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2.表層透気試験の概要

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Academic year: 2022

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(1)

コンクリート構造物の透気性に着目した品質検査手法の検討

西日本高速道路エンジニアリング関西㈱ 大阪事務所/技術計画課駐在 正会員 ○山口 大樹 西日本高速道路㈱ 湯浅 利幸

1.研究の背景と目的

コンクリート構造物の耐久性能は,かぶりコンクリ ートの厚さと品質に大きく支配される.NEXCO 西日本で は,かぶり厚さを鉄筋探査機(電磁波レーダ法,電磁誘 導法)で検査し,かぶりコンクリートの品質は,主に圧 縮強度試験(反発硬度)で検査している.しかし,劣化 因子に対する耐久性の評価が行われてこなかった.

既往の研究によると,必ずしも「強度=耐久性」で はないことが指摘されており,配合や施工方法等が異 なれば,コンクリート構造物の耐久性は必ずしも一致 しない.このため,コンクリート構造物の耐久性を定 量的に確認することは重要である.

本研究では,コンクリート構造物表層部の物質移動 抵抗性を評価する非破壊試験機として表層透気試験機 に着目し,供試体試験と実構造物試験の相対比較を実 施し,表層透気試験の有効性や測定結果について報告 するものである.

2.表層透気試験の概要

本研究では,コンクリート表層部の物質移動抵抗性 を測定する試験機として,表層透気試験機(写真-1)に ついて検討した.表層透気試験機は外部チャンバーを 有したダブルチャンバー法と呼ばれるもので,施工現 場で容易に測定できることから,コンクリート表層部 の品質を評価するには適している方法である.測定結 果は,透気係数(kT)10-16m2で表示され,透気係数が小さ ければ表層部がより密実であることになる.

写真-1 透気試験機

3.表層透気試験導入への検討

表層透気試験の品質管理への適用の検討フローを (図-1)に示す.測定値に影響するセメント種別・養生 条件をパラメータとして供試体試験を行った.また,

実 構 造 物 試 験 は , 供 試 体 を 作 成 し た 同 一 配 合 (A1-3(BB))で施工された橋脚で実施し,供試体と実構 造物の透気係数を比較した.

図-1 検討フロー 3.1 供試体作成による透気係数の測定

①コンクリート配合

供試体の配合および使用材料を,(表-1)に示す.

②供試体および養生条件

透気試験を実施する供試体は,JIS A 1132 に準拠し た曲げ強度試験用型枠(150×150×530mm)を用いて作 成し,所定の養生期間中は湿潤養生を行った.

A1-3(N) :養生 1 日,5 日,28 日 A1-3(BB):養生 1 日,7 日,28 日 A1-3(L) :養生 1 日,14 日,56 日

表-1 コンクリート配合

※A1-3(BB)配合は,3.2 に示す実構造物に使用された配合 配合

種別 W/C s/a 単位量 (kg/m3)

S1 S2 G Ad

A1-3

(N) 48.0 41.1 168 350 224 518 1067 2.80 A1-3

(BB) 48.0 41.1 168 350 223 514 1058 2.54 A1-3

(L) 48.0 41.1 168 350 226 519 1072 2.63 基準コンクリート(供試体)と実構造物の相対比較によ り,実構造物の品質レベルを判定する

技術マニュアルの作成 透気試験運用

(品質管理巡回指導,しゅん功検査)

予定 今回報告 供試体試験

セメント種別・養生条件 の異なる供試体作成 経時変化による透気係 数の変化を測定(12 カ月)

・中性化抵抗性

・塩分浸透抵抗性

実構造物試験

実構造物の透気係数を 測定

キーワード 透気係数,Torrent 法,コンクリート構造物,密実性,物質移動抵抗性,耐久性

連絡先 〒565-0805 大阪府吹田市清水 15-1 西日本高速道路㈱ 関西支社 建設事業部 技術計画課 Tel 06-6876-3370

N:普通ポルトランドセメント 3.16g/cm

3

BB:高炉セメント B

3.02g/cm

3

L:低熱ポルトランドセメント 3.22g/cm

3

S1:石灰砕砂(大分県津久見産)2.69 g/cm

3

S2:砕砂(大阪府高槻産)2.66 g/cm

3

G:砕石(大阪府箕面産)2.68 g/cm

3

Ad:AE

減水剤(高機能タイプ)

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

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0.0  5.0  10.0  15.0  20.0  25.0  30.0  35.0 

0.001 0.01 0.1 1 10 100

測定高さ(m)

