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博 士 ( 理 学 ) 筒 井 友 和

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 筒 井 友 和      学 位 論文 題名

Functional Studies on Arabidopsis CADl in Plant Immunity      ( 植 物 免 疫 を 制 御 す る シ ロ イ ヌ ナ ズナ CAD1 の 機 能解 析)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  植物は,生涯移動することなくー っの場所で生息するため,動物に比べより環境への適 応能カが求められる.植物の環境適 応メカニズムを研究し解明することは,生命現象の解 明のみならず,農学的,環境科学的 にも重要な課題であり,今後,植物の機能を有効利用 し,人類や地球環境に役立てていく ためにも必須と考えられる,本研究は,シロイヌナズ ナにおいて病原体が侵入した際に引 き起こされる免疫過程という植物の環境適応現象に着 目 し , そ れ ら の 分 子 機 構 に 関 す る 分 子 遺 伝 学 的 解 析 を 試 み た も の で あ る ,

シロイヌナズナ恒常的細胞死活性化変異体(cadl)の解析

  植物が病原体に対して抵抗性を示す機構,すなわち植物が病原体から自己を守るしくみ は,現在「植物免疫」と総称されている,植物は,動物のような免疫に特化した可動細胞 をもたない.そのため,植物では個々の細胞が病原体の認識から防御反応の誘導や隣接細 胞ーの警告シグナルの伝達までも行ない,またときには,プログラム細胞死を誘発し,病 原体の全身感染を妨げる,このようなプログラム細胞死や植物免疫を制御する分子実体を 解明 する ため ,私 は, 病原 体感 染時 に観 察さ れ るよ うな細胞死形 質を示す変異体cadl

(constitutively activated cell dea舶のを単離した.cadl変異体は,細胞死形質に加 えて,病原体感染時に特異的に発現するPR遺伝子群の恒常的な発現誘導が観察され,植物 免疫の活性化に必要であるサリチル酸が顕著に蓄積していた,また,この変異体は,シロ イヌナズナ病原性細菌である卜マ卜斑葉細菌病菌に対する抵抗性を獲得し,クローバー黄 化葉脈ウイルスの長距離移行を抑制した.これらの知見より,cadl変異体でぼ直常的に植 物免 疫機 構が 活性 化し てい ると結論し た.原因遺伝子同定の結果,CAD1遺伝子はMACPF (Membrane Attack Complex and Performn)ドメインをもつ新規タンパク質をコードしてい た.さらに、恒常的にサリチル酸を分解する遺伝子を導入した形質転換体とcadl変異体と の二重変異体は,cadl変異体で観察された細胞死形質が抑制されることが示された,この ような結果から,CAD1は,プログラム細胞死やサリチル酸合成,すなわち植物免疫過程を 負に制御する新規因子と結論づけた.

植物免疫活性化時におけ るCAD1遺伝子の発現制御機構

  CA仞遺伝子の上流域に は,植物免疫応答に関与するシス因子W―boxが存在する,本研究 では,サリチル酸とエリ シター応答に着目し,植物免疫活性化時におけるCAD1遺伝子発現 制御に関する解析を試み た,

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  CAD1遺伝子は,サリチノレ酸の添加によって発現が促進された.また,CAD1遺伝子は,サ リチル酸と同様に,精製エリシター であるキチンオリゴ糖の添加によっても発現促進が示 された,しかしながら,この発現促 進はサリチル酸の内生量が低下した35SnahG形質転換 体やサリチル酸のシグナル伝達活性 が低下したnprl変異体においても観察された,すなわ ち,エリシターによるCAD1遺伝子の 発現誘導は,サリチル酸シグナルとは異なる制御経路 によることを明らかにした.これら の結果より,CAD1遺伝子の発現は,サリチル酸依存経 路 だ け で な く サ リ チ ル 酸 非 依 存 経 路 に よ っ て も 制 御 さ れ て い る と 結 論 し た .

CAD1が関与する植物免疫ネットワークに関する分子遺伝学的解析

  cadl変異体は,恒常的な細胞 死形質やサリチル酸の顕著な蓄積が観察される.そこで,

CAD1とサリチル酸合成系の制御 シグナル伝達経路との関係に着目し,分子遺伝学的解析を 試みた,サリチル酸合成を正に制御するタンパク質が欠損したpad4:r異体およびサリチル 酸合成酵素が欠損したsidを変異体についてca甜変異体との二重変異体をそれぞれ作製した,

その結果,両二重変異体ではca田変具体の細胞死形質は完全に抑制されなかった,また,

これら二重変異体における病原 性細菌に対する抵抗性を検討した結果,ca田単独の変異体 と同様の抵抗性を維持していた ,従って,CAD1は,サリチル酸生合成の抑制に関与するだ けで な く, これ以外にも植物免疫に対する正の因子 を抑制していることが示唆された.

