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博 士 ( 歯 学 ) 山 本 悟

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 山 本   悟

学 位 論 文 題 名

成熟ラットおよび実験的骨粗鬆症ラットの骨形成に及ぼす微小電流刺激

    ならびに骨膜剥離の影響

    学位論文内容の要旨

  欠損補綴における有床義歯や歯科インプラントによる治療では,顎堤 の再建と保持は治療の成否を左右する重要な因子のーっと考えられてい る.本研究では,.高齢者ならぴに骨粗鬆症患者などの骨代謝活性の低下 していると考えられる患者の顎骨において,微小電流刺激および骨膜剥 離の併用による骨形成促進の可能性について検討する目的で,成熟ラッ トおよぴ実験的骨粗鬆症ラットを用い,その頭蓋骨に微小電流刺激およ ぴ骨 膜剥 離によ る刺 激を与 えた 場合の 骨形成促進効果について検討し た.

実験材料と方法 く実験1>

  実験動物として生後26週齢の成熟ラットを用い,実験グループとして 剥離 ・通電 群,通電群,剥離群,無処置群の4群に分けた.剥離.通電 群においては,頭蓋部皮膚およぴ同骨膜を切開し,骨膜剥離子にて頭蓋 骨骨膜を剥離,復位させた後,電気刺激装置を装着した.電気刺激装置 は 電 源に3.OVのりチ ウム 電池を 用い ,220nの抵 抗を接 続し ,約10メA の直流定電流とし,電極には純チタン箔を用いた.頭蓋骨骨膜上に装置 の電極部を縫合,固定し,背部皮下に電源部を埋入,装着し,皮膚縫合 した.通電群では頭蓋骨骨膜を剥離せず,電気刺激装置を装着した.剥 離群では頭蓋骨骨膜を剥離,復位のみの外科的処置を行った.無処置群 は,外科的処置を加えない群とした.実験期間中,硬組織を標識する目 的で ,術前 および屠殺前日にカルセイン,術後1週にテトラサイクリン を腹 腔内に 投与 した. 実験 開始2週後に 屠殺 し,H.E染色を施した脱灰 標本 と,Villanueva Bone染色を施した非脱灰標本を作製し,骨の形成

(2)

過程および骨の性状について病理組織学的,組織計量学的に検索した.

く実験2冫

  実験動物として生後13週齢の雌性Wistar系ラット47匹を用いた.その うち40匹について卵巣を摘出し,卵巣摘出群(以下,OVX群と略す)と した.7匹については偽手術を行い,Sham群とした.手術終了後より,

OVX群には0.02%カルシウム含有の低カルシウム食を,Sham群には,通 常食を与え13週間飼育し,生後26週齢の実験的骨粗鬆症ラットを作製し た.OVX群に対し て実験1と 同様な処置を施し,OVX‑剥離・通電群,

OVX‑通 電群 ,OVX‑剥 離群,OVX‑無処置群とした .Sham群 には実験1 の剥離・通電群と同様の処置を施し,Sham‑剥離・通電群とした.実験 期間は2週間とし,実験1と同様に,病理組織学的検索,およぴ組織計量 学的検索を行った.

結果

く実験1>

病理組織学的所見

無処置群:頭蓋骨骨膜(以下,骨膜)は全体にわたり2〜3層の線維層 からなっており,その外側は少数の血管を含む鬆疎な線維性組織から なっていた.骨の表面には扁平化した骨芽細胞が一層配列しており,新 生骨は全体的にはほとんど認められないが,側頭筋付着部付近において 極少量添加されていた.

剥離群:骨膜は無処置群とほぼ同様な所見を示していたが,一部におい てやや肥厚している個所もみられた.母床骨表層には全体的に一層の新 生骨が認められ,特に側頭筋付着部付近に少量の新生骨が認められた.

通電群:骨膜は剥離群に比し全体的に厚みを増しており,類円形で豊富 な細胞質を有する骨芽細胞が新生骨表面に配列していた.その周囲には 線維芽細胞や拡張した毛細血管に富む肉芽組織が見られた.新生骨は剥 離群に比し多く,特に側頭筋付着部に多い傾向を示したが,頭蓋骨平坦 部,矢状縫合部においても認められた..新生骨内部には,1週後に投与 したテトラサイクリンの瀰慢性沈着を示す緑黄色を呈する石灰化の比較 的高い部分や,Villanueva bone染色で燈色を呈する石灰化の低い部分が 見 ら れ , 骨 髄 腔 周 囲 に は 赤 色 を 呈 す る 類 骨 が 見 ら れ た ・ 剥離・通電群:骨膜は全体にわたり4〜5層の線維層から成っており,

他の群に比し厚みを増していた.骨膜周囲には多数の線維芽細胞や拡張

(3)

した毛細血管に富む肉芽組織が見られた.骨芽細胞は類円形または立方 形をしており,好塩基性で豊富な細胞質を有し,新生骨の表面に密に配 列していた.母床骨と連続した新生骨は,主に1週後に投与したテトラ サイクリンの瀰慢性沈着のみられる緑黄色を呈した石灰化の比較的高い 骨で,側頭筋付着部付近,頭蓋骨平坦部,矢状縫合部にかけて多量に認 め られた.また,一部 の新生骨中には骨髄腔様構造も認められた・

組織計量学的所見

  通電群,剥離群共に新生骨量は無処置群に比し有意に多い値を示した

(Pく0.05)が,通電群と剥離群と比較した場合,有意な差はないものの 通電群の方が多い傾向を示した.剥離・通電群における新生骨量は,他 群に比し有意に多い値を示した(Pく0.05).

