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博士(農学)栗原光規 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)栗原光規 学位論文題名

気候温暖化に対応した乳牛の飼養法

―エネルギ―代謝に基づく技術評価ー

学位論文内容の要旨

  わが国の西南暖地では,高温多湿に起因する乳量,乳成分率および受胎率等 の低下が従来から酪農経営上大きな問題となっている。一方,近年,地球規模 での気候温暖化が指摘され,温室効果ガスのーつであるメタンの主な発生源と して,水田とともに反芻家畜が問題とされている。したがって,気候温暖化に 対応した乳牛の飼養法を解明するためには,@気候温暖化時における乳牛の生 産性の変動を正確に把握するとともに,◎高温時に乳牛が効率的に利用し得る 給与飼料の条件を明らかにし,◎温室効果ガスである乳牛からのメタン発生量 を最小限にし,かつ,摂取エネルギーの生産への配分およびその利用効率を高 める飼養学的研究が必要である。しかし,気候温暖化を乳牛の生産性変動要因 として捉え,かつ,乳牛が気候温暖化の要因であるメタンの発生源でもあると の観点にたって,乳牛飼養技術を総合的に検討した研究は,現在までほとんど ない。

  そこで,本研究は,気候温暖化が乳生産に及ばす最も大きな影響な気温の上 昇に起因するとの観点から,高温時における乳牛の給与飼料とその飼料摂取に 伴う熱増加,メタン発生およびエネルギー収支との関係を解析することにより,

気候温暖化に対応した乳牛の飼養法をエネルギー代謝の視点から技術評価する ことを目的とした。

  緒言では,本研究と関わりのある既往の研究報告について紹介,論述し,本 研究を行うに到った経緯,ならびに,本研究の目的および意義等を記述した。

  第u章では,「高温環境下における粗飼料選択の要件」と題して,高温およ び給与粗飼料が乳牛の生理機能およびエネルギー収支等に及ぼす影響を検討し,

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気候温暖化時における給与粗飼料が具備すべき条件を明らかにした。第m章で は,「高温環境下において給与飼料が乳牛のメタン発生量およびエネルギー収 支に及ばす影響の評価」と題して,高温環境下における泌乳牛の生理機能およ びエネルギー収支等と給与飼料との関係を検討し,メタン発生量が少なく,か つ,気候温暖化時に乳生産を最大にする給与飼料の特性を明らかにした。第IV 章では,第II章,第m章の実験で得た成果を基に,気候温暖化に対応した乳牛 の飼養法を総合的に検討した。

  以 上の 検討 から得 られ た主 な研究 成果 の概 要倣 ,以下のとおりである。

  1)気 候温 暖化 によ り,わが国の各地域の気温が平均で2から4℃高まった 場合には,乳量および乳成分生産量の低下は現状と比較して,さらに10および 15%程度大きくなることが明らかになった。

  2)高温時には,代謝率の高い飼料を乳牛に給与することにより,体内から の熱負荷となる飼料摂取に伴う熱増加量を減少させることが可能となる。また 高温時のおいては,摂取飼料の代謝率が高いほど,乳牛の代謝エネルギー(ME) 摂取量および摂取エネルギーの生産への配分害4合が高まることが明らかとなっ た。

  3)パーム油由来脂肪酸カルシウムの可消化養分総量は,約170%と高いこ とから,給与飼料中に組み入れることにより乳牛の養分摂取量の低下を抑制し うることが示された。脂肪酸カルシウムと酢酸ナトリウムの混合物は,ME含 量が高く,乳脂串を商める傾向にあるが,乳蛋白質率を低下させる傾向もある ことから,乳蛋白質率の高い牛群に対してであれぱ,高温時におけるエネルギ ー 摂 取 量 お よ び 乳 脂 率 低 下 を 抑 制 す る た め に 利 用 で き る 。   4)気候温暖化に影響する乳牛からの1日当たルメタン発生量は,乾物摂取 量の低下とともに高温時に低下したが,乾物摂取量lkg当たりのメタン発生量 は,30℃において増加することが示された。しかし,濃厚飼料の摂取割合が高 い場合には,乾物摂取量lkg当たりのメタン発生量は高温の影響を受けなかった。