  そこで,d餾ca田二重変異体に変異原処理を施し,ca田形 質から野生型ーの復帰変異体 の単離を行った.その結果,細 胞死形質が抑制され,病原性細菌に対する抵抗性が野生型 よりも低下した変異体,c加丿(sj勿塑田あ曲Je刪オ釦t宣伽1曾sむt朋ceのを単離した,

CAN1はCAD1制 御 下 の 新 た な 植 物 免 疫 機 構 の 正 の 制 御 因 子 で あ る と 結 論 し た .

植物免疫を負に制御するシロイヌナズナ転写因子DEAR1の解析

  FOX Hunting Systemを用いてシロイヌナズナのgain―of‑function型細胞死形質変異体を 単離した,本過剰発現体(OxDEARl)は,ロゼット葉に病斑様の細胞死が恒常的に引き起こさ れ,セネッセンスが促進される特徴を持つ,OxDEAR1の導入遺伝子DEARl (DREB and EAR motif protein)は,DREBドメインとEARドメインを持つ転写抑制因子をコードしており,これが 過剰発現していることを確認した,

  DEAR1の遺伝子発現は病原体感染シグナルによって誘導された.OxDEAR1では,1)病原体 抵抗性遺伝子の発現上昇,2)サリチル酸の内生量の増大が観察された.これらの結果より Ox施4朋が示す細胞死は,病原体に対する抵抗性獲得を目的とした戦略的細胞死であると結 論した.儺鮒の遺伝子発現は低温処理によっても誘導された.伽Z翻朋では,1)儺町朋お よびr尨鮒など の低温誘導性遺伝子の多くが抑制され,2)耐凍性が低下していることが観 察された,これらの結果からDEAR1は低温応答のホメオスタシスを保つ役割も担っていると 考えられた,以上の結果から,DEAR1は病原体応答と低温応答の両方に関与することが明ら かとなった.すなわち,DEAR1は生物的ス卜レスおよび非生物的ス卜レスに関するシグナル 伝 達 経 路 の ク ロ ス ト ー ク の 鍵 と な る 抑 制 型 転 写 制 御 分 子 と 考 え ら れ る ,

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   山口淳二 副査   教授   山本興太朗 副査   助教授   池内   亮

副査   教授   上田一郎(農学研究院)

     学位論文題名

Functional Studies on Arabidopsis CADl in Plant Immunity      (植物免疫を制御するシ ロイヌナズナ CAD1 の機能解析)

    植物は,生涯移動することなくーつの場所で生息するため,動物に比べより環境への適応能カ が求められる.植物の環境適応メカニズムを研究し解明することは,生命現象の解明のみならず,

農学的,環境科学的にも重要な課題であり,今後,植物の機能を有効利用し,人類や地球環境に役 立てていくためにも必須と考えられる.本研究は,シロイヌナズナにおいて病原体が侵入した際に 引き起こされる免疫過程という植物の環境適応現象に着目し,それらの分子機構に関する分子遺伝 学的解析を試みたものである.

シロイヌナズナ恒常的細胞死活性化変異体(cadl)の解析

  植物が病原体に対して抵抗性を示す機構,すなわち植物が病原体から自己を守るしくみは,現在

「植物免疫」と総称されている.植物は,動物のような免疫に特化した可動細胞をもたない.その ため,植物では個々の細胞が病原体の認識から防御反応の誘導や隣接細胞への警告シグナルの伝達 までも行ない,またときには,プログラム細胞死を誘発し,病原体の全身感染を妨げる.このよう なプログラム細胞死や植物免疫を制御する分子実体を解明するため,私は,病原体感染時に観察さ れるような細胞死形質を示す変異体cadl (constitutivelyac灯va ted ceD  dea勘少を単離した.

cadl変異体は,細胞死形質に加えて,病原体感染時に特異的に発現するPR遺伝子群の恒常的な発 現誘導が観察され,植物免疫の活性化に必要であるサリチル酸が顕著に蓄積していた.また,この 変異体は,シロイヌナズナ病原性細菌であるトマト斑葉細菌病菌に対する抵抗性を獲得し,クロー バー黄化葉脈ウイルスの長距離移行を抑制した.これらの知見より,cadl変異体では恒常的に植物 免疫機構が活性化していると結論した,原因遺伝子同定の結果,CAD1遺伝子はMACPF (Membrane 堂tack Complex and Performn)ドメインをもつ新規タンパク質をコードしていた,さらに、恒常的 にサリチル酸を分解する遺伝子を導入した形質転換体とcadl変異体との二重変異体は,cadl変異 体で観察された細胞死形質が抑制されることが示された,このような結果から,CAD1は,プログラ ム細胞死やサリチル酸合成,すなわち植物免疫過程を負に制御する新規因子と結論づけた.

