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博 士 ( 理 学 ) 金 子 大 作

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 金 子 大 作      学位論文題名

Studies of Fluid Spreading on Hydrogel Surfaces      (ゲルの表面上での流体のSpreading に関する研究)

学 位 論 文 内 容の 要 旨

Spreadingは 、 コ ー テ ィ ン グ な ど の 工 業 技 術 的 な 分 野 や 、 濡 れ ・ 接 着 ・ 摩 擦 と い っ た 生 体 薄 膜 に お け る 諸 現 象 の よ う に 物 理 学 お よ び 生 物 学 と い っ た 見 地 か ら 重 要 な 役 割 を 果 た す 現 象 で あ る 。 ま たSpreadingに よ り 固 体 の 表 面 物 性 を 評 価 す る 研 究 も 行 わ れ て い る 。 こ れ ま で こ の 種 の 研 究 の 殆 ど は 、 不 揮 発 性 ・ 無 反 応 性 ・ 不 溶 性 液 体 の 、 . 固 体 ま た は 液 体 表 面 上 のSpreadingに 関す るも のに 限ら れて お り 、 ソ フ ト で ウ ェ ッ ト な 材 料 で あ る 高 分 子 ゲ ル 表 面 に 注 目 し た 研 究 は 皆 無 で あ っ た 。 他 の ど の よ う な 固 体 物 質 と も 異 な り 、 高 分 子 ゲ ル は 溶 媒 を 含 ん で い て 柔 ら か く 、 外 部 の 環 境 変 化 に 対 し て 動 的 に 応 答 し 、 そ の 構 造 や 形 状 、 性 質 を 変 化 さ せ る 極 め て 興 味 深 い 素 材 で あ る 。 そ の 可 能 性 の 高 さ ゆ え 、 人 工 関 節 の 軟 骨 部 分 や 人 工 臓 器 な ど 生 体 へ の 応 用 が 期 待 さ れ て い る が 、 そ れ に 深 く 関 わ る 高 分 子 ゲ ル の 表 面 ・ 界 面 の 性 状 に 関 す る 知 見 は 、 基 礎 的 な 部 分 で さ え も ほ と ん ど 明 ら か に な っ て い な い 。 ゲ ル 特 有 の 最 も 重 要 な 表 面 物 性 の1っ に 、 低 摩 擦 性 が あ り 、 潤 滑 は 摩 擦 に 大 き く 影 響 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 潤 滑 の プ ロ セ ス に お い て 、 潤 滑 液 体 のSpreadingは 重 要 な 役 割 を 果 た し 、 ま た 、 こ れ と 同 じ 理 由 で 、 生 体 材 料 と し て ゲ ル を 応 用 し た 場 合 、 ゲ ル は 様 カ な 液 体 の 流 れ に よ るshear stressに 曝 さ れ る こ と に な る 。 そ れ ゆ え 、 液 体 の ゲ ル 表 面 で のSpreadingの 研 究 は 極 め て 重 要 と ぬ る 。 更 に 、Spreadingは 本 質 的 に 下 地 の 表 面 構 造 に非 常に 敏感 であ るた め、

こ の 研 究 は ゲ ル の 表 面 摩 擦 や グ ル 表 面 の キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン に 関 し て 有 益 な 情 報 を 与 え る 。 本 研 究 は 、 種 々 の 液 体 の 「Spreading」 を 評 価 す る 方 法 で 、 高 分 子 ゲ ル の 表 面 ・ 界 面 性 状 の 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と す る 。   本 論 文 は 第1章 の 序 論 、 第2章 から 第6章 まで の本 論、 第7章 の結 論で 構成 され る。

  第2章 で は 、Spreadingと い う 現 象 の 理 論 的 な 背 景 に っ い て 述 べ る 。 気 体 ・ 液 体 界 面 に お け る 液 体 の 別 の 液 体 上 で の Spreadingは 、 Spreading係 数 Ay二ニY2ー(y1 ‑門,:)が正の時のみに起き、経験的にSpreading半径′は、′(め〜t0.75 で 記 述 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る ( こ こ でYiヽ 凡 は そ れ ぞ れ 、Spreadingす る 液 体 ・ 下 地 液体 の表 面 張力 、門 ,: は両 者の 界面 張カ であ る) 。同 様に 固体 表 面上 で のSpreadingは、 理論 的・ 経験 的に ′( め〜 尸.1と記 述さ れる 。この様にSpreading は 、Spreadingす る 液 体 ・ 下 地 の 液 体 や 固 体 の 物 性 と 、 時 間 減 衰 の べ き 乗aで

