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博 士 ( 理 学 ) 水 野 章 敏

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 水 野 章 敏      学位論文題名

Structure and Properties ofLi ( WidAlkali ― MerCuryAlloyS      ( ア ル カ リ 金 属 一 水 銀 合 金 液 体 の 構 造 お よ び 物 性 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  水 銀 は 、 常 温 で 唯 一 の 単 原 子 液体 であ り 、そ の物 性に おい て 様々 な特 異性 を示 す こと か ら 、 研 究 対 象 と し て 非 常 に 興 味深 い。 さ らに 水銀 合金 は、 液 体状 態に おい ても 数 多く の 特 異 性 を有 す るこ とが 報告 され て きて いる 。中 でも 、 水銀 ・1族( アル カリ 金属 ) 合金 液 体 は 、 さ ま ざ ま な 電 子 的 性 質 およ び熱 力 学的 性質 にお いて 特 異性 を示 すこ とが 知 られ て い る 。 特 に 、 電 気 抵 抗 、 熱 電 能、 密度 、 磁化 率な どに つい て は、 組成 依存 性お よ び温 度 依 存 性 に お い て 顕 著 な 変 化 を 示す こと が 報告 され てい る。 こ れら の物 性の 組成 依 存性 に つ いて 、理 想的 な混 合系からの偏倚 が特に著しい領域が、アル カリ濃度の数atomic%(以 下at.%)の希薄濃度域および50〜60 at.%の中間濃度域において集中している。したがって、

希 薄 領 域 か ら 中 間 濃 度 域 に わ た って 液体 の 微視 構造 に変 化が 起 って いる こと が示 唆 され る。

  ー 方 、 固 体 の 構 造 に お い て 、 アル カリ 金 属― 水銀 合金 は様 々 な化 学量 論組 成で 金 属間 化 合 物 を 形 成 し 、 さ ら に 水 銀 ク ラス ター を 形成 する こと が報 告 され てい る。 同様 な クラ ス タ ー 形 成 を 固 相 で 示 す 系 と し てア ルカ リ 金属 ー鉛 合金 があ り 、そ の液 体状 態に お いて ポ リ ア ニ オ ン と 呼 ば れ る ク ラ ス ター が存 在 する こと が知 られ て いる 。こ のア ルカ リ 金属 一 鉛 合 金 系 に っ い て は 、 液 体 構 造に おけ る ポリ アニ オン 形成 が 顕著 な物 性異 常を 引 き起 こ し て い る こ と が 明 ら か に な り つっ ある 。 これ に対 して 、ア ル カリ 金属 一水 銀合 金 液体 に つ い て の 構 造 に 関 す る 情 報 は 、十 分に 得 られ てお らず 、物 性 との 関連 につ いて も 未解 明な 点が非常に多い。

  そ こ で 、 本 研 究 で は 、 ア ル カ リ金 属ー 水 銀合 金液 体の 構造 に 関す る知 見を 定量 的 に得 る こ と に よ り 、 液 体 構 造 と 物 性 の特 異性 と の関 連を 明ら かに す るこ とを 目的 とし た 。構 造 と 密 接 に 関 連 が あ る 物 理 量 で あ る 圧 縮 率 に よ る 議 論 を 可 能と する た め、Hg‑Rb合 金液 体 中 に お け る 音 速 の 測 定 を 実 施 し た 。 さ ら に 、 構 造 解 析 の 手段 とし てX線吸 収分 光 法を 使 用 し 、Hg‑Rb合 金 液 体 を 対 象 に 局 所 構 造 解 析 を 実 施 し た。 ま た、 液体 全領 域の 構 造解 析と して、Hg‑Rb合金液体の中性 子回折実験を実施した。

  本 論文 の構 成は 以 下の よう にな って い る。

  第1章で は 、本 研究 の目 的に つ いて 述べ 、水 銀 ―ア ルカ リ合 金液 体 に関し て従来得られ て い る 物 性に つい て概 観 した 。ま た、 それ ら の物 性に おい て 示さ れる 特異 性に 関 して 、 提 唱 され てい る構 造 モデ ルに っい て言 及 した 。

  第2章で は 、液 体構 造の 議論 に 必要 な動 径分 布 関数 およ び構 造因 子 に関す る理論につい て 述 べた 。ま た、 液 体構 造の 特徴 とモ デ ′レ につ いて言及した。この構造因 子および動径 分 布 関 数 を実 験的 に得 る 手段 とし て本 研究 で 使用 した 中性 子 回折 の原 理お よび 実 験手 法 に つ い て 説 明 し た 。 さ ら に , 局 所 構 造解 析と して のX線吸 収 分光 法に つい て、 実 験原 理 お よ び解 析手 段を 解 説し た。

