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博 士 ( 医 学 ) 矢 野 陽 子 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 矢 野 陽 子

学 位 論 文 題 名

マ ウ ス 白 血 病 細 胞 に 認 め ら れ た N ‑rnyc 遺 伝 子 の 活 性 化

    学位 論文内 容の要 旨

|.目  的

  AKRマウ ス は 胸 腺 リ ンパ 腫 を 好 発 する が , そ の 要因 の1っ と して は ,内 在性レ トロウ イルス が胸腺 上皮を 通し て胸腺 リンパ 球に感 染し、 プロ ウイル スとし てゲノ ム中 に挿入されることによ る。骨 髄キメ ラは ,移植 された 胸腺リンパ球に自血病ウイルスが宿主の胸腺上皮を通して感染し,

胸腺リ ンパ腫 が誘 導され る。こ の場合 のりン パ腫 発生の メカニ ズムに っい ては不明な点が多い。

AKR,C57BL710,BALB/c系 統 に お い て ,Molo ney白 血 病 ウ イ ル ス (MuLV) ,mink ce11focusformingvirus(MCF) を 実 験 的に 感 染 さ せ るこ と に よ り , 胸腺 リ ン パ 腫 の発 症 に 強く か か わ っ て いる 遺 伝 子 と して , 細 胞 の 増殖 を 制 御 す るc一mycとチ口 シン キナ― ゼ遺伝 子 群のpfm―1の2っ の 癌 遺伝 子 が 注 目 され る よ う に なっ た 。 さ ら に最 近 に な っ て ,Nー げ りcの 3 側 にMoloneyMuLVが 挿 入 し た 例 が 報 告 さ れ た 。 本 研 究 は ,17株 の 胸腺 自 血 病 細 胞株 に おけ るMuLVの 挿 入 部 位 を解 析 し , 癌 遺伝 子 と の 関 わり と り ン パ 腫 発症メ カニ ズムに っいて 検 討する ことを 目的 とした 。

1| . 実 験 材 料お よ び 方 法

1. AKRマ ウ ス ,EBALB7c‑*AKR]お よ び 〔 (BALB/cxB6)FI→AKR]骨 髄 キ メ ラ マウ ス に お い て自 然 発 症 し た胸 腺 リ ン パ 腫 から 樹 立 され た17の 胸腺白 血病細 胞株 を用い た。

2. Thyl.l対 立 形 質 の 検 出 に はFITCラ ベ ル 抗Thyl. ImAbを 用 い , 抗Thyl.2は ビ オ チ ン 化   し た 抗Thyl. 2mAbとPEラ ベ ル 二次 抗 体 を 用 い て検 出 し た 。

3. サ ザ ン 法 によ る 解 析 は 高分 子DNAを制 限 酵 素 で 消化 後,O.8% アガロ ースゲ ルで電 気泳 動 を行 い ,ioX SSCでニ ト 口 セ ル ロー ル 膜 に 移 した 。 ハ イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョ ンは ニック トラ ン   ス レ ー 卜 し た ブ ロ ーブ を 用 い ,50% ホ ル ム アミ ド ,6X SSPE,5xデ ン ハル ト 溶 液 ,0.1%   ド デ シ ル 硫酸 ナ ト リ ウ ムと100〃 g7mlの 一 本 鎖 大 腸 菌DNAを 含む 溶 液 中 で42℃で行 った 。 ハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン 後 , 二 卜 口 セ ル 口 ー ス 膜 は 最 後 にo.iX SSCと0.1%SDSで60℃ で

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  洗った。サザンおよび以下に述べるノーザンハイブリダイゼーションに用いたDNAブ口一   ブは ,マウ スN―mycの 約7.7kb Eco RI断片,N―mycの5 flanking領域 と第1エ クソ   ン の 半 分 に担 当 す る1. 8kbのEco RI7Bam HI断 片,N‑mycの第3工 クソン の非翻 訳領   域に 担当す るO, 8kbのHincH7Eco RI断片,マウスc―mycの第2,第3エクソンを含む約   6 kbのBam HI7Bam HI断 片の他 に,v―myc,v‑ fos,v‑abl,マウスpfm―1の0. 9kb   のB・amHI/B・amHI断片, マウス £cた全cDNA,マウ スL一′nメcの0.4KbのBぎfII/ Bぎ!II断片を用いた。