透 気 係 数 (×10‐16m2)

実構造物A 実構造物A(幾何平均) 供試体(A1‐3(BB)1日) 供試体(A1‐3(BB)7日) 供試体(A1‐3(BB)28日)

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

透気係kT(×10‐16m2) 0.001

0.01

0.1

1

10

100

0 50 100 150 200 250 300 350 400

透気係数kT(10‐16m2)

材齢(日)

A1‐3(N)1 A1‐3(N)5 A1‐3(N)28

A1‐3(BB)1 A1‐3(BB)7 A1‐3(BB)28 A1‐3(L)1 A1‐3(L)14 A1‐3(L)56

3.2 実構造物における透気係数の測定

実構造物(橋脚)は,7リフトで施工されており,1 リフトあたり約 5mである.2 リフトから 4 リフトまで は高さ方向に 3 断面,1 断面につき 10 点の測定を実施 した.また,5 リフトから 7 リフトまでは高さ方向に 1 断面(10 点)の測定を実施した.

当該橋脚の養生に関して,コンクリート打設後(5

~10 日程度)の型枠内での養生に加え,型枠脱型後に

「気泡入り緩衝材」を橋脚に巻き付け養生期間を長 く取っている.

4.測定結果および考察

(図-2)に,3.1で作成した供試体の透気係数と材齢の関 係を示す.なお,材齢についてはコンクリート打設時 を起点としている.

透気係数は,時間の経過とともに増加している.従 って,透気試験を若材齢で行うほど見かけ上小さな透 気係数が得られやすいことを示しており,実際の品質 を過大に評価してしまう可能性がある.

同一セメント種別において,透気係数を相対比較す ると,養生条件が悪い(養生日数が短い)と大きくなる ことが分かる.また,この傾向は水和反応の遅い低熱 ポルトランドセメントを用いた場合に顕著にあらわれ る.これは,ごく早期に養生を打ち切った場合,コン クリート表層部から水分逸散が生じ水和反応を十分に 引出すことができず,表層組織の緻密化を図ることが できなかったことを示唆している.

図-2 透気係数と材齢の関係(供試体)

図-3 透気係数(実構造物)

(図-3)に,3.2で測定した実構造物の透気係数と測定 高さの関係(折線)を示す.また,この図の 3 本の直線 は実構造物と同一配合の供試体の透気係数を示すもの である.なお,実構造物の測定時期は概ね材齢 200 日 であり,各供試体における透気係数の基準値も概ね材 齢 200 日の値を記載している.

①同一高さでの透気係数のバラつきが大きい.

②同一リフトにおける各高さ方向の透気係数(幾何平 均値)は概ね同様の傾向である.

③実構造物の透気係数(幾何平均値)は供試体の透気係 数(養生 1 日)より小さい値であり,その差は大きい.

5.PC 上部工工事における透気係数の測定

(図-4)に,PC 上部工(現場打ちコンクリート)における 透気係数の測定結果を示す.なお,比較対象として3.2 で測定した実構造物(橋脚)の測定結果も記載する.

A・B(PC 上部工)工事は材齢 3 日で,C(PC 上部工)工 事は材齢 2 日で型枠を脱型し緊張作業を実施している.

特に,C(PC 上部工)工事で用いられているコンクリート (W/C=42~43%)は,実構造物(橋脚)で用いられているコ ンクリート(W/C=48%)と比較して,水セメント比が相当 低いにもかかわらず,透気係数の測定結果が大きい.

図-4 PC 上部工工事における透気係数の測定結果

6.まとめ

本研究では,セメント種別,養生条件の違いがコン クリート表層部の透気係数に及ぼす影響について試験 を実施するとともに,実構造物の透気係数を測定し供 試体との相対比較を実施した.今回得られた知見を以 下に示す.

①養生条件(養生日数)の差を透気係数で評価できる.

②水和反応が遅いセメントは,特に湿潤養生に留意す る必要がある.

③実構造物(橋脚)の透気係数は,養生不足(養生日数 1 日)の供試体に比べ小さな値を示し,その差は大きい.

④弱材齢での型枠脱型は,コンクリート表層部の緻密 化を図れていない可能性がある.

以上より,透気係数を用いた品質検査を導入し活用 することで,コンクリート構造物の耐久性向上の一翼 を担うことができると考える.

実構造物(橋脚) A(PC上部工)工事

B(PC上部工)工事 C(PC上部工)工事

土木学会第70回年次学術講演会(平成27年9月)

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参照

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