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博 士 ( 工 学 ) 矢 野 康 英 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 矢 野 康 英

学 位 論 文 題 名

高 速炉 用フ ェラ イ トノ マル テン サイ ト 鋼の 機 械 的 強 度 特 性 に 及 ぼ す 照 射 効 果

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  現在、軽水炉に代わる次世代原子カシステムの実用化に向けて研究開発が展開されている。次世 代原子カシステムの中でも、資源の有効利用と最短のエネルギー確保の観点から、液体金属ナトリ ウム高速炉(以下、高速炉)の実用化が最も有望視されている。この高速炉の開発技術は日本が世 界で最も進んでおり、商業炉としての実用化に向け、国策として着実に展開されている。特に、安 全性確保と高稼働率を有する高速炉開発のための重要課題として、高温・高速中性子照射環境下に 曝される被覆管等の炉心材料の健全性の確保が必要不可欠とされている。とりわけ、炉心材料は、

高速中性子照射環境下で長期間使用する場合に著しい寸法変化(スエリング)を生じると、破損の 要因とをり炉内材料の健全性が損教われることにをる。

従来 は、炉心材料として316鋼等のオーステナイト鋼について、照射研究が展開されてきたが、ス エリング特性の観点から、高照射環境に十分耐え得るのが設計上困難であることが判明し、オース テナイト鋼に代わる材料として、耐スエリング特性に優れているフェライト系材料(フェライト/マ ルテンサイト鋼を含む)が注目されるように改った。しかし教がら、これまでの照射研究のほとん どは、オーステナイト鋼が主であり、フェライト鋼に関する照射データ、特に、炉心材料の照射後 強度特性に関する公表データは極めて少教いのが現状であり、日本独自の研究開発が余儀誼くされ ている。

以上の背景のもとに本研究では、高速炉炉心材料として日本原子力研究開発機構で開発されたllCr フェライト/マルテンサイト鋼(以下、PNC−FMS)について、高速中性子照射下における照射後機械 的特性、照射に伴う微細組織変化、及びこれら組織変化と機械的特性との相関性を明らかにするこ とを目的とした。

  本論文は、6章で構成されている。

  第1章 では、高速炉及び原子力材料開発に関する現状として、高速炉用炉心材料の開発経緯を述 べ る と と も に 、PNC‑FMSを 炉 心 材 料 と し て 適 用 す る う え で の 課 題 と 目 的 を 記 述 し た 。   第2章で は 、 高 速炉 稼 動 時 の温 度 条 件 であ る673〜973Kの 温度範囲 で照射 されたPNC‑FMS被 覆管に関する照射後の機械的特性として、引張及び急速加熱バースト試験による材料特性を評価し た。 その結 果、実稼 動温度 である673Kで高 照射量( 約100dpa)においても設計に十分耐え得る延 性を 有して いること が確認 された 。また 、更に 高温で ある773〜873Kの照射温度範囲でも、照射 後の強度特性は未照射材とほとんど相違し極いものの、この温度以上に誼ると、強度が低下するこ とを見出し、照射温度依存性の観点から、系統的教引張試験と急速加熱バースト試験により比較評 価した結果、急速加熱バースト試験で得られた機械的強度特性の低下は主として照射軟化に起因す     ―85―

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ることが明らかにされた。

  第3章では 、PNCーFMS被 覆管の 炉内ク リープ 破断試 験によ り、炉内強度特性を初めて明らかに した。炉´己材料、特に、被覆管は、高効率化、す教わち高燃焼度化条件での長期間運転サイクルを 実現するために、高速炉運転期間中に破損し顔いことが最も重要である。この観点から、炉内での 寿命評価のために炉内クリープ破断強度評価を行った。その結果、オーステナイト鋼で確認された 照射 前後で の破断 強度低 下は確 認され をかった。これは、PNC−FMSの特性として炉内で破断に至 る第3次クリ ープの出現が遅れる、すをわち、材料変形を促進する応力集中が照射下で発生しがた く、 結晶粒 界をど におけ るクラ ック核 形成を 抑制する 機構が 作用し ている ことが 示唆された。

