 両親のことについても、父は無口でクライエントとはほとんど交流がないと 述べ、母は「子どもを生まなければよかった」と言っているという。そしてク ライエントは、両親に迷惑をかけたと思うと述べた。. 症状としては、朝から昼にかけて上記のような悲観的な自己意識とともに嘔 気があり、夕方には元気になるといった日内変動が認められた。なお若干の食 欲低下は認められるが、睡眠障害は認められない。. 1 5.

(19) 【箱庭No.2】 (図1参照). 置かれた箱庭は、大木とインディアンの関係以外にはそれぞれの動物が、何 の関係もなくただ同じ方向を向いているめみで、殺伐とした孤独感を感じさせ るものであった。. M医師との対話では、つぎのやり取りが印象的であった。 Dr:このインディアンは何をしているの? Cl:木を伐って何か作ろうとしています。. カウンセラ’は箱庭を置いた直後の会話の最中に入室し、会話が終わった後 で心理の先生であるとの簡単な紹介のみを受けた。カウンセラーは診察中に現 れた未知の人物によって、クライエントが動揺するのではないかと考えた。. クライエントの帰りぎわに「背が高いね、何センチですか?」と聞くと、 「187センチです」と素っ気ない返事が返ってきた。このやりとりがカウンセ ラーとクライエントの最:初の会話であった。. # 4 (’92,8, 5). [PT]M医師30分(含箱庭)・Co同席. [箱庭No.3]. 心理テスト(YG, TEG, HTPP). M医師のカウンセリングに同席する形ではじまった。 カウンセラーの同席について、クライエントの承諾が取れていないことにつ いて、これでよいのかと考えていた。. 会話は#3よりも円滑に進み。答えるまでの時間は短くなり、以前より素直 に答えられるようであった。. 話題は、近況と家族のことが中心であった。. 「この一週間、昼下は他人のことが気になって家を出ないが、夜になると出 かける。薬をのむと朝の嘔気は少ない。父は、短気で爆発的な性格で、家でも. 職場でも怒鳴り散らす。(双子のことを)もう勝手にしろと思っているよう で、周囲の人も自分たちを同様に思っていると思う」と述べた。. 16.

(20) 【箱庭No.3】 (図1参照). 置かれた箱庭(No.3)は、前回より木が一本増えたことと、馬・牛という草. 食獣のみで構成されていた。砂を触っていないことや、すべての牛馬が右上を 向いていることなど、寂しげな印象を受けるものの、前回に比較すると若干の 穏やかさを感じた。 【心理テスト実施】. 箱庭に関する会話が終わった後で,カウンセラーが心理テスト(TEG,. YG, HTPP)を実施した。 カウンセラーが「今日は暑いですね」というと、「僕は汗つかきです」と素 直に答えた。. YGとTEGを「もしよかったらやってみましょうか?」と誘ったら、素直 に応じた。これで終わりと考えていたところへM医師が入室してきて、rHT PPもやっておこう」と言われ、こんなにテストを連続して実施してよいもの か。クライエントは疲れるのではないかと考えつつ、描画を勧めたところ、. 「絵を描くのは苦手なんです」と答えたが、短時間でHTPPを仕上げた。Y. GはE型、TEGはU型、 HTPPはどれも線が細く消極的な印象を受けた。 # 5 (’92,8, 26). [箱庭No.4]. [PT]M医師30分(含箱庭). 大学は一斉休業であったため、3週間の中断をはさんでのカウンセリングで ある。カウンセラーは以前からの予定で日程の都合がつかなかったのでM医師 による診察のみであった。. M医師の記録によると、面接ではぼそぼそとゆっくり次のことを話した。 「家でごろごろと無為な生活をしている。如何をしたいのか明確な興味・目標. がない。力仕事のアルバイトでは、男のくせに力と体力がない。母は、過保護 ・過干渉であった。自分でもこんな性格になるとは思わなかった」と語り、医. 師は、クライエントをr活気に欠け、受け身的な態度である。バイタリティー に欠ける。劣等感が強い』と感じた。. 17.