4.mRNAの 解 析は ,totalRNAをChomczynskiとSacchiの方 法 の 変 化に よ って抽 出し,

RNA(20〃g) を2.2Mの ホ ル ム アル デ ヒ ド を含 む1% のアガ 口一ス ゲルで分 画し,20X   SSCを用 いてニト口セルロース膜に移した。ハイブリダゼーションの条件は250〃gの1本 鎖DNAを 用いた 以外は サザンハ イブリ ダイゼーションと同じである。サイク口ヘキシミド   (CHX) に よるC―mツcとN―rnツcmRNAの ス ーバ ーイン ダクショ ンのた めに,lX106 細 胞/mlをO.5% 胎 仔血 清 を 含 むPRM11640中で ,lO肛g/mlのCHXを付 加し たもの と   し な い も の で ,2.5時 間 培養 し た 。 その 後 全RNAを上 記 に し たが っ て 抽 出し た 。 5.Polymerasechainreaction(PCR)と 塩 基 配 列の 決 定 は ,PCRは ゲ ノ ムDNAl〃gを 鋳型とし,55℃1分,72℃1分の反応を25サイクル,Cetusの増幅機を用いて行った。増幅さ れ たDNAは2% の ア ガ 口一 ス 電 気 泳動 で 分 析 した 。増幅 されたN―げッcとLTRの挿 入部 を 含むDNA断 片 をゲ ル か ら 溶出 し ,TaqDNAポリ メラ ーゼを 用いたジ デオキ シ法の 変法 でシー クエン スした 。PCRに用 いた2っのプライマーとN―mツcの6,293から6.312の配列 をシークエンスのプライマ―として用いた。

m. 結  果

  この 実験に 用いた 細胞株 のThyl表現 抗原はCAK群では 骨髄細 胞のdonerの持つThyl.2抗 原を持ち,doner由来の細胞が腫瘍化したことを示していた。サザン法による分析では,17細 胞 株 の う ち3っ の 細 胞 株(CAKl.3,NAK39. お よ びCAK28)にc‑myc近 傍へ の レ ト ロウ イルスの挿入によると思われる再構成バンドが認められた。5っの細胞株(CAK4.4,CAK28, NAK34,NAK39およ びL176)にpfmー1近 傍での レトロ ウイル スの挿 入を確 認した。3っの 細 胞 株 (CAK20,NAK36お よ びL176)にN‑myc近 傍 にMuLVの 挿 入 を 認 め た 。CAK28, NAK39はpfmー1とc ‑myc,L176はpim―1とN‑mycの2っ の 遺 伝 子 の 近 傍 に 挿入 が 見 出 さ れた 。CAK4.4,NAK13,NAK36,NAK39お よ びL176にっいて これら の細胞 株から 抽

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出 し たDNAをHindlII切 断 後 ,N‑myc全 体 ,N‑ mycの5 プ ロ ー ブ ,N‑mycの3 プロー ブを用 いて解 析した。MuLVの挿入はcoding領域から61塩基対下流に存在する単一の Hinc lI切断点の近くで起こっていることが明らかになった。c―myb,c‑ fos,c‑abl,lckお よびL ‑mycにっいて もサザ ン解析 を行っ たが,MulVの挿入 はみら れなか った。CAN20, NAK36お よ びL176の3細胞 株 に お けるLTR挿 入 部 位を 調 べる ために ,N−mycの 終始コ ド ン か ら 上 流 の 部 分 とMuLV LTRの 間 のDNA断 片 をPCRに よ っ て増 幅 し た 。N−mycの セ ンスプ ライマ ーとU3アンチセンスプライマーを用いた時,約130塩基対の断片がL176,NAK 36お よ びCAK20の 細 胞株 か ら 増幅さ れ,MuLVはN‑mycと同 じ向き に挿入 されて いるこ と が示 さ れた。 次に,PCRで増幅 された 約130bpのDNA断片の塩 基配列 を決定 した。L176と NAK36では 挿入部位 は転写終止コドンから18塩基下流であったが,CAK20では20塩基下流で あっ た 。L176とNAK36のLTR U3部 分的塩基 配列は 同一で あった が,CAK20で挿入さ れた LTR U3配列 はいく っかの位置で異なっていた。ノーザン法による解析では,pfm―1の転写 は,CAK4.4,CAK28,NAK34お よ び ,NAK39株 に 認め ら れ , これ ら4株 はpim―1遺伝子 領 域 のDNA再 編 成 を 示 し て い た。N―myc mRNAの発 現 はN―mycの3 領域 に レ ト 口ウ イルス の挿入 があっ た細胞 株(CAK20,NAK36,L176)にの み認め られ,これらの細胞株で はc ‑myc mRNAの発 現 は な かっ た 。 そ の他 の 細 胞 株で はc‑myc遺 伝 子 の 近傍 の レト 口 ウイ ル ス の 挿入 の 有 無 にか か わ ら ずc ‑mycmRNAは 発 現 して い た 。CHX処理 後 は,c一 mycmRNAの発 現 は 上 昇し た が ,N―myc遺伝子 の3 領 域にウ イルス の挿入を 持つ細 胞株 で は ,cーmycmRNAの 発 現 はCHXで 誘 導 さ れ な か っ た 。 こ れ ら の 細 胞 株 に お け る N―mycの発現はCHXによって影響を受けなかった。