また乾物摂取量1kg当たりのメタン発生量は,摂取飼料の粗蛋白質含量および ME含量が高いほど低減した。乳牛からのメタン発生量に及ばす脂肪酸カルシ ウムの影響は,濃厚飼料多紿時には認められないが,濃厚飼料の給与割合が飼 料 全 体 の 50% 程 度 で あ れ ば 低 減 効 果 が あ る と 考 え ら れ た 。

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  5)18〜32℃における乳牛の維持に要する正味エネルギー量は,1日当たり 82.1kcal/体重kgo.75であった。また維持に要するME量は,高温時において 約10%増加したが,その増加割合は代謝率の高い飼料ほど少ない傾向にあった。

  6)泌乳牛のエネルギー要求量も,高温時に増加するが,その主な要因は維 持 に要 するME量の 増加 であり,生産に配分されたMEの乳および体組織への 変換効率には明かな温度間差はをく,約61%であった。乳エネルギー含量と乳 脂串との関係には環境温度の影響は認められず,乳脂率4%の牛乳の正味エネ ルギーはlkg当たり.729 kcalであり,乳生産に要するME量は4%脂肪補正乳l kg当たり1‑195 kcalと推定された。

  7)以上の成果にもとづき気候温暖化時において乳牛のME摂取量を最大と し,また,摂取エネルギーの生産への配分割合を高め,さらに,乳牛の体内か らの熱負荷を最小限とするためには,乳牛の摂取飼料の代謝率を高めるような 飼料構成にすることが必要であると結諭した。

  以上のように,本研究では,乳牛の給与飼料とその飼料摂取に伴う熱増加,

メタン発生およびエネルギー収支との関係を環境温度との関連で体系的に解明 したことにより,気候温暖化に対応した乳牛の飼養技術策定のための基礎的新 知見が得られた。

(4)

学 位 論 文 審 査の 要 旨 主査

副査 副査

教授 教授 助教授

朝日田 上山 大久保

学 位 論 文 題 名

康 司 英 一 正 彦

気 候 温 暖 化 に 対 応 し た 乳 牛 の 飼 養 法

一 エ ネ ル ギ ― 代 謝 に 基 づ く 技 術 評 価 ―

  本 論 文 は , 緒 言 な ら び に 本 論3章 よ り 構 成 さ れ て お り , 表37, 図11, 引 用 文 献 210を 含 む 総 頁 数178の 和 文 論 文 で あ る 。 他 に , 参 考 論 文39編 が 添 え られ て い る。

  気 候 の 温 暖 化 が , 乳 生 産 に 及 ぼ す 最 も 大 き な 影 響 は 気 温 の 上 昇 に 起 因 す る 。 一 方 , 乳 牛 は , 気 候 温 暖 化 を 促 進 す る 温 室 効 果 ガ ス で あ る メ タ ン の 主 な 発 生 源

( 第 一胃 内 発 酵に 由 来 ,そ の 董 は一 般 に 摂 取総 エ ネ ルギ ー 量 の10% に相 当)の ーつ と 指 摘 さ れ て い る 。 し か し , 気 候 温 暖 化 を 乳 牛 の 生 産 性 変 動 要 因 と し て 捉 え , か つ , 乳 牛 が 気 候 温 暖 化 の 要 因 で あ る メ タ ン の 発 生 源 で も あ る と の 観 点 に た っ て , 乳 牛 飼 養 技 術 を 総 合 的 に 検 討 し た 研 究 は , 現 在 ま で ほ と ん ど な い 。   そ こ で , 著 者 は , 高 温 時 に お け る 乳 牛 の 給 与 飼 料 と そ の 飼 料 摂 取 に 伴 う 「 熱 増 加 (HI) 」 , メ タ ン 発 生 お よ び エ ネ ル ギ ー 収 支 と の 関 係 を 解 析 す る こ と に よ り , 気 候 温 暖 化 に 対 応 し た 乳 牛 の 飼 養 法 を 個 体 レ ベ ル で の エ ネ ル ギ ー 代 謝 の 視 点 か ら 技 術 評 価 す る こ と を 目 的 と し て 本 研 究 を 実 施 し た 。 そ の 主 な 研 究 成 果 の 概 要 は, 以 下 のと お り であ る 。