(21) 【箱庭No.4】 (図1参照). M医師は箱庭を置かせてみた。銃でワニを撃とうとしている兵士を、ワニの 両サイドの4名が武器を持って攻撃しようとしているシーンである。カウンセ ラーは1日後、写真撮影のためルームへ行き、この箱庭を見て、クライエント の行きづまった心理を感じ取ると共に、長いトンネルの出口を捜す手だての糸 口をどのようにして見つけ出したらよいのか苦慮した。. # 6 (’92,9, 9). [PT]M医師50分(含箱庭)・Co同席. [箱庭No.5]. 以前に比較すると、安定した表情で積極的に話し始めた。. M医師の診察(症状の確認・投薬の効果等)には簡単に答えておいて、「こ の症状は、体質や遺伝によるものですので仕方がないと思っています。半ばあ きらめています」と語り始めた。. なお立て続けに、「この間、一日だけアルバイトをした。運送の仕事だ。背 が高い男のくせに力がなくて仕事がのろいと叱られた。こんなことで、男とし て生きていけるかどうか心配だ。最後に賃金を受け取るとき、自分の名前をサ インするときに手が震えた。このことを父親に話すと、自分もそんな時があっ. たと話していました」「将来、自分は何の役に立つのか、何をすればよいの か、将来の方針・生活に不安がある」と述べた。. そのあと、小学校2年生の時、大阪から引っ越してきて事故死した同級生の 葬儀で見たデスマスクが気味悪かったこと・この4月頃、近所の精神内科の医 師に、その同級生は事故で死亡したんだと言ったにもかかわらず、クラィエン トがいじめたことによって自殺したと誤解され、断定されて嫌になったことな ど、家族の状況も含めて多くを語った。 【箱庭No.5】 (図1参照). 強力な兵士4名と4台の戦車に殺されそうになっているインディアンであ る。「自分をインディアンだとすると、自分は無防備です・腰の刀さえ使えな い」と述べたのが印象的であった。. 18.

(22) # 7 (’92,9,30). [PT]M医師50分(含箱庭). ・Co同席. [箱庭No.6](9分で中断). M医師とカウンセラーが同席してはじまった。簡単に症状を述べた後、前回 よりは落ち着いた様子で話し始めた。. M医師との会話内容は次のようなものであった。. 「今朝、地下鉄駅で胸がムカついた。一昨日弁当屋のアルバイトで気分が悪 くなった。普段から大切な局面で特に気分が悪、くなる」. 「9/13に、母方の祖母が死亡した。祖母は顔を覚えている程度。両親は九州. へ行った。留守番中、一人でビクビクしている自分に気づいた。しかたがない と思う。高校時代から浪人中にかけて、いつ死んでもよいと思っていた。しか し自殺衝動に駆られることはない」. 「父から年金代を自己負担するように言われてうろたえた。毎月9700円の年 金料をつくらねばならない。授業には出ているが、その他はアルバイトをする つもり」. 【箱庭No.6】 (図1参照). カウンセリングのあと、M医師は箱庭を置かせた。クライエントは、家2つ. と木1本を置くのに4分を要した。開始後9分を経た時点で、突然「箱庭は限 界です」と言って中断した。見ていて苦しそうには見えなかったが、相当苦し. かったようである。M医師は、箱庭についての会話は避け、「また置ける時が きたら置こうね」で終わった。 【M医師との話し合い】. 性・職業・死のテーマが明らかになった。クライエントに依存性がでてきて いるので、支持していこう。. 19.

(23) II.治療中期 # 8 (t92,10,21). [PT]M医師7分・Co.50分. 2回の無断欠席後の空白による3週間ぶりの来談であった。保健管理センタ ーの健康診断のため、ルームを学生相談室に変更した。そのルームは、半年前. に退部したクラブの部室の近くにあるため、足が向かなかったことを告白し た。このことをカウンセラーは、うすうす予測していたが、クライエントはど ういう行動に出るか興味があった。. 最初に、M医師が簡単に診察し、その後カウンセラーにバトンタッチという 形式になった。. 入室時の印象は、一目見て調子の良さを感じた。よく話すし、カウンセラー とのラポートも良好であった。聞きたかった事実関係も多く聞き出せた。クラ. イエントは心理テストの結果を気にしていたので、注意深くフィードバックし. た。また、「箱庭・MMPI・対話」のどれかを選択させたら、「対話」を 採った。. 【M医師7分】. 排尿の症状について、「大分楽になった。でもトイレはたいへんだ。授業の. 合間の10分間のトイレは一大決心が必要だ。時間もかかる。家では少しマシ だが、日によって出にくい日がある」とのことであった。. M医師は、泌尿器科での受診をすすめてみたが、気のない返事をしていた。 服薬は一日三回で変化はなく、よく眠れる。トイレに入ったときだけは、何か 噂されているような感じや、何か攻撃されているような恐怖感があるとこのと であった。. M医師が、他に聞きたいことはないかと問うと、「小便が出やすい薬はないの か」と聞いたので、M医師は「ここは泌尿器科ではないので出せません。どこ かの泌尿器科でみてもらうことをお勧めします」とはっきりと答えた。クライ エントは以前から尿の出る薬が欲しかったようである。. 20.

