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技術論文 総頸動脈左右拡張末期血流速度比 ED ratio 定量 解析 野内 恒男 1) 大槻 歩美 1) 岡嶋 麗子 1) 松崎 麻美 1) 佐藤 由美 1) 1) 枡記念病院臨床検査室 福島県二本松市住吉 100 要 旨 頸動脈エコーで総頸動脈左右拡張末期血流速度比 以下 ED

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Academic year: 2021

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技術論文

総頸動脈左右拡張末期血流速度比(ED ratio)定量

解析

野内 恒男

1)

岡嶋 麗子

1)

松崎 麻美

1)

佐藤 由美

1)

大槻 歩美

1) 1) 枡記念病院臨床検査室(〒 964-0867 福島県二本松市住吉 100)  要 旨 頸動脈エコーで総頸動脈左右拡張末期血流速度比(以下,ED ratio)を計測することは,内頸動脈遠位部狭窄・閉塞を 示唆する重要な手段である。今回我々は,スクリーニング検査の測定条件として分岐部から 2 cm 以上中枢側で測定し, 超音波ドプラ血流速度は超音波入射角 60 度 ≥ で左右一定にして正確に計測することにより,頸部血管超音波検査ガイド ラインの ED ratio ≥ 1.4 より低値の ED ratio ≥ 1.2 で内頸動脈遠位部病変を認め,さらに,ED ratio 1.2~1.6 の狭い範囲で病 変の有無と病変部位を推測できる可能性が示唆されたので報告する。 キーワード 拡張末期血流速度比,頸動脈エコー,内頸動脈狭窄,超音波入射角,左右一定 I 序 急性期脳梗塞の治療は,血栓溶解療法と血栓摘出 デバイスの認可により,より早い診断が必要となり, 低侵襲で迅速に診断可能な頸動脈エコーは,必須の 検査である1)。しかし,心原性塞栓症による急性期 脳梗塞の閉塞部位診断と同等に重要なのは,アテ ローム硬化症による血管狭窄の日常検査における早 期診断である。今まで急性期脳梗塞に対する頸動脈 エコーを用いた ED ratio の検討については報告され ているが,健常者も含めたスクリーニング例で検討 した報告は少ない2)~4)。そこで今回我々は,健常者 も含めたスクリーニング頸動脈エコー検査で総頸動 脈 ED ratio ≥ 1.2 であった 244 例で検討したので報告 する。 II 対象及び方法 2010年から 2012 年の 3 年間に枡記念病院で GE ヘルスケアジャパン製 VIVID7 の周波数帯域 4.9~14 MHzリニア型トランスデューサーを使用してスク リーニング頸動脈超音波ドプラ法を 3,550 件施行し た。その中で遠位部病変が疑われる ED ratio ≥ 1.4(頸 部血管超音波検査ガイドライン)より低値の ED ratio ≥ 1.2の症例 244 件を集計し,ED ratio 1.20~1.29 群, ED ratio 1.30~1.39 群,ED ratio 1.40~1.49 群,ED ratio 1.50~1.59 群,ED ratio ≥ 1.60 群に分類し,それ ぞ れ 内 頸 動 脈 遠 位 部 病 変 を magnetic resonance angiography(以下,MRA),three dimensional computed tomographic angiography(以下,3D-CTA)で検証し, ED ratioによる内頸動脈遠位部病変の割合を検証す ると同時に各群で遠位部病変の推測が可能なのかを 検討した。ただし,測定条件として分岐部から 2 cm 以上中枢側で測定し,超音波ドプラ血流速度は超音 波入射角 60 度 ≥ 5)で左右一定にして計測値とした。 病変の有無に関しては,MRA,3D-CTA で確認し, 複数の病変が見られた症例は,最も狭窄している部 位,もしくは閉塞している病変を採用し,ACA(前 大脳動脈)の場合生まれつき一方の ACA(A1)が (平成 28 年 2 月 10 日受付・平成 28 年 6 月 10 日受理)

(2)

欠損している症例(Figure 1a)も病変有りとして計 上した。 III 結 ED ratio 1.20~1.29 では 114 件中 64 件(56%)に 狭窄・閉塞等の病変が見られ,その部位は ACA(前 大脳動脈)59 件,MCA・M1(中大脳動脈)2 件, MCA・M2(中大脳動脈)3 件で総数の 7 割近くにお いて ACA に病変が見られた(Table 1)。ED ratio 1.30~1.39 では,50 件中 33 件(67%)に病変が見ら れ,その部位は,ACA 20 件,MCA・M1 9 件, MCA・M2 4 件で総数の 6 割近くが ACA に病変が見 られさらに MCA・M2 にも見られる(Figure 1b)。 ED ratio 1.40~1.49 では 27 件中 21 件(77%)に病変 が見られ,その部位は,ACA 7 件,MCA・M1 12 件,MCA・M2 2 件で総数の 6 割が MCA・M1 に病 変が見られ ACA は減少していた。ED ratio 1.50~1.59 で 83%,1.60 ≤ で 90%と高い割合で病変が見られ, その部位は総数の 7 割近くが MCA・M1,ICA(内 頸動脈)領域に病変が見られた(Figure 1c, d)。 Figure 2は病変部位の割合を ED ratio の数値ごとに 76才男性