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  第3章 にお いて は、 液体 構 造解 析と 密接 に 関連 し、 また イン プ ッ卜 パラ メー タと して重 要 な 物 理 量 に つ い て議 論し た。 ま ず、 純粋 状態 の 原子 容積 の実 験と 理 論解 析に つい て述 べた 。ま た、 水 銀‐ アル カリ 合金 液 体の 原子 容積 の実 験 値について、系統的な解析 を実施 し 整 理 し た 。 こ れ によ り、 部分 モ ル体 積の 組成 依 存性 から 大き な電 荷 移動 効果 が水 銀ー ア ル カ リ 系 全 体 に わた り推 定さ れ た。 さら に、 液 体構 造の 長波 長極 限 と密 接に 関連 する 圧 縮 率 を 評 価 す る た め 、Hg‑Rb合 金 液 体 中 にお け る超 音波 の音 速測 定 を実 施し た。 得ら れた圧縮率の組成依存性か ら、Rb濃度の希薄な領域(0〜20at.%)、中問領域(20〜80at.%)

およ びよ り高 濃 度な 領域(80〜100at.%) に おい て特 徴的 な液 体 構造 が存 在す る可 能性を 明らかにした。

  第4章 で は 、X線 吸 収 分 光 法 に よ るHg‑Rb合 金 液 体 の 局 所 構 造 解 析 に っい て 述べ た。X 線 吸 収 分 光 法 と は 、 試 料 中 の 元 素 に 特 有 の 吸 収エ ネル ギー を もつX線 を照 射し 、そ の吸 収 度 か ら 対 象 元 素 周囲 の局 所的 な 構造 に関 する 情 報を 得る 実験 法で あ る。 本研 究で は、

RbのK吸 収 端 ,HgのLiお よ びL3吸 収 端 に つ い てEXAFS解 析 を 実 施 し た 。. その 結果 、Rb 濃度の比較的高い領域(35〜70at.%R.b)では、Rb―HgおよびHg‐Hgの平均原子間距離がそ れぞれ、3.6土0.lAおよ び2.95土0.1Aであることが 判明した。得られた原子間距離につい て 、 固 体 に お け る 構 造 情 報 と 比 較 す る こ と に より 、HgRb合 金 液体 中のHg4クラ スタ ーの 存在 が示 唆さ れ た。 また 、濃 度を 変 えて も、 平均 原子 間 距離の値が変化しないこと から、

比較的安定な構造を形成し ていることが推測された。

  第5章 では 、中 性子 回折 実 験に よるHg‐Rb合金 液体 の構 造解 析 にっ いて 述べ た。 中性子 回折 を用 いる こ とに より 、EX虹.Sで 得ら れ る情 報よ りも 長距 離 範囲 の平 均構 造に 関する 情 報 を 得 る こ と が でき る。 本研 究 では 、Rb濃度 の 希薄 な領 域を 含む 全 組成 域に おい て、

Hg‐Rb合 金液 体 の中 性子 回折 実験 を 実施 した 。得 られ た 構造因子から、R.b濃度の 中間領 域(20〜80at.%)におい てポリアニオン形成合金に特有の pre‐peak が弱くではあるが、

存在 する こと が 判明 した 。よ り詳 細 な情 報を 得る ため 、ReverseMonteCarlo法 によ り、中 性 子 回 折 実 験 で 得 られ た全 構造 因 子か ら各 原子 種 の相 関を あら わす 部 分動 径分 布関 数を 抽出 した 。得られたHg|Hg,Hg−Rb,Rb‐R.b問の部分 動径分布関数のピーク位置か ら、最 近接 原子 間距 離 を算 出し た。 ピー ク 位置 の組 成変 化か ら 、Rb濃度の20at.%以下の 領域で は、Hg−R.b原 子間 距離 が3.1Aと非常に近距離にピー クがあらわれ、RbからHgーの 電荷移 動 が 生 じ て い る 事 を示 唆す る結 果 とな った 。ま た 、こ の領 域の 原子 配 置を 可視 化す るこ と に よ り 、 ア ル カ リ金 属濃 度の 希 薄な 領域 にお け る溶 媒和 構造 の存 在 が支 持さ れた 。ー 方、Rb濃度が30at.%より も濃い領域においては、Hg‐Hg原子間距離が減少しHg‐R.b原子間 距 離 が 増 加 す る こ とが 判明 した 。 これ は、E弛 廿S構造 解析 によ って 得 られ た結 果を 支持 す る 結 果 と な っ て おり 、Hgポリ ア ニオ ンとRbカ チ オン が混 在し た構 造 の存 在が 示唆 され る。