(24) 【カウンセラー50分】. 来談に至った契機について語ったので、逐語で示しておく。 Co:最近で一番苦しかったのは? Cl:春の合宿、合宿中の周囲の目です。. Cl:そのときの状況を前の部長に話したら心配してくれました。そして、3月 末に近くのr精神内科』で受診しました。 Co:部長になる時は、本人の意思とは別にみんなに選ばれたのですか?. Cl:やる気があったんです。部長になることで、引っ込み思案を変えたいと思 いました。しかし、クラブの会議で黙ってしまうことが多くて困りました。. やめることがはっきりすると、4∼5月に電話がたくさんかかってきまし た。現役からOBまで毎日のようにかかってきました。中にはrやめないで クラブで治せ』というのもありました。. r病気までしてなぜ続けんといかんのですか』といいました。 父親からも、「断れないようでは駄目だ」と言われました。その後医者にか かって薬をもらいました。. C1:前からですが、昼食の時、コップの水がふるえる感じがします。軽く手が 震えている感じです。こぼれるほどではないのですが。 味噌汁も同じです。家では少ないんですが、学生食堂でも同じと思います。 Co:学生食堂でも同じと思うとは?. Cl:昼は抜いているんです、行列が嫌なんで… 。 Co:並んだ時、どんな感じがするんですか? Cl:後ろからせかされる感じがします。うしろの人物が気になります。. # 9 (’92, 10, 28). [PT] Co.70分(含自己画法). (自己画法No.1). MMPIを渡す。 【カウンセラー70分】. 症状を聞いた後、クライエントの話題に任せて聞き、自己画法のあとりラク. 2 1.

(25) ゼーション法を教えておいた。. 前週に比較すると、表情は調子が少しダウンしている印象を受けたが、エネ ルギーを蓄えつつあるような印象も受けた。. 排尿困難症状については、次のとおりであった。 「緊張した時は特に、r小便出したいが出ない』という感じで苦痛だ。今こ こ(ルーム)にいても外から見られている感じがする。トイレでも誰かに見ら. れている感じがするので、トイレという場所自体が嫌。以前から、自分も弟も 何かに夢中になっているときには全く気にならない時があった。. 嘔気その他については、「特に夕食後吐きそうになる。高校時代から、苦し くなって吐きそうになるし、そんな時は(他人の質問に)答えられなくなる。. 夜中に寝ていて家具などを蹴飛ばしているようだ。一昨日、母に誘われて夜7 時頃、大阪城へ散歩に行った。そのことを母親に言ったら、「薬のせいよ」と. 言っていた。高2のときTVで怖いホラー映画を見た。その時倒れた。倒れた 篠、不眠になった。それ以来だ」. 【自己画法】(6分30秒)(図2参照) Co:もしよかったら、自分のことを絵に描いてみませんか? クレヨンを使っ て、抽象画で好き勝手に書いてみて欲しいんですが。 Cl:やってみます。. Co:あなたのr現在・過去・未来』というテーマでいかがですか?(はい) では、目を閉じて、肩の力を抜いて、気持ちを落ち着けましょう。. 気持ちが落ち着いたところで、今一番好きな色のクレヨンを手にとって、画. 用紙はどちら向きでも結構ですので、気持ちの赴くままに描いてみましょ う。. 【描画後の会話】. 描き終ってどんな気分ですか?とのカウンセラーの問いに、「やけ気味で す。(ほ一)すっとします。(すっとする)全体に暗いと思います」と語った 後、描画の各部分について質問すると、はっきりと答えた。. 答のすべてがr死』とr自己否定』が中心であった。中でも、描画のなかの 上黒いのベルトの部分はr死』であり、バツ印は「おまえは駄目だ」と言われ ていることだと語ったことは印象的であった。. 2 2.

(26) 描画の会話のあと、緊張を腹式呼吸と脱力によって、尿が出るイメージを練 習して終わった。. カウンセラーはクライエントが描いた絵を見て苦しく感じ、言葉が出なかっ た。少しだけ逃げ出したくなっている自分に気づいていた。 【M医師との話し合い】. 終わってから、M医師に状況を報告。自己画法には納得されたようであった が、呼吸やリラクゼーションについては賛成しかねるとのことであった。すな わち、「症状は何か不安の防衛であろう。したがって、症状をだけを取り除け ば不安が残る。症状を取るよりも不安を捜すべきである」とのことであった。. # 1 O (’92, 11, 11). MMPI受け取り. [PT]M医師10分・Co.60分. 【M医師10分】. 医師による診察は、薬の件と症状を含めた近況を聞く程度であった。クライ エントは、どの授業にもゼミにも出られるようになったことと、歯科医の受付 で、ペン立てにペンを差し込む時手が震えたが、他人への恐怖感はなかったこ とを報告した。. また、弟の件に対する質問に対しては、まじめに大学へ通学していること と、母親が兄の結婚のことばかり話題にしているとのことを語った。 【カウンセラー・一 6 O分】. まず、排尿のことを聞くと、「最近は、自宅で誰もいない時にはよく出るよ うになった。日頃、無意識に水分を摂らないようにしているので、大学では一 日一回位「大便用」の方へ入って用を足している。小便器で立ってするのは、. とても無理。トイレに近づくζ緊張してドキドキするが、今は何とか緊張が少 なくなってきた。しかし、社会人になるとそうはいかいので困ると思う。大手. の企業からはDMが送られてきているし、もう差し迫っている。早く治した い。私は普通に小便ができるようになりたい」. この、「早く治したい。私は普通に小便ができるようになりたい」は、クラ. 2 3.

