博 士 ( 歯 学 ) 周 海 燕 学 位論 文 題名
ウ シ骨 基 質 から の 高リ ジ ンタンノ くク質の発 見と そ の 細 胞 接 着 能 の 確 認
学 位 論 文 内 容 の 要 旨 繍言
骨・歯等いわゆるね憂組織(又は石灰化組織)かどのような従構に よってミネラ´レイオンを沈着し結晶化するかについて撒、まだ十分 t:倣f彈明されていない。現在までに生物学的石灰化機構を説明する ために次のようなl沱が撚案されている。すなわち、硼組織が形成さ れるには、(1)堪質(コラ―ゲンと非コラーゲン I゛Eタンバク質)の 分泌・沈蔚、(2)継質の修飾、(3)ミネラルイオンの沈蔚という少 なくとも三.段階を経過すると仮定する、いわゆる三段V親である。
生物学的石灰化は細胞、基質、ミネラ.ルイオン及び制御因子の四大 要素が有機的に組み合わさって進行すると考えられる。石灰化機構を 解明する ために、著 者は以上の ような考えのもとで骨の各種基質夕 ンパク質 の分離・精 製を行い、 それらの構造と機能に関して研究し てきた。 その結果、 基質夕ンパ ク質の主成分のーっであるオステオ カルシンの精製法を開発する過程において、未同定の分子量18,000 のタンパ ク質(以下18K夕ン バク質と呼 ぷ)を見出 した。本論 文で は、18K夕ンパク質の構造と機能を解明するためにそのアミノ酉芟配 列、分布 、コラーゲ ンとの親和 性、細胞接着能ならびに骨芽細胞の 増殖分化 への影響を 調ベ、18K夕ンパク 質が骨芽細 胞の増殖と 分化 に深く関与することを明らかにした。
材料と方法
精 製 ウシ の 骨粉 を塩酸(pH2)で脱灰 後脱灰液を トリスで中 和し、
吸引濾過して、上清fTris−sup)を集めた。次にTris―supからSephacryl S−200カ ラムと逆相高速液体クロマトグラフィ―で18Kタンパク質を
精製し た。
構造の 分析18K夕 ンパク質を アミノ酸分 析計て.分沂した。部分ア ミ ノ 酉 畫 配 列 の 決 定 は 気 相 自 動 ア ミ ノ 酸 配9fJ決 定 装t琶 を用 いて 行っ た。
分 布 の 分 析 通 法 に 従 っ て抗18Kタ ン バク 質 抗体 を 作成 し 、ヒ 卜 の 皮膚線維芽細胞(線維芽細胞)、ヒ卜とラ`、ノトの骨・歯におし、て18 K夕ンバク質の局在性を調べた。
機 能 の 分 析(1)コ ラ ーゲ ン と の親 和 性の 分 析: 骨 不溶 性 コラ ー ゲ ンを 用い、 コラーゲン カラムを作 成した。親 和性は溶出 塩濕度で評 価した。
(2)細胞接着能の測定:骨芽細胞様細胞MC3'r3―El(El細胞)と線 維芽細胞を用いて通法に従って行った。
(3) 細胞増殖能 の測定:血 清の存在下で細胞を付着させた後、無 血清 の条件 下で18Kタ ンパク質を 添加し、3日間培養 した。細胞 増殖 能は細胞のDNA量で評価した。
(4)細胞分化能 の測定:細 胞分化能は 以下の二種 培養法を用 いて DNA量あた りのアルカ リフォスフ ァターゼ(ALP)活性 で評価した 。 a)平板培養:血清の存在下でコンフルェン卜後10日目まで培養して、
無血 清の条 件下で18K夕ンパク質 を添加し、 さらに3日間培養し た。
b)コ ラ ー ゲ ン ゲ ル 内 培 養 :18Kタ ンパ ク 質を 合 む コラ ー ゲン 溶 液 を細 胞と混 合後、加温 ・ゲル化さ せた。血清 の存在下で35日 間培養 した。
結 果 と 考 察 精 製 に っ い てTris‐ supに は 18 製 し た18K夕 ン バ ク 質 は 非 還 元 、