  新生骨の形成を部位別に見た場合,各群共に左右側頭筋付着部で多い 値を示した.剥離・通電群では,頭頂骨平坦部,矢状縫合部においても 他群に比し多い傾向を示した.無処置群では,左右側頭筋付着部付近に おいて新生骨が認められた.

く実験2>

病理組織学的所見

  OVX各群における骨膜の状態および新生骨の形成は,実験1の同じ処 置 を 施し た群 と 比較 する と ,組 織学 的 には類似の傾向を 示した.

組織計量学的所見

  OVX‑剥離・通電群における新生骨量は,Sham‑剥離・通電群に比し少 ない値を示したが,有意な差ではなかった.また,OVX‑通電群と比較し た場合,有意な差はないものの多い傾向を示し,OVX‑剥離群,OVX‑無 処 置 群 と の 比 較 で は 有 意 、 に 多 い 値 を 示 し た (Pく0.05) ・   新生骨の形成を部位別に見た場合,各群共に左右側頭筋付着部で他の 部位に比し高い値を示した.OVX‑剥離・通電群,Sham‑剥離・通電群で は , 頭 頂 骨 平 坦 部 , 矢 状 縫 合 部 に お い て も 多 い 傾 向を 示し た .

考察

  剥離・通電群では他群に比し骨膜は肥厚し,骨芽細胞は,より活性の 高い状態を示した.これは骨膜剥離とぃう刺激によって細胞の活性があ る程度高まっている状態に,さらに電気刺激が加わったことによる相乗 効果であると考えられ,本来,細胞の活性が低いと考えられる場合に は,電気刺激を単独で行うよりも骨膜剥離などを併せて行うことによっ

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て , さ ら に 細 胞 を 賦 活 化 で き る こ と が 示 唆 さ れ た . 実験2においても,骨膜剥離による刺激や電気刺激は,組織の反応に程 度の差こそあるものの,基本的には健常時と同様に骨形成を活性化し た.このような骨代謝系に異常を認める状況下での電気刺激の作用につ いては,さらに詳細な検索が必要であると思われるが,実験的骨粗鬆症 ラットにおいても,骨膜剥離と電気刺激を併せて行うことは骨形成促進 に有効であることが示唆された・

結語

1)成熟ラット頭蓋骨において,骨膜剥離または微小電流刺激によっ て,新生骨の形成が認められたが,微小電流刺激を用いた場合の方が,

新生骨量は多い傾向を示した・

2)骨膜剥離と微小電流刺激を併用した場合は,`それぞれ単独で用いた 場合よりも,新生骨は多量に形成され,骨形成はより促進された.

3)実験的骨粗鬆症ラットにおいても,骨膜剥離による刺激および微小 電 流 刺 激 を 与 え る こ と に よ り , 新 生 骨 の 形 成 は 促 進 さ れ た .   以上の結果より,成熟ラットならぴに実験的骨粗鬆症ラットの頭蓋骨 において,微小電流刺激と骨膜剥離の併用により骨形成が促進されるこ とが明らかにされた.

(5)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

成熟ラットおよび実験的骨粗鬆症ラットの骨形成に及ぼす微小電流刺激     `  ・

    ならびに骨膜剥離の影響

  審査は雨宮,久保木およぴ川崎審査委員全員が出席のもとに,論文提 出者に対し提出論文の内容とそれに関連する学科目について口頭試問に よ っ て 行 わ れ た .以 下 に , 提 出 論 文の 要旨と 審査 の内容 を述 べる.