(27) イエントの依存心が、悲痛な叫びになったものとカウンセラーには受け取られ た。その叫びを、十分に受容ができないカウンセラーにとっては、「きっとそ のうち出るようになると思いますよ」としか言えなかった。クライエントは、. カウンセラーの言をどのように受け止めたのかわからないが、急に話題を女性 (ガールフレンド)に向け始めた。. 「2回生の時、クラブの関係でF大学(公立大学)女の子と話す機会があっ て楽しかった。彼女には決まった相手(男性)がいた。今の女の子はr財力・ 明るさ』などを要求するようだ。自分は正反対で、お金はないし、暗い性格だ し、幼稚だし、背が高過ぎるし、気が小さいし。それに、女のことしか考えら. れなくなるのも困る」と述べた。カウンセラーは、「今のあなたがそう思って いることは理解したが、私は、女性にのめり込むことも人生では大切なことだ し、素晴らしいことだと思う。あなたも考えてみたらどうか?」というと、 「今は親に授業料を出してもらっているので、勉強一本でいって授業料の分勉 強したいと思っている」との答であった。 【M医師との話し合い】. Dr:対人不安感・人間不信感は減ってきている。卒業後の仕事についても具体 的なアドバイスをしたらよいと思います。. Co:私もそのように思います。逆転移承知で、外で一緒に食事をするといった アプローチはいかがでしょうか。. Dr:それは彼が疲れない程度の短時間であればいいことだと思います。 Co:では、次の時に誘ってみようと思います。. # 1 1 (’92,11,18). [PT]Co.60分. MMPI再テスト渡す。 MAS実施=尺度31. 【カウンセラー一60分】. 右ほほが腫れているので、どうしたのかと聞くと、一昨日、親知らずの抜歯 の際、歯の生え方が異常で40分を要し、麻酔中も痛かったと述べて、そのあと 勝手に話し出した。. 24.

(28) Cl:この前習った深呼吸は、排尿時に効果がありました。特に自宅のトイレで は安心してできるようになりました。大学では・トイレへ行くのを我慢して います。一日一回くらいですが、人のいないトイレを選んでいます。でも、. 先生(カウンセラー)とのr連れション』はまだできそうにありません。手 の震えについては、生協食堂で並ぶのはイヤです、緊張します。イライラし .ます。小便の症状は、軽減せず相変わらずです。人の多いところは嫌いで す。. 以上のことを一気に話した。若干の隙を見つけて、カウンセラーは Co:あなたは今、 r嫌い』なことをr嫌い』と言ってるけど、普段は言えてな. いようですね。可能な限り、r嫌なことを嫌という』のは良いことだと思う けど …. 。. Cl:「何でも嫌というと、怠けるようで自分にとってよくないと思います。反 抗しているみたいだし。僕はずっといい子できたんです。反抗期なんてなか つたし、チャラチャラした奴は嫌いです。. Co:あなたはまじめなんですね。酒も飲まないようだし、タバコも吸わないよ うだし。. C1:酒はビールをほんの少しなら飲みます。タバコは人のいない所なら吸いま す。. Co:ああ、それは知らなかった。ここは何をしても構わない所だから、よかっ たらどうぞ。タバコを吸って下さい。一緒に吸いましょう。 C1:いや、ここでは吸えません。. Co:無理には進めないけど・・。ところで、タバコはいつごろから吸っている のですか。. Cl:浪人中からです。初めて吸った時は罪悪感で手が震えました。 Co:どんな罪悪感? Cl:親から強く禁止されてましたから。今でも家でも人前でも吸いません。. Co:よかったらここでどうぞ(ピースを出す)。一緒にどうですか? Cl:そんな強いタバコはとても吸えません。 (何を吸っているの)キャスター マイルド。、(再度勧めると)まだここでは無理です。. Th:タバコを吸った時の気分はどうですか?気分がすっきりするとか。. 25.