  最 後に 、第6章 で本 研究 の まと めを行った。圧縮率の 組成依存性の議論から、Hg‐R.b合 金液 体の 構造 が3つの 組成 領 域に おい て異 な って いる こと を示 し た。 また 、構 造解 析の結 果に より 、Rb濃 度の 希薄 領域 おい て は、R.bの周 囲にHgが溶媒和する構造の存在を 明らか に し た 。 さ ら に 、Rb濃 度の 中間 領 域お いてHgポ リ アニ オン の存 在を 示 唆し た。 これ によ り 、 ア ル カ リ 金 属 一水 銀合 金液 体 にお ける 特異 な 物性 の組 成依 存性 を 説明 する 構造 モデ ルを微視的な液体構造解析 の立場から提案した。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 教授 教授 助教授

武田   定 井川駿一 日夏幸雄 伊丹俊夫

     学位論文題名

Structure and Properties of Liquid Alkali‑IVIercury Alloys      ( ア ル カ リ 金 属 一 水 銀 合 金 液 体 の 構 造 お よ び 物 性 )

  ア ル カ リ 金 属 − 水 銀 合 金 液 体 は 、 さ ま ざ ま 詮 電 子 的 性 質 お よ び 熱 力 学 的 性 質 に お い て 特 異 性 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る 。 特 に 、 電 気 抵 抗 、 熱 電 能 、 密度 、磁 化率 など につ いて は 、 組 成 依 存 性 お よ び 温 度 依 存 性 に お い て 顕 著 な 変 化 を 示 す こ と が 報 告 さ れ て い る 。 こ れ ら の 物 性 の 組 成 依 存 性 に っ い て 、 理 想 的 な 混 合 系 か ら の 偏 倚 が 特 に 著 し い 領 域 が 、 ア ル カ リ 濃 度の 数atonuc%( 以下at. %) の希 薄濃 度域 およ び50〜60at.%の中間濃度域に おいて集中して い る 。 こ の よ う な 挙 動 を 示 す 要 因 と し て , 液 体 構 造 と の 関 連 が 示 唆 さ れ る 。 し か し 、 ア ル カ リ 金 属 一 水 銀 合 金 液 体 に っ い て の 構 造 に 関 す る 情 報 は 、 十 分 に 得 ら れ て お ら ず 、 物 性 と の関 連に っい ても 未解 明な 点が 非常 に多 い。

  そ こ で 本 研 究 で は 、 ア ル カ リ 金 属 一 水 銀 合 金 液 体 の 構 造 に 関 す る 知 見 を 定 量 的 に 得 る こ と に よ り 、 液 体 構 造 と 物 性 の 特 異 性 と の 関 連 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 構 造 と 密 接 に 関 連 の あ る 物 理 量 で あ る 圧 縮 率 に よ る 議 論 を 可 能 と す る た め 、Hg‑Rb合 金 液 体 中 に お け る 音 速 の 測 定 を 実 施 し た 。 さ ら に、 構造 解析 の手 段と してX線吸 収分 光法 を使 用し 、Hg‐Rb 合 金 液 体 を 対 象 に 局 所 構 造 解 析 を 実 施 し た 。 ま た 、 液 体 全 領 域 の 構 造 解 析 と し て 、I龜 ‐Rb 合金 液体 の中 性子 回折 実験 を実 施し た。

  本 論 文 の 構 成 は 以 下 の よ う に な っ て い る 。

  第1章 で は 、 本 研 究 の 目 的 に つ い て 述 べ 、 水 銀 ― ア ル カ リ 合 金 液 体 に 関 し て 従 来 得 ら れ て い る 物 性 に っ い て 概 観 し た 。 ま た 、 そ れ ら の 物 性 に お い て 示 さ れ る 特 異 性 に 関 し て 、 提 唱 さ れ て い る 構 造 モ デ ル に つ い て 言 及 し た 。

  第2章 で は 、 液 体 構 造 の 議 論 に 必 要 な 動 径 分 布 関 数 お よ び 構 造 因 子 に 関 す る 理 論 に つ い て 述 べ た 。 ま た 、 液 体 構 造 の 特 徴 と モ デ ル に っ い て 言 及 し た 。 こ の 構 造 因 子 お よ び 動 径 分 布 関 数 を 実 験 的 に 得 る 手 段 と し て 本 研 究 で 使 用 し た 中 性 子 回 折 の 原 理 お よ び 実 験 手 法 に つ い て 説 明 し た 。 さ ら に , 局 所 構 造 解 析 と し て のX線 吸 収 分 光 法 に つ い て 、 実 験 原 理 韜 よ び 解 析 方 法 を 解 説 し た 。