  第4章では 、PNC‑FMSをラ ッパ管 として 使用す る場合 、照射 後衝撃 特性評価 が必要 であること から、この衝撃特性を内部組織との関連で調べた。ラッパ管に対しては、炉内及び炉外での燃料取 扱い時に燃料集合体の健全性の担保、及び地震時の衝撃荷重等対し脆性破壊が生じ顔い特性が求め られ ており 、その 特性評価として延性‐脆性遷移温度(以下、DBIT)評価を行った。その結果、衝 撃特 性は照 射によ り低下するが、フェライト鋼の鋼種に関わらず約10dpaの照射量で衝撃特性低下 が一 定と誼 ること が示唆 された 。また 、試験片サイズ効果を考慮し、全ての照射材に対するDBTT を定式化した評価を行い、炉内使用中に破壊に至らないことを明らかにした。また、組織観察の解 析に より、DBTTの高 温側への シフト は析出物の分布形態に殆ど影響されず、主としてラスマルテ ン サ イ ト 組 織 ( 以 下 、 ラ ス 組 織 ) の 変 化 に 起 因 す る こ と を 初 め て 明 ら か に し た 。   第5章では 、前章までの照射後の強度特性に及ばす組織の影響を明らかにする目的から、照射温 度673〜943Kで約100dpaま で 照射 し たPNCーFMS被 覆 管 と照 射 温 度 と同 じ温度 での熱 時効材 に おけ る内部 微細組 織観察 を行っ た。そ の結果、照射温度678Kの場合、局所的に若干ポイド形成が 観察されたが、そのポイドスエリング量は高々0.05

  第6章 で は 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 総 括 す る と と も に 、 今 後 の 展 望 等 を 示 し た 。 本研 究では 、高速 炉炉心 材料使 用条件 下でのPNC‑FMSの高速 中性子照射後の強度特性及び照射中 の炉内クリープ強度の評価と中性子照射後の内部微細組織観察から、本鋼のラス組織の回復挙動と 析出形成分布を観察評価し、照射後強度特性は主要内部組織であるラス組織の回復、す極わち、内 部組織の安定性に強く依存することがはじめて明らかにされ、微細組織の系統的観察解析に基づき 照射 による 機械的 特性変 化が相 関的に 評価可 能であり 、PNC‑FMSは優れた特性を有していること が実証された。

  以 上、本論 文では 、高速 炉炉心 材料と して開 発され たPNC‑FMSについて高速炉運転条件を考慮 し、照射後強度特性と微細組織解析を実施した。その結果、内部組織は高温高照射量まで安定であ り、機械的強度特性も比較的高温まで保持されることを実証した。また、高速炉環境で使用される 材料特性は内部組織と密接に関連して相関しており、機械的強度特性は組織解析から半定量的に評 価できることを初めて明らかにした。これにより、本研究成果は、今後の実証炉の高速炉炉心材料 設計ヘ適用に有効であることが示された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

高速炉用フェライト/マルテンサイト鋼の 機械的強度特性に及ぼす照射効果

  現在、軽水炉に代わる次世代原子カシステムの実用化に向けて研究開発が展開されている。次世 代原子カシステムの中でも、資源の有効利用と最短のエネルギー確保の観点から、液体金属ナトリ ウム高速炉(以下、高速炉)の実用化が最も有望視されている。この高速炉の開発技術は日本が世 界で最も進んでおり、商業炉としての実用化に向け、国策として着実に展開されている。特に、安 全性確保と高稼働率を有する高速炉開発のための重要課題として、高温・高速中性子照射環境下に 曝される被覆管等の炉心材料の健全性の確保が必要不可欠とされている。とりわけ、炉心材料は、

高速中性子照射環境下で長期間使用する場合に著しい寸法変化(スエリング)を生じると、破損の 要因と抵り炉内材料の健全性が損教われることに教る。

従来 は、炉 心材料として316鋼等のオーステナイト鋼について、照射研究が展開されてきたが、ス エリング特性の観点から、高照射環境に十分耐え得るのが設計上困難であることが判明し、オース テナイト鋼に代わる材料として、耐スエリング特性に優れているフェライト系材料(フェライト/マ ルテ ンサイ ト鋼を含む1が注目されるようにをった。しかし教がら、これまでの照射研究のほとん どは、オーステナイト鋼が主であり、フェライト鋼に関する照射データ、特に、炉心材料の照射後 強度特性に関する公表データは極めて少数いのが現状であり、日本独自の研究開発が余儀誼くされ ている。

以上の背景のもとに本研究では、高速炉炉心材料として日本原子力研究開発機構で開発されたllCr フェライト/マルテンサイト鋼(以下、PNC‑FMS)について、高速中性子照射下における照射後機械 的特性、照射に伴う微細組織変化、及びこれら組織変化と機械的特性との相関性を明らかにするこ とを目的とした。

  本論文は、6章で構成されている。

  第1章 では、高速炉及び原子力材料開発に関する現状として、高速炉用炉心材料の開発経緯を述 べ る と と も に 、PNC‑FMSを 炉 心 材 料 と し て 適 用 す る う え で の 課 題 と 目 的 を 記 述 し た 。   第2章で は 、 高 速炉 稼 動 時 の温 度 条 件である673〜973Kの 温度範 囲で照 射され たPNC−FMS被 覆管に関する照射後の機械的特性として、引張及び急速加熱バースト試験による材料特性を評価し

