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「本書は大学の初年級の一般化学の平易な教科書として書いたものである.」
これは,1977 年,本書初版のまえがきで,長島弘三先生が冒頭に述べられた言葉である.当 時,本書は同先生の単著として発行され,非常な好評をもって迎えられた.その理由の一つは,
高等学校の化学教科書を精査し,大学での講義にスムーズにつなげるという配慮がなされていた ことであろう.この目的のために長島先生は,そのころ,都立の高等学校で教鞭をとられていた 目良誠二先生のご協力をいただいた.
高校の教科書はその折々の学習指導要領に則って書かれているが,指導要領は何年かごとに更 新される.初版当時の高校の指導要領は「化学Ⅰ」,「化学Ⅱ」であったが,その後何回か変遷を 繰り返し,現在は「化学基礎」,「化学」となって内容も大きく変化している.高校の教科書との 接続を重視する本書は,指導要領が変わる度ではないけれども,何回か改訂を行ってきた.1991 年の改訂版以降,共著者という形になった筆者は,改訂の都度,目良先生にご協力をお願いし,
初版発行後 40 年を迎えようとする時に「四訂版」が世に出ることとなった.
新版の特徴は,これまでの A5 判から B5 判としたことで,従来小活字で書かれていた部分や 簡単な図表を「側注」に移し,本筋の見通しを良くしたことが挙げられる.また,新しい側注を 書き加えることで,内容の理解に役立つように努めた.新しい図もいくつか加えられた.さらに 術語の英訳にも意を注いだ.
やや拘ったことは,内容が古くなったと思われる記述も,歴史の重みを考えて簡素化しながら も残したところもある,ということである.第 1 章のはじめなどはその典型であろう.
逆に三訂版の序で筆者は「国内の原子力発電が全発電量の 3 割強を占めている現在」と記載し たが,東日本大震災での大きな事故で様相は一変した.しかし,そのために放射能の知識が不要 になる筈はなく,正しく理解するための記述は積極的に残した.
「改訂」の作業は,旧版では不十分な点をただし,不要になった部分を削り,加えるべき点を 加えることであるが,長島先生が最も重視された「平易な教科書」の精神は何としても残したい と考えた.その目的はかなりの程度達成できたと思う.
「四訂版」は多くの方々のご尽力によって完成した.目良誠二先生は今回も快く筆者の依頼に 応えてくださった.杉森 彰 先生には,有機化学の記述で有益なご助言をいただいた.そして,
本版の企画,構成,編集,校正の各面で,裳華房編集部の小島敏照氏ならびに内山亮子さんには 一方ならずお世話になった.皆様に感謝の他はない.
おわりに長島弘三先生の御平安をお祈りしたい.
2016 年 10 月
富 田 功