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ま え が き

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Academic year: 2021

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ま え が き

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ま え が き

「理科離れ」 「理科嫌い」という言葉が 1994 年ごろからマスコミで取り上げられ 学力低下も懸念されていたが, 「ゆとり教育」の流れの中で授業時間も学習内容も 大幅に削減され,2003 年に実施された国際学習到達度調査 (PISA)や国際数学・

理科教育動向調査 (TIMSS)での成績と国際順位の低下という形で,その懸念が 現実となってしまった。これを契機として, 2005 年に学習指導要領の見直しが行 われ, 改訂に先立って先行実施された。2007 年に実施された TIMSS では, 中学 2 年生の理科の平均点も国際順位も上がり,学力の低下傾向に歯止めが掛かったと も受け取られた。しかし, 「理科が楽しいか」という質問に対して, 「強く思う」

「そう思う」と答えた中学生は 58 % (国際平均は 78 %)で, 「強く思う」はわずか 18 %と,参加国中,下から 3 番目の低さであった。この調査結果は,依然として

「理科嫌い」が払拭できていないことを示しているが, 「理科嫌い」がなかなか払 拭できないのは, 「理科嫌い」となる要因が複雑なためである。

確かな学力を身に付けさせることを目標に,新学習指導要領が,小学校では 2011 年度から, 中学校では 2012 年度から全面実施され, 高等学校では理科・数学 が 2012 年度から学年進行に伴って,その他の教科は 2013 年度から実施される。

今回の改訂の大きな特色は,基礎的な知識・技能の習得が重視され,理数系教育 が重視されていることである。改訂のたびに減り続けてきた授業時間数も今回の 改訂では増加しており,学力向上に向けての教員の役割が以前にも増して重要に なっているといえよう。一方,日本学術会議は「これからの教員の科学的教養と 教員養成の在り方について」(2007)で,教員の科学的教養の低下を指摘し,これ を高めることを課題の一つとしている。

「理科好き」な若者を育てるには, 小学生のときから理科に興味・関心を持たせ,

理科が楽しいと感じる体験をさせることが大切である。理科が得意でない教員は 実験・観察を敬遠しがちで,教員の「理科嫌い」は児童・生徒の「理科嫌い」に拍 車を掛けかねない。児童・生徒を「理科好き」にするには, 児童・生徒を教える教 員が「理科好き」で,本当の理科の楽しさを体験していなくてはならない。

理科のカリキュラムの特色は,同様な学習項目が学年・学校種を超えて繰り返 し現れることである。化学のカリキュラムでは,例えば,酸とアルカリは小学 6 年生の「水溶液の性質」で学習し,実験を通してアルミニウムが酸にもアルカリ にも溶けることを学ぶが, これは中学第一分野の「化学変化とイオン」でも学び,

さらに, 高等学校でも「酸塩基」を学習するように構成されている。もちろん, 小 学校から中学校・高等学校へと進むに従って,酸塩基の性質から, イオン, 中和,

電離,酸塩基の定義等へと学習内容が深化していく。このように,同種の項目を

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的に繰り返し学習することによりカリキュラムの連続性が確保されている。

このことは,逆に,大学で化学における科学的見方や考え方,手法や技能を学ぶ と,おのずと小・中学校の理科や高等学校化学の学習内容を深く理解することが でき,児童・生徒に科学的根拠を踏まえて分かりやすく教えられるようになるこ とを意味している。理科,特に,化学は決して暗記科目ではない。

本書は,教育系コースだけでなく,教員を目指す理工系における基礎科目とし て, 高等学校までの授業の背景となる化学の基礎・基本をきちんと身に付けられ,

教員となったときにも授業で実際に役立つものとすることを目標とした。そこで,

小学校から高等学校までの化学の学習内容を分析し,授業の基礎となる事項をま とめて章立てした。各章と学習指導要領との関係は,チャート図にして前見返し ページに示した。各章の内容は,分かりやすく,暗記ではなく論理的に化学を理 解できるように丁寧に解説し,側注やコラム欄も設け,学校教育で必要な理科や 化学の実践的授業力を高められるように心がけた。章末には各章の復習ができる ような問題を設け,解答は巻末にまとめて分かりやすく示した。

本書を通して,化学的現象を科学的根拠に基づいて説明する力を身に付け,自 ら見つけた問題を自ら解決して成就感を体験すれば,授業を通して児童・生徒に も同じような体験をさせて本当の理科の楽しさを伝え, 「理科好き」な子どもたち を育てうる理科教育力の高い教員になれるだろう。さらに,この力を身に付ける と,科学コミュニケーターとしての基礎能力も高めることができる。学校教育を 見据えた科学コミュニケーション力は,これからの教員だけでなく,企業や大学 等の技術者・研究者にも必要となっている。本書を活用して理科教育力を高め,

科学コミュニケーション力の基盤も強固にしていただければ幸いである。

本書の刊行に際し,裳華房編集部小島敏照氏には,終始原稿に対して貴重なご 意見をいただくと共に大変お世話になった。ここに厚く感謝の意を表す。

2011 年 10 月

著者を代表して 長谷川 正

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