Kタンバク質が主成分であった。精 還 元 下いずれも 単一なバン ドとし て 認め ら れた 。18K夕 ンパク質は 骨非コラー ゲン性夕ン パク質の少 なくとも0.02%を占めた。従来のェチレンジアミン酢酸四ナ卜リウム を用い た抽出法等 によると多 量に存在す る他のタン パク質の陰にか く れて18K夕 ン パク質 は見過ごさ れてきたが 、今回用い た抽出法で はその存在が注目されるようになった。
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構 造 に つ い て 。 ア ミ ノ 酸 分 析 の 結 果 に よ り18Kタ ン パ ク質 は り ジン 残基 が 多 く(19 .4%) 、 現 在ま で 知 られ て いる 骨 の 基質 タ ンパク質 と は 異 な り 、 ヒ ス 卜 ン 等 の 核 内 夕 ン パ ク 質 と 類 似 し て い る。 し かし 、 こ の タ ン パ ク 質 は 、 ア ミ ノ 酸 配 列 デ ー タ バ ン ク で 検 索 した 結 果、 ヒ ス卜 ン 等 のタ ン パク 質 と ホモ ロ ジ ーが な ガゝ っ た こと か ら新 しいタイ プの タ ン パク 質 であ る 可 能性 が 高 い。
分 布 に つ い て18Kタ ン バ ク 質tま 、 骨 芽 細 胞 ・ 頬 骨 ・ 象 牙 芽 細 胞 ・ 象 牙 前 質 に 検 出 さ れ た こと か ら 細胞 タIの 基質 ク ン バク 質 の ひと っ で あ り 、 骨 芽 細 胞 と 象 牙 芽 細 胞 に よ っ て 合 成 さ れ る と考 え ら れる 。18 Kタ ン パク 質 倣 抗ウ シ 血清 タ ンパク質 抗体と反 応しなかっ たのでi皿i夜 由 来 の タ ン バ ク 髄 で は な い と 言 え る 。 又 、 線 維 芽 細胞 と そ の堪 爾 に 検 出 さ れ な か っ た こ と か ら 、18Kタ ン バ ク 質 は 骨 と 象 牙 髄 に 特 有 で あ ろ可 能1生 が ある 。
機 能に つ い て (1)二 亅 ラ― ゲンとの 観和性: コラ―ゲン との観和 性 は オ ステ オ カル シ ン 等 ぽ の主 な 非 ヨラ ー ゲ ンタ ン バク 質 の うち 、18 K夕 ン バ ク 質 が 最 も 高 か っ た 。 コ ラ ー ゲ ン は 骨 基 質 の 主 成 分 で 他 の タ ン パ ク 賃 や 細 胞 と 相 互 作 用 す る と 報 告 さ れ て い る の で 、18K夕 ン パ ク 買 が 骨 コ ラ ― ゲ ン と 結 合 し 、 そ の 上 で 他 の タ ン バ ク 質 や 細 胞 と の 相 互作 用 を調 節 し てい る 可 能性 が ある 。
(2)細 胞 接着 能 : 18Kタ ンパ ク 質はEl細胞 又 は線 維 芽 細胞 の 接 着 を 促 進 し た 。 こ の 接 着 は ア ル ギ ニ ン ー グ リ シ ン ー ア ス パ ラ ギ ン 酸 ― セ リ ン 合 成 ペ ブ チ ド に よ っ て 阻 害 さ れ な か っ た の で イ ン テ グ リ ン タ イ プ の レ セ プ 夕 一 に 依 存 し な い と 考 え ら れ る 。 し か し 、 リ ジ ン の ポ リ マ ― も 細 胞 接 着 を 促 進 し た の で18K夕 ン パ ク 質 の 細 胞 接 着 能 は 単 に 豊 富 な り ジ ン を 介 し て な さ れ て い る の か も し れ な い 。 (3)細 胞 の増 殖 ・ 分化 : El細胞 の 増殖 期 に18K夕ン パク質を 加,え た 場 合 は 、DNA量 が 上 昇 し た 。 一 方 、 分 化 期 に18K夕 ン パ ク 質 を 加 え た 場 合はDNA量は 変化. せずに、ALP】活性を 有意に増 加させた 。又、骨 芽 細 胞 の 形 態 を よ く 維 持 で き 、 生 体 内 の 環 境 に 近 い コ ラ ― ゲ ン ゲ ル 内 の 培 養 に お い て も18K夕 ン パ ク 質 の 添 加 でALP活 性 が 増 加 し た 。 こ
のことから18Kタンパク質は骨芽細胞の増殖分化因子として重要な 働きがあることがわかった。
結諭
1)18Kタンパク質をウシの骨から精製し、その一次構造を調べ た結果、このタンパク質は新しい、リジンに富むタンバク質である 可能性があることがわかった。
2)18Kタンバク質は骨不溶性コラーゲンに対し強い親和性を示 した。
3)18K夕ンパク質はマウス骨由来の骨芽細胞様細胞MC3T3‐Elや ヒト皮膳線維芽細胞の接着を促進した。その接着は細胞接着に必要 なアルギニン―グリシンーアスパラギン酸配歹Uに依存しなかった。
4)18K夕ンパク質はMC3T3−Elの増殖期にDb'A鑓を、分化期にアル カリフオスファタ―ゼ活性を増加させ、骨芽細胞の増髄と分化に深 く関与することがわかった。
5)組織免疫染色の結果、18Kタンパク質は、骨芽細胞・類骨・
象牙芽細胞・象牙前質に検出されたので骨・象牙質の細胞外基質タ ンバク質のーつであり、骨芽細胞と象牙芽細胞によって合成される と考えられる。又、ヒト皮膚や血液から検出されなかったので18K 夕 ン バ ク 質 は 骨 と 象 牙 質 に 特 有 で あ る 可 能 性 が あ る 。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査 教 授 久 保 木 芳 徳 副 査 教 授 雨 宮 璋 副 査 教 授 松 本 章
学位論文題名
ウシ骨基質からの高リジンクンパク質の発見と そのネIu胞接着能の確認
審査は主査および副査の口頭試問、主査による筆記試験によって、
本研 究の背 景・目的・内容・意義にっいて総合的にされた。論文の 内容は次の通りであった。
骨 ・歯 等い わゆる 硬組織(又は石灰化組織)がどのような機構に よっ てミ ネラ ルイオ ンを沈着し結晶化するかにっいては、まだ十分 には 解明 され ていな い。現在までに生物学的石灰化機構を説明する ため に次 のよ うな説 が提案されている。すなわち、硬組織が形成さ れるには、(1)基質の分泌・沈着、(Z)基質の修飾、(3)ミネラル イオ ンの 沈着 という 少なくとも三段階を経過すると仮定する、いわ ゆる三段階説である。生物学的石灰化は細胞、基質、ミネラルイオン 及び 制御 因子 の四大 要素が有機的に組み合わさって進行すると考え られ る。 石灰 化機構 を解明するために、著者は以上のような考えの もと で骨 の各 種基質 タンパク質の分離・精製を行い、それらの構造 と機 能に 関し て研究 してきた。その結果、基質タンパク質の主成分 のー っで ある オステ オカルシンの精製法を開発する過程において、
未同定の分子量18.000のタンパク質(18Kタンパク質)を見出した。
本論 文で は、18K夕ン パク 質の構 造と 機能 を解明 する ためにそのア ミノ 酸配 列、 分布、 コラーゲンとの親和性、細胞接着能ならびに骨