植物免疫活性化時におけるCAD1遺伝子の発現制御機構

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  CAD1遺 伝子の上流域には,植物免疫応答に関与するシス因子W―boxが存在する.本研究では,サ リチ ル酸 と エリ シタ ー応 答に 着目 し, 植物 免疫 活性 化時 におけ るCAD1遺伝子発現制御に関する解 析を試みた.

  CAD1遺 伝 子は ,サ リチ ル酸 の添 加に よっ て発 現が 促進 された ,また,CAD1遺伝子は,サリチル 酸と 同様 に,精製工リシターであるキチンオリゴ糖の添加によっ ても発現促進が示された.しかし ながら,この発現促進はサリチル 酸の内生量が低下した35SnahG‑7f‑質転換体やサリチル酸のシグナ ル伝 達活 性 が低 下し たnprl変 異体 にお いて も観 察さ れた .すな わち,エリシターによるCAD1遺伝 子の 発現 誘導は,サリチル酸シグナルとは異なる制御経路による ことを明らかにした.これらの結 果よ り,CAD1遺伝子の発現は,サリチル酸依存経路だけでなくサ リチル酸非依存経路によっても制 御されていると結論した,

CAD1が関 与す る 植物 免疫 ネッ トワ ーク に関 する 分子 遺伝 学的 解析

  cadl変具体は,恒常 的な細胞死形質やサリチル酸の顕著な蓄積が観察される .そこで,CAD1とサ リチル酸合成系の制御 シグナル伝達経路との関係に着目し,分子遺伝学的解析 を試みた,サリチル 酸合 成を 正に 制 御す るタ ンパ ク質 が欠 損し たpaロを 変具体およびサリチル酸 合成酵素が欠損した 釘彪変異体についてca甜変異体との二重変異体をそれぞれ作製した.その結果 ,両二重変異体では ca甜変異体の細胞死形 質は完全に抑制されなかった,また,これら二重変異体 における病原性細菌 に対する抵抗性を検討 した結果,ca田単独の変異体と同様の抵抗性を維持して いた.従って,CAD1 は,サリチル酸生合成 の抑制に関与するだけでなく,これ以外にも植物免疫に 対する正の因子を抑 制し てい るこ と が示 唆さ れた .

  そ こで ,釘 カca田 二重 変異 体に 変異 原処 理を 施し ,ca田形質から野生型へ の復帰変具体の単離 を行った,その結果, 細胞死形質が抑制され,病原性細菌に対する抵抗性が野 生型よりも低下した 変異 体,c卸| (dセ 塑甜 め曲IeロUオaカf皇 伽マPsjsf鋤ceDを 単離 した .CAN1はCADl制御下の新 たな 植物 免疫 機 構の 正の 制御 因子 であ ると 結論 した ,

植物免疫を負に制御するシロイヌナ ズナ転写因子DEAR1の解析

  FOX Hunting Systemを用いてシロイヌナズナのgainーof−function型細胞死形質変異体を単離した,

本過 剰発 現体 (OxDEARl)は,ロゼット葉に 病斑様の細胞死が恒常的に引き起こされ,セネッセンス が促 進き れる 特 徴を 持つ .OxDEAR1の 導入 遺伝子DEARl (DREB and EAR motif protein)は,DREBド メイ ンとEARド メイ ンを 持つ 転写 抑制 因子 をコードしており,これが過剰発現していることを確認 した.

DEAR1の遺 伝子 発現 は病 原体 感染 シグ ナル によって誘導された.OxDEAR1では,1)病原体抵抗性遺 伝子 の発 現上 昇 ,2)サ リチ ル酸 の内 生量 の 増大 が観 察さ れた .これ らの結果よりOxDEAR1が示す 細胞 死は ,病 原 体に 対す る抵 抗性 獲得 を目的とした戦略的細胞死であ ると結諭した.DEAR1の遺伝 子発 現は 低温 処 理に よっ ても 誘導 され た.OxDEAR1で は,1)DREBIAお よ びrd29Aなど の低 温誘導 性遺 伝子 の多 くが抑制され,2)耐凍性が低下していることが観察され た.これらの結果からDEAR1 は低 温応 答の ホ メオ スタ シス を保 つ役 割も担っていると考えられた. 以上の結果から,DEAR1は病 原体 応答 と低 温 応答 の両 方に 関与 する ことが明らかとなった,すなわ ち,DEAR1は生物的ストレス およ び非 生物 的 スト レス に関 する シグ ナル 伝達 経路 のク ロス トー クの鍵となる抑制型転写制御分 子と考えられる,

  これらの研究業績により,著者は,北海道大学博士( 理学)の学位を授与される資格があるもの と認める.  ・つ1ワ−

参照

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