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まえがき

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Academic year: 2021

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まえがき

雑誌名 国立民族学博物館調査報告

巻 144

ページ i‑ii

発行年 2018‑02‑20

URL http://hdl.handle.net/10502/00008903

(2)

PB i

まえがき

河合洋尚・劉征宇

 本書は,2016年12月 4 日に国立民族学博物館・立命館大学・淅江工商大学の共催でお こなわれた国際シンポジウム「第 6 回アジア食文化会議」で発表した内容に基づき編集 したものである。

 近年,世界各国における食研究への関心の高まりを受け,食をテーマとする教育・研 究機関の設立が相次いでいる。また,食研究をめぐる国際交流も活性化し,国や地域を 超えた研究者ネットワークも形成されるようになった。そうしたなか主に東アジアの食 文化研究者が集まる国際的な集会として組織されたのが,アジア食文化会議(中国名:

亞州食学論壇)である。2011年,最初の大会が中国の杭州でおこなわれたのを皮切りと し,バンコク(2012年),紹興(2013年),西安(2014年),曲阜(2015年)において,国 際シンポジウムが毎年開催されてきた。そして,2016年には初めて日本で開催されるこ とが決定し,国立民族学博物館とその提携先である立命館大学が幹事校として引き受け ることになった。第 6 回アジア食文化会議は,12月 3 日と 4 日に立命館大学草津キャン パスで, 5 日に国立民族学博物館で開催され,中国,台湾,香港,韓国,マレーシア,

ウズベキスタン,フランス,アメリカなどの国/地域から,100名を超える研究者が集 まって交流した。

 この国際シンポジウムでは,石毛直道名誉教授(国立民族学博物館),セオドア・ベス ター教授(ハーバード大学;急遽不参加のため代読),菊地唯夫会長(日本フードサービ ス協会)による 3 つの基調講演のほか,17にもおよぶ分科会やセッションが組まれた。

これらの分科会やセッションは,日・中・英と多言語でおこなわれ,研究領域も歴史学,

人類学,哲学・思想,文学から経済学,心理学,スポーツ科学と多岐にわたっていた。

そのなかで私は,近現代中国の食文化を人類学の視点から捉える分科会を担当すること となり,劉征宇を共催者として迎え,「社会主義制度における中国の食文化と日常実践」

を企画した。そして,12月 4 日の午後に分科会を開催し,当日の議論をふまえたうえで,

シンポジウム終了後に本書としてまとめた。

 中国の食文化をめぐる人類学的研究は,すでに相当な蓄積がある。そのなかで我々が 特に議論の対象としたのは社会主義制度とそれに伴うイデオロギーである。ここでいう 社会主義制度とは,いわゆる計画経済(1949~1978)における諸制度から社会主義市場 経済(1992~)における諸制度まで幅広く含んでいる。そのなかで,我々は,第一に,

「外的刺激」という概念より,社会主義体制における諸制度がもたらす食と食実践の変化 について捉えることを目的とした。ただし,社会主義制度と日常の食実践の間の関係を

河合洋尚・刘征宇编『社会主义制度下的中国饮食文化与日常生活』

国立民族学博物館調査報告 144:i-ii(2018)

(3)

ii PB 考察する研究は,近年の人類学で流行しているトピックでもある。そこで,我々が第二

の目的として設定したのは,歴史的な制度やイデオロギーが日常の食や食実践に具象化 していき,それが「ローカルな」ものとして現代に影響を与えていく過程を解読するこ とである。本書は,後者を「内的影響」と名づけたうえで,「外的刺激」との競合や絡み 合いを捉えることにより,現代中国の食実践を考察する試みをおこなった。

 本書は,序論と 7 つの論文により構成される。序論では,中国の食をめぐる人類学的 研究をレビューすることで,なぜ我々が「外的刺激」と「内的影響」という概念に着目 したのかについての理由が述べられる。そして,続く各論文では,「外的刺激」か「内的 影響」のいずれかに重点を置くか,双方のダイナミズムを論じる議論が展開されている。

本書の序論と論文は全て中国語で書かれている。中国語にした理由は,分科会の主要な 言語が中国語であったこと,および中国を研究対象とする各国の研究者に対し成果を国 際的に発信することが挙げられる。ただし,本書は,中国研究者ではない方々にも内容 を理解していただけるように,各章には英語の要約を入れ,最後には日本語の要約と解 説を加えた。そうすることで,なるべく多言語で情報発信できるよう努めたつもりである。

 我々が本書を通して読者にお伝えしたいことは 3 つある。 1 つ目は,中国の食文化研 究において極端に研究が少ない計画経済時代の状況についてデータを提供することであ る。 2 つ目は,グローバル化の進む現代中国の食に関する最新のフィールド・データを 記録することである。そして, 3 つ目は中国の食文化を理解する切り口として「外的刺 激」と「内的影響」という視点の有効性や可能性を示すことである。本書のデータや視 点が,中国の食をめぐる人類学的研究に少しでも貢献することができたら無上の喜びで ある。

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