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芽細胞の増殖分化への影響を調べた。
実験は次の方法で行った。
誼−製ウシの骨粉を塩酸(pHZ)で脱灰後脱灰液をトリスで中和し、
吸引濾過して、上清を集めた。次に上清からSephacrylS一200カラム と逆相 高速 液体 ク口マ トグ ラフ イー で18Kタ ンパク 質を 精製した。
捲量堕 盆蚯 18Kタ ンパ ク質 をアミ ノ酸 分析 計で分 析し た。部分ア ミノ酸配列の決定は気相自動アミノ酸配列決定装置を用いて行った。
公査堕分蚯通法に従って抗18Kタン′、。ク質抗体を作成し、ヒトの 皮膚線維芽細胞、ヒトとラットの骨・歯において18Kクンパク質の局 在性を調べた。
機能堕分抵 (1)コラ―ゲンとの親和性の分析:骨不溶性コラーゲ ンを用 い、 コラ ―ゲン カラムを作成した。親和性は溶出塩濃度で評 価した。
(2)細胞接着能の測定:骨芽細胞様細胞MC3T3−Elとヒ卜皮膚線維 芽細胞を用いて通法に従って行った。
(3)細胞増殖能の測定:血清の存在下で細胞を付蔚させた後、無 血清の 条件 下で18K夕ン パク質を添加し、3日間培養した。細胞増殖 能は細胞のDNA量で評価した。
(4)細胞分化能の測定:細胞分化能は以下の二種培養法を用いて DNA量あ たりの アル カリ フォスファクーゼ活性で評価した。a)平板 培養: 血清 の存 在下で コンフルエント後10日目まで培養して、無血 清の条 件下 で18K夕 ンパ ク質 を添加 し、 さら に3日間 培養した。b) コラ― ゲン ゲル 内培養 :18Kタンパ ク質 を含 むコラ ーゲ ン溶液を細 胞と混合後、加温・ゲル化させた。血清の存在下で35日間培養した。
その結果、次のことが明らかになった。
1)18Kク ン パ ク 質 をウ シの 骨か ら精 製し、 その 一次 構造 を調べ た結果 、こ のタ ンパク 質は新しい、リジンに富むタンパク質である 可能性があることがわかった。
2)18Kタ ン パ ク 質 は骨 不溶 性コ ラー ゲンに 対し 強い 親和 性を示 した。
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した 。
3)18Kタンパ ク質 はマ ウス 骨由来 の骨 芽細 胞様細 胞MC3T3ーElや ヒト 皮膚 線維芽 細胞 の接着を促進した。その接着は細胞接着に必要 なア ルギ ニンー グリ シンーアスパラギン酸配列に依存しなかった。
4)18Kクンパ ク質 はMC3T3−Elの増殖期にDNA量を、分化期にアル カリ フォ スファ ク― ゼ活性を増加させ、骨芽細胞の増殖と分化に深 く関 与す ること がわ かっ た。
5)組 織免 疫 染 色 の 結 果 、18K夕 ン パク 質 は 、 骨 芽 細胞・ 類骨 ・ 象牙 芽細 胞・象 牙前 質に検出されたので骨・象牙質の細胞外基質タ ンパ ク質 のーつ であ り、骨芽細胞と象牙芽細胞によって合成される と考 えら れる。 又、 ヒト 皮膚 や血液 から 検出 されな かったので18K タ ン パ ク 質 は 骨 と 象 牙 質 に 特 有 で あ る 可 能 性 が あ る 。
本論文に対し、主査および副査から本研究にっき、詳細な質問が 行われ、更に主査による筆記試験がなされたが、いずれにっいても 適切、明確な回答が得られた。又、今後の研究の進め方にっいても 適切な説明が得られ、専門分野ならびに関連分野に対する見識も十 分であることが認められた。
従って、本論文提出者は博士(歯学)の学位授与に値するものと認め られた。