1V.考  案

  マウスのゲノムでのN―myc周辺のレト口ウイルスの挿入は他の研究室からも報告されてい るが,本実験の結果は,自然発症胸腺リンパ腫においてもN―mycの周辺にレトロウイルスの 挿入がみられることを示し,N―myc終止コドン近傍は内在性自血病ウイルスの高頻度な挿入 部位の1っと考 えられ る。mycグループとpim―1遺伝子の共同作用による自血病化のメカニ ズム はAKRマ ウ スに 自 然 発 症し た 胸 腺 リン パ 腫 ば かり で なく, 〔BALB/c→AKR]骨髄キ メラに もあて はめら れ,少なくともマウスの自血病モデルにおいてはpfm―1群とmyc群の2 群の癌遺伝子が発症の十分条件になっている可能性がある。また最近mycグループと協同作用 して腫瘍を発生させる新しい遺伝子がBリンパ腫ではいくっか発見された。mycグループとの

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協同作用でマウスの胸腺リンパ腫を発生させる遺伝子はpim―1の他にもあると思われ,それ らの相互作用がりンパ 腫の悪性化に関与している と思われる。〔BALB/c→AKR]骨髄キメ ラにおいて胸腺リンパ 腫をひきおこすMuLVの性状 にっいては興味深く,CAK20でみとめら れ た 挿 入LTR U3配 列 はL176とNAK36とtま4っ の 位 置 で 異 な り , その 配 列はDetabase LASL―GDB Rel. 71 (GenBank)に は 認 め ら れ な か っ た 。BALB/cとB6が い ず れ もB‑

tropicウイルスに感受 性であるのに対し,AKRはN―tropicに感受性な事実に照らし合わせ る と , CAK20で 挿 入 さ れ たMuLVの 起 源 , 性 状 に っ い て 興 味 が 持 た れ た 。

学位論文審査の要旨

  本研究は,17株の自然発症 白血病細胞株におけるマウス自血病ウイルス(MuLV)の挿入部 位を 解析 し, 癌遺 伝 子と りン パ腫 発症 の 関わ りに っい て 検討 する こと を目的とした。

  〔実験材料および方法〕

1. AKRマ ウ ス ,  EBALB/c‑*AKR]お よ び 〔BALB7cXB6) Fl→AKR]骨 髄 キ メ ラ   マウスにおいて自然発症し た胸腺リンパ腫から樹立さ れた17の自血病細胞株を用いた。

2.MuLV挿入の解析はサザン 法で行った。

3. mRNAの解 析は ,/一ザ ン ハイ ブリ ダイ ゼー ションで行った。mRNAの安定性はサイク   口ヘキシミド(CHX)を用い て解析した。

4, MuLVの挿 入部 位 はpolymerase chain reaction(PCR)と塩基配列 決定によって行っ   た。

〔結果〕

1.こ の実 験 に用 いた 細胞株のThyl表現抗 原fまCAK群では骨髄細胞のdonerのThyl.2抗原   を持ち,doner由来の細胞 が腫瘍化したことを示してい た。

2.サザン法による解析では ,17細胞株のうち3っの細胞 株にc−mycの近傍,5っの細 胞株   にpim―1近 傍 , ま た3っ の 細 胞 株 でNーmyc近 傍 へ のMuLVの 挿 入 を 認 め た 。CAK28

   

(5)

  とNAK39はpim―1とc←myc,L176はpimー1とN‑mycの2っ の 遺 伝 子 の 近 傍 に 挿 入 が見 出 さ れ た 。

    c―myb,c‑fos,c‑abl,lckお よ びL―mycに っ い て も サ ザ ン 解 析 を 行 っ た が ,MuLV の 挿入 は み ら れ なか っ た 。