(29) Cl:そんなに楽しいものではありません。今の楽しみは、ここで週一回話せる ことです。気になることは、僕は普通に小便ができるようになりたいことで す。. トイレの小便器の高さが低過ぎるのも嫌いです。『(縦長のもあるではない. か?)僕は背が高過ぎるのです。靴も28cmでは、注文しなければ手に入ら ないし、ウドの大木という言葉が僕に当てはまります。これはつらいです。. 父親からは「姿勢が悪い、猫背だ、背筋を伸ばせ」言われます。自分も猫 背の癖に。背が高いので、教室では端の方に座ります。真ん中だと文句を言 われそうな気がします。 【M医師との話し合い】. 「小便器で小便がしたいのは、r男になりたい』という性のアイデンティ ティーの問題ではないか。性をどう処理しているのか聞いてみてもよい」との アドバイスをいただいた。. # 1 2 (’92,11,18). [PT]Co.90分 学外(車内と喫茶店). 学内で待ち合わせ。急用のため、車にクライエントを乗せたまま郊外の某学. 校へ立ち寄り、近くの喫茶店で話してからターミナル駅へ送るまで90分を要 した。車内では対面していないためか、構えが取れているようで、非常に気楽 に話した。運転免許の話。パソコン関係の勉強をすすめてみたが、あまり乗り 気ではなかった。. 話の内容は、つぎのように家族の話が中心であった。 「父親は製薬会社の営業マン。酒で月刊蔵を痛めた。最近わかったことだが、’. 父も睡眠剤をもらっているようだ。夜10時になったらいびきをかいて寝てい る。親父が帰宅してきたらチャイムを鳴らす。その音でドキッとする。それを 友達に言ったらマザコンだと言われた。父親は嫌い」 「母親は少しましだが嫌いな方だ。神経質な所が似ているのかなと思う。 弟は小便器で何とかできている。僕が大学のカウンセリングを勧めた結果、. 26.

(30) 何とか大学を続ける意欲が出てきている。一度はr卒業に自信がない』といっ て退学を考えていたが」. 喫茶店では、カウンセラーが周囲に客のいない所を選んだ。クライエント は、オレンジジュ}スを注文。水もジュースも全部平らげ、手は震えない。全 部飲んだことと震えないことを指摘して、タバコを勧めた。タバコは鞄の中に 忘れたのでカウンセラーのピ・一…スをすすめたが、吸わなかった。. 車内で次のことを聞いてみた。. Co:性の処理はどうしてるの?. Cl:最近勃起しないんです。中高生の時は雑誌を買うてオナニーしてました が、最近はしません。まだ童貞です。ところで、先生に聞きたいんですが、 大学生の処女率は何%位なんですか? Co:知らないけど、君は処女の方がいいの?. Cl:今まで母親からr女は魔物』としづこく毎日うるさく言われ続けてきまし た。交際は駄目と言われ続けてきました。本当に女って怖いのかなあ。. Co:そんなに怖くないと思うけど… 。 (母親との心理的関係性を気にしながら、次回を約束して別れた。). # 1一 3 (’92,11,25). [PTI M医師15分・Co.45分. MMPI再テスト受け取り. MASフィードバヅク 抜歯による腫れは治まっている。 【M医師15分】. 医師が薬のことを聞くと、抜歯の時に薬が多かったので、まだ残っているこ とを告げ、父親の話になった。父親からは、「定年を前にして兄の結婚のため 出費がかさみ、家計が苦しい。不:景気でボーナスカットになる恐れもあるの で、アルバイトをじて家計を助けてくれ」と言われていると述べ、「父親から 言われたらやりますよ。単位を取ってバイトもします」と力強く宣言したもの の、やけくそ気味の発言に聞こえた。. 2 7.

(31) 続けて、「母親は兄の結婚がrくやしい。育ててきたものを取られる。』と いっている。兄の就職による別居のとき、泣いていた。母は子育てに打ち込ん できた」 (兄はD大学から某電鉄会社勤務。). 「兄の婚礼で親戚の人に会うのが嫌。嫌な人も親戚にいる」 【カウンセラー45分】. 「よかったらタバコを吸いながら話しませんか?」と誘ってみたら応じた。. 喫煙の気分を聞くと、「悪くないが{ここでは必ず緊張している。心理テスト のときも少し緊張する」との答であった。カウンセラーはルーム.では、安心し. てリラックスしてほしいと伝え、排尿のことを聞いたところ、昨日、不慣れな 図書館の静かすぎるトイレへ開き直って行ってみたところ、深呼吸するとどう にか出たので、うれしかったと述べた。. その後、「質問があるのですが、質問してもいいですか?(どうぞ). この前、r嫌』ということは、いいことだと先生がいってられましたが、我が 儘なようで、そんなによくないのではないかと思いますが」と述べたので、カ ウンセラーは「それがわかった上での『イヤ』なら、よいのでは? 損か得か. を考えて言えばよい。それより、あなたは我が儘に対する批判が怖いのです か?」と言うと、「はい」と答えながら、納得しているようであった。そし て、「今は大分楽になってきました。今の楽しみはカウンセリングです」と述 べた。. カウンセラーは以前から父親との関係を明確にしたいと考えていた。ちょう ど時間的にゆとりがあったので「今日はちょっと変わったことをやってみよう. か。嫌なら途中で止めていいんですよ」と言ってゲシュタルト療法を勧めてみ た。. 「目の前の椅子にお父さんが座っていると思って話しかけてみませんか」と 空椅子を前に置いた。「お父さん、怒りっぽいのを治して下さい」で始まり、 父親のことを「:才マエ!」と呼び、「世間一般の親父らしくなれ!」と父親に 見立てた枕を二回殴って終わった。. 終わった直後、クライエントはタバコを自発的に吸い出したので、これを指 摘し、喫えfgことを共に喜んだ。. 深呼吸が効果的であったとのことであるので、再度、腹式呼吸法・軽催眠・. 2 8.