  1) 気 候 温 暖 化 に よ り , わ が 国 の 各 地 域 の 気 温 が 平 均 で2か ら4℃ 高 ま っ た 場 合 に は , 夏 季 高 温 時 の 乳 量 お よ び 乳 成 分 生 産 量 の 低 下 量 は 現 状 と 比 較 し て , さ ら に10お よび15%程 度 大 きく な る も のと 推 定 され た 。

  2) 高 温 時 に は , 「 代 謝 率 」 の 高 い 飼 料 を 乳 牛 に 給 与 す る こ と に よ り , 体 内 か ら の 熱 負 荷 と な る 飼 料 摂 取 に 伴 うHI量 を 減 少 さ せ る こ と が 可 能 と な る 。 ま

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た高温時においては,摂取飼料の代謝率が高いほど,乳牛の「代謝エネルギー

(ME)」摂取量および摂取エネルギーの生産への配分割合が高まることが明ら かとなった。

  3)パーム油由来脂肪酸カルシウムの可消化養分総量は,約170%と高いこ とから,これを飼料に配合することにより乳牛の養分摂取量の低下を抑制しう ることが示された。また,脂肪酸カルシウムと酢酸ナトリウムの混合物は,M E含量が商く,乳脂率を商める傾向にあるが,乳蛋白質率を低下させる傾向も あることから,乳蛋白質率の高い牛群に対してであれば,高温時におけるエネ ル ギ ー 摂 取 量 お よ び 乳 脂 率 低 下 を 抑 制 す る た め に 利 用 し う る 。   4)気候温暖化に影響する乳牛からのメタン発生量は,乾物摂取量lkg当たり では30℃において増加することが示された。しかし,濃厚飼料の摂取割合が高 い場合には,乾物摂取量lkg当たりのメタン発生量弦高温の影響を受けなかった。

また乾物摂取量lkg当たりのメタン発生量は,摂取飼料の粗蛋白質含量および ME含量が高いほど低減した。乳牛からのメタン発生量に及ばす脂肪酸カルシ ウムの影響は,濃厚飼料多紿時には認められないが,濃厚飼料の給与割合が飼 料全体の50%程度ならば低減効果があると考えられた。

  5)18〜32℃における乳牛の体維持に要する「正味エネルギー」量は,1日 当たり82.1 kcal/体重kgo. ‑5であった。また維持に要するME量は,高温時に おいて約10%増加したが,その増加割合漣代謝率の高い飼料ほど少ない傾向が あった。

  6)泌乳牛のエネルギー要求量も,高温時に増加するが,その主な要因は維 持に 要す るME量 の増 加で あり ,生産 に配 分さ れたMEの乳 および体組織への 変換効率には明かな温度問差ななく,約61%であった。乳脂率4%の牛乳の正 味エ ネル ギーはl kg当た り729 kcalであり,乳生産に要するME量は4%脂肪 補正乳lkg当たり1195 kcalと推定された。

  7)以 上の 成果 にもと づき 気候温暖化時において乳牛のME摂取量を最大と し,また,摂取エネルギーの生産への配分割合を高め,さらに,乳牛の体内か らの熱負荷を最小限とするためには,乳牛の摂取飼料の代謝率を高めるような 飼料構成にすることが必要であることと結諭した。

  以上のように,本研究淋,気候温暖化に対応した乳牛の飼養法についてエネ

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ルギー代謝の視点から技術評価を加えることにより,多くの新知見を提供して おり,学術的に高く評価されるぱかりでなく,実用的にも夏季高温時における 乳 牛 の 飼 養 管 理 技 術 の 確 立 に 大 き く 寄 与 す る も の で あ る 。   よって,審査員一同は,別に行った学力確認試験の結果と合わせて,本論文 の提出者粟原光規は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるもの と認定した。

参照

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