b

63才男性

c

90才男性

d

83才女性

a

部位別血管閉塞症例 a:前大脳動脈(A1)の低形成症例 MRAで右前大脳動脈(A1)の低形成を認める。 b:中大脳動脈(M2)の病変症例 3D-CTAで左中大脳動脈(M2)の閉塞を認める。 c:中大脳動脈(M1)の病変症例 3D-CTAで左中大脳動脈(M1)の閉塞を認める。 d:内頸動脈(Petrosal segment)の病変症例

MRAで左内頸動脈(Petrosal segment)の閉塞所見を認める。

(3)

病変部位を黄色で色分けしたものである。Figure 2a は 1.20~1.29,Figure 2b は 1.30~1.39,Figure 2c は 1.40~1.49,Figure 2d は 1.50~1.59,1.60 以上に分 類した。このように,内頸動脈遠位部狭窄・閉塞の 割合は ED ratio 1.20~1.29 では 7 割近くが ACA に病 変がみられ(Figure 2a),ED ratio 1.30~1.39 では ACAがまだ多いが MCA・M1,M2 の病変も増加し てきている(Figure 2b)。ED ratio 1.40~1.49 では ACAが減少し MCA・M1,M2 が増加し(Figure 2c), ED ratio 1.50~1.59,1.60 ≤ では MCA・M1,ICA の 主 幹 動 脈 に 病 変 が み ら れ る 傾 向 に あ っ た (Figure 2d)。即ち,ED ratio が高くなるにつれ主幹 動脈(MCA・M1, ICA)に病変がみられる傾向に あった。 IV 考 察 ED ratioを 3,550 例で検討したところ,1.2 ≤ は 244 例あり,頭蓋内血管に狭窄,もしくは閉塞を認めた。 さらに 1.20~1.29,1.30~1.39,1.40~1.49,1.5 ≤ に 分類したところそれぞれ ACA,ACA から MCA・ M1,M2,MCA・M1,MCA・M1 から ICA に狭窄 もしくは閉塞を認め,ED ratio 測定で病変の部位を 推定できる可能性が示唆された。 血流速度は,末梢の血管抵抗に影響を受けること が知られており,計測部位よりも末梢血管の狭窄も ED ratioと ICA 遠位部狭窄/閉塞の割合と病変部位 ED ratio 総症例数 ICA遠位部狭窄/閉塞 病変部位(数値は症例数) 症例数 割合(%) ACA M2 M1 ICA 1.20~1.29 114 64 56 59 3 2 1.30~1.39 50 33 67 20 4 9 1.40~1.49 27 21 77 7 2 12 1.50~1.59 12 10 83 2 8 1.60以上 41 37 90 2 31 4 Table 1 

a

b

c

d

ED ratioと狭窄・閉塞血管との関係(病変部位を黄色で示す) a:ED ratio 1.20~1.29 前大脳動脈に病変あり。 b:ED ratio 1.30~1.39 前大脳動脈から中大脳動脈に病変あり。 c:ED ratio 1.40~1.49 前大脳動脈よりも中大脳動脈に病変あり。 d:ED ratio 1.50~1.59,1.6 ≤ 中大脳動脈から内頸動脈に病変あり。 Figure 2 

(4)