(32) 掌の温感・リラックスを教えた。気分を聞くと、「いい気持ちです」と答え た。. 【M医師との話し合い】. M医師に前回の学外での件および今回の様子を報告した。. M医師は「お母さんは、自分が女なのにr女は魔物』なんて、おかしいね。 女から逃げているのかな?. 父親代わりの人がいないので、先生(カウンセラー)がその役目を引き受け てやった方がいいのかな」と述べたので、カウンセラーは、「当分、支持者に なってみようかと考えている」と述べた。なお、今の時点でカウンセリングで. 最も大切なことは何かと問うと、M医師からカウンセリングでは明確化を大切 にすることです」との答であった。. # 1 4 (’92, 12, 2). *Co風邪. [PT]Co.60分. 【カウンセラー60分】. カウンセラーが気分はどうかと訊ねると、今日、駅から大学までの間で、吐 きそうになったが、徐々に減りつつあることを述べた。. そして、小便器で排尿できたことを報告した。 Cl:それより先生、小便器で小便ができました。. Co:それはすごい、いっ?. Cl:27日の金曜日です。(どこで?)経商学舎の無人のトイレです。これ一 回切りだと思います。最中に他人の足音がしてドキッとしたけど、なんとか できました。慣らしていけば何とかなると、頭ではわかるんですが… Co:感激ですか?(はい。)何年ぶりでしたか? C1“:もう忘れてしまいました。. Co:慌てなくても、そのうちきっとできるようになると思いますよ。久しぶり にできたζとを聞いて、私はうれしいです。. 今後の否定的な予想はあるものの、このときは両者で喜びをかみしめること. 29.

(33) ができた。そして、カウンセラーは、前回のゲシュタルト療法に対する感想が 聞きたかったので、父親との関係について聞いてみると、クライエントは、父. 親との関係は以前から薄っぺらであるが、金銭的には今まで面倒をかけてき た。思春期にあたる時、もう少しかかわってほしかったが、仕事一一一本で来た人. なので仕方がないと思うと述べた。この発言は、父親に対する肯定的な側面と して、はじめてカウンセラーが聞いた言葉であった。. もっと聞こうとしていると、「英語の講義に出たところ、当たりそうになっ て『ヤバい』と思った瞬間、心臓が止まりそうで失神しそうになりました。当 たったので、「やってません」と言って逃げました。何とかごまかせました。. 昨年の先生は若い美人の先生で、厳しい指摘を受けたので、腹が立って講義に 出なかったので落としました」と述べ、「過剰緊張の自分とつき合っていくの はつらいです。授業で当たって気を失っていたのでは、しかたがないと思うん です」と語った。. 次回は、昼食を共にする約束で別れた。普段は昼食はとらないと言いなが ら、楽しみにしている様子であった。. #■5(’92,12,9午前) [PT]Co.60分. 【カウンセラー60分】. 主に、弟との関係が気になっていたので聞くことにした。クライエントをめ ぐる家族のことが語られたが、つぎのことは印象的であった。 「兄が進学した高校(公立進学校と言われている)を弟と共に受験したが、. 弟だけ合格してクライエントは不合格であった。クライエントは泣いた。発表 のとき、周囲の合格者の笑い声は自分を笑っているように感じた。何より辛か ったことは、私立高校の費用がたいへんだと親に言われたことだった。両親が 引いた一流夫学・一流企業というコースに、今になってから反発している」. 以上、家族のことを話したあと、クライエントの友人で排尿困難を知ってい. 30.

