新 版 の ま え が き
. . .
111
この書物は,著者たちが前に公にした「科学技術者のための基礎数学」に,
刊行以来本書を教科書 として使って下さった先生方,また本書を参考書 として 学習された読者諸君からいただいた種 々のご意見を 参考に して,十分の改訂を 施して出来上がったものである.
著者たちがこの「科学技術者のための基礎数学」を編んだ最初の意図は,将 来科学技術者として活躍しようと思っている人たちにとって基礎となるべき数 学を
1冊の書物にまとめておけば,それを教科書として学ぶ諸君にとっても,
参考書 として使う諸君に とっても,必要な数学の知識を ,バラバラにではな く,統一的に学ぶ ことができ,時間も節約でき,それ らの関連 もよく理解する ととができ,科学技術者に とって必要な数学を総括的に学ぶ ことができると思 ったからであった.
しかし,それ以来高等学校の数学に対する文部省の学習指導要領 が 改 訂 さ れ,高等学校の数学と本書の導入部との聞に小さなギャ
γプができたという印 象を著者たちはもった.
そこで,この新版においてわれわれは,高等学校で学んだはずで 、 はあるがこ こでもう一度はっきりと 思い出しておいた方がよいと思うこと,たとえば複素 数,三角関数のことは,繁をいとわずに参考として読者の注意に促すことにし
T
こ.また,読者がはじめて習う新しい教材,たとえば行列に続く行列式において は
aいきなり一般の定義を与える ということをしないで,いくつかの例を与え てから,したがって一般の行列式をつぎのように定義するという具合に,読者 の納得を得ながら話をすすめる と
L、う態度をとった.
とくに, V フーリエ級数 ・ラプラス変換は,おそらく 読者がは じ めて接する 話題であると 思われるので,それ以前の講義とくらべるといささか丁寧すぎる
『科学技術者のための基礎数学 ( 新版)] ( 矢野健太郎・石原 繁 共 著/裳華房)
.
lV 新 版 の ま え が きと思われるくらいの態度で講義を進めた.
以上が今回の改訂に当たって著者たちが注意 した事柄で、あるが,これによっ て本書が , 1"科学技術者のための基礎数学」を学ぶためのより良い教科書, よ
り解り易い参考書 となることを著者たちは心から念ずるものである.
なお,この新版の出版に当っては,編集,校正,その他について, 裳華房の 遠藤恭平氏,細木周治氏 と橋本佳代子さんの献身的なご協力をいただいた.こ
こに記して 著者たちの心からの感謝の意を表 したい.
最後に本書をさらにより良いものとするために,本書を教科書 として使って 下さった教授諸氏,参考書 として使ってくれた学生諸君か らの思俸のないご意 見を聞かせていただくことをお願いしてお きたい.
昭和57年10月
矢 野 健 太 郎
石 原 繁
v
旧 版 の ま え が き
今日われわれが素晴らしい機械文明の時代を楽しんでいられるのは, その基礎にな っ ている科学技術の進歩のおかげである.そしてその科学技術の発展を促 したのは, その また基礎になっ ている 数学の進歩であ る.
したがって ,これから科学技術の方面を志 し , 将来科学技術者として活躍しようとし ている人たちにとって , 数学の知識が不可欠の ものであるのはいうまでもないことであ る.
このような人たちのために学校で、教えられる数学は, 高等学校における解析幾何学 と 微分積分学の初歩,それに大学の教養部におけるベクトル,行列,行列式,それにやや 進んだ微分積分学,そしてこれにつづいて教えられる微分方程式, ベク ト ル解析,関数 論,フーリエ級数・ラプラス変換論などである.
これらは正 しい順序
Fで教えられ ているし これらは将来科学技術者と して活躍 しよう とする人たちに必要な基礎的な数学はほとんどすべて網羅していると思われる. しかし 著者たちの率直な印象を いえば , これらの数学はあまりにバラパラに教えられており,
そのためにこれ らすべてを学び終るのに相当の時聞を要 し またほんと う は密接に結び ついているこれ らの数学の分科が, これ らを学ぶ人たちの頭のなかで,そう 密接には結 びついていないパラパラな知識として入ってしまう恐れがある.
