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ま え が き

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Academic year: 2021

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ま え が き

 本生物学教科書は、医学系、薬学系、看護系など医療系に必須な生物学の基礎 知識と応用力の習得を目的としている。

 この 10 年の医学に限らず科学技術の進歩は目を見張るものがある。スマート フォンの性能はかつてのスーパーコンピュータを凌駕するに至っている。治療薬 では、抗菌薬とアスピリン以外は意味ないのではと言う時代から(長らく「愛用 されて」いた消炎酵素剤ダーゼンや認知症薬ホパテは販売中止になった)、慢性 骨髄性白血病にはイマチニブ、関節リウマチにはインフリキシマブといった特効 薬ともいえる薬物がつぎつぎに登場している。イマチニブによって慢性骨髄性白 血病の 5 年生存率は 30%程度から一気に 90%以上に、それも 1 日 1 回の飲み薬 で到達したのである。

 薬物の開発は、痛み止めの樹皮からアスピリンが精製された時代から、異常増 殖をもたらすキナーゼを阻害するイマチニブのように分子病態を標的とするよう になった。エビデンスがもてはやされているが、現在のエビデンスは多数の雑多 なヒトを対象とした臨床研究である。目の前の患者様に対する個別化医療につい ては、最も妥当である確率の高い(訴訟の際に敗訴となる要因を避けるための)

治療方針を提示するに過ぎない。しかも、利益相反(COI)など臨床研究の信頼 性に疑問をなげかける事象も浮上している。一方、生物学は実験で再確認(追試)

できる知識であり、ねつ造論文は散発するものの事実は短時間で明らかになって いる。今後も続々と登場する「特効薬」を理解して「怪しいエビデンス」に惑わ されずに正しく評価するためには、基本的な生物学の知識が必須である。

 当然ながら生物学の知識も日々増加している。あまり意味を持たないだろうと 思われていたゲノム非翻訳領域が、非翻訳 RNA として転写されて様々な細胞機 能の制御を行っていることが明らかになってきた。つまり、学習すべき項目は日々 膨張しているのである。医療系学生(医学部、薬学部、看護学部)は、無限とも 言える疾患への対応が職責となるために、網羅的な知識が必要となる。教育すべ き項目に比して学生の学習時間はあまりに短い。学生諸君にとっては、いわゆる 学内の勉強ばかりではなく、社会的勉強の項目も重要性を増している。従って、

医療系学生は卒業後も医療人として現役でいるならば自分の専門領域以外を含め て学習を継続していかなければならない。学部の教育方針としては知識ではなく 学習法を伝授することになる。

 学習法の伝授は言うのは易しいが実践は難しい。学生諸君それぞれによっても

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iv まえがき

異なる。教員の悩みは尽きない。生物学の教科書にしても、できるかぎり詳細に 網羅的にすれば持ち運ぶのも困難な巨大なものとなるし(たぶん、辞書的な拾い 読みのみとなり、だれも読破することはできない)、図を中心に簡潔にすれば、

通読することはできるが、なんとなく解ったつもりになるだけで、理解のレベル は応用が難しいものになってしまうであろう。そこで、本教科書は薬学系教員(松 岡)と医学系教員(丸山)が人生経験を踏まえて、これだけ知っておけば、それ ぞれの分野で定年を全うできる項目を選択して解説したものとなっている。薬物 と生物(細胞)とを常に意識しながら解説を行った。本教科書だけでは必須項目 をカバーすることは残念ながらできないが、本教科書の知識があれば、さらに巨 大な生物学教科書や専門論文原著も容易に理解するための応用力が身につくと信 じている。が、信じているだけで実際には様々な問題が散在しているだろう。誤 りのご指摘、ご意見、ご要望は編集部にお寄せいただき、さらに改善していきた いと思う。

 本書は裳華房編集部の野田昌宏氏、筒井清美氏をはじめ、同僚および学生諸君、

諸先輩後輩各位のご協力がなければ完成しなかった。この場を借りて深い感謝の 意を表したい。

 2013 年 9 月

丸山 敬

(埼玉医科大学・医学部、医師、医学博士)

松岡耕二

(千葉科学大学・薬学部、薬剤師、薬学博士)

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