しくは閉塞によって血管抵抗が大きくなり,血流量 が減少し,血流速度は低下する。したがって,末梢 血管からより太い中枢側血管の狭窄,閉塞により ED ratioが相関して変化すると考えられる6)。 Yasakaら2)は塞栓症 46 例,コントロール群 30 例 に対し ED ratio を検討し 1.3~4.0 で MCA・M1(中 大脳動脈)閉塞,4 ≤ で ICA 閉塞と報告し,Kimura ら3)は,ICA 閉塞症例 43 例と健常群 25 例で ED ratio を検討し,健常群の ED ratio がすべて 1.4 ≥ であった のに対し,心原性塞栓症,アテローム血栓症群では すべて 1.4 ≤ であったことから健常群とは 1.4 ≤ を もって鑑別可能としている。 また宇羽野ら4)は,185 例(脳梗塞急性期群 78 例, 一部脳梗塞既往歴を含むスクリーニング群 107 例) の ED ratio を検討し,185 例の頭部 MRA 有狭窄/閉 塞率を 1.4 < ED ratio ≤ 2.0,2.0 < ED ratio ≤ 3.0,3.0 < ED ratio ≤ 4.0,4.0 < ED ratio ≤ 5.0,ED ratio > 5.0 に 分類し,それぞれ 29.4%,34.5%,100%,100%, 100%と報告している。我々の検討では ED ratio 1.4 ≤ ではなく ED ratio 1.2 ≤ で 56%の有狭窄/閉塞率を 認め,1.6 ≤ で 90%の有狭窄/閉塞率を認め以前の報 告より低値で有狭窄/閉塞率を認めている。一方脇 田ら6)は内頸動脈系に閉塞が確認された 29 症例と脳 血管障害の既往歴がないコントロール群 14 例で検討 し,中大脳動脈閉塞群は 5 例で ED ratio 1.23~2.17 を示したと報告しており,症例数は少ないものの 1.2 から異常を示しており,我々の検討と一致する。超 音波入射角 60 度 ≥ 5)でなお且つ左右一定にして ED ratioを測定することで今までの報告より狭い範囲に 値がなったと考えている。 本研究により ED ratio は今まで 1.4 ≤ をもって鑑別 していたが,今後は 1.2 ≤ で頭蓋内血管を精査する 指針になり,さらに今までより,より低値で狭い範 囲(1.2~1.6)で病変部位を識別可能であると考えら れる。ED ratio が 1.2 ≤ の時は,MRA や 3D-CTA,脳 血管撮影で狭窄病変の検査を追加確認する必要があ ると考えられた。しかし,ED ratio の限界として両 側病変や側副血行の発達した症例6),Willis 動脈輪の バリエーションによる影響7)もあることを念頭に置 かなければならないことと,有狭窄/閉塞ではなく, 狭窄率による ED ratio の変化の検討が今後の課題で あると考えられた。 V 結 1.3,550 例中 ED ratio 1.2 ≤ は 244 例であった。 2.超音波入射角 60 度 ≥ で左右一定にして計測す ることで ED ratio は今までの報告より,より低値 (1.2 ≤)で狭い範囲(1.2~1.6)で主幹動脈に狭窄, 閉塞を認める可能性が高い。

3.ED ratio で ACA,MCA,ICA の閉塞部位が推 測できる可能性が示唆された。 謝辞 原稿を終えるにあたり,ご指導いただいた当院脳神経外科院長 太田 守先生,佐藤直樹先生,遠藤雄司先生,石川敏仁先生,遠藤 勝洋先生に深く感謝いたします。 ■文献  1) 坂井 信幸,他:脳血管内治療の進歩 2015 ステント型血栓 回収機器は急性期再開通治療をどう変えるか?どう活用する か?~脳血管内治療ブラッシュアップセミナー 2014~,診断 と治療社,東京,2014.

 2) Yasaka M et al.: “Ultrasonic evaluation of the site of carotid axis occulusion in patients with acute cardioembolic storoke,” Stroke, 1992; 23: 420–422.

 3) Kimura K et al.: “Duplex carotid sonography in distinguishing acute unilateral atherthrombotic from cardioembolic carotid artery occulusin,” AJNR, 1997; 18: 1447–1452.  4) 宇羽野 恵,他:「頸動脈超音波 duplex 法による総頸動脈 ED 比と頭部 MRA 所見との対比」,東京女子医大誌,2008; 78 (臨時増刊号): E149–E153.  5) 日本脳神経超音波学会・栓子検出と治療学会合同ガイドライ ン作成委員会:頸部血管超音波ガイドライン,49–67,2006.  6) 脇田 政之,他:「内頸動脈および中大脳動脈閉塞症例におけ る内頸動脈血流速度波形の解析」,Meurosonology, 1999; 12: 116–119.  7) 脇田 政之,他:「Willis 動脈輪のバリエーションと総頸動脈 拡張末期血流速度,血管径の関係」,第 28 回日本脳卒中学会 総会プログラム・抄録集,2003; 28: 184. 本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業等はありません。

(5)

Technical Article

End-diastolic (ED) ratio of both common carotid arteries—quantitative

analysis

Tsuneo NOUCHI1) Reiko OKAJIMA1) Mami MATSUZAKI1) Yumi SATOU1) Ayumi OOTSUKI1)

1)Department of Clinical Laboratory, Masu Memorial Hospital (100, Sumiyoshi, Nihonmatsu-shi, Fukushima 964-0867, Japan)

Summary

The end-diastolic (ED) ratio of blood flow velocity in both common carotid arteries measured by carotid echography is an important indicator of distal internal carotid artery stenosis/occlusion. In this study, the ED ratio was determined as part of a screening test by accurately measuring the blood flow 2 cm or more central to the carotid bifurcation by an ultrasound Doppler technique at an equal ultrasound incident angle of 60 degrees or smaller on both sides. By this method, we detected distal internal carotid artery lesions using an ED ratio of ≥ 1.2 as an index, rather than that of ≥ 1.4 specified in the Cervical Vessel Ultrasound Guidelines. Furthermore, this method was suggested for detecting and locating such lesions using a narrow range of ED ratios from 1.2 to 1.6.

Key words: ED ratio, carotid echography, internal carotid artery stenosis, ultrasound incident angle, equal

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