そこで著者たちは, 将来科学技術者と して活躍 しようと 思 っている人たちにとって基 礎となるべき数学を 1つの書物にまとめておくならば, その書物を教科書 として使う諸 君にとっ ても,また参考書と して使 う 諸君にと っても,必要な数学の知識を , バラバラ にではなく統一的に学ぶことができ, したがっ てこれ らを一通り学ぶに要する時間を相 当に節約することができ, さらに, こ れらの数学の分科がどの ように互に結びついてい るかをよく理解することができ, し たがって これらを
1つの統ーされた知識と して頭の なかへ入れておくことができる ようにな るのではないかと考えた .
以上が, 著者たちが本書の よう な書物を編 もう とし た 動 機 で あ る . そこで 著者たち は,いろいろ と相談の結果,本書をまず
5つの部に分けることと し た.
まずその第 I部では,微分積分学をとり上げた. その理由は,科学技術者のための基 礎数学と いえば, その また基礎になるのはなんといって もこ の微分積分学であるからで ある.そしてその第
1章では, 実数 ・ 関数 ・ 極限を論じるが,われわれの方針と して,
はじめてこれを学ぶ人にとっては十分にその意味がわかるように, しかしそれでも数学 的厳密さは決して失なわれないようにと, 著者たちの力のおよぶ限りの努力を した.つ いで第
2章で微分,第
3章で積分を論じるが, ここでも,その意味が十分わかる よう,
しかし数学的厳密さを失なわないよう, そしてさらに将来の応用を頭に入れて例題,問
題をあげる ことに心掛けた. 第
4章では,高校の微分積分学では除外されている 偏徴分
VI 旧 版 の ま え が き
と 重積分を解説した.
つぎの第 E 部では,いわゆる 線形代数学に相当する, ベ
Fトル,行列,行列式を解説 し た.すなわち,第
1章では空間のベクトルを,いわゆる矢線ベクトノレとし て と り 扱 う.ついで第
2章では数ベクトルをとり扱い, それから行列と 行列式の議論に入った.
われわれの目的は, 科学技術者にとって必要と思われる 数学を統一的に論じる ことにあ るので,われわれはこれにつついて, 第
3章で,ベクトルの微分積分学に当るベ クトル 解析学をと り扱った.
つぎの第田部では,微分積分学の自 然な続きと して,微分方程式をとり扱った. ふつ う 微分方程式の書物には,非常に 1 芸大な内容が盛られているが, 著者たちは いろいろと 検討の結果, 科学技術者のための基礎数学のなかでぜひ必要なのは
1階微分方程式 , 簡単な高階微分方程式お よ び定数係数線形微分方程式であろうという結論に達 し た の で,それらを第
E部の第
1章と第
2章でとり扱った.
つぎの第N部では,やはり微分積分学の 自然な続きとして, 複素変数の関数の微分積 分学, いわゆる関数論を とり 扱 った. その第
1章で複素変数の関数, 第
2章で正則関 数,第
3章で積分,第
4章で展開 ・ 留数 ・ 等角写像 をとり扱ったが, 科学技術者のため の基礎数学と しては,これで十分であろうと 著者たちは信 じている.
最後の第V部では,フーリエ級数とラプラ ス変換をとり上げた. まず第 1章でフー リ エ級数と フーリエ積分,第
2章で境界{直 問題,第
3章でラプラス変換をとり扱った.
本書を編んだ意図とその内容は以上の通りであるが, 著者たちがのぞんで い る よう に,この書物が,科学技術者を目指す人たちにとって, その必要とする 基礎数学を学ぶ ため のよい教科書であり,参考書である こと を心から祈る もの であ る.
なお,本書の図版,校正などに関 しては,裳肇房編集部, とくに遠藤恭平氏と 菅沼洋 子さ んに大へんお世話にな った.ここに記 して著者たちの深い感謝の意を表 したい.
昭和43年8月