(34) る友人のバイクに乗せてもらって公園へ行った。そのことを母親に話すと、母 親は「兄の結婚式が済むまで乗るな。保険:にも入っていないので事故が怖い」 と言った。’「母親に、バイクの爽快さを伝えたかったが、伝えられなかった」. と言いながら、「事故が怖いのでバイクに乗ったり免許を取ったりする気はな い」と述べた。親子とも、思考と行動に論理性を欠いている。. また、「再び英語の講義で当たったので、今度は訳を答えた。自分の隣の学. 生が当たったとき、失神しそうになったが、この前より気分的には楽であっ た」と述べた。. 卒業論文のことを聞くと、テーマと内容を話したあと、「自分は語彙が貧弱. なので困る」と言った。カウンセラーは、あなたの語彙は豊富だと思うと伝 え、自分をほめることをしないのかと聞くと、ほめる気がしないと答えた。. 最後に、次回に二人箱庭を置くこと勧めると、今は箱庭への抵抗はないと答 えた。. 【M医師との話し合い】. M医師は、つぎのことを気にしていた。r弟の行動を見て、自分を見つめる ことはできているのか? 弟の尿のことはどう考えているのか? 自分の尿の 出ない理由を、弟と対比させてはいないのだろうか? Twinの分離はどうなっ ているのだろう? 互いに頼っているのだろうか? 高校は別のほうが結果的 に良かったのか?』. また、クライエントの状況は、自己洞察が出てきているようだ。症状の改善 は大きく進展していないが、精神的な安定度は目覚ましく進展している。むし ち、進展速度が早すぎるような気もする。もっとじっくり変化したほうが良い のではないか。. このあと、昼食を共にすることを告げると、M医師はクライエントが疲れな いように短時間で帰ってくるよう指示した。. # ■ 6C92,12,9午後) [PT] Co.70分(学外のレストラン). 3 1.

(35) 【カウンセラー70分】. 車で近くのレストランへ行った。クライエントは学生食堂を嫌っていたこと と、ナイフ・,フォークを洋食店でどう扱うかを観察するため、カウンセラーが. 学外を選択した。レストランは昼食時で、作業服を着た客で混雑していた。. 料理が運ばれてきたときのクライエントの態度は、緊張して周囲を気にして いるようであったので、何が気になっているのか問うと、ナイフとフォークを 見ると、震えるのではなくて、手が震えそうな気分になると答えた。このこと を二人で確認して、箸をもらって持ち替えさせてみたところ、少しは楽になる とのことであった。. 食事の量は、ランチとしてはむしろ少ないほうであったが、食べるスピード は極めて遅かった。そして、量の多さと遅いことを非常に気にしていたので、. カウンセラーは遅いことを認めた上で、「遅くても早くてもどちらにも善し悪 しがある」と伝えると、少し安心していた。. # 1 7 (’92,12,16). [PTI Co.70分二人箱庭. Cl風邪. この一週間の気分を聞くと、’休講が多かったので早く家へ帰り、比較的変化. のない生活をしており、排尿も以前と同じであった。ただし、家にいても母親 からは邪魔になると言われ、父親からはアルバイトをするように言われ、安住. できるはずの家でも、気分的には落ち着いた生活はできていないようであっ た。. 好きなことを言ってもいいですかと訊ねた後、コピー機・コンピューター・. 図書の検索・電卓・車などの機械類が苦手であることを一気に語った。カウン セラーが「私は、あなたの嫌いなものばかり勧めていたんですね」と言うと、. 「銀行の自動支払い機や切符の販売機や自動販売機もr早くしろ』と言われて. いる感じで嫌、細かいお金を扱うのもr釣りを早く出せ。』と言われている感 じで嫌なので、金融機関への就職も避けようと思っている。小学校の時にお金 (約1,000円)を落して父母にひどく叱られて以来こうなったような気がす. 32.

(36) る」と語った。. なお、「自分はもともと怠け者だが、そのくせクラブでは周囲に気を配って 八方美人をやっていた。近頃は嫌いな奴は放っておくことにしている。両親が 暗いので、自分の性格も両親に似て暗い。類は類を呼ぶのか、ボクの友達も暗 い」と述べたので、暗いことは悪いことかと問うと、「悪いことではないと思 う」と、自己に肯定的な答えが返ってきた。. 今回のクライエントは、自分のマイナス面ばかりを語っていた。 最後に、つぎのような会話が交わされた。 Cl:ゆっくりできないところなんかが両親に似ているみたいです。 Co:完壁主義的なのかな?. Cl:そうでしょう。家で母がボクに話しかけた時、しばらく答を考えているだ けで、父が「返事しろ!」といいます。 Co:そんなときどんな気持ち? Cl:殺してやろうかと思います。. Co:腹が立ちますか?(はい)本当に殺そうと思いますか?(できません) C1:早くすませて人間をやめたいです。 (というと?)人間の苦痛を避けたい んです。. Co:どんなになればよい? C1:早く老けて早く死にたい。. Co:楽しいことを捜して、楽しんでから死ぬのは? Cl:快楽を求め過ぎたら、天罰が下ると思います。. Co:快楽と苦痛は背中合わせだろうけど、みんな快楽を求めながら際どいバラ ンスをとって生きているのかな?そんな生き方は嫌ですか? Cl:覚醒剤に手を出すと、快楽と天罰が来ます。天罰は嫌なので、女とつき合 うのも表面上のつき合いだけしかしたくあbません。 Co:女性のことも聞きたいんですが、時間が来ていますので、ぜひこの次に聞 かせください。 (はい。)何か今話しておきたいことはありませんか。. さて、よかったらこの前言っていた箱庭をやってみませんか? 今日は二人の共同作業にしたいんですが、いいですか? 恐がらずに、好き勝手に思いの儘に置いてみましょう。. 33.