3.N−mycの 近 傍 へMuLVの 挿 入 の 認 め ら れ た 細 胞 株 のDNAをHind III切 断 後 ,Nーmyc の 全 体 ,N ‑ mycの5 プ 口 ― ブ ,N‑mycの3 プ 口 ー ブ を 用 い て 解 析 し た 。MuLVの 挿 入はcoding領 域 か ら61塩 基 対 下流 に 存 在 す る単 一 のHinc II切断 点 の 近 く で起 こっ ている   こ と 見 い だ した 。

4. CAK20,NAK36お よ びL176の3細 胞 株 に お け るLTR挿 入 部 位 を 調 べ る た め に ,N―myc の 終 止 コ ド ン か ら 上 流 の 部 分 とMuLV LTRの 間 のDNA断 片 をPCRに よ っ て 増 幅 し , MuLVが す べ て N一 mycと 同 じ 向 き に 挿 入 さ れ て い る こ と を 見 い だ し た 。 5. PCRで 増 幅 さ れ た 約130bpのDNA断 片 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。L176とNAK36で は 挿 入 部 位は 転 写 終 止 コド ン か ら18塩 基 対 下流で あった が,CAK20で は20塩 基対下 流であ った。L176   とNAK36で 挿 入 さ れ て い たLTR U3の 部 分 的 塩 基 配 列 は 同 一 で あ っ た が,CAK20で 挿 入 さ れ てい たLTR U3配 列 はい く っ か の 位置 で 異 な っ てい た 。

6. ノ ー ザ ン 法 に よ る解 析 で は ,pf′n―1の転 写 は ,CAK4.4,CAK28,NAK34お よ びNAK39の   4株 に 認 め ら れ , こ れ ら4株 はpz,m−1遺 伝 子 領 域 のDNA再 編 成 を 示 し て い た 。N―myc mRNAの 発 現 はN―mycの3 領 域 にMuLVの 挿 入 が あ っ た 細 胞 株(CAK20,NAK36,   L 176)に の み 認 め ら れ こ れ ら の 細 胞 株 で はcーmycmRNAの 発 現 はな か っ た 。 その 他 の 細 胞 株 で はcーmyc遺 伝 子 の 近 傍 のMuLVの 挿 入 の 有 無 に か か わ ら ずc―myc mRNAは 発 現 し て い た 。CHX処 理 後 は ,c―mycmRNAの 発 現 は 上 昇 し た が ,Nーmyc遺 伝 子 の3 領 域 に ウ イ ル ス の 挿 入 を 持 つ 細 胞 株 で は ,c―mycmRNAの 発 現 は 誘導 さ れ ′ よ かっ た 。 こ れ ら の 細 胞 株 に お け るN―mycの 発 現 はCHXに よ っ て 影 響 を 受 け な か っ た 。

  以 上の口 頭発表 に対し て,葛 巻教 授,武 市教授 から骨 髄キ メラマ ウスを 用いた 理由,N ‑ myc のMuLVに よ る 活 性 化 は 初 期 の り ン パ 腫 で も あ る の か ,N―myc3 側 にMuLVが 選 択 的 に 挿 入 さ れ る 理 由 ,Nーmycが 活 性 化 さ れ て い る 細 胞 株 の 生 物 学 的 な 特 徴 ,c‑myc,N―myc い ず れ にもDNA再構 成 が 認 め ら れな か っ た細 胞株 にっい ての解 釈等に 関し て質問 があっ たが,

申請 者は, 部分 的には 不十分であったが,全体的には,おおむね妥当な回答をしえたと思われた。

その 後,調 査の2教授 の口 頭諮問 を受け ,合格 と判 定され た。

(6)

  本研究の結果は,自然発症胸腺リンパ腫においてもN―mycの翻訳停止コドンの約20塩基下 流にMuLVの挿 入 が見 られ るこ と,Nーmycの遺 伝子 の 恒常 的発 現はc一mycの転写 を抑制 す る こ と 、 〔(BALB/cxB6) Fl→AKR)骨 髄キ メ ラに おい て胸 腺リ ン パ腫 をひ きお こす MuLVはB―tropicの宿 主 域をもっと思われるが,その ようなウイルスのLTRの塩素 配列の 一部を明らかにしたこと などの新知見を含み,博士( 医学)に値する論文と判断された。

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