  第3章 に お い て は 、 液 体 構 造 解 析 と 密 接 に 関 連 し 、 ま た 構 造 解 析 の パ ラ メ ー タ と し て 重

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要 な物 理量 にっ いて 議論 した 。まず、純粋状態の原子容積の実験と理論解析にっいて述べ た 。ま た、 水銀 ‐ア ルカ リ合 金液体の原子容積の実験値について、系統的な解析を実施し 整 理し た。 これ によ り、 部分 モル体積の組成依存性から大きな電荷移動効果が水銀―アル カ リ系 全体 にわ たり 推定 され た。さらに、液体構造因子の長波長極限と関連付けられる圧 縮 率 を 評 価 す る た め 、 Hg‑Rb 合 金 液体 中に おけ る超 音波 の音 速測定 を実 施し た。 得ら れ た 圧縮率の組成依存性から、Rb 濃度の希薄な領域(0 〜20at. %)、中間領域(20 〜80at. %)

お よび より 高濃 度な 領域 (80 〜 100at. % )に おい てそ れぞ れ特徴的な液体構造が存在する 可能性を明らかにした。

   第4 章では 、X 線吸 収分 光法 によ るHg‑Rb 合 金液 体の 局所 構造解析について述べた。組成 の 異 な る 試 料 に っ い て , Rb の K 吸 収 端 , Hg の Li お よ び L3 吸 収 端に っい てEXAFS 解 析を 実 施 し た 。 そ の 結 果 、 Rb 濃 度 の 比 較的高 い領 域(35 〜 70at. %Rb) では 、Rb‑Hg およ びHg‑Hg の 平均 原子 間距 離が それ ぞれ 、3.6 土o.iA および2 .95 土o.iA であることが判明した。得ら れ た原 子間 距離 につ いて 、固 体に おける 構造 情報 と比 較す ることにより、Hg‑Rb 合金液体 中のH 二g4 クラスターの存在が示唆された。

   第5 章では 、中 性子 回折 実験 によ るHg ‐Rb 合金 液体 の構 造解析について述べた。実験に より得られた構造因子から、Rb 濃度の中間領域(20 〜80at .%)においてポリアニオン形成 合金に特有の pre ・peak が存在することが判明した。より詳細な情報を得るため、R 卿erse MonteCado 法 によ り、 実験 で得 られ た全 構造 因子 から 、各 原子種の相関をあらわす部分動 径 分 布関数 を抽 出し た。 得ら れた 部分 動径 分布 関数 のピ ーク 位置の 組成 変化 から 、Rb 濃 度が20at .%以下の領域では、Hg ‐Rb 原子間距離が非常に接近した値となり、Rb からI 龜^の 電 荷移 動が 生じ てい る事 を示 唆する結果とたった。また、この領域の原子配置を可視化す る こと によ り、 アル カリ 金属 濃度の希薄な領域における溶媒和構造の存在が支持された。

一方、Rb 濃度が30at .%よりも濃い領域においては、Rb 濃度希薄領域よりもHg ・Hg 原子間距 離 は減少し,Hg ‐Rb 原子間距離は増加することが判明した。得られた原子間距離は、EXAFS 構 造解 析に よっ て得 られ た結 果を支持する結果とたっており、H 匚g ポリアニオンとRb カチ オンが混在した構造の存在が示唆された。

   最後に、第6 章で本研究のまとめを行った。

   この よう に、 著者は、その構造に関する知見がほとんど得られていないアルカリ金属‐

水 銀合 金液 体の 中で 、特 にHg‑Rb 合 金液 体を 取り上げ、この合金液体が示す特異な物性の

組 成依 存性 を説 明す る構 造変 化を 、X 線 吸収 分光法や中性子散乱法を用いた微視的構造解

析 など によ り解 明した。この成果は、アルカリ金属‐水銀合金液体の特異な物性の組成依

存 性の 要因 とた る微視的構造の研究分野に大いに貢献するものとして高く評価される。本

論 文の 一部 は、 国際 的に 権威 のあ る学 術雑誌 に4 報の論文として公表されている。以上の

所 見に 基づ き、 審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を受けるに十分な資格があるも

の と認 定し た。

参照

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