(37) 【箱庭No.7】(15分、そのあとの話し合い6分) カウンセラーは、クライエントが置く箱庭に圧倒され、自分の好きなところ に好きなものを置くことができなかった。 【M医師との話し合い】. 自分が見えてきている。同時に不安も高まっているのではないだろうか。箱. 庭がAggreSsion(攻撃性)ならいいが、防衛的であれば、それは不安であろ う。クライエントのペースはゆっくりで、現世不適応であるので、slow down. することによって、不安の軽減を考えてはどうだろうか。という医師の意見に 対し、カウンセラーは、引きこもりよりも、出て行くことで何とか切り開きた いとするところに不安が出るのだろうか。早過ぎる気づきも含めてslow down の方法はどうずればよいのだろうか?と考えていた。. # ■ 8(’93,1,13)冬休みのため4週間の中断 [PT]M医師5分・Co.70分. 【M医師15分】. 主に薬の効果についての会話であった。クライエントは、よく寝るために薬 が欲しいことと、症状として時々喉が詰まるようで苦しい時があることを伝え た。. 【カウンセラー50分】・. 薬なしでは寝られないのかと問うと、あった方が 良く寝られると答えた後、クラィエントは間取りの. 台所. 居間. 図(右図)を描いて、「自分の寝ている部屋は両親 と襖だけで仕切られた部屋で、両親が眠ったことが 気になる。音を立てて両親を起こしてしまわないか とか、トイレへ行く時踏んづけたりしないかとか気. になる。小学校4年生の時からずっと見張られてい. 父母寝室. Cl:. (襖) (机). る感じがして嫌だ」と語った。 吐きそうな感じってどんな感じなのか問うと、. 34. 「うまく言えないが、喉から.

(38) 胃にかけて何かが詰まっているような感じ」と答え、「昔はよく吐いていた。. 今ではほとんど吐かなくなった。吐きそうになる感じも、排尿のことも、自分 を追い込んで無茶苦茶することで、解決しようと考えてやってみたがだめだっ た」と語うた。. 排尿の件では、「この11日に広大なところへ行きたくなって大学から徒歩 で30分ほどのところにある公園へ行ってみた。左右に仕切りのない開放的な 公衆便所(男性用)へ入ったら小便ができた。自分は、他人の目も気になる が、人との所要時間の差にもコダワッテいるように思う」と語った。 女性については、「月曜日に大学へ来た時、嫌いな図書の検索をしてみた。. キーの操作は初めてだから遅くて当然だと思ってゆっくりやってみた。周囲を 気にすることはないと思えるようになってきた。わからなくなったので、隣の 女の子に操作法を聞いた。周囲に女の子しかいなかったのでそうしたが、男の 子がいたら、女の子には聞かなかったと思う。若いチャラチャラした女は嫌い だ。絶対にしないけど、そんな女にはタバコの火を押しつけたくなる。恋人の いる女の子を見ると悔しい。淫らな女はよくないと教えられたからかもしれな いし、童貞コンプレックスなのかも知れない」と語った。. そして、かってカウンセラーが、女性と深くっき合えば、互いに深く知り合 うことができる。セックスによって互いがもっと分かりあえるようになるとも. 言つとことを取り上げ、「揉め事が起こったら怖い。今は、性欲はない。女は 不必要だ。まだ一人前でないので、女や墨入は要らない」と述べた。. また、昨日母親がお好み焼ソースがなくなっていると言ったので、コンビニ エンスストアーへ買いに行った。そこでつり銭を間違えられた。今までだった らおとなしく、「ちょっと計算間違ってませんか?」というように言ったはず だが、昨日は、「ちょっと待て!」と言って傲慢な態度をとって、自分のとっ. た態度に驚いた。レジの男の子は金髪みたいに染めた奴だった。自分でも変化 したのかな?と思ったと語った。. すでに予定時刻を過ぎていたので、モーズレイ(MPI)を実施し、入学試 験などで、今後のカウンセリングの予定が流動的になることを話すと、クライ エントは、「それより先生はいつまで面倒を見てくれるんですか?」と聞いて. きた。「早く縁が切れる方がいいんですが、卒業まではご一緒できるでしょ. 35.

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