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一 明

治 樹

精 善

重 環

辺 柳

飼 山

渡 鬼

鵜 柴

授 授

授 授

   

   

教 教

教 准

査 査

査 査

主 副

副 副

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た 。そ の結 果 、実稼動 温度である673Kで高照射量 (約100dpa)においても設計 に十分耐え得る延 性 を有 して い ることが 確認された。また、更に高 温である773〜873Kの照射温 度範囲でも、照射 後の強度特 性は未照射材とほとんど相 違し抵いものの、この温度以上に顔ると、強度が低下するこ とを見出し 、照射温度依存性の観点か ら、系統的を引張試験と急速加熱バースト試験により比較評 価した結果 、急速加熱バースト試験で 得られた機械的強度特性の低下は主として照射軟化に起因す ることが明らかにされた。

  第3章で は、PNC‑FMS被覆 管の 炉 内ク リープ破断 試験により、炉内強度特性 を初めて明らかに した。炉´ヒ席オ料、特に、被覆管は、高効率化、す教わち高燃焼度化条件での長期間運転サイクルを 実現するた めに、高速炉運転期間中に 破損しないことが最も重要である。この観点から、炉内での 寿命評価の ために炉内クリープ破断強 度評価を行った。その結果、オーステナイト鋼で確認された 照 射前 後で の 破断強度 低下は確認され顔かった。 これは、PNC‑FMSの特性とし て炉内で破断に至 る第3次ク リープの出現が遅れる、す顔 わち、材料変形を促進する 応力集中が照射下で発生しがた く 、結 晶粒 界 をど にお ける クラ ッ ク核 形成を抑制 する機構が作用しているこ とが示唆された。

  第4章で は、PNC‑FMSをラ ッパ 管 とし て使用する 場合、照射後衝撃特性評価 が必要であること から、この 衝撃特性を内部組織との関 連で調べた。ラッパ管に対しては、炉内及び炉外での燃料取 扱い時に燃 料集合体の健全性の担保、 及び地震時の衝撃荷重等対し脆性破壊が生じ誼い特性が求め られており 、その特性評価として延性 ‐脆性遷移温度(以下、DBTT)評価を行った。その結果、衝 撃特性は照 射により低下するが、フェ ライト鋼の鋼種に関わらず約10dpaの照射量で衝撃特性低下 が一定と次 ることが示唆された。また 、試験片サイズ効果を考慮し 、全ての照射材に対するDBTT を定式化し た評価を行い、炉内使用中 に破壊に至ら教いことを明らかにした。また、組織観察の解 析により、DBTTの高温側へのシフトは 析出物の分布形態に殆ど影響 されず、主としてラスマルテ ン サ イ ト 組 織 ( 以 下 、 ラ ス 組 織 ) の 変 化 に 起 因 す る こ と を 初 め て 明 ら か に し た 。   第5章で は、前章までの照射後の強度 特性に及ばす組織の影響を 明らかにする目的から、照射温 度673〜943Kで 約100dpaま で 照 射 し たPNC‑FMS被 覆管 と照 射 温度 と同 じ温 度で の 熱時 効材 に おける内部微細組織観察を行った。

  第6章 で は 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 総 括 す る と と も に 、 今 後 の 展 望 等 を 示 し た 。 本 研究 では 、 高速炉炉 心材料使用条件下でのPNC‑FMSの高速中性子照射後の強 度特性及び照射中 の炉内クリ ープ強度の評価と中性子照 射後の内部微細組織観察から、本鋼のラス組織の回復挙動と 析出形成分 布を観察評価し、照射後強 度特性は主要内部組織であるラス組織の安定性に強く依存す ることがは じめて明らかにされ、微細 組織の系統的観察解析に基づき照射による機械的特性変化が 相 関 的 に 評 価 可 能 で あ り 、PNCーFMSは 優 れ た 特 性 を 有 し て い る こ と が 実 証 さ れ た 。   以上 、本 論 文では、 高速炉炉心材料として開発 されたPNC‑FMSについて高速 炉運転条件を考慮 し、照射後 強度特性と微細組織解析を 実施した。その結果、内部組織は高温高照射量まで安定であ り、機械的 強度特性も比較的高温まで 保持されることを実証した。また、高速炉環境で使用される 材料特性は 内部組織と密接に関連して 相関しており、機械的強度特性は組織解析から半定量的に評 価できることを初めて明らかにした。これにより、本研究成果は、今後の実証炉の高速炉炉´ヽし、材料 設計へ適用 に有効であることが示され た。これらの知見は、原子力材料学教らびに原子力工学に貢 献するところ大誼るものがある。よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格が あるものと認める。

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