  論文提出者は,高齢者ならびに骨粗鬆症患者などの骨代謝活性の低下 していると考えられる患者の顎骨において,微小電流刺激およぴ骨膜剥 離の併用による骨形成促進の可能性について検討する目的で,成熟ラツ トおよび実験的骨粗鬆症ラットを用い,その頭蓋骨に微小電流刺激およ び骨膜剥離による刺激を与えた場合の骨形成促進効果について検討して い る.実 験1で は,生後26週齢の成熟ラットを用い,実験グループとし て剥離・通電群(頭蓋骨骨膜を剥離,復位させた後,電気刺激装置を装 着 し,約10〃Aの直流定電流を与えた群),通電群(電気刺激装置を装 着した群),剥離群(頭蓋骨骨膜を剥離,復位のみ`の外科的処置を行つ た 群), 無処 置群(外科的処置を加えない群)の4群に分け,骨の形成 過程および骨の性状について病理組織学的,組織計量学的に検索してい る .実験2では ,生 後26週 齢の 実験的 骨粗 鬆症ラ ット(OVX群)およぴ 偽 手術を 施し たラッ ト(Sham群 )を 作製し ,OVX群に対して実験1と同 様 な 処 置 を 施 し ,OVX一 剥離 ・ 通 電 群 ,OVX‑通 電 群 ,OVX‑剥 離群 , OVX‑無 処 置 群と した.Sham群には 実験1の剥 離・通 電群 と同様 の処 置 を 施 し ,Sham‑剥 離 ・ 通電 群 と し , 実 験1と 同 様に ,病 理組織 学的 検 索,およぴ組織計量学的検索を行っている.

生璋 徳 貴

 

 

芳 崎宮 木

   

   

保 川雨 久 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(6)

  以 上 の 方 法 に よ っ て 得 ら れ た 結 果 な ら び に 結 諭 は 次 の 通 り で あ る ・   実験1では,剥離・通電群の頭蓋骨骨膜は他群に比し厚みを増し,新生骨の表面 には活性化された骨芽細胞が密に配列していた.これについては,骨膜剥離と い う 刺 激 に よ っ て 細 胞 の 活 性 が あ る 程 度高 ま っ て い る 状 態 に , さ らに 電 気 刺 激 が 加 わ っ た こ と に よ る 相 乗 効 果 であ る と 考 え ら れ , 本 来 , 細胞 の 活 性 が 低 い と 考 え ら れ る 場 合 に は , 電 気刺 激 を 単 独 で 行 う よ り も 骨膜 剥 離 な ど を 併 せ て 行 う こ と に よ っ て , さ らに 細 胞 を 賦 活 化 で き る の では な いかと考察している.また,組織計量学的には,剥離・通電群における新生骨 量は,他群に比し有意に多い値を示し,特に側頭筋付着部付近において高値であっ た.実験2では,OVX各群における骨膜の状態および骨形成は,実験1の同じ処置 を施した群と比較すると,組織学的には類似の傾向を示した.組織計量学的には,

OVX‑剥離・通電群における新生骨量は,Sham一剥離・通電群と比較すると少なぃ 値を示したが,有意な差ではなかった.しかし,OVX」剥離・通電群における新生 骨量は,他のOVX群と比較して多い傾向を示し,特にOVX‑剥離群,OVX―無処置 群よりも有意に多い値であった.

  こ れ ら の 結 果 より , 以 下 の 様 に ま と め て いる .1) 成 熟 ラ ッ ト頭 蓋骨 に お い て , 骨 膜 剥 離 ま た は 微 小 電 流 刺 激 によ っ て 骨 形 成 が 認 め ら れ たが , 両 者 の 比 較 で は , 微 小 電 流 刺 激 を 用 い た場 合 の 方 が 新 生 骨 量 は 多 い傾 向 を 示 し た .2) 骨膜 剥 離 と 微 小 電 流 刺 激 を 併 用し た 場 合 は , そ れぞ れ単 独 で 用 い た 場 合 よ り も , 新 生 骨 は 多 量 に 形成 さ れ , 骨 形 成 は よ り 促 進さ れ た .3) 実 験 的 骨粗 鬆 症 ラ ッ ト に お い て も , 骨膜 剥 離 に よ る 刺 激お よぴ 微 小電流刺激を与えることにより,骨形成は促進された・

  次 い で , 本 論 文 提 出 者 に 対 し て 本 論 文の 内 容 に 関 連 の あ る 質 問 が行 わ れ た が , こ れ ら の 質 問 に 対 し て そ れ ぞ れ適 切 な 回 答 が 得 ら れ た . 本研 究 は , 成 熟 ラ ッ ト な ら ぴ に 実 験 的 骨 粗 鬆 症ラ ッ ト の 頭 蓋 骨 に お い て ,微 小 電 流 刺 激 と 骨 膜 剥 離 の 併 用 に よ り 骨 形 成 が 促 進 さ れ る こ と を 明 ら か に し , 高 齢 者 な ら ぴ に 骨 粗 鬆 症 患 者 な ど の骨 代 謝 活 性 の 低 下 し て い ると 考 え ら れ る 患 者 の 顎 骨 に お い て , 微 小 電 流刺 激 お よ び 骨 膜 剥 離 の 併 用に よ る 骨 形 成 促 進 の 可 能 性 を 示 し た こ と が 評価 さ れ た . ま た , 本 論 文 提出 者 は 骨 形 成 促 進 効 果 を さ ら に 持 続 す る 方 法や , 臨 床 応 用 に つ い て も 実験 系 を 考 え て お り , 将 来 の 展 望 も 評 価 さ れ た . よ っ て , 学 位 申 請 者 は 博 士

(歯学)の学位授与にふさわしいものと認めた.

参照

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