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記述することができる。ゲルはよく液体と固体の中間の物質であると言われる が、この章 では、これまで得られている知見を基にゲル上での Spreading を

′(め=ぬ と簡単にモデル化した。

   次章以降では、この理論的予測の正否およびspreading 挙動とゲル・ポリマ ー 溶 液 の バ ル ク の 性 質 と 関 連 さ せ 、 実 験 的 に 検 討 ・ 議 論 し て い る 。    第 3 章で は、主に種 カの液体 (EtOH 、 Silicon Oil 十 Ether) の spreading を 強電解質ハイドロゲル上とそれと同等の化学組成と濃度を持っポリマー水溶液 上でのものと比較・検討している。結果、EtOH のゲル上でのspreading exponent は我々の立てたモデルと非常に良い一致を示し、濃度依存性を示さずa‑0 .45 と いう一定値を示すことが分かった。Silicon Oil 十Ether の場合、同様にa‑0 .3 という一定値を示した。また、ポリマー水溶液でのこれらの液体の spreading 挙動は強い濃度依存性を示し、1 .3wt. %を境に高濃度側でののはポリマー濃度 が増加するにっれて減少し(a :O . 3‑+0.2 )、低濃度側では濃度が減少するにつ れ急激に増加し始め、理想粘性体である水上での理論値に近づいていった(0.3

‑*0. 75) 。この液体のゲル上とポリマー水溶液上でのspreading 挙動の違いは、

そのバルクの粘弾性と関連づけられ議論されている。また、 Soft なネットワー クを持つ PAAm ゲル 上の spreading は、濃度依存性を見せず、PAMPS ゲルの Q 値 よりやや高めの値、 Rigid な高分子鎖を持つAgarose ゲル上での spreading は、

同じく濃度依存性がみられず、 PAMPS ゲルのa 値よりやや低めの値を示したこと から、ゲル上でのspreading は、高分子鎖は共同的に振舞うにも関わらず、そ れぞ れ の高 分 子鎖 の 持つ 固 有の 硬 さに 依存す ることが明 らかになっ た。

   第 4 章では、せん断応カを連続的に与えたときのゲル表面の応答を調べてい る。具体的には、強電解質グラフト鎖有するゲルをガラス表面で合成し、流れ 場における挙動を共焦点顕微鏡でその場観察した。その結果、グラフト鎖を有 するゲル膜は流れ場が生じると瞬時に、その厚さを減少させ、また、塩濃度0.1 M 以上においては減少率が飛躍的に大きくなった。

   第5 章(補足)、表面摩擦を調べる上で静止摩擦と動摩擦の境界領域で見られ るstick 一slip という現象は非常に重要であり、将来的にグル表面に於ける摩擦 にも重要な知見を与えるものと思われる。そこで本章ではその予備実験として、

ゲル表面よりも精密な摩擦測定を行えるマイカ表面において、stick ―slip に関 する実験を行った。具体的には、シクロヘキサン蒸気圧下における、マイカ表 面の摩擦に関する実験を行った。結果、メゾスコピックレベルでのStick −Stick 発現に凝集したシクロヘキサン分子が大きく影響することを明らかにした。

   第 6 章(補足)では、超高強度・超低摩擦ゲルの創成に成功したことについ て報告している。具体的には本研究室で開発されたダブルネットワークゲル(DN gel) にりニアポリマー鎖を導入することにより、sub ーMPa の大荷重下においてに おいて摩擦係数v10‑5 を示すことを明らかにしている。

第7 章では、本論の内容を総括して結論としている。

(3)

以上のように本学位論文では、ゲル表面上における液体のspreading プロセス は、架橋効果による高分子網目サイズより長い相関長を持つ極めて協同的な過 程であることを示し、マクロレベルではバルクの粘弾性、ミクロレベルではポ リ マ ー 鎖 の 硬 さ に 支 配 さ れ て い る こ と を 明 ら か に し た 。

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(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

冀 新田 佐々木 古川

剣萍 勝利 直樹 英光

     学位論文題名

Studies of Fluid Spreading on Hydrogel Surfaces      (ゲルの表面上での流体のSpreading に関する研究)

  Spreadingは、コーティングなどの工業技術的な分野や、濡れ・接着・摩擦といった生体 薄膜における諸現象のように物理学および生物学といった見地から重要な役割を果たす現 象で ある。ま たSpreadingにより固体の表面物性を評価する研究も行われている。これま でこの種の研究の殆どは、不揮発性・無反応性・不溶性液体の、固体または液体表面上の Spreadingに関するものに限られており、ソフ卜でウェツ卜な材料である高分子ゲル表面に 注目した研究は皆無であった。他のどのような固体物質とも異なり、高分子ゲルは溶媒を 含んでいて柔らかく、外部の環境変化に対して動的に応答し、その構造や形状、性質を変 化させる極めて興味深い素材である。その可能性の高さゆえ、人工関節の軟骨部分や人工 臓器など生体への応用が期待されているが、それに深く関わる高分子ゲルの表面・界面の 性状に関する知見は、基礎的な部分でさえもほとんど明らかになっていない。ゲル特有の 最も 重要な表 面物性の1っに、低摩擦性があり、潤滑は摩擦に大きく影響することが知ら れている。潤滑のプロセスにおいて、潤滑液体のSpreadingは重要な役割を果たし、また、

これと同じ理由で、生体材料としてゲルを応用した場合、ゲルは様々な液体の流れによる shear stressに曝 されることになる。それゆえ、液体のゲル表面でのSpreadingの研究は 極めて重要となる。更に、Spreadingは本質的に下地の表面構造に非常に敏感であるため、

この研究はゲルの表面摩擦やゲル表面のキャラクタリゼーションに関して有益な情報を与 える。本研究は、種々の液体の「Spreading」を評価する方法で、高分子ゲルの表面・界面 性状の基礎的知見を得ることを目的としている。

  本研 究では、 主に種 々の液体(EtOH、Silicon Oil十Ether)のspreadingを強電解質ハ イドロゲル上とそれと同等の化学組成と濃度を持っポリマー水溶液上でのものと比較・検 討し ている。 結果、EtOHのゲル上 でのspreading exponentは我々の立てたモデルと非常 に良 い一致を 示し、濃 度依存 性を示さ ず口‑ 0.45という一定値を示すことが分かった。

Silicon Oil十Etherの場合、同様にば‑ 0.3という一定値を示した。また、ボリマー水溶     一257−

(5)

液で の これ らの 液体 のspreading挙 動は 強い 濃度 依存 性 を示 し、1.3wt.%を 境に 高 濃度側で のaは ポ リ マ ー 濃 度 が増 加す るに っ れて 減少 し(a:0. 3‑*0.2) 、低 濃 度側 では 濃度 が減 少 する に っれ 急激 に増 加し 始 め、 理想 粘性 体で あ る水 上で の理 論 値に 近づ いて いっ た (O.3→ 0. 75)。こ の液 体 のゲ ル上 とポ リ マー 水溶 液上 でのspreading挙動 の違 いは 、そ の パルクの 動 的 粘 弾 性 と 関 連 づ け ら れ 議 論 さ れ て い る 。ま た 、Softな ネッ トワ ー クを 持つPAAmゲル 上 のspreadingは 、 濃 度 依 存 性 を 見 せ ず 、PAldPSゲ ル のq値 よ り や や 高 め の値 、Rigidな高 分 子 鎖 を 持 つAgaroseゲ ル 上 で のspreadingは 、 同 じ く 濃 度 依 存 性 が み ら れず 、PAMPSゲル の a値 よ り や や 低 め の 値 を 示 し た こ と か ら 、 ゲ ル 上 で のspreadingは 、 高 分 子 鎖 は 共 同 的 に 振 舞 う に も 関 わ ら ず 、 そ れ ぞ れ の 高 分 子 鎖 の持 つ 固有 の硬 さに 依存 す るこ とが 明ら かに な った。

  以 上 の よ う に 本 学 位 論 文 で は 、 ゲ ル 表 面 上 に お け る 液 体 のspreadingプ ロセ スは 、架 橋 効果 に よる 高分 子網 目サ イ ズよ り長 い相 関長 を 持つ 極め て協 同 的な 過程 であ るこ と を示し、

マ ク ロ レ ベ ル で は バ ル クの 粘弾J陸 、ミ クロ レベ ル では ポリ マー 鎖の 硬 さに 支配 され てい る ことを明らかにした 。

  これにより、著者は粘弾性体上でのspreadingメカニズムの新知見を明らかにし、ゲル・ポリマー 溶液の表面物性評価 に対する貢献